アラビア語アルファベットの発音を覚えよう~(15)ダード[ ض ]

目次 / ا ب ت ث ج ح خ د ذ ر ز س ش ص ض ط ظ ع غ ف ق ك ل م ن ه و ي / ء ة ى

(15) ダード [ ض ]

ضَادٌ の発音

・有声・歯茎・閉鎖音・軟口蓋化(大阪大学 アラビア語独習コンテンツ)
・有声・歯茎・破裂・口蓋垂化音(東京外国語大学 言語モジュール)

*欧米や日本の学習書では強調音、強勢音や咽頭化、軟口蓋化、口蓋垂音など色々な表現がされています。

ض 文字名 音価 IPA 月/太陽
ضَادٌ ḍād
ダード

(現代発音)
太陽

アルファベット名の発音
・[ ḍād ] [ ダード ](語末を省略する普通の読み方)
・[ ḍād
un ] [ ダードゥン ](格を示す語末母音も全部読んだ場合)

男声1:プロのナレーターさんによる収録

男声2:Microsoft Azure Text to Speech Bassel

女声:Amazon TTS Zeina

発音の方法

現代での一般的な説明

アラビア語の学習書では د [ d ] を強く発音してこもらせた音、dの強勢音などと説明されているのが一般的です。

この方法だと英語などの普通のdを発音する時と舌の先の場所は同じで上の前歯の裏の歯茎部分に置きます。舌の根元を奥に盛り上げる感じで引っ込め、喉の方は力を入れて狭くします。舌の中央はくぼみます。そうするとdが重々しくなった発音に変わります。

英語のdとは違うので練習が必要になる子音です。強勢音、強調音、口蓋垂化音、咽頭化音などと呼ばれるもので、音としては د [ d ] を強調し重たい感じに変えたものになります。

現代アラビア語では単に د [ d ] の強勢化になっているということで通常の文法書には「dのように舌先を上の前歯の裏の歯茎部分に押し当てる+舌のつけ根付近に力を入れて盛り上げる+舌の中央付近が凹んだ状態になる」というセットで重くこもったダ・ディ・ドゥを発音するよう書かれています。

クルアーン朗誦で教えられる発音

現代式のダードの発音とクルアーン教室で伝授されている発音方法とは異なります。そのためモスクやイスラーム系センターで教わったダードの音が現地の日常的なフスハー会話で使われているダードの音とは微妙に違って聞こえることとなります。

クルアーン朗誦法を学ぶためのネイティブ向け発音教室では「 د [ d ] の強勢音ではないので d のように舌先を強く歯茎に押し当てて発音するのは正確なダードではない」と注意喚起されており、入門書で説明されている方法よりも発音手順はかなり複雑です。

英語のdを発音する時のように舌の先を上あご前歯裏側の歯茎に当てますが、ぐりぐりせず軽くくっつけます。舌の奥寄りは両脇を固定し上あご奥歯部分に強めに押し当てます。舌の奥(舌の根元)部分は上に盛り上げ、喉は力んで狭くします。舌の中央部分はくぼませて送り込んだ息が口の中の空間にためられてこもったような独特の音が生まれます。

なので余裕があればクルアーン朗誦の時と普通のアラビア語会話の時のダードの調音方法を区別できるとよりナチュラルになるものと思います。

母音との組み合わせ

+母音a +母音i +母音u
ضَ ضِ ضُ
ḍa [ ダ ] ḍi [ ディ ] ḍu [ ドゥ ]

母音a、i、uを足すと、ḍa、ḍi、ḍuとなります。

舌の奥を盛り上げて出す重々しい音なので、ドァ、ドィ、ドゥに近い雰囲気を出しつつ発音します。

なおドゥをドォに近くするとそれっぽい発音になるのですが、強調音化しようとして唇を突き出して口をすぼめる不要な動作までしてしまわないよう要注意。

口語での変化

ظ との入れ替わり

ض は口語ではしばしば ظ の音に置き換わります。

  • シリア・レバノンといったレヴァント地域やエジプトなど
    フスハー本来の舌の先を歯ではさむ ذ [ dh ] の重たい音バージョン ) ではなく舌の先が歯の裏付近に来る口語・方言特有の ز [ z ] の重たい音バージョン)となるのが普通。
  • イラクやアラビア半島など
    ض から置き換わる ظ 発音はフスハーと同じで舌を歯の間にはさむ調音。

