アラビア語アルファベットの発音を覚えよう~(01)アリフ[ ا ]

目次 / ا ب ت ث ج ح خ د ذ ر ز س ش ص ض ط ظ ع غ ف ق ك ل م ن ه و ي / ء ة ى

(01) アリフ [ ا ]

أَلِف の発音

・音価はなし(大阪大学 アラビア語独習コンテンツ)
・-(東京外国語大学 言語モジュール)

ا 文字名 音価 IPA 月/太陽
أَلِفٌ ’alif
アリフ

アルファベット名の発音
・[ ’alif ] [ アリフ ](語末を省略する普通の読み方)
・[ ’alifun ] [ アリフン ](格を示す語末母音も全部読んだ場合)
*通常の書籍では [ alif ] という表記になっています。当サイトは声門閉鎖音/声門破裂音の位置を示すため「’」を追加しています。

男声:プロのナレーターさんによる収録

女声:Amazon TTS Zeina

日本で発売されている詳しいタイプのアラビア語文法書では「アリフ自体は特定の子音を表さない」という説明が一般的です。

アルファベットの1番目のアリフをどう扱うかは文法学者の見解により一致していないので難しいところですが、

  • 長母音 ā の音(「アー」とのびる音)を示すのに使う
  • 母音 a(ア)・i(イ)・u(ウ)と組み合わせて [ ’a ] [ ア ]・[ ’i ] [ イ ]・[ ’u ] [ ウ ] と読む
    *よくアリフがアラビア語で唯一母音を表す文字と紹介されていることがありますが正確な記述ではありません。

という風に覚えておけばまずは大丈夫です。

アリフの働き

1)長母音āを表すのに使う

長母音を作るパーツとしてのアリフ

前に来る「子音+母音a」の後に続いて長母音としての ا [ ’alif ] [ アリフ ] を書くことで、長母音 ā を表すパーツとなります。

مَا
[ mā ] [ マー ]
【疑問詞】何?

このような長母音のアリフは اَلْأَلِف اللَّيِّنَة [ ’al-’alifu-l-layyina(h)/laiyina(h) ] [ アル=アリフ・ッ=ライイナ ](直訳は「柔らかいアリフ」「柔和なアリフ」)と呼ばれており、アルファベットを全部で29文字とみなす学説では合字 لا [ lam(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ](ラーム-アリフ)としてアルファベット順の終盤である28番目に置かれるなどします。

長母音アリフとスクーン記号

長母音のアリフ部分に母音がつかないこと(無母音)を示す記号スクーンがついていることもあります。これは「長母音アリフ自身はどの母音も受け入れず、単体では何の音も持たない。」というアラブ式アラビア語学における考えを反映したものです。

ْمَا
[ mā ] [ マー ]

2)ハムザの台になる

アリフは単語の先頭などに来る ء [ hamza(h) ] [ ハムザ ] [ ’ ] と組み合わせる台としても使われます。

アラビア語のアルファベットを28文字とみなす学説では、1文字目が長母音のアリフと声門閉鎖音/声門破裂音のハムザを兼業しているという理解になるとのこと。母音がつく場合は長母音としてのアリフではなくアリフという كرسيّ [ kursī(y) ] [ クルスィー(ュ/ィ) ](台座)に置かれたハムザとして扱われます。

このようにアリフに乗っているハムザは اَلْأَلِف الْيَابِسَة [ ’al-’alifu-l-yābisa(h) ] [ アル=アリフ・ル=ヤービサ ](直訳は「乾いたアリフ」)と呼ばれるなどします。

アリフにハムザをのっけて母音を足したら [ ’a ][ ア ]・[ ’i ][ イ ]・[ ’u ][ ウ ]

長母音のパーツとなり母音を受け入れないアリフアリフ自体に独自の子音は割り当てられていないので、声門閉鎖音/声門破裂音である ء [ hamza(h) ] [ ハムザ ] [ ’ ] に母音をつけた場合としての発音を行います。

