いろいろなアラビア語検定試験

これまでに日本国内で実施されたアラビア語検定試験や代替となる海外の能力認定試験についてまとめてみました。

日本国内

一時期複数の検定試験が受験可能だったアラビア語。しかし現在はいずれも休止状態で以前の状態に逆戻りしてしまったようです。

実用アラビア語検定

主催者

特定非営利活動法人 日本アラビア語検定協会
http://www.arabic-exam.org/

2007年設立。所在地は福岡県飯塚市。事業内容や事業報告書は福岡県のNPO関連ウェブサイトで確認可能。

個人の方が立ち上げたNPO法人で、活動の目的は「多くの市民が利用できるアラビア語検定試験を実施し、その他アラビア語・アラブ文化の普及啓発事業を行い、教育者、学習者、アラビア語ないしアラブ文化に関わる市民や公的機関どうしの幅広い交流を促進し、ひいては日本とアラブ諸国の国際交流および相互理解に貢献すること」と記載されています。

最後の検定が行われた年の決算によると受験者数は120名。役員報酬は主催者の方も含め全員0円。アラビア語学習者のための慈善事業に近いものがあったのかもしれません。2021年8月に解散しアラビア語検定は消滅してしまいました。

概要

アラビア語の能力検定試験としては日本国内で最も知られてきた存在です。

レベル設定

級は6級~1級まで。3級~1級は面接によるスピーチも。多言語学習に取り組まれアラブ イスラーム学院に2年間通学されたうさぎさんという方のアラビア語学習記に6級・4級・3級の合格体験談が載っているのですが、英検や仏検に比べると同じ級数でもアラビア語検定の方がかなり難易度が高かったそうです。

これと過去問の中身とを照らし合わせると、6級=CEFR A1、5級=CEFR A2、4級=CEFR B1、3級=CEFR B2、2級=CEFR C1、1級=CEFR C2ぐらいの難易度設定だったのかな、という気がしました。

実用アラビア語検定3級は一般的な文法書数冊とNHKや大修館の単語集を終えた程度、学習2~3年前後ではおそらく合格は難しい、というのが個人的な感想です。しかも手書きでの解答なのでコンピューターベースの試験よりも高得点を出しにくかったのではないでしょうか。過去の記録で3級合格者がゼロ~数名/回だっただけのことはあります。

「1級及び2級の実施は、3級合格者の数がある程度に達した際に実施することを考えております。」と明記されていますが、実際のところ2級と1級の試験が行われたことは無く幻に終わった資格とされています。(それにもかかわらず公安調査庁がアラビア語検定2級・1級相当の資格保有者を募集して話題になったことがありました。)

アラビア語検定誕生の経緯

今では検索しても見当たらなくなっていますが、以前は検定創設の経緯を紹介した記事がどこかのニュースサイトか何かで公開されていたように記憶しています。

それによると、配偶者のエジプト赴任中に学習された主催者の方が帰国後にアラビア語能力検定試験が一切ないことを知り自ら立ち上げたのがこの実用アラビア語検定だったのだとか。

活動休止と解散

2017年に第1回実施。2013年を除き毎年行われていましたが、2017年12月の第11回検定を最後にその活動は停止。

復活が待ち望まれていたこの実用アラビア語検定ですが残念ながら2021年8月9日をもってNPO法人解散となってしまいました。

主催者の方は現在アラビア語検定協会と同じ住所で介護福祉サービスの株式会社を経営されており、支所の経営も含め相当忙しくされていた模様です。2018年度の活動報告書を閲覧しましたが次回検定開催準備と問い合わせ対応という名目で支出があったことは記されていますが、実質的には検定実施休止後は全ての協会業務を停止してしまっている休眠状態にあったようでした。

ニュースでは事業が持続困難であるマイナー言語試験の例としてこのアラビア語検定が何度か報じられたことも。将来この検定を復活させるのは非常に困難である可能性が高く外部がどんなに要望を出したり働きかけをしたりしても再稼働は難しいと言われていましたが、その通りとなってしまいました。

個人的観測にはなりますが、将来日本でアラビア語検定が復活する場合、このNPO法人ではなくどこか別の組織の主催による全く別の検定試験として新設される形になるのでは、という気がします。