ネイティブの人に発音を教えてもらう際「舌を歯にはさむ ذ [ dh ] を重くした音だ」と教えてくれる人と「舌を歯にはさまない ز [ z ] を重くした音だ」と教えてくれる人に分かれるのはそのためです。

ネイティブは ظ と ض の区別が苦手な人がとても多い

日本人学習者はあまり縁の無い混同ですが、アラブの諸方言では ظض の入れ替わりが多いため混同されがちで ظروف [ ズルーフ ](状況)を ضروف [ ドゥルーフ ] と書く人も少なくありません。ネイティブの人がこれをフスハー発音に矯正して ظض のつづりを完璧に正しく使い分けるのはかなり難しいことで知られています。

普段の日常生活ではそのように発音して暮らしているためクルアーン朗誦時にはうっかりアーンミーヤ発音にならないよう矯正が必要になります。

そのためアラブ人の方からアラビア語を習う場合はこれを間違わずに教えられる方を選ぶのが良いかもしれません。(後から直すのが大変なので…)

動画で発音の方法を確認

アラブ人向けにダードの発音を説明している動画は基本的にどれもクルアーン朗誦法における調音方法を示したものになっています。

クルアーン朗誦法バージョンのダード

クルアーン朗誦法(タジュウィード)で正しいダードの発音として教えられるのは以下のような手順です。

  • 舌の奥側を上あごの奥歯に押し当てる
  • 舌の先端は軽く上あご前歯裏側の歯茎にくっつける
  • 舌の根元は盛り上げて、喉の入り口を狭くする
  • 舌の中央部分はくぼんで閉じ込めた息が、まるで風船を吹いた時のように口の中の空間にためられる

強勢音なので、舌の根元付近が盛り上がって لِسَانُ الْمِزْمار [ lisānu-l-mizmār ] [ リサーヌ・ル=ミズマール ](喉頭蓋)が少し後ろに動くことで息の通り道が狭まり、重々しい音に変わります。

舌の先は上歯茎の裏に来ますが押し当てるのではなく軽く接するのがクルアーン朗誦の観点から見たダードの発音です。舌の先端を強く歯茎裏に押し当てるとダード特有で起きる舌先の滑りを妨げるので要注意です。

舌の先を歯茎裏にぐっと当てる د と違って舌の両脇を上あご側の奥歯に強く押し当てるので、単なる د [ d ] の音の強勢音と考えてしまうのは厳密に言うと誤りだとのこと。

しかしそれをやろうとするとかなり難しくネイティブでもできていないことが多いらしいので、最初はダールの発音をただ重くする方法でもやむを得ないのではという気もします。

ダードはアラビア文字の中で唯一「イスティターラ」(発音している最中に舌の位置が前進して舌の先が歯茎裏から前歯生え際あたりまで降りること)が起きる子音で、特にスクーンのついている ض においてはっきりとその性質が現れるそうです。

ダードの発音方法レクチャー動画より

アラブ人向けにクルアーン朗誦に必要となるフスハー的発音を教えるレッスン動画です。

アラビア語を特徴づける字である ض [ ḍād ] [ ダード ]。舌の全体を使って息の通り道をぴたっとせき止めて閉鎖。

発音を開始する時点では上の歯茎の裏に舌を当てているものの、外に出ようとする息に舌が押されるので舌の先端が前進して上歯茎裏の前歯ギリギリの位置に触れる形となるそうです。そして口の中の空間が大きくなり、舌で閉鎖した部分の後方に空気が多くこもるのだとか。→ اَلِاسْتِطَالَة [ ’ali-stiṭāla(h) ] [ アリ=スティターラ(注:ハムザト・ル=ワスルと母音の補足によりアル=イスティターラではなくアリ=スティターラという発音になります) ](=イスティターラ)

動画でも、1:30近辺で息に押されて舌の形が変化し舌の中央部分がぺこっと凹む様子がアニメで図示されています。

歯型イラストは青い部分が押される圧迫ー اَلضَّغْط [ aḍ-ḍaghṭ ] [ アッ=ダグト ](押すこと、圧迫)ーが起きる形で舌が奥歯にもたれかかるー اَلاِتِّكَاء [ ’ali-ttikā’ ] [ アリ=ッティカー ](もたれかかること)ーエリア。

