アラビア語アルファベットの発音を覚えよう~(18)アイン[ ع ]

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(18) アイン [ ع ]

عَيْنٌ の発音

・有声・咽頭・摩擦音(大阪大学 アラビア語独習コンテンツ)
・有声・咽頭・摩擦音(東京外国語大学 言語モジュール)

ع 文字名 音価 IPA 月/太陽
عَيْنٌ ‘ayn / ‘ain
アイン
ʿ
当サイト: ‘
ʕ

アルファベット名の発音
・[ ‘ayn / ‘ain ] [ アイン ](語末を省略する普通の読み方)
・[ ‘aynun / ‘ainun
] [ アイヌン ](格を示す語末母音も全部読んだ場合)

*ローマ字ルビのルール上 [ ‘ayn ] と書きますが、実際には二重母音なので [ ‘ain ] と表記されていることもあります。

男声:プロのナレーターさんによる収録

女声:Amazon TTS Zeina

喉に力を入れて締めつけながらえずくようにして出す子音です。舌を喉に向かって引っ込め、喉を狭くすると発音できます。

吐きそうになる時のようなオエッ、ウエッという声をイメージして発音します。力を入れる喉の部分は男性ののどぼとけがある位置よりも上、片手で喉をつかんだ時に手の平の下側が鎖骨付近に来るとするとちょうど上側の縁付近が当たるエリアが目安になります。

語中では一文字分を一瞬発音するだけなのでゆっくり「エアッ」「ウエッ」とするのではなく、喉を力んで発音したらすぐに次の文字に移動する感じになります。

アインを意識しすぎるとそこで文字列の読み上げがワンテンポ遅れて اَلْعَرَبِيَّة [ ’al-arabīya(h) ] [ アル=アラビーヤ ] がスムーズな「アルアラビーヤ」ではなく「アル・ェア・・ラビーヤ」のようになってしまうため、調音部位をしっかり覚えて一発かつ短時間で音が出せるようにしておくとより自然な音読ができるようになるかと思います。

母音との組み合わせ

+母音a +母音i +母音u
عَ عِ عُ
‘a [ ア ] ‘i [ イ ] ‘u [ ウ ]

母音a、i、uを足すと、‘a、‘i、‘uとなります。ハムザと組み合わせた普通の母音を発音するようなア、イ、ウとは違って、喉をぐっと力んでえずくようなイメージで音を出します。

舌を奥に引っ込めて出す重々しい音なので、ェア、ェイ、ェウもしくはァア、ィイ、ゥウに近い雰囲気を出しつつ発音します。

口語での発音

クルアーン朗誦のための発音教室動画だと思いきり喉を使っているのが聞き取れるのですが、実際の日常生活だと地域によっては声門閉鎖音/声門破裂音 ء(ハムザ)とあまり区別ができないぐらいの軽い発音をしていることがあります。

アラビア半島諸国は比較的アインを強く発音する傾向があるのですが、シリア~エジプトといったそれ以外の地域ではそれほど喉に力を入れていない発音が多い印象です。

また外国人学習者の我々もやりがちな発音として挙げられるのが عء の入れ替わりです。أَنْ [ ’an ] [ アン ] を喉を力んだ عَنْ [ ‘an ] [ アン ] で読んでしまうというのは覚えのある方も少なくないと思うのですが、口語の一部方言でもこうした「ハムザ↔アイン」の置き換わりが起きることが知られています。

クルアーン朗誦に関連した記録によるとジャーヒリーヤ時代には既に見られた現象でハムザをアインに置き換えて発音することは عَنْعَنَة [ ‘an‘ana(h) ] [ アンアナ/アヌアナ ] と呼ばれています。

動画で発音の方法を確認

アラブ人向けにクルアーン朗誦に必要となるフスハー的発音を教えるレッスン動画です。

喉の一番奥 أَقْصَى الْحَلْقِ [ ’aqṣa-l-ḥalq ] [ アクサ・ル=ハルク ](喉の最奥)にある声帯部分から出す音である ء [ ’ ] と ه [ h ]、そして وَسَطُ الْحَلْقِ [ wasaṭu-l-ḥalq ] [ ワサトゥ・ル=ハルク ](喉の真ん中)エリアから出す音である ع [ ‘ ] と ح [ ḥ ] をセットで紹介していますが、ここでは ع [ ‘ ] から再生するように開始位置を調整してあります。

ح [ ḥ ] では舌が少し後方に向かって動き、لِسَانُ الْمِزْمار [ lisānu-l-mizmār ] [ リサーヌ・ル=ミズマール ](喉頭蓋)が後ろにやや倒れることで息の通り道が狭まり、喉からハッ・ハッという音が出るようになります。ع [ ‘ ] の方が力む度合いが強く、発音するのは ح [ ḥ ] の方が楽に感じられます。

7:46以降の2つのイラストを並べているところでは ح [ ḥ ] が左で ع [ ‘ ] が右です。 ح [ ḥ ] の方が喉に空間があって لِسَانُ الْمِزْمار [ lisānu-l-mizmār ] [ リサーヌ・ル=ミズマール ](喉頭蓋)が後ろに倒れる度合いが少なく、アインの方が舌が奥に行って喉も狭くなる、という違いを図示したものです。

同様の内容のレクチャーです。複数の子音についての説明が入っている動画なので、ع [ ‘ ] 部分から再生が開始するように設定してあります。

3:48で黒く囲まれているのが、発音する際に後ろに倒れて喉を狭くする働きをする لِسَانُ الْمِزْمار [ lisānu-l-mizmār ] [ リサーヌ・ル=ミズマール ](喉頭蓋)です。舌の根元付近と同時に咽頭蓋が後退して喉における息の通り道が狭くなっているのがわかります。

4:25以降の2つのイラストを並べているところでは ح [ ḥ ] が左で ع [ ‘ ] が右です。 ح [ ḥ ] の方が喉に空間があって لِسَانُ الْمِزْمار [ lisānu-l-mizmār ] [ リサーヌ・ル=ミズマール ](喉頭蓋)が後ろに倒れる度合いが少なく、アインの方が舌が奥に行って喉も狭くなる、という違いを図示。

同様の内容のレクチャーです。こちらも ع [ ‘ ] のところから再生が始まるように設定してあります。ع [ ‘ ]  ほど喉を狭くしていない様子をアニメで解説。

4:45の比較イラストは ح [ ḥ ] が左で ع [ ‘ ] が右です。

こちらは発音練習コースの画面とともにイラストを出している動画です。最初に発音サンプルがひたすら繰り返されます。後半はクルアーン朗誦における実例になります。

ع [ ‘ ] と ح [ ḥ ] の発音でよく見られる間違いについての動画です。

ع [ ‘ ] [ アイン ] については声門閉鎖音(声門破裂音)である ء [ ‘ ] [ hamza(h) ] [ ハムザ ] を重たくしたような読み方をする人がいて、يَعْمَلُون [ ya‘malūn(a) ] [ ヤアマルーン もしくは ヤァマルーン ] を يَأْمَلُون [ ya’malūn(a) ] [ ヤッマルーン ] のように発音してしまうのだとか。そうなると喉における調音部位がずれてしまうので重々しい音に聞こえたとしても ع [ ‘ ] にはならないと説明しています。

アインとハムザの入れ替えはイエメンの方言に存在するそうで、実際にイエメン人の生徒さんがアインのハムザ化を矯正するのに苦労したのだとか。