日本語でこれと同じになるのは、主にア・イ・ウの母音を単独ではっきり発音する場合、単語がア・イ・ウで始まる場合だと思います。

語中で他の子音に続いて発音する時と違って閉じていた声門が開いて息が勢い良く飛び出した(ハムザと同じ声門閉鎖→声門破裂)後に母音の a i u を発音するため、厳密には /ʔa/ /ʔi/ /ʔu/ に。

長母音のパーツとなり母音を受け入れないアリフを台座としたハムザはそうした母音に先立つ声門閉鎖音/声門破裂音 /ʔ/ の方を示しており、後続する母音 a i u はハムザに書き足す母音記号の担当となっています。

+母音a +母音i +母音u
أَ إِ أُ
’a [ ア ] ’i [ イ ] ’u [ ウ ]

ハムザの持つ音価 [ ’ ] にそれぞれ短母音の a・i・u を足すと [ ’a ] [ ア ]・[ ’i ] [ イ ]・[ ’u ] [ ウ ] になります。

日本語のア・イ・ウを元気に勢い良くハキハキ言う時のイメージで発音しますが、しくみとしては「あさ」「いす」「うみ」といった具合にあ・い・うが語頭にある場合はアラビア語の語頭ハムザと一緒の発音になるので、特に意識しなくても大丈夫です。

詳しくは
アラビア語アルファベットの発音を覚えよう~(★)ハムザ[ ء ]

見た目はハムザが無いのに実は隠れているだけの場合

前に他の語が来てつなげ読みする際に発音を省略する一部の語頭ハムザは、アリフとセットであるにもかかわらず書かないというルールがあります。これを هَمْزَة الْوَصْلِ [ hamzatu-l-waṣl(i) ] [ ハムザトゥ・ル=ワスル ](直訳は「連結のハムザ」。ワスルは「連結、結合、連続」の意。)と呼びます。

*ハムザトゥルワスル(ハムザトゥ・アル=ワスル)は本によってハムザトルワスル、ハムザト・ル=ワスル、語末母音を加えたハムザトルワスリなど表記はまちまちです。日本語で書かれた学習書で一番多いのはハムザトルワスルかもしれません。日本語訳して連続ハムザなどと書かれていることも。

このような場合、ハムザが隠れているだけで単独時もしくは直前の語とつなげ読みをしない時は上で紹介したハムザと母音とを組み合わせた発音になります。

ハムザが書いていないからといって、アリフそのものがア・イ・ウの発音を持っている、アリフが母音を示している、という考え方はアラビア語文法学ではしません。母音記号は隠れているハムザにつけられたものです。

長母音のパーツとなり母音を受け入れないアリフ自体に独自の子音は割り当てられていないので、声門閉鎖音/声門破裂音である ء [ hamza(h) ] [ ハムザ ] [ ’ ] に母音をつけた場合としての発音を行います。

閉じていた声門が開いて息が勢い良く飛び出した(ハムザと同じ声門閉鎖→声門破裂)後に母音の a i u を発音するため、厳密には /ʔa/ /ʔi/ /ʔu/に。

アリフを台座としたハムザはそうした母音に先立つ声門閉鎖音/声門破裂音 /ʔ/ の方を示しており、後続する母音 a i u はハムザに書き足す母音記号の担当となっています。

日本語のア・イ・ウを元気に勢い良くハキハキ言う時のイメージで発音しますが、しくみとしては「あさ」「いす」「うみ」といった具合にあ・い・うが語頭にある場合はアラビア語の語頭ハムザと一緒の発音になるので、特に意識しなくても大丈夫です。

+母音a +母音i +母音u
اَ اِ اُ
’a [ ア ] ’i [ イ ] ’u [ ウ ]

表記上隠れてしまっているハムザの持つ音価 [ ’ ] にそれぞれ短母音の a・i・u を足すと [ ’a ] [ ア ]・[ ’i ] [ イ ]・[ ’u ] [ ウ ] になります。