開催履歴

  1. 第01回:2007/10(6級~4級)[ 東京、大阪 ]
  2. 第02回:2008/06(6級~4級)[ 東京、大阪、福岡 ]
  3. 第03回:2009/02(6級~3級)[ 東京、大阪 ]
  4. 第04回:2009/09(6級~3級)[ 東京、大阪 ]
  5. 第05回:2010/08(6級~3級)[ 東京、大阪 ]
  6. 第06回:2011/08(6級~3級)[ 東京、大阪 ]
  7. 第07回:2012/07(6級~3級)[ 東京、大阪 ]
  8. 第08回:2014/12(6級~3級)[ 東京、大阪 ]
  9. 第09回:2015/12(6級~3級)[ 東京、大阪 ]
  10. 第10回:2016/10(6級~3級)[ 東京、大阪 ]
  11. 第11回:2017/12(6級~3級)[ 東京、大阪 ]

過去問を見るには?

https://web.archive.org/web/*/www.arabic-exam.org

無くなってしまったアラビア語検定の過去問はこちらのアーカイブサイトで確認可能です。保存した時の状況によってリスニング音声が聞ける場合とそうでない場合とがあるようです。

カイロ大学 アラビア語能力検定試験

主催者

カイロ大学東洋研究所
Cairo University Oriental Studies Center
https://cu.edu.eg/
エジプトの国立大学であるカイロ大学が問題作成・採点・判定・合格登録・証明書発行を担当。

事業支援:
同志社大学 一神教学際研究センター(CISMOR)
http://www.cismor.jp/

概要

同志社大学のアラビア語関係者が手配をしてカイロ大学で行われているアラビア語能力試験を日本国内で受けられるようにしたものだったようです。

第2回と第3回は同志社大学学生以外の一般受験者も受けられたようで、一神教学際研究センター(CISMOR)のFacebookにも証書授与風景の写真が掲載されていました。写真を見る限りエジプト留学をして検定合格した場合にもらえる証書と全く同じ物が発行されたようです。

2018年を最後に大学のウェブサイトで告知が出なくなり、一般のアラビア語学習者が受験する機会も無くなってしまったようです。もしかすると同検定試験や受験者向け準備講座に関わっておられたサミール・ヌーハ先生の逝去が関係しているのかもしれません😢

開催履歴

第1回
日時:2015/11/24 18:00-20:00 [ ニュースリリース ]
会場:同志社大学今出川キャンパス神学館G32教室
実施レベル:初級
対象:同志社大学学生(科目履修生含む)が対象
費用:検定料 2,000円、合格証明書発行料 50USD相当

第2回
日時:2017/02/19 13:30-15:30 [ ニュースリリース ]
会場:同志社大学今出川キャンパス神学館地下G1教室
実施レベル:初級、中級1、中級2
対象:同志社大学学生、一般受験者
費用:検定料 12,000円

第3回
日時:2018/03/25 13:30-15:30 [ ニュースリリース ]
会場:同志社大学今出川キャンパス至誠館S2教室
実施レベル:初級1、初級2、中級、上級
対象:同志社大学学生、一般受験者
費用:検定料 12,000円

サウジ電子工学大学 標準アラビア語テスト

主催者

サウジ電子工業大学(Saudi Electronic University)
https://www.seu.edu.sa/

概要

告知自体はアラブ イスラーム学院(現在アラビア語コースの新規受付停止中)OGでサウジ電子工業大学 アラビア語オンライン講座管理責任者の方が行っていました。

当時は http://www.arabictest.net/ というウェブサイトがあったようなのですが現在はそのアドレスではエラーが表示されてしまいます。アラビア語オンライン講座自体は無くなってはいないようなのですが、当時のお知らせにあった http://www.arabic-online.net/ というアドレスも今では使われなくなってしまっていて、https://www.seu.edu.sa/en/arabic-online/ に変更となっています。

そちらのアラビア語講座の最新カリキュラム表を見る限り、能力試験は16あるレベルを全て修了した後に受ける形となっているようです。

開催履歴

日時:2016/10/30(2時間)
場所:東京都内
対象:中級~
費用:無料

アラブ イスラーム学院にこのような実施予定が掲載されていましたが、実際に行われたかどうかは確認できず。この日程の予定だったものの延期となったという情報も。

たのしいアラビア語検定

うさぎメモ@多言語に夢中の管理人さんが受験報告をされている検定です。

アラブ イスラーム学院で実施されていた書道家本田孝一先生のクラスを受講し『たのしいアラビア語』の練習問題を全て解いた方に証書と記念品が授与されていたようです。内容的には試験というよりも修了認定証に近いかもしれません。