黄色い部分が押しつける圧迫無しで舌が接触ー تَلَامُس [ talāmus ] [ タラームス ](接触)ーするエリアと書いてあります。

2:23黄色い部分に舌の先を強く押しつけるやり方(NGなので赤い✕印が右下に出ています)だと د [ d ] を強調したように聞こえる音として発声されますが、(رل のように)軽い د ー اَلدَّال الْمُرَقَّقَة [ ad-dālu-lu-muraqqaqa(h) ] [ アッ=ダール・ル=ムラッカカ ] ーと重たい داَلدَّال المُفَخَّمَة [ ad-dālu-l-mufakhkhama(h) ] [ アッ=ダール・ル=ムファッハマ ] ーという風に2種類の発音が存在する訳ではない、とのこと。

3:22では黄色い部分がそっと舌先を当てるエリア。黄緑色がもたせかかるように押しつけるエリアを示しています。

3:44の黒い矢印は息の流れを示しています。舌の先の黄色い部分は歯茎裏に接触して道をふさいだまま。奥歯と接している黄緑色のエリアから左右に息を通すとのこと。

同様の内容のレクチャーです。

1:18では舌の先に息の流れがぶつかってせき止められている様子が白い矢印で示されています。

1:34からは舌にせき止められた息が口の中にたまって舌を押し下げ口内の空間が広がっていく過程を図示。

2:01は舌先を軽く触れさせる黄色いエリアと舌の横を強く押しつける黄緑色のエリア。青い■の集まりが圧迫が起きる形で舌が奥歯にもたれかかるエリア。黄色い□部分が押しつける圧迫無しで舌が接触するエリア。

ダードを発音する時は舌の先端を黄色いエリア(上の歯茎裏)に押し付けないように注意。

3:38は上の動画と同じで息が流れて出ていく方向を黒い矢印で説明したもの。

調音部位のイラストとあわせてクルアーン朗誦における ض [ ḍ ] 発音の確認をするムスリム向けレッスンビデオです。

30分超と長めですがダードの発音に関する総合的な解説。他の動画とかぶる部分も多いのでここでは重複が無いもしくは少ない部分メモしておくことにします。

7:48では発音の際に過度のイスティターラで舌を前に滑らせすぎると舌の先が歯の部分まで降りてしまい ظ [ ẓ ] の音になってしまうことに対し注意喚起。

舌が滑るイスティターラが無母音(スクーン)のダードではっきり起こる一方、母音を伴うダードの発音はまた違っていて9:43のように舌の全体が上顎側に触れた後離れるという動きに。舌でせき止められていた息が外に出たがっていたところに母音の発音が続くので、勢いよく息が飛び出す。

10:17からは部族によって違っていたダードの発音について。舌の右側から先に息を漏らし大半の息を右から出していた部族、左から先に漏らして大半の息を左から出していた部族、左右を同じタイミングで開き両側から均等に息を流していた部族があった。

16:13アラブ人はこのダードの発音が正確でないことも多く、自分のアーンミーヤに寄せた発音にしてしまいがち。

一つは舌の脇を使わず舌先だけを歯茎裏に押し当てる(*=舌の先を前歯に圧着させて出す ز [ z ] の強勢音に相当。文字上は ظ で書かれる物。)ダードは砂漠地域(*ベドウィン居住地域、遊牧民発音のことかと)に多い。特にアラビア半島、レヴァント、イラク。こういう発音はだめ。

二つ目は د [ d ] の強勢化。しかしこれはアラブがやっていたダードの発音ではないので誤り。

アラビア語話者でない外国人は ص [ ṣ ] と ز [ z ] とが混じったような発音をすることがある。これは الَصَّادُ الْمُشّمَّةُ زّايّا [ ’aṣ-ṣādu-l-mushammatu zāyan ] [ アッサード(ゥ)・ル=ムシャンマ(トゥ)・ザーヤン ] と呼ばれクルアーン朗誦のフスハーにも存在するが、特定の位置でのみ発音が認められている。

なお ز [ z ] の位置で発音してしまうのがレヴァント地域。海外ではダードがザの音になりラマダーンがラマザーンに置き換わる地域が複数ある。しかしこれらの発音はいずれもクルアーン朗誦では認められていない。