أَ إِ أُاَ اِ اُ に音や吐き出す息のの強弱といった違いはありません。前の語とつなげ読みする際に読み飛ばすかどうかの違いだけです。

3)対格を示すタンウィーンにおける添え字的な用法

対格タンウィーンの基本的なつづり

三段変化をする名詞や形容詞などの対格(目的格)では語末の音が [ -an ] [ -アン ] になりますが、特定の例外を除いた場合において添え字として ا [ ’alif ] [ アリフ ] を書き足します。

休止(ワクフ)形ではなく語末の格母音やタンウィーン(-an)まで全部読むケースではいわゆる添え字に近いのでアリフ自体が [ -an ] の音を示すという訳ではなく、発音しないのに文字だけ書いてある形となります。

كِتَابًا
[ kitāban ] [ キターバン ]
【対格(目的格)】(とある)本を

対格のタンウィーン記号を書く場所

日本語で書かれた文法書やアラブ人向けの正書法(正字法)教本ではアリフの前に来る本来の語末文字の上にタンウィーン記号を書く
كتابًا
が教えられているだけのことも多いのですが、実際にはアリフの上に書いて
كتاباً
とする学説もあってそっちも正解なのだとか。そのため本でもネイティブが書いた文章でも後者の表記が多く見られます。

なおどちらの学説に依拠するかによって分かれるということで、通常同じ文の中ではどちらか一つの表記方法で統一する感じです。混在させないことをおすすめします。

対格のタンウィーンだけアリフを書き足す理由

なお休止(ワクフ)といってその語の直後で息継ぎをする場合、アラビア語では語末の格を示す母音や非限定であることを表すタンウィーン(-nの音の添加)が取れます。

しかしこれには名詞や形容詞などの対格(目的格)の時だけタンウィーンの -an 部分を長母音の -ā で発音するという違うルールが存在します。

これはイスラーム以前からずっと続いていた古い読み方で、対格(目的格)・非限定の語については休止形(ワクフ)の際に語末の格母音(a)とタンウィーンの(-n)を取るのではなく長母音 ā として発音したことが由来です。非限定名詞において対格(目的格)だけ余分なアリフを書き足すのはこのような事情によります。

كِتَابَا
[ kitābā ] [ キターバー ]
【対格(目的格)・休止形(ワクフ)】(とある)本を

このような発音はフスハー日常会話やニュース番組ではまず使いませんが、現代でも文学作品の朗読や国語としてのアラビア語授業の例文講読などで現役で行われています。

4)動詞の語末における添え字

完了形動詞の三人称・男性・複数では語末に発音しない余分な ا [ ’alif ] [ アリフ ] がつきます。

كَتَبُوا
[ katabū ] [ カタブー ]
【動詞完了形・三人称男性複数】彼らは書いた

これは「ここは語末ですよ」と示すための区切り線のような役割を持っているアリフで、発音はしないのに表記だけされている添え字になります。

なので [ カタブーアー ] や [ カタブーワー ] のようにアリフに相当する発音を追加することはしません。

アリフの発音とハムザとの関係

アリフからのハムザの切り分けという歴史

日本で発売されている詳しいタイプのアラビア語文法書では「アリフ自体は特定の子音を表さない」という説明が一般的です。

そのような本と同じ考え方の先生だと「昔はアリフの音価が現在のハムザの持つ声門閉鎖音/声門破裂音だったが、その後 ء [ hamza(h) ] [ ハムザ ] にバトンタッチ。現在はアリフは音価を持たないということになっている。」という説明をセットでされることも。

ただ調べてみるとわかるのですがアラビア語文法学ではアリフとハムザは完全に分離しきっておらず、1番目のアルファベットであるアリフがハムザを兼業しているとかアリフの実体がハムザだとか色々な説があるようです。

関連記事
アラビア語アルファベットの発音を覚えよう~ハムザ[ ء ]
アリフとの関連性が非常に強いハムザの性質や発音の方法についてはこちらの記事をお読みください。喉を通る息を一瞬せき止める様子を示したレクチャー動画なども紹介しています。

アラビア語のアルファベットを29個をする学説におけるアリフとハムザの位置づけ

このような違いがあるため、アラビア語アルファベットの1文字目をアリフ兼ハムザと見る場合はアルファベット数が28個、アリフとハムザを別に見る場合はアルファベット数が29個という扱いになります。