海外

日本にいながらにして在宅で受験できる試験が多いです。国際的なレベル設定CEFR(セファール)に基づいた検定が多く、ほとんどが上級までのレベルをカバーしています。

ちなみにこのヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages。略はCEFR、CEFRL、CEFなど。)[ Wikipedia ] ですが、英語の検定試験で言うとA1が日本の英検3級、A1-A2が準2級、A2-B1が2級、B1-B2が準1級、C1が1級に相当するとのこと。

C2はさらに難しく英検1級よりも上のレベル。TOEFLやTOEICにも該当レベル無し。ケンブリッジ英検スケールの最も高い水準に相当する難易度だと見なして良いようです。

このCEFRは東京外国語大学や大阪大学の外国語学部も含めた教育機関でもレベリングの基準として用いられているので、編入試験・入学試験時に検定試験成績として提出する際にも役に立つかと思います。受験を考えている方はポイントアップのために1つもしくは複数を取得されておくと安心かもしれません。

Arabic Language Proficiency Test (ALPT)

主催者

Arab Academy
https://www.arabacademy.com/
エジプト カイロにあるアラビア語スクールで、日本からも受講できるオンラインの通信学習コースあり。海外のアラビア語学習情報サイトで紹介されていることが多い学校です。欧米の大学や教育機関にアラビア語プログラムの提供も行っています。

協力:
イスラーム商工会議所
Islamic Chamber of Commerce and Industry (ICCI)
イスラーム協力機構(OIC)の関連団体だとのこと。現在の名称は
イスラーム農商工会議所
Islamic Chamber of Commerce and Industry and Agriculture (ICCIA)
[ ウェブサイト ]
加盟国は中東、アフリカ、東南アジアなど57ヶ国。アカデミーに問い合わせたところ、協力というよりは同商工会議所によって認定されている資格、という意味合いのようでした。

協力(インドネシア国内):
インドネシア宗教省
Ministry of Religious Affairs (MORA)

概要

ARABIC LANGUAGE PROFICIENCY TEST
https://www.arabacademy.com/features/arabic-language-proficiency-test/
https://www.arabacademy.com/alpt-for-individuals/

検定試験事業は2002年よりスタート。アカデミーに別途問い合わせたところ、ACTFL(米国外国語教育委員会)の基準に準拠したテストだとのこと。

国際連合食糧農業機関(FAO)の国際的に認定を受けている外国語検定試験一覧表のアラビア語欄にも掲載されているなど、他国でもある程度通用する資格である模様。FAOの場合はALPTのB1を中級Bレベル、ALPTのC1を上級Cレベルとして扱う旨が記されています。

アカデミーの試験概要には、オンライン受験のためインターネット接続されたコンピューターが必要と書いてあります。タブレットで良いのかどうかは不明。

試験分野はリスニング、読解、構文(文法)、筆記、スピーキングの5つです。サイトには個人向け申し込みフォームがあり科目や受験費用を見ることができます。それによると5分野全てを受験した場合の検定料は150USD。スピーキング無しは110USD。筆記無しは70USDと3段階の科目選択ができるようです。

Interface Languageは画面表示の言語だと思いますが、英語・フランス語・ドイツ語から選択可能。住所等を入力後支払い画面に遷移するのですがそれまでの段階でレベル選択項目は出て来ず。ALPT紹介ページに個人受験者は問い合わせるようにと明記されているので、申し込みフォームに入力してクレジットカード払いをいきなりしてしまわないよう注意した方が良さそうです。

Certificat International de Maîtrise en Arabe (CIMA)

主催者

アラブ世界研究所
Institut du Monde Arabe(Arab World Institute)
https://www.imarabe.org/
フランス パリにあるアラブ世界・文化・宗教等の研究所。

概要

cima
https://www.imarabe.org/en/activities/learn-arabic/cima-0

Certificat International de Maîtrise en Arabeの略。英訳するとInternational Certificate for Proficiency in Arabic。英語のTOEICやTOEFLのように世界各地で通用する能力検定試験になることを目指して2018年に創設。

cima 1テストはヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages=CEFRL)のレベルA1、A2、B1に相当。cima 2はレベルB2、C1、C2に相当。

試験内容はリスニング30-35分、読解45分、筆記1時間、スピーキング10分(面接方式)。

フランス国外ではフランス語教育機関が試験場所となる形で開催されているようです。残念ながら日本で受験することはできません。現時点での試験会場はフランス、モロッコ、エジプト、カタール、バーレーン、サウジアラビア、ヨルダン、アラブ首長国連邦、チュニジア、英国となっています。

