独学でアラビア語を勉強する方におすすめのアラビア語(フスハー)教材をピックアップしてみました。本の題名部分をクリックすると詳細ページに移動します。
管理人が実際に全ページを読んだり付属CDを複数回聴いたりしてみて独習に向いていると感じたもの、誤りが少なく信頼性が高いものを選びました。
関連コンテンツ
『アラビア語学習書ガイド(フスハー、現代標準アラビア語編)~目次』
こちらの元になったコーナーです。管理人が読んだアラビア語学習書の感想文置き場で、独習者向けでない本も含めカテゴリー・難易度別に並べてあります。
文字を覚える
アラビア語は文字の時点で挫折してやめてしまう方が多いので、文字の書き方や発音の説明が少ない文法書よりも文字に特化した本をまず1冊だけ買って様子を見るのがおすすめです。
読める書ける アラビア文字練習プリント
『読める書ける アラビア文字練習プリント』
(アルモーメン・アブドーラ/小学館)
アラビア語の単語がどうやってつながっているかをじっくり学べる本です。各文字を接続させる過程をここまで詳しく練習できる本は珍しいです。文字学習を終えたら単語を読んだり挨拶を学んだりできるので最初の1冊にぴったりです。内容の割にはCDトラックの数も長さも充実。
ただ、手本となる書体が一般的な楷書体ではなく相当な丸文字のWindowsユーザーインターフェース用フォントなのがちょっと残念。
アラビア文字を書いてみよう読んでみよう
『アラビア文字を書いてみよう読んでみよう』
(本田 孝一,師岡カリーマ・エルサムニー/白水社)
アラビア書道の国内第一人者である本田孝一先生が文字学習部分、師岡カリーマ・エルサムニー先生が街角写真を使った文字読み取り練習部分を担当。
初歩の段階で学ぶナスフ書体(日本語の教科書体や楷書体に相当)に加え、急いで書きたい時に便利な現地の日常生活で使われているルクア書体(英語の筆記体や日本語の行書体に相当)も学べます。
『読める書ける アラビア文字練習プリント』と違って文字のバランスが取れた典型的な書体を採用しているので安心して使えます。アラブ人が手紙や店の値札を書く時の書体を知りたい方は必携の書だと思います。古本であっても入手するだけの価値はある本です。
初級文法の基礎を学ぶ
初級文法を扱った学習書は、動詞の派生形や仮定表現(もし~なら)まで扱ったものと、基礎項目前半の動詞未完了形あたりまでしか扱っていないのものとに大別されます。
色々な語形や活用が1冊の中で一気に登場すると進む気が失せてしまうこともあるので、会話表現を覚えつつのんびり楽しみたい方は初級文法のさわりだけ紹介した本を利用すると良いかもしれません。この手の本は色や表を使っているので見やすいです。単語集には載っていないようなごくごく基本的な名詞・形容詞・動詞が収録されているので初期段階における基本単語学習にも使えます。
アラビア語の入門
『アラビア語の入門』
(本田 孝一/白水社)
続編の『ステップアップ アラビア語の入門』とセットで初級文法の全部を学び終える作りになっています。無難な構成で楽しく学ぶにはちょうど良いと思います。基本単語リストも載っています。
文語と口語が入り混じっていたり細かい説明違い・誤植があったりしますが、管理人自身が昔初めて勉強した時もアラビア語を再開した時も最後まで無事にゴールできたので挫折しづらい本だということは保証できます。
文法書的な色彩が薄めなので、基礎文法を効率的に学びたい方は他書が良いかもしれません。
CDブック はじめてのアラビア語
『CDブック はじめてのアラビア語』
(石垣 聡子,金子 順子/ナツメ社)
会話スキットが少ないぶん文法説明がかなり詳しく、文法メインで頑張りたい人に向いています。初級文法全項目の半分ぐらいしか扱っていない本の中では特に文法部分に比重が置かれている1冊です。
比較的最近出た本だけあってとても見やすいレイアウトとデザインです。ただ読みガナを通常とは逆の左←右方向に並べてあるので好みが分かれる可能性があります。