ただ文法書によっては1文字目がハムザで、長母音を形成するアリフの方は合字である لا [ lam ’alif ] [ ラーム-アリフ ] として現れると説明しているケースも。

エジプトの文法学専門家 عَبَّاس حَسَن [ ‘abbās ḥasan ] [ アッバース・ハサン ] 先生の著書『اَلنَّحْوُ الْوَافِى』[ ’an-naḥwu-l-wāfī ] [ アン=ナフウ・ル=ワーフィー ](*エジプト出版書籍なので語末の ي には点がついていません)によると、この場合はアリフが単体では発音できないことからラームにくっつけて登場させているという考え方をするそうで、メインはアリフなのだとか。

そしてこの説に従う場合はラーム-アリフ(=アリフ)を29個あるうちのアルファベットの1つと見るとのことです。

なおWright(ライト)の文法書では1文字目がアリフを台座にしたハムザで、合字ラーム-アリフはアルファベット順の最後にある وي の間に割り込ませて و لا ي と並べるのだという解説が載っています。(いわゆる長母音を形成する弱文字トリオ。)

アルファベット表のアレンジバージョン

1文字目がハムザとアリフを兼業しているとみなす場合
 أ
ا
文字名 音価 IPA 月/太陽
أَلِفٌ ’alif
アリフ
ʾ
当サイト: ’

ʔ

アルファベット順の1番目が実は声門閉鎖音/声門破裂音ハムザと長母音アリフを兼業しているとみなす説に従うとページ冒頭の表はこんな感じになるかと思います。

長母音アリフは長母音 ā そのものではなく直前の母音 a を長母音化する部品で特定の音価は示さないということで ー としました。

アリフと呼ばれていながらも声門閉鎖音/声門破裂音ハムザをも意味するこの兼業型ではこのような関係が成り立っていることになります。

アリフと呼ばれている1番目のアルファベット

  1. 声門閉鎖音/破裂音ハムザのことを指す
    母音記号をつけた اَ اِ اُ はただの短母音 /a/ /i/ /u/ と等しくなるのではなく、その前に声門の破裂 /ʔ/ を伴う /ʔa/ /ʔi/ /ʔu/ であることを示します。日本語や英語では語頭の母音には一般的に声門閉鎖→破裂を伴うため同一視されやすいのですが意味合いに微妙な差異があります。
  2. 長母音アリフのことを指す
    この長母音アリフは短母音 /a/ /i/ /u/ と等しいと見なされることはありません。その上これ自体が音価を持たないとされています。アリフ単独で長母音 ā(/aː/)を表すのではなく、直前の短母音 a を長母音化しており ā(/aː/)の記号から抜き出すとすると ā の上のーだけとか /aː/ の ː 部分だけと考えるのが適当なのではないでしょうか。
1文字目の実体がハムザだとみなす場合
أ 文字名 音価 IPA 月/太陽
أَلِفٌ ’alif
アリフ
ʾ
当サイト: ’
ʔ

アルファベット順の1番目がアリフと呼ばれているだけで実はハムザのことだとする説に従うとページ冒頭の表はこんな感じになるかと思います。

 لا 文字名 発音 IPA 月/太陽
لَام أَلِف lām(u)-’alif
ラーム-アリフ

アルファベット順の1番目がアリフと呼ばれているだけで実はハムザのことだとする説に従うと、長母音のアリフは و [ wāw ] [ ワーウ ](長母音 ū のつづりに使用)と ي [ yā’ ] [ ヤー(ゥ/ッ) ](長母音 ī のつづりに使用)にはさまれた後ろから2番目(29個のアルファベットのうち28番目)に置かれ、表としてはこんな感じになるかと思います。

アリフの発音に関する話題

アリフはアラビア語で唯一母音を示す文字?

