アラビア文字を書いてみよう読んでみよう (本田 孝一,師岡カリーマ・エルサムニー/白水社)

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★★★★★
標準的なナスフ書体（書籍用、日本語の楷書体に相当）で基本を学んだ後
ルクア書体（手書き用、日本語の行書体に相当）も学べる1冊で2度おいしい本

著者：本田 孝一、師岡カリーマ・エルサムニー
出版社：白水社

著者の先生について

本田 孝一　先生

著者はアラビア書道の大家でもある大東文化大学国際関係学部国際文化学科の元教授、本田孝一先生です。東京外国語大学アラビア語専攻を卒業、企業に就職され中東関係の業務に従事。その後アラビア書道や文法学習書・辞書の編纂に努めてこられたという経歴の方です。アラブ諸国のメディアでは日本の精神とアラビア書道を融合させた繊細かつ優美な作品を生み出すムスリム書道家として称賛をもって紹介されていることが多いです。

最近までアラビア語各種講座を提供していたアラブ イスラーム学院でアラビア書道クラスや『たのしいアラビア語』をテキストにしたアラビア語課外講座も担当されていましたが、現在は休校（閉校同然らしく既に先生・シェフ等のスタッフは違う場所に再就職されている模様）。日本アラビア書道協会ウェブサイトでアラビア書道講座情報をチェックする形となっています。

師岡カリーマ・エルサムニー　先生

かつて日本でアラビア語を教えられていたアリー・ハサン・エル＝サムニー（アリー・ハッサン・エル・サムニー）先生の娘さんです。1970年生まれ。小学生時代にエジプトに引っ越しされ現地の中学・高校とカイロ大学政治経済学部を卒業。ロンドン大学留学を経て日本に渡航。長年NHKラジオのアナウンサー、通訳、アラビア語講師として活躍されており、アラビア語学習者なら誰もがその声を一度は聞いたことがあるだろうというぐらいに有名な方だと思います。

以前NHKのアラビア語講座に出演されていた師岡イマーン（イマン）さんはカリーマ先生の妹さん、元サッカー選手で沖縄国際大学非常勤講師のイブラヒム・エルサムニーさんがお兄さん、サッカー選手をされていたアリー&オサマ・エルサムニーご兄弟は甥御さん達になります。

本の概要

●カーキ色系の表紙の方が1999年、写真入り表紙の方が2006年発売。どちらも絶版らしく白水社のウェブサイト書籍一覧にはもう載っていません。中古で入手する必要があると思います。

●アラビア語の歴史や地理的広がりの紹介つき。イラン、パキスタンからウズベキスタン、ウイグル自治区、ブルネイまでアジア地域で使われているアラビア文字の写真も複数掲載。

●序盤はアルファベットの一覧と単独の時の形の書き方レッスンです。テキストに書き込める空欄が用意されておりドリル形式で練習できます。お手本となる字は綺麗かつ標準的な形状で、変に角張っていたり丸っこかったりするパソコンフォントとは違うので真似をするには最適だと思います。

●あわせて発音方法を手短に解説。一部の文字については口の中をどうすぼめれば良いかを示した調音部位のイラスト付きです。

●独立形、語頭・語中・語尾の各形の図説では書き順が矢印と数字で示されています。ラーム-アリフ（لا や ـلا）のような注意すべきつづりも載っています。

●母音記号と実際の読み方の説明は、各文字に短母音や長母音を示す母音記号を付けてア・イ・ウ、バ・ビ・ブ…と読んでいく方式です。

●アラビア数字の書き方も載っています。1から1000までの紹介とアラビア数字の歴史についても紹介。

●終盤はアラブの国名・都市名・人名を読んだり日本人の名前を書いたりするレッスンです。エジプト、カイロの街中で見られる看板や標識の写真で実際にアラビア文字を読んでみるコーナー辺りがカリーマ先生の担当ということのようです。

●アラビア書道に興味のある方が楽しめるコンテンツも収録。アラビア書道の各書体紹介、カリグラフィー筆の作り方指南つきです。

感想

アラビア文字を覚える段階の初心者だけでなく手書きに使われるルクア書体が読めるように/書けるようになりたい人にもおすすめな、1冊で2度活用できる学習書です。アラビア書道の先生が著者だというのもポイントが高いです。

サンプルとなる単語数も比較的豊富で、手書き書体の時に重要となる他の文字との連結・上下位置関係についても説明されています。一通り読むとそれらしい手書き書体が書けるようになると思います。

自分もこの本と海外から購入した本を使って自習しました。アラブ人が書いたメモや動画授業の板書を読めるようにするためには必須の知識なので関心のある方は中古で購入されることをおすすめします。

（2022年1月修正）

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