CDの内容と収録分数はかなり少ないのですが、今どき珍しいシリア人・パレスチナ人による吹込みなのでエジプト人ナレーターとは異なるアラビア語フスハーの標準的なアクセント位置を知りたい方はこちらの教材も買われると良いかもしれません。
初歩のアラビア語(’11)
『初歩のアラビア語(’11)』
(鷲見 朗子&依田 純和,福田 義昭,森口 明美/放送大学)
初級文法の途中で終わってしまう入門書相当のカバー範囲ですが内容は濃いです。他書に見られない詳しい解説と複数執筆陣も加わっての丁寧な作りが特徴。一般向けの入門書が簡単すぎて物足りない方におすすめ。
「放送大学のテキストは難しくて最後まで読み切る自信がちょっと無いかも」という方は上で紹介した『アラビア語の入門』などを使われるのが良いと思います。
ニューエクスプレスプラス アラビア語
『ニューエクスプレスプラス アラビア語』
(竹田 敏之/白水社)
会話スキットを中心に学ぶ方式で、文法は初級レベルのうち主要なもののみピックアップ。会話スキットは主人公がエジプト旅行に行き色々なシーンで会話をするという構成。
アルファベット学習における似た文字同士の区別方法あたりは結構詳しいですが、基本的に深く掘り下げすぎずにさらっと進んでいくよう作られています。細かい文法規則が次々に出てきて挫折してしまうのを回避する点ではとてもバランス良く文法が組み込まれていますが、本来の文法ルールを入門者向けにデフォルメ・置き換えてて紹介しており既習者が混乱する文法説明もあるので要注意です。
初級文法をマスターするにはちょっと薄すぎるので、学んでいる文法事項の意味がわからずじまいになる可能性もあります。他の本で文法を勉強してからおさらいがてらフスハー会話の練習をするために使うのが良いかもしれません。
初級後半
アラビア語の基礎を終えたら初級文法の続きを学んでいきます。
このぐらいの時期になったら何か辞書を使うと良いかもしれません。アラビア語辞書は高いですしオンラインで提供されているものが内容も機能も充実しているので、スマホやタブレットがある人は買わなくても困らないと思います。辞書についてはページの下の方で紹介しています。
新版 ステップアップ アラビア語の入門
『新版 ステップアップ アラビア語の入門』
(本田 孝一/白水社)
同じ出版社の『アラビア語の入門』とセットで読む必要があります。動詞派生形などの初級文法を完走する助けとなるわかりやすい学習書です。難しい文法用語があまり出てこないので楽をしつつ動詞派生形までマスターしたい人におすすめです。
管理人自身が昔初めて勉強した時もアラビア語を再開した時も最後まで無事にゴールできたので挫折しづらい本だということは保証できます。
はじめましてアラビア語
『はじめましてアラビア語』
(榮谷 温子/第三書館)
東京外国語大学の副専攻語教科書だったものを他の出版社から一般向けに発売し直した文法書であるため、他社の教本に比べると文法色が強めです。堅めの教本が苦手だという方はスキップしても構わないと思うのですが、日本で出た学習書の中でも特に信頼性が高い内容なので個人的には気に入っている学習書です。
入門本では省かれがちな項目も載っていて初級文法を一通りカバーしているので、大学で第二外国語として選択している方のサブテキストとしても役に立つと思います。
解説はかなり丁寧で、通常は触れられることが無い細かい注意事項を文字化しているあたりに著者の気配りが感じられます。
アラビア語のシステム理解を進めたり、学習者が陥りがちな間違い・勘違いをクリアしておきたい方などに喜ばれるタイプの教本で、「語学学習は文法固めから入りたい」とか「情報が少なすぎる入門書は苦手」という方は比較的早い段階で取り組まれても良いかもしれません。
ただ音声教材は無いので、文字の部分は『読める書ける アラビア文字練習プリント』なりで別途終わらせる必要があります。
アラビア語表現とことんトレーニング
『アラビア語表現とことんトレーニング』
(竹田 敏之/白水社)
基礎固めとブラッシュアップに最適な要点説明&問題集。使用頻度の低い人称(三人称・二人称の女性複数など)や難しい単語・文法事項はあまり出てこないので、動詞派生形まで一通り登場する初級学習書を終えた独習者に向いていると思います。
見開きの左半分で先生からコツや要点を教わってから右半分のドリルに書き込む形式。練習問題の難易度は3段階あり、一番難しい遠泳コースはアラビア語の短文作文になっています。
中級文法に進む前、初級文法全範囲の復習・掘り下げ段階
初学者向けの簡単な本を終えたら、同じ学習範囲をもう少し詳しく説明した教科書を読むと理解が深まります。ゼロから独学でやる場合これらの本を1冊目に選ぶと文法の話だらけでちんぷんかんぷんになりやすいので、上で紹介した本を2~3冊終えてから取り組むのがおすすめです。
大学のアラビア語 詳解文法
『大学のアラビア語 詳解文法』
(八木 久美子,青山 弘之,イハーブ・アハマド・エベード/東京外国語大学出版会)
アラビア語学・教育学が専門の先生方が執筆されていないため時々説明が不正確だと思われる部分、文法的正確性よりも実際に流布している用法を優先している傾向は感じますが、とても見やすいレイアウトで学習者を中級レベル手前まで引き上げるテキストとしては優れている部類に入ると思います。
ただ東京外国語大学の学生を対象としているので独学の人を考慮した一般入門書のような作りにはなっていません。初級本でアラビア語に慣れた頃に使うのが良く、最初の1冊に買うと挫折する可能性が非常に高くなるので要注意です。
大学のアラビア語 初級表現
『大学のアラビア語 初級表現』
(青山 弘之,スライマーン・アラーエルディーン/東京外国語大学出版会)
詳解文法と併用し文法の基礎固めや会話学習をするためのアラビア語専攻学生向け教科書です。初級表現を単品で使うなら既に何冊も大学講義向け文法重視アラビア語教科書を終えた状態で臨むのが良いと思います。
文字の書き方から基本表現・単語集まで色々と収録されているのでアラビア語の運用能力を中級手前ぐらいまでアップしたい人は読んでおくと良いかもしれません。他大学のアラビア語選択学生さんなど、アラビア語能力をかなりのレベルまで上げないといけない方に特におすすめです。
この外語大シリーズは音声教材(サイトからのダウンロード方式)ありで巻末に解答も載っているので独学用に向いています。単語リストもあるので辞書を調べる時間を短縮したい人にも親切な作りになっています。
なお、著者の先生の政治的志向の反映度が他書よりも高めなので苦手な方がいらっしゃるかもしれません。
例文で学ぶ アラビア語単語集
『例文で学ぶ アラビア語単語集』
(大修館)
約2500語を収録、初級後半~学習2年目前後の中級学習者におすすめです。今どきの用語も多数収録した充実した場面別単語集で様々なジャンルの語彙力・会話力アップに使えます。NHKの単語帳よりも例文が簡単なのでこちらを先にやることをおすすめします。
アラビア語&日本語による5時間超の音声教材(無料)はリスニングでの暗記にぴったり。連携アプリでは暗記学習用のフラッシュカード機能も提供。かなり太っ腹な単語集です。
個人的には吹き込み音声がアーンミーヤ(口語)発音になっている部分が多めでテキストについている母音記号と実際のナレーションが一致していない部分が結構ある点が気になりました。
これなら覚えられる! アラビア語 単語帳
『これなら覚えられる! アラビア語 単語帳』
(師岡カリーマ・エルサムニー/NHK出版)
収録語数は約1400語。内訳は動詞220語、形容詞130、名詞820、その他の疑問詞・前置詞・副詞・数詞等が230。約650語は例文つき。誤字脱字や文法間違いの心配をせず安心して使えます。
例文には熟語や慣用表現も豊富に含まれているので語彙力だけでなく作文・会話の表現能力アップも見込めるのですが、逆に言えば例文に応用レベルが含まれるので全くの初級学習者にはところどころ難しく感じられる可能性があります。動詞の派生形や弱文字動詞の登場が多く、巻末に載っている活用表の範囲・難易度を越えた例文がかなり目立ちます。難易度を考えると大修館の単語集を先にやるのがベターだと思います。
基本単語が網羅されている訳ではないので、全くの初学者というよりは学習書を1~2冊読み終えた学習者の語彙増強用に使うのがおすすめです。「大きい」「小さい」といったもっと簡単な単語は白水社の『アラビア語の入門』のような本に基礎単語リストとして掲載されています。
付属CDは2枚。アラビア語部分のみの吹き込み。音声だけを聞いてアラビア語での発音と日本語での意味を結びつけながら暗記するということができないのがちょっと残念です。
中級向け
アラビア語文法ハンドブック([増補新版])
『アラビア語文法ハンドブック([増補新版])』
(新妻 仁一/白水社)
外務省のアラビア語研修用テキストを元に作られた文法ガイドブック。2022年に索引やコラムが追加された増補新版が出ましたが内容自体はほぼ同じです。
基本から応用までまんべんなく解説されています。辞書を調べる必要があまり無いぐらいの簡単な語彙と平易な例文で、他の中級学習書に比べるとかなり敷居が低く読み進めやすいです。
初級文法を勉強中の人が文法を調べるためのサブテキストとして使うこともできますが、文字の書き方や読み方といったごく初歩的な事項はあっさりした短い説明なので他の本を何冊か終えた時点で使い始めると良いかもしれません。
ちなみに色分けやイラスト・図表を多用して理解しやすくしたタイプの教材とは全く違い罫線を使った活用表もありません。それぞれの活用形が位置を整えた上で整列しているだけで線を引いた各欄に分けて入れてある訳ではないのでやや見づらいです。
2022年2月に増補新版が出てコラムと文法用語集と索引がつきました。メインとなる文法説明部分はほぼ変更がありませんが、改定前の古い版は文法にかかわる語末母音のうち間違いといった誤植が複数あること、索引の有無は大きいことから新しい版の購入がおすすめです。
ちなみにアラビア語の子音の調音方法・月文字とアリフ&ハムザの問題(文法書では月文字に含めない無音価の長母音アリフ ا が声門閉鎖音 ء とは別に文字一覧に追加されている)・三段変化の種類といった基礎事項も含め著者の先生の誤認・誤解と思われる説明がかなり見られ、実際にはそれ以外の用法があるにもかかわらず「◯◯は~にしか使いません」「◯◯の~はありません」と書いてあるケースが複数ありました。
項目によってはアラビア語で書かれた文法書の誤訳により全く違う内容*になっていたり、無関係な口語表現的用法を先生個人の判断で定冠詞文法の特定項目に独自組み入れが行われていたりする部分も見受けられました。
*例としては「当時模範的なフスハーを話すとみなされていたアラブ人遊牧民(ベドウィン)に文法学者らが実地での聞き取り調査を行い確認すること」を指す文法用語 سَمَاع [ samā‘ ] [ サマーウ(実際の発音はサマーァに近く聞こえることも) ] により実際の使用例がはっきりしている語のみの使用を許すという سَمَاعِيّ [ samā‘ī(y) ] [ サマーイー(ュ/ィ) ]を「音声上の問題」を訳された上で、「名前の由来となった形容詞を想起させ元々の意味を示唆すること」という意味の文法項目名 لَمْح الْأَصْلِ [ lamḥu-l-’aṣl ] [ ラムフ・ル=アスル ] を「歴代カリフや国王の名前につけ威厳や権威を与えるための」「威厳のاَلْ」という全く違う内容に組み替えているケースがあり、本書の中でも特に謎が多い改変・誤訳部分となっています。
日本語で書かれた中級文法書の中では最も取り組みやすいのですが、アラブ式文法をアラビア語で複数年続けた時点で改めて読み返してみると「どうしてここにこれが混ぜてあるのだろうか?」「アラブの文法教科書では動詞文なのになぜ動詞を1個後方にずらした名詞文構文を標準として説明しているのだろうか?」「元のアラビア語文法書の記述をどう訳されたらこうなってしまったのだろうか?」という疑問が浮上することが時折あり、★5個をつけておすすめするのはちょっと難しいのでは、という感想を持つに至りました。
中級以上を目指される方、アラビア語の先生として授業に使われる予定がある方は欧米大学出版の有名文法書やネイティブ向け文法書で情報を訂正する必要があるかもしれません…
大阪大学外国語学部『世界の言語シリーズ17 アラビア語』(依田純和先生著)
『世界の言語シリーズ17 アラビア語』
(依田純和/大阪大学出版会)
出版時に話題になりamazonでも高い評価点がついている本です。初級からも使える・アラビア語文法書の決定版というレビューが多数なこともあってか入門書を終えてすぐに購入される方もいらっしゃるようなのですが、自分が通し読みした限りではアラビア語専攻学生さんに要求される中級技能を養成するための既習者向けテキストで要求レベルはかなり高いと感じました。
アラビア文字のつづり方や書き順といった『はじめてのアラビア語』的な説明は載っていないので、この本だけではアルファベットの書き方を覚えることはできません。完全未習の場合は最初の1冊に選ばず、数冊目として使われることをおすすめします。
特にアラビア語学習が全く初めてなのにこの本を使った場合、書かれていることの意味を理解して完走できる可能性は非常に低くなってしまうと思います。
この本はDuolingoといったアラビア語学習アプリや一般初級学習書が採用している語末の格変化部分を省く読み方とは対極にあり、文に含まれる全ての発音記号を正確に書ける・音読できることを重視しています。普段使わないような人称や動詞の活用形も練習のためにたくさん出てくるので、入門書を数冊やった状態では何を学んでいるのかいまいちピンと来なかったり読み進めてもあまり記憶に残らなかったりするおそれがあります。
「詳しすぎる解説」というキャッチフレーズはついているものの、大阪大学のアラビア語専攻が使っているメイン教科書の補足として作られたせいかごく当たり前の基本事項は軽く流されている印象を持ちました。初歩の初歩部分を徹底的に解説した文法書ではないので、初級と中級レベルをつなぐ基礎固めとして世界の言語シリーズをやる前に東京外国語大学の教科書『大学のアラビア語』シリーズなどを先に終えておくのが良いかもしれません。
さらに途中のスキットから音声教材の吹込みについてはそうした全部の母音を発音する非常に文語的な読み上げ方から2段階ほど口語寄りにシフトした日常会話・ニュースアナウンサー的なブロークンなフスハー音読に切り替わります。この件については『世界の言語シリーズ17 アラビア語』の中で詳しい説明が行われている訳ではないので、どちらか片方のパターンにしか触れたことが無い方は戸惑われるかもしれません。
正誤表PDFが全19ページありますが、授業進行上の都合と思われる略号の書き換えも含んでいるために枚数が多いだけで誤字訂正についてはそこまで多くないです。
ただ何箇所か文語発音とは異なる口語発音の方で母音記号がふってあったり、単なるタイプミスとは異なる可能性が高い母音記号のつけ違いが見られました。それらは正誤表に未掲載なので、自分で気付いて直せる方・身近に正誤表から漏れている訂正事項を教えてくれる人がいない方でまだこの本の要求レベルの手前にいる場合は、急がれずに訂正が入った後の第2版を待つという手もあるかもしれません。
辞書
独学するのなら急いで紙の辞書を買う必要は無いと思うので、オンライン辞書を利用する方式がおすすめです。
おすすめのオンライン辞書
アラビア語↔日本語辞書
アラビア語学習者の方がコツコツと作り上げ完成にまで漕ぎ着けたというオンライン電子辞書。Hans Wehr辞書をある程度ベースにしていることもあって日本人学習者の利用率が非常に高い有名サイトです。
サイトデザインは昔風ですが、動詞活用表、日本語→アラビア語での検索機能などもあり内容自体は充実。例文も色々載っています。
語根で探すタイプの辞書ではないので名詞の複数形を入力するだけでも正解が表示されます。文法をしっかり覚えきっていない段階でも比較的楽に単語を見つけられる可能性が紙媒体よりも高めです。
収録語数が非常に多いのも魅力ですが、まれに訳が間違っていることも。
アラビア語↔英語辞書
現代標準アラビア語(フスハー)、レヴァント(シリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナ地域)方言、エジプト方言、北アフリカ方言(マグリブ方言)、湾岸方言(ガルフ方言)、イラク方言、イエメン方言のいずれかを選んで検索できます。語根検索、単語検索、英語-アラビア語検索モードあり。
フスハー部分も熟語が色々載っており内容的にかなりしっかりしているのですが、方言辞典を同時提供しているので文章に含まれる口語表現を調べるのにも役に立ちます。
日本語→アラビア語辞書
チームに参加する複数メンバーによって作り上げられた日本語-アラビア語辞書『了解(ريوكاي)』がパワーアップ。日本語アラビア語大辞典として新名称と新URLにて稼働。アラブ人学習者向けですがアラビア語ができる方にとっては非常に有用なサイトです。
チームに参加する複数メンバーによって作り上げられた日本語-アラビア語辞書。アラブ人学習者向けですがネイティブが自然だと感じるアラビア語フレーズが訳として載っているので日本人学習者にもおすすめです。
ブラウザ拡張機能でマウスを乗せると意味が表示される機能
Chrome拡張機能のアラビア語辞書です。アラビア文字部分にマウスのカーソルが乗った時に母音記号候補や単語候補をポップアップで表示してくれます。収録語数が多く精度もかなり良いです。辞書引き作業を省略しつつネットのニュース記事を読んだりしたい時に重宝します。
アラビア語↔各国語の例文検索
アラビア語↔英語等の変換・検索が可能。アラビア語特有の言い回しを調べるのにとても便利で、作文をする際にも活用できます。
アラビア語学習界定番、Hans Wehrのアラビア語-英語辞書について
アラビア語の辞書(紙の辞書の方)は長年Hans Wehrが日本国内で広く使われてきました。
- 英語(元はドイツ語です)であるため、日本語が母語の独学学習者にとってアラビア語学習における障害になる。
- 語根式辞書なので語根がわからないと項目を探し当てるまで延々と時間が経過してしまう。
- 米国出版社倒産で現在新品での入手が難しい。
- 内容的に古く現代用語が載っていない。
- 動詞派生形など載っていない語も少なくなく他の辞書を併用する必要がある。
- エジプトと同じで語末の ي(ヤー)と ى(アリフ・マクスーラ)を区別する点2個がついておらず、どちらも ـى になっている。
といった点から個人的にはそんなにおすすめしないです。昔は辞書も少なくネット検索もできない環境だったのでこの辞書が欠かせませんでしたが、最近ではオンライン版も提供されているので海外通販してまで買わなくても構わないように思います。
自分自身、学生時代はHans Wehr辞書だけではとても足りず1~2回生の時期からアラ-英辞書、アラ-アラ辞書、専門用語辞典を使っており、今では全く使っていません。
近頃は色々なオンライン辞書が提供されいること、「Hans Wehr辞書を使い込むことが上達の鍵」ということもないので、スマホやタブレットを持っている方なら急いで紙バージョンの辞書を買い揃えず様子を見られることをおすすめします。
アラビア語参考書や辞書は高額なものが多い上に、最初に張り切って何もかも買い揃えたのに使わずじまいになる可能性もあるので少しずつ買い足すのが良いかもしれません。
辞書で単語を探す練習も重要だとは思うのですが、言葉が見つからなくて何十分も無駄にしてしまうぐらいならオンラインで複数の辞書を当たってぱぱっと解決しその分の時間を単語暗記などに当てるといった工夫も必要だと思います。
ただ大学といったデジタル端末利用禁止環境やネット接続が難しい状況で使う辞書を一つ選べと言われたらやはりこれになると思います。非ネイティブ向け辞典ということで読みがラテン(ローマ字)転写で示されている点は学習初期には何かと便利かもしれません。
(2024年4月 『はじめましてアラビア語』のカテゴリーを移動)