アリフの音価が a・i・u で母音を示すという説明について

日本において本や学習サイトによっては「アリフはアラビア語アルファベットの中で唯一母音の音価を持っている文字」と説明されていることがありますが、

  • 長母音を形成するアリフとして見た場合、母音を伴うことができず無母音(スクーン記号つき)のみでそれ自身が何らかの子音や母音を示す訳ではないという考え方になる。よって音価無しとの扱いに。
  • 長母音アリフではなくアリフを台にした声門閉鎖音/声門破裂音ハムザとして見た場合、短母音を表すのではなく母音に先立つ声門閉鎖音/声門破裂音という子音 /ʔ/ の方を示すという考え方になる。

ため正確な記述とは言いづらいように思われます。

上でも書きましたが、アリフに母音記号がつくのはアリフとは名だけで実体は声門閉鎖音/声門破裂音である ء [ hamza(h) ] [ ハムザ ] [ ’ ] と見た場合になります。なので أَ إِ أُاَ اِ اُ も全く同じ発音で、閉じていた声門が開くという声門閉鎖→声門破裂後に母音の a i u を発音するため、厳密には /ʔa/ /ʔi/ /ʔu/ に。

アリフを台座としたハムザはそうした母音に先立つ声門閉鎖音/声門破裂音 /ʔ/ の方を示しており後続する母音 a i u はハムザに書き足す母音記号の担当なので、「アリフは母音を表す文字」は適切な解釈ではないように感じられる次第です。

文法書における記述

日本語の本ではまず見かけませんが、ハムザとアリフの話は海外で発売されている文法書には比較的詳しく書かれています。

John A. Haywood、H. M. Nahmad 著
『A new Arabic grammar of the written language』

Lund Humphries 刊
p.2

  • The alphabet consists of 28 letters 中略, which are all consonants; three of them, however, ’alif, wāw, yā’, are also used as long vowels or diphthongs.
    (アルファベットは28文字からなる(中略)、それらは全て子音だがそのうちの3つ(アリフ、ワーウ、ヤー)は長母音や二重母音としても使われる)

Karin C. Ryding 著
『A Reference Grammar of Modern Standard Arabic』
Cambridge University Press 刊
p.26

  • In initial position, ’alif is not a vowel; it is always a seat for hamza or madda.
    (語頭において、アリフは母音ではない。常にハムザかマッダ記号の台座となる。)

Eckehard Schulz 著
『A Student Grammar of Modern Standard Arabic』

Cambridge University Press 刊
p.5

  • The first letter of the alphabet is actually Hamza, but since Alif is the chair of Hamza in most cases, it appears in its place as the first letter.
    (アルファベットの1文字目は実はハムザだが、ほとんどの場合アリフはハムザの台座となっているため、アリフが1文字目の位置に登場している。)

Peter F. Abboud、Ernest N. McCarus 編集
『Elementary Modern Standard Arabic』

Cambridge University Press 刊
p.40

  • In Arabic, every word beginning with a vowel is pronounced with initinal glottal stop
    (アラビア語では母音で始まる語は全て最初に声門破裂音が伴う)
  • no syllable in Arabic can begin with a vowel(アラビア語では母音から始まる音節は無い)
  • At the beginning of the word, hamza is always written with ا as its seat(語頭においてはハムザは常にアリフを台座とする)

これらの解説からも、アリフに母音記号が書いてあるように見えるものはハムザが実体でアリフは単なる台座であり、その部分がただの短母音ア・イ・ウを表しているのではなくそれらの母音の直前に起こる声門破裂音を示していることがわかります。

そしてアリフが単独で短母音ア・イ・ウの音を持っているのではないことが導き出せるかと思います。ア・イ・ウの音を示すのはアリフの上下についている母音記号であって、アリフ自体は音を持っておらず、表記上書かれず隠れているハムザに着目しなければいけないということになります。そしてアリフを台座にしているハムザも母音ではなく声門閉鎖音/声門破裂音という子音の一種を表します。

元々アラビア語のアルファベットは全て子音を示すということが詳しい文法書で述べられていること、ハムザが母音ア・イ・ウと共に発音されることが多いために母音とまるで同じであるかのようにセットでとらえられやすいと文法書に書かれていることからも、「アリフはア・イ・ウの母音」という風に覚えない方が良いように感じられます。