目次 / ا ب ت ث ج ح خ د ذ ر ز س ش ص ض ط ظ ع غ ف ق ك ل م ن ه و ي / ء ة ى
(28) ヤー [ ي ]
يَاءٌ の発音
・有声・硬口蓋・接近音(半母音)(大阪大学 アラビア語独習コンテンツ)
・有声・硬口蓋・接近音(東京外国語大学 言語モジュール)
ي | 文字名 | 音価 | IPA | 月/太陽 | |
---|---|---|---|---|---|
يَاءٌ | yā’ ヤー |
y | j | 月 |
アルファベット名の発音
・[ yā’ ] [ ヤー(ゥ/ッ) ](語末を省略する普通の読み方)
・[ yā’un ] [ ヤーウン ](格を示す語末母音も全部読んだ場合)
*エジプトでは「イェー」に近い読みをします
男声:プロのナレーターさんによる収録
女声:Amazon TTS Zeina
日本語のヤ行のヤ・ユや英語の y と同じ音です。
ただし半母音なので子音的に働く場合もあれば、أَيْ [ ’ay / ’ai ](二重母音ay/ai)のように母音的として働く場合もあります。
母音との組み合わせ
+母音a | +母音i | +母音u |
---|---|---|
يَ | يِ | يُ |
ya [ ヤ ] | yi [ イ ] | yu [ ユ ] |
母音a、i、uを足すと、ya、yi、yuとなります。舌の中央を上げて上あごの天井部分の真ん中あたりに接近させます。
- 子音として働いている場合
カタカナ表記するとヤ・イ・ユになるのですがイは i ではなく yi で、母音のイと混同してしまわないように要注意です。子音 y を意識してィヤ、ュイ、ィユに近い発音をするとわかいやすいかもしれません。 - 母音的に働いている場合
أَيْ [ ’ay / ’ai ](二重母音ay/ai)における ي [ y / i ] では母音の [ i ] を意識しながら ي を発音します。一般的なラテン文字転写ではアラビア文字のつづり通りに ay としますが、ai になっている表記も数多く見かけます。
動画で発音の方法を確認
アラブ人向けにクルアーン朗誦に必要となるフスハー的発音を教えるレッスン動画です。発音する場所が似ている ج [ j ]、ش [ sh ]、ي [ y ](長母音ではない方) がまとめて解説されているので ي [ y ] の部分(2:45)から再生が開始するように設定してあります。
ي [ y ] は図だと ج [ j ] や ش [ sh ] よりも少しだけ奥の喉寄りに舌を接近させるように示されています。
ي [ y ] では舌の中央部 ー وَسَط اللِّسَانِ [ wasaṭu-l-lisān ] [ ワザトゥ・ッ=リサーン ] ー を上あごの天井中央付近 ー وَسَطُ الْحَنَكِ الْأَعْلَى [ wasaṭu-l-ḥanaki-l-’a‘lā ] [ ワサトゥ・ル=ハナキ・ル=アアラー ](上あごの真ん中)ー に密着させてくっつけ、息の通り道をいったん閉鎖することにより発音。
*日本の教材では「硬口蓋」ですが、アラブ式の発音学習レクチャーだと「上あごの真ん中」という説明になっています。
舌の中央部が盛り上がっている様子が赤い矢印で示されています。そして上あごの天井部分に舌が接近して狭くなったところで発音が行われます(=白い音波模様)。
同様の内容のレクチャーで、ي [ y ] から再生が開始するように設定してあります。
同様の内容ですがイラストと字幕を見ながら確認できる構成になっています。
こちらは発音練習コースの画面とともにイラストを出している動画です。最初に発音サンプルがひたすら繰り返されます。後半はクルアーン朗誦における実例になります。
ي の代わりに用いられるエジプトの ى
実際の例
エジプトでは単語の終わりに来る ي と ى を区別せず ى で書くという慣例があります。エジプトの新聞や書籍を読む時は注意が必要です。
فِي
[ fī ] [ フィー ]
~の中に(エジプト以外でのつづり)
فِى
[ fī ] [ フィー ]
~の中に(エジプトでのつづり)
*[ fā ] [ ファー ] や [ fan ] [ ファン ] と発音するわけではありません。
ちなみにアラブのニュース記事などを読んだのですが、エジプト以外にこのつづりを採用している国は無い模様。エジプトの場合は語末の ي を ى に統一するようきちんと校閲を入れているとの紹介も見かけたことがあります。
エジプトだけこのようなつづりになった理由
つけなくても他の文字と区別できるからということで元々弁別点を足すのが他の文字よりも遅かったのが ـي で、後代になってからシャーム地方(シリアやレバノン近辺)では長母音 ā を表さない ـى については下に点が2個ある ـي を用い区別するように。
一方昔のままの古いルールを続けてきたのがエジプトで、他のアラブ諸国が語末を ـي と ـى で書き分けるようになっても変わらずに ـى で統一しているとのことです。
カイロにはアラビア語の文法や正書法(正字法)に関する公式見解を発表するアラビア語アカデミーがあり、同組織は1980年に「長母音āを示す方は点無し ـى とし、そうでないヤーは点をつけ ـي として区別する。」と定めたそうですが、エジプトでは今でも広く ـى 統一表記が続けられている形となっています。
これについては他地域のアラブ人たちから「エジプト人は ـي と ـى を区別できないのか?」「語末を全部 ـى で書くのは大間違いだ。」というバッシングの原因ともなっており、アラビア語における古いルールを知らない人には「エジプト人が勝手に作り出したつづりだ。」と勘違いされることもあるようです。