たのしいアラビア語 (本田 孝一/たまいらぼ)

たのしいアラビア語

★★★★☆
わかりやすいアラビア語入門書の先駆けだが入手困難なのが残念

著者:本田 孝一
監修:ハーリド・アリー・ザイド、シャラフ・アブダルアジーム・アブダルハフィーズ、アシュラフ安井
出版社:たまいらぼ(1~5巻)、本田アラビア語研究所(6~9巻)、大東文化大学国際関係学部(10巻)、本田アラビア語研究所の私家版・未発行分(11巻~20巻、別巻1~2巻)

著者の先生について

著者はアラビア書道の大家でもある大東文化大学国際関係学部国際文化学科の元教授、本田孝一先生です。東京外国語大学アラビア語専攻を卒業、企業に就職され中東関係の業務に従事。その後アラビア書道や文法学習書・辞書の編纂に努めてこられたという経歴の方です。アラブ諸国のメディアでは日本の精神とアラビア書道を融合させた繊細かつ優美な作品を生み出すムスリム書道家として称賛をもって紹介されていることが多いです。

最近までアラビア語各種講座を提供していたアラブ イスラーム学院でアラビア書道クラスや『たのしいアラビア語』をテキストにしたアラビア語課外講座も担当されていましたが、現在は休校(閉校同然らしく既に先生・シェフ等のスタッフは違う場所に再就職されている模様)。日本アラビア書道協会ウェブサイトでアラビア書道講座情報をチェックする形となっています。

入手方法

 
地元の図書館にあった分冊版


なんと通信講座まであったようです

●『たのしいアラビア語』は創価学会を脱退後に妙法蓮華宗を興した玉井禮一郎(玉井礼一郎、陶郷栄一、玉井日禮、玉井日礼)氏が代表取締役を務めるたまいらぼという出版社から当初発売。別売りカセットテープもあったようです。当時は添削付きの通信講座も開講されていた模様。しかし未完のままたまいらぼ版の発行は停止。

●その後出版元を変えて執筆を続けられていたようなのですが、古本市場で出回っているのも自治体の図書館に収蔵されているのも大抵がこのたまいらぼ時代の物で、本田アラビア語研究所に切り替わってからの7巻以降はほぼ幻の書籍に近い状態と言えるようです。10巻は大東文化大学国際関係学部 地域言語アラビア語副読本という位置づけだそうで、蔵書検索の結果大東文化大学の図書館には入っていることは確認できました。さらにその続きは出版物として外部に出さない形で先生が担当されていたアラブ イスラーム学院アラビア語講座関係で配られるに留まり、未出版のまま原稿だけが先生のお手元に残っている形のようです。

●白水社刊『アラビア語入門』『ステップアップ アラビア語の入門』の原型とも言えるシリーズで当時としては画期的な学習書だったと思うのですが、古本で入手できても全巻コンプリートするのは無理なのでこのシリーズでは初級文法を一通り学ぶことも難しい状況です。(白水社『アラビア語入門』と同じぐらいの初級文法前半、動詞未完了形辺りでたまいらぼ版は終わっているため。)

本の概要

●本のサイズはたまいらぼ時代(内容や目次に関する出版社の紹介ページはこちら)が縦30cm、本田アラビア語研究所は縦26cm。たまいらぼ版は厚さ1cmぐらいの分冊になっていますが後に5巻分を合わせた分厚いバージョンも出されています。たまいらぼ版は全て絶版。

●図書館によってどちらの版が入っているか違うようで、昔自分が大学図書館で見たのはたまいらぼ刊で分厚い方の合冊版『たのしいアラビア語』でした。

●たまいらぼ時代の第1巻を見ると、かつてない大きなアラビア文字で書かれていることが強調されているだけあって今までで見たアラビア語学習書の中でも飛び抜けて文字サイズが大きいです。(日本語部分は普通。)

●監修は本田先生のご友人だというエジプト人のハーリド・アリー・ザイド氏、ならびに東京外国語大学客員教授だったシャラフ・アブダルアジーム・アブダルハフィーズ先生、アジア・アフリカ語学院講師だったアシュラフ安井先生があたられていたようです。

●白水社のアラビア語入門に似ていますが、アラビア語に関する紹介や他言語との比較などはこちらの『たのしいアラビア語』の方が詳しいように思いました。

感想

入手が難しすぎておすすめはしづらいのですが、全巻読むことができる環境にある方であれば一読する価値はあると思います。

かなり大きなサイズなので持ち運びが難しく逆に使いにくいかもしれませんが、図書館から借りてきてしばらく家に置いておく分には支障が無いです。白水社のアラビア語入門と並行して参照するといった使い方であれば、書き込みをできなくても十分学習の助けにすることはできるのではないでしょうか。

(2022年2月修正)

たのしいアラビア語
著者:本田 孝一
出版社:たまいらぼ、本田アラビア語研究所など