22:48からイスティターラは ض [ ḍ ] にスクーンがついている時のみ起きるのではなく、実際には母音がついている時にも起きる。ただ母音を伴う場合はイスティターラ現象が弱まり、スクーンの時にはっきりと現象が現れ舌の前進が顕著となる。

ض のイスティターラ

クルアーン朗誦法の発音講座では ض [ ḍ ] の発音方法に加えダード発音で起きる口の中の動きである اَلِاسْتِطَالَة [ ’ali-stiṭāla(h) ] [ アリ=スティターラ ](イスティターラ)の解説動画が同時に提供されています。

イスティターラは、上の動画に出てきた「舌を最初は歯茎の裏に置いていたのに、ダードを発声する際に舌が下がって上前歯の生え際付近まで降りてくる」という部分のことを意味します。

まず両手を使ってイスティターラを説明するアイマン・スワイド師。右手が上顎の天井部分、左手が舌を意味します。

スィーバワイヒの言葉を紹介後、3:49で息を吹き込むようにして発音するダードの特質を説明。空の袋や風船をふくらませるな感じだと身近な例を挙げています。

3:58はダード発音を開始する時点の状態で上の歯茎の裏に舌を当てている第一段階。その後舌に見立てた左手を滑らせ前進させ、外に出ようとする息が舌を押し舌の先端が前進して上歯茎裏の前歯ギリギリの位置に触れる形となるイスティターラを表現。

こうして口の中の空間が大きくなり、舌で閉鎖した部分の後方に空気が多くこもるのだとか。

7:33からアニメに合わせてこもって伸びる感じのダードの発音を繰り返しながら説明。

8:11では完全に息の流れを止めるだけの重いdの発音を実演しながら誤りだとし、8:26のような閉鎖だけでなく息の流れ اَلرَّخَاوَة [ ’ar-rakhāwa(h) ] [ アッ=ラハーワ ] が発生するダードとして発音するように教えています。

ッド…ドゥーのように聞こえるダードを含む部分の発音において、「ッド」部分でダードの発音が始まって口の中に閉じ込められた息が舌を前方に押して、その舌が前に滑っている اَلِاسْتِطَالَة [ ’ali-stiṭāla(h) ] [ アリ=スティターラ ](イスティターラ=長くなること)と息の流れの発生の間にダードをまるで長めに発音しているように聞こえるという形に。

ダードにおけるイスティターラのイメージ動画です。ダードを発音する時にふんわりと当ててがちがちの固定はしていなかった舌の先が下に向かって滑っている様子が示されています。

母音を伴わないスクーンの時のダードの発音

ضْ
ض
[ ḍ ] がa、i、uの母音を伴わない無母音(母音記号のスクーンがつく)時、ض [ ḍ ] は上で紹介したイスティターラが顕著に発生し、はっきりとは発音されず口の中で飲み込まれたようなこもった音になります。

スクーン記号がついた母音を伴わない ضْ [ ḍ ] が口の中にこもって飲み込まれるようにして発音される様子を実際の例で確認する学習動画です。

*これはクルアーン読誦法・発音方法なので、このような動画が多数ある=現代のアラブ人が皆この飲み込むようなダードの発音でフスハーのスピーチを行ったりニュースを読み上げているとはなりません。リスニング練習していると、古来の発音方法ではなく د [ d ] を強勢化しただけの発音で読んでいる割合が高いことを実感されるかと思います。

クルアーン朗誦における無母音ダードに関する詳しい解説です。

ダードはスクーン記号がつく時にははっきりとは発音されない子音に分類されます。強くはっきり舌先ではじいて発音するのも、弱く発音しすぎて [ ḍ ] でなくしてしまうのも間違いとなります。

  • 0:45
    فَضْلًا [ faḍlan ] の [ ḍ ] をはっきりとは発音しない正しい読み方の例です。
  • 0:48
    [ ḍ ] をはっきり発音して [ ファラン ] としてしまっている誤った読み方の例です。
  • 2:15
    أَفَضْتُمْ [ ’afaḍtum ] の [ ḍ ] を読まなさすぎて後に続く ت [ t ] に同化させてしまい أَضتُّمْ [ ’afattum ] [ アファットゥム ] としている誤った例です。

