アラビア語アルファベットの発音を覚えよう~(14)サード[ ص ]

目次 / ا ب ت ث ج ح خ د ذ ر ز س ش ص ض ط ظ ع غ ف ق ك ل م ن ه و ي / ء ة ى

(14) サード [ ص ]

صَادٌ の発音

・無声・歯茎・摩擦音・軟口蓋化(大阪大学 アラビア語独習コンテンツ)
・無声・歯茎・摩擦・口蓋垂化音(東京外国語大学 言語モジュール)

*欧米や日本の学習書では強調音、強勢音や咽頭化、軟口蓋化、口蓋垂音など色々な表現がされています。

ص 文字名 音価 IPA 月/太陽
صَادٌ ṣād
サード
太陽

アルファベット名の発音
・[ ṣād ] [ サード ](語末を省略する普通の読み方)
・[ ṣād
un ] [ サードゥン ](格を示す語末母音も全部読んだ場合)

男声:プロのナレーターさんによる収録

女声:Amazon TTS Zeina

音としては س [ s ] を強調し重々しく発音したものになります。

英語の s とは違うので練習が必要になる子音です。強勢音、強調音、口蓋垂化音、咽頭化音などと呼ばれています。

普通の س [ s ] を発音する時と舌の先の場所は同じで舌の先端を下前歯裏の歯茎に(*アラブのクルアーン朗誦レクチャーだと下前歯裏の最下部と書かれています)ついた状態で息を出します。

そして ص [ ṣ ]では強勢化があるので舌の根元を奥に盛り上げる感じで引っ込め、喉の方は力を入れて狭くします。舌の中央はくぼみます。そうすると s が重々しくなった発音に変わります。

唇をすぼめて丸めながらサードを発音する人がネイティブにも多いそうですが、誤りであり本来の音色が損なわれるとのことなので要注意です。

母音との組み合わせ

+母音a +母音i +母音u
صَ صِ صُ
ṣa [ サ ] ṣi [ スィ ] ṣu [ ス ]

母音a、i、uを足すと、ṣa、ṣi、ṣuとなります。

舌の奥を盛り上げて出す重々しい音なので、ソァ、ソィ、ソゥに近い雰囲気を出しつつ発音します。

なおスをスォに近くするとそれっぽい発音になるのですが、強調音化しようとして唇を突き出して口をすぼめる不要な動作までしてしまわないよう要注意。

動画で発音の方法を確認

アラブ人向けにクルアーン朗誦に必要となるフスハー的発音を教えるレッスン動画で、発音する場所が同じ ص [ ṣ ]、س [ s ]、ز [ z ] を一緒に解説。再生位置は ص [ ṣ ] (4:49)に合わせて調整済してあります。

ص [ ṣ ] と س [ s ] と ز [ z ] は اَلصَّفِير [ ’aṣ-ṣafīr ] [ アッ=サフィール ](口笛のように歯の間からピューピュースースー息が漏れる子音の性質)と呼ばれ、舌の先端が下前歯最下部の裏付近についた状態で出します。舌が下前歯の裏にくっついていて、喉から送られてきた空気が上・下前歯の隙間からピーッと漏れることで発音が行われます。

3:31は一部学習書の誤ったイラストです。上前歯の裏に舌の先端を当てるイラストで解説している学習書もあるそうですが、それは間違いなのだとか。あくまで舌は下前歯の裏に当てるよう注意すべきとのこと。

5:31は発音する場所が同じ ص [ ṣ ](右側)と س [ s ] & ز [ z ](左側)の比較です。

強勢化が起こる ص [ ṣ ] と違って、س [ s ] と ز [ z ] では舌の根元が盛り上がったり、喉の入り口付近が狭くなったり、舌の中央部分がくぼんだりということは起きません。

右の ص [ ṣ ] では舌の根元が盛り上がり、喉の入り口付近が狭くなり、舌の中央がくぼんで強勢化が起こっている様子が示されています。また青い四角で囲んであるように لِسَانُ الْمِزْمار [ lisānu-l-mizmār ] [ リサーヌ・ル=ミズマール ](喉頭蓋)が動き喉が少し狭くなっています。

同様の内容のレクチャーです。冒頭は色々な場所の名前の説明。ص [ ṣ ]、س [ s ]、ز [ z ] を一緒に解説しているので ص [ ṣ ] から再生が開始するように設定してあります。

