アラビア語アルファベットの発音を覚えよう~(03)ター[ ت ]

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(03) ター [ ت ]

تَاءٌ の発音

・無声・歯茎・閉鎖音(大阪大学 アラビア語独習コンテンツ)
・無声・歯茎・破裂音(東京外国語大学 言語モジュール)

ت 文字名 音価 IPA 月/太陽
تَاءٌ tā’
ター
t t 太陽

アルファベット名の発音
・[ tā’ ] [ ター(ゥ/ッ) ](語末を省略する普通の読み方)
・[ tā’un ] [ ターウン ](格を示す語末母音も全部読んだ場合)
*エジプト式では「テッ」に近く聞こえます。

男声:プロのナレーターさんによる収録

女声:Amazon TTS Zeina

英語の t 、日本語におけるタ行のタ・テ・トと同じ t です。

舌の先を上あご側前歯裏の生え際付近に当てます。舌によって一時的に息が閉じ込められて閉鎖が起こり、「タッ」と発音する時に再度パッと息が外に飛び出ます。

*アラブ人から顔文字によく使われる「ت」の字は”チー”と読むのだ/という名称だと教わった方が少なからずいらっしゃるようなのですが、おそらく「(英語の)t(ティーの音だよ)」という意味だったものと思われます。アラビア語では「ت」の字の名前は「ター」(*厳密にはターゥとターッが混ざったような発音)もしくはエジプトなどでオスマン語風になまって「テッ」です。アラブ圏では英語アルファベットの「T」をティーではなく破擦音のチーで発音する人が時々いるのでチーに聞こえたのもそのためかもしれません。

母音との組み合わせ

+母音a +母音i +母音u
تَ تِ تُ
ta [ タ ] ti [ ティ ] tu [ トゥ ]

[ t ] に短母音のa・i・uを足すと、ta・ti・tuとなります。

子音tにa、i、uを足して「タ」・「ティ」・「トゥ」と発音します。

日本語のカタカナ表記ではアラビア語の「ti(ティ)」をカタカナの「chi(チ)」、「tu(トゥ)」をカタカナの「tsu(ツ)」に置き換えてしまってつづられることが少なくないので要注意です。

動画で発音の方法を確認

アラブ人向けにクルアーン朗誦に必要となるフスハー的発音を教えるレッスン動画です。舌の先を置く場所が同じ ط [ ṭ ]、د [ d ]、ت [ t ] をまとめて解説しているので、ここでは د [ d ] と ت [ t ] の発音説明の位置に再生開始ポイントを合わせてあります。

ت [ t ] は動画に出てくるセットの他の子音同様、舌の先を上あご前歯の生え際付近に当てます。舌によって一時的に息が閉じ込められて閉鎖が起こり、「タッ」と発音する時に再度パッと息が外に飛び出ます。

発音する場所が同じでも重たい音の ط [ ṭ ] は強勢音なので、舌の根元付近が盛り上がって重々しい音に変わります。د [ d ] と ت [ t ] は強勢化が起こらない普通の子音なので、舌の根元が盛り上がったり、舌の中央部分がくぼんだりということは起きません。

2:06ごろに出てくる比較イラストは、右側が ط [ ṭ ] で、左側が د [ d ] と ت [ t ] になります。違いは舌の根元が上に盛り上がっているか・いないか、舌の中央がくぼんでいるか・いないかです。

また青い四角で囲んであるように ط [ ṭ ] では لِسَانُ الْمِزْمار [ lisānu-l-mizmār ] [ リサーヌ・ル=ミズマール ](喉頭蓋)が動き喉が少し狭くなっています。


同様の内容のレクチャーです。舌の先を置く場所が同じ ط [ t ]、د [ d ]、ت [ t ] をまとめて解説しているので、ここでは د [ d ] と ت [ t ] の発音説明の位置に再生開始ポイントを合わせてあります。

1:41の青い矢印は舌の先を置く場所で、舌の先を上あご前歯の生え際付近に当てることを示しています。

ط [ ṭ ] の発音は0:55から説明が始まります。舌の先の当たる部分がわかりやすく図示されています。舌の先端を上前歯裏の生え際付近につけます。1:37から د [ d ] と ت [ t ] の説明。1:55からの比較イラストは右側が重たい ط [ ṭ ] で、左側が強勢化が起こらない普通の子音 د [ d ] と ت [ t ] になります。

調音部位のイラストとあわせてクルアーン朗誦における ت [ t ] 発音の確認をするムスリム向けレッスンビデオです。

ネイティブに見られる異なる発音について

ta・ti・tuがtsa・tsi/chi・tsuになる

日本語の「チ」はchi、「ツ」はtsuで、相当する現代標準アラビア語の子音はありません。

しかしネイティブの人でもtaをtsaに近いツァ、tiをtsiに近いツィやchiに近いチで発音することがあります。たとえば「彼女は書いた」という完了形動詞の女性三人称単数を كَتَبْتِ [ katabti ] [ カタブティ ] ではなく [ katabchi ] [ カタブチ ]、関係代名詞の女性単数 اَلتَّيِ [ ’allatī ] [ アッラティー ] を [ ’allachī ] [ アッラチー ] のように発音するといった感じです。

エジプトのメディアだと女性がこの発音をしていることが時々あり、日本で発売されているアラビア語学習書のCDなどでも耳にしたことがあります。モロッコ出身の方がレポーターを務めるフスハーのニュースでもよく聞かれる発音です。

方言によっては日常会話だとそんなに珍しくない発音なのですが、クルアーン朗誦における発音矯正では直される読み方なので真似はしない方が良いかと思います。

t音にs音が混じってしまう発音の直し方

クルアーン朗誦学・発音の専門家であるアイマン・スワイド師による ت [ t ] と ك [ k ] の発音間違いについて。

この2つは母音を伴わずスクーン記号がつく際にはっきりとは発音しない子音であることに加えて、8:05で ت [ t ] の音に س [ s ] が混じってしまう(=ツァ・ツィ・ツになる)発音が誤りであることが説明されています。

これは上の前歯裏の歯茎付近に舌を当てて発音する ت [ t ] の直後にすぐ舌先を下に下げてしまい س [ s ] の調音部位まで移動してしまうことによって発生します。

こうならないようにするには、8:48辺りで示されているアニメーションのように ت [ t ] の位置で息を吐き終えて発音を済ませてから舌を下げることを意識する必要があるとのこと。