上と同じ講師によるクルアーン朗誦としての正しいダード発音と誤ったダード発音の解説です。

ダードをはっきり短く発音するのではなくこもって飲み込むような不明瞭な発音になること、ダード部分で少し長めの時間をかけることを両手を引き離す動作で表現しています。

Almajdというイスラーム専門放送局の放送録画です。動画では فَضْلُ اللهِ [ faḍlu-llāhi ] [ ファドル・ッラーヒ ] というフレーズをクルアーン朗誦の正しい読み方を無視した上で、母音を伴わない ضْ [ ḍ ] の発音を強調しながら解説しています。

カタカナではファドルとしてありますが、クルアーン朗誦という技術を通じて長い間保持されてきたダードの発音ではファルに近い感じで「ド」がはっきりとは読まれていないのがわかるかと思います。

エジプト方言での解説になりますが、ネイティブから「わかりやすかった」というコメントが数多く寄せられていた動画なので掲載したいと思います。

ダードを発音する時に舌の両脇が奥歯に接すること、発音する場所が似ていて間違える人も少なくない د [ d ] や ط [ ṭ ] が اَلْقَلْقَلَة [ ’al-qalqala(h) ] [ アル=カルカラ ](カルカラ)の子音=つまりスクーンになった際に強くはっきり発音される文字なのに対しこちらの ض [ ḍ ] は異なるということが説明されています。(語末にダードが来てそこを無母音化して読む場合に、ダードがうっすら聞こえるだけの発音しかされないことが実例つきで紹介されています。)

母音を伴わないスクーンがつく時のダードの発音をアニメで示した学習動画です。舌を強く押し当てる部分が黄緑色で示されています。

舌の奥を奥歯に押し当てる方法は部族により3通りあったダード

現在リンク切れしてしまっていて見当たらなくなっているのですが、アイマン・スワイド師のレクチャーによると、アラブの部族の中にはダードを発音する際

  • 口の中の奥歯部分の右側のみに舌をもたれかけさせて発音していた部族
  • 奥歯の左側のみに舌をもたれかけさせていた部族と
  • 奥歯の両方に均等にもたれかけさせていた部族

とがあって、現在クルアーンの朗誦における正しい発音として採用されているのは最後の両側に均等に舌を当てていた方法なのだとか。

上の動画はアイマン・スワイド師とは別の宗教家によるダードの正しい発音方法講義です。

ダードの正しい発音を習得するには調音部位を知った上での練習が必要なこと、ダードの発音では舌を上あご側の奥歯に押し当てること、右側もしくは左側にのみ舌を奥歯にくっつける発音方法or舌の両端をどちらも上あご側奥歯にくっつける方法という具合に違いが存在することが説明されています。

口語・方言で起こる他の子音との入れ替え

クルアーン朗誦教室でネイティブが矯正されることの多いダードの発音

アラビア語はこの文字名をとって別名「ダードの言語」と呼ばれることも。ただし口語・方言では違う音で発音することも多く、現代アラビア語ではフスハー(文語)であってもクルアーン朗誦法のスタンダードとはちょっと違うダードの発音をしています。

方言では ظ と混同されがちなこともあってアラブ人ネイティブでも正確に発音できない人が少なからずいる子音で、クルアーンレッスンの際の発音矯正対象となる代表的な文字の1つとなっています。

ダードの発音がなかなか正確にできないため先生に直されながら頑張る受講生らの姿が紹介されている動画です。(チャンネル主はチュニジア人。)

日本で出ている教科書では د [ d ] の強勢音として説明されていることが一般的です。その方式だと普通の د [ d ] よりも舌の根元を奥に引っ込め、喉に力を入れて重々しく発音するだけでおしまいです。

しかし口の中にdの音を閉じ込めるようなこもった音になるものの、クルアーン朗誦者らが出しているダード特有の「んぐっ」と飲み込むようなこもった感じが出せていない状態になります。「ダードっぽいけれどもクルアーン読みで要求されるダードにはならない」「厳密な部分でダードの発音ではないと講師から判定され直される」という欠点が残ったままになるとも言えます。

ネイティブに起こる誤った発音の実例

口語・方言で起きがちなダードの誤った発音について。日本のアラビア語教科書でダードの発音として紹介されている単なる د [ d ] を強く発音するだけという方法等にNGが出されています。