3:45の白黒イラストは誤った解説の一例で左が س [ s ]、真ん中が ص [ ṣ ]、右が ز [ z ]です。間違っているので画面右上にが❌出ています。

5:27の青矢印は舌の先が下前歯裏の最下部(*アラビア語専攻のウェブページでは下前歯裏の歯茎となっています)に当たっている様子を示しています。

5:33からは上の前歯の裏にぶつかった息が、舌の先端に当たりつつ上と下の前歯のすき間を通って外に出ていく様子がアニメーションで示されています。

6:05は発音する場所が同じで強勢化の有無が違う同士の比較で ص [ ṣ ] が右、س [ s ] と ز [ z ] が左です。青矢印が強勢化による舌の盛り上がりを示しています。

注意点を中心にイスラーム教徒向けに発音方法を解説しているレクチャーです。講師の出身地であるシリアの方言が少し混じったトークになっています。

いくつかの字をまとめて紹介しているので、発音する場所が同じ ص [ ṣ ](右の絵)、س [ s ] & ز [ z ](左の絵)のセットが出てくる場所(1:25)から再生が開始するように調整してあります。

ص [ ṣ ]、س [ s ]、ز [ z ] は اَلصَّفِير [ ’aṣ-ṣafīr ] [ アッ=サフィール ](口笛のように歯の間からピューピュースースー息が漏れる子音の性質)の3文字。舌の先を下前歯の最下部裏側(*アラビア語専攻のウェブページでは下前歯裏の歯茎となっています)に当てます。

3:50あたりで ص [ ṣ ]、س [ s ]、ز [ z ] は発音時に息が下前歯の上を越えて(=上下の前歯の間を抜けて)口の外に抜けることを説明。息が上前歯の裏部分にぶつかるという内容が誤って解釈され、舌の先を上の前歯の裏に当てるようイラストをつけて教えている誤った教材が昔出回っていたことに注意を促しています。

8:21からは ص [ ṣ ] の強勢化で唇を動かさないようにとの注意です。伝統的なクルアーン朗誦学の書籍には書かれていないにもかかわらず現代になってから各国でクルアーンを読む際にしばしば行われるようになっているもので、9:07で実演しているように上下の唇をすぼめて口を丸めるような動作はしてはいけないとのこと。

クルアーン朗誦学の有名学者アイマン・スワイド師の発音レクチャーです。

0:02
ص [ ṣ ]、س [ s ]、ز [ z ] は اَلصَّفِير [ aṣ-ṣafīr ] [ アッ=サフィール ](口笛のように歯の間からピューピュースースー息が漏れること、そのような子音の性質)の文字群。

1:57
一文字目は ص [ ṣ ]。舌の先端 ー طَرَف اللِّسَانِ ー が下前歯裏の最下部付近 ー أَسْفَل الصَّفْحَةِ الدَّاخِلِيَّةِ لِلثَّنَايَا السُّفْلَى ー についた状態で出します。舌が下前歯の裏にくっついているところに喉から息が送られてきて下前歯の上を通って(=上前歯と下前歯の間を通って)発音。そして一部の息は上前歯や上前歯の生え際にもぶつかります。

3:55
そのため理解を早まってタジュウィード教授の際に「舌の先と上前歯の生え際で発音する=舌の先を上前歯裏の生え際に当てる」としてしまっている人々がいるものの、そのような方法には無理があり誰もそんな風に発音していないはずだと指摘。上前歯の裏に舌の先を当てるイラストで解説している学習書もあるそうですが、それは間違いなので現代になってから印刷された本でそう描かれていても正しいと勘違いしてはいけないと警告。あくまで舌は下前歯裏の最下部に当てるよう注意すべきとのこと。

5:19
ص [ ṣ ] ではイラストの通り舌の最奥は盛り上がります。

5:47
サードの誤った発音の一つが6:07のように唇をすぼめる方法。このように教えている教本が出回っているものの、舌と歯で調音する音に使わないはずの唇まで加えてはいけないと注意を促しています。口をすぼめてしまうと違う音に聞こえ本来の音から外れてしまうてしまうのに、朗誦教室で人々が教わってまた他の人に教えられるということが繰り返され広まっていってしまったのだとか。講師本人も大昔にクルアーン朗誦学習中にそういう発音をしてしまったそうで、「どうしてサードの時にそんな風にするのか?」と師から問われ直され正しい方法を知ったと明かしています。

9:35
س [ s ] と ز [ z ] の発音。

こちらは発音練習コースの画面とともにイラストを出している動画です。最初に発音サンプルがひたすら繰り返されます。後半はクルアーン朗誦における実例になります。

同様の学習動画です。