アラビア文字の書き方を覚えよう~基礎編(■)ター・マルブータ[ ة ]

目次 / ا ب ت ث ج ح خ د ذ ر ز س ش ص ض ط ظ ع غ ف ق ك ل م ن ه و ي / ء ة ى لا

ة [ tā’ marbūṭa(h) ] [ ター マルブータ ] の形と書き順を覚えよう

単語の中