Arabic Language Competency Test (ALCT)

主催者

Eton Institute
https://etoninstitute.com/
2006年創立の語学学校で、アラブ首長国連邦国内に複数スクールを所有。マンツーマンのオンラインクラスも提供。クラスのレベル設定はヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages=CEFRL)[ Wikipedia ] に準拠しているようです。

概要

ALCT
https://etoninstitute.com/alct
試験分野はスピーキング、リスニング、読解、筆記。

Test of Arabic as a Foreign Language (TOAFL)

主催者

AL-ARABIYYA-INSTITUTE
https://en.alarabiyya-institute.com/
アラビア語学習書の著者としても知られるドイツ ライプツィヒ大学のEckehard Schulz教授が2011年に設立。

概要

Test of Arabic as a Foreign Language (TOAFL)
https://toafl.com/

AL-ARABIYYA-TEST

https://toafl.com/al-arabiyya-test

試験分野はリスニング、読解、筆記、スピーキング。オンラインもしくは対面での試験となります。全部で120分。

クラスのレベル設定はヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages=CEFRL)[ Wikipedia ] に準拠。A1~C2までの全レベルを用意。リスニング試験においてのみ方言での設問を追加することができます。

Order(申し込み)画面で提示されるオプション方言は以下の通り。

  • Saudi Arabia(サウジアラビア方言)
  • Iraq(イラク方言)
  • Syria(シリア方言)
  • Lebanon(レバノン方言)
  • Jordan(ヨルダン方言)
  • Gulf(湾岸方言)
  • Yemen(イエメン方言)
  • Oman(オマーン方言)
  • Palestine(パレスチナ方言)
  • Egypt(エジプト方言)
  • Libya(リビア方言)
  • Sudan(スーダン方言)
  • Tunisia(チュニジア方言)
  • Algeria(アルジェリア方言)
  • Morocco(モロッコ方言)
  • 方言無し(標準アラビア語のみ)

検定料は199ユーロ+税。リスニングで方言を選択した場合にはプラス49.95ユーロ。ライプツィヒでの対面式受験の場合はさらに200ユーロ追加となります。試しに申し込みページで方言無しを選択したところ、税金を含めると235ユーロという請求金額になりました。

「Order」の試験申し込みページを見る限り、週金曜日に試験日程が組まれていてヨーロッパ/ベルリン時間の9時・11時・13時から選べるようになっていました。ベルリン時間と日本との時差は冬場が8時間、サマータイム時期が7時間。現地時間の13時を選べば日本の金曜日20時もしくは21時に相当するので、社会人の方でも急いで帰宅できれば有給無しでチャレンジすることが可能かと思います。

e-TEST

https://toafl.com/e-test

クラスのレベル設定はヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages=CEFRL)[ Wikipedia ] に準拠。A1~B2までのレベルを用意。

AL-ARABIYYA-TESTを簡素化したもので、手間とコストがかかるスピーキング部門がカットされています。支払いが完了次第いつでも好きな時に受験可能。

サンプルテスト

SAMPLE TEST
https://toafl.com/sample-tests

どんな感じか知りたい方は、上記2テスト共通のサンプルテストを受けられることをおすすめします。A1-A2の初級(15分)、B1-B2の中級(25分)、C1-C2の上級(60分)が用意されています。

問題は選択とキーボード入力。リスニングもありました。自動採点してくれるのでアラビア語検定気分を気軽に味わうことができました。C1-C2は難しい上に1時間もかかるので暇な時でないと取り組むのは無理そうです。

 

どの部分が合っていったか・間違っていたかはわからず、正答率のみがポイントとパーセンテージで表示されます。オンライン受験なのでマーク式に近く、思考能力を試す問題とはちょっと違う感じでした。良問なのかどうかは本試験を実際に受けてみないとわからなさそうです。

ACTFL

主催者

American Council on the Teaching of Foreign Languages
https://www.actfl.org/
外国語教育の専門組織で様々な外国語試験を実施。ラテン語のテストまであるそうです。

概要

アラビア語での実施があると書かれている試験をピックアップしてみました。

OPIcのようにアラビア語での受験が可能で海外からも参加できるらしいテストについては、受験希望者向けページで受験地の時差を選択する欄が出てきます。希望日時の設定、ユーザー登録、支払いが済むと申込み完了となるようです。

(2021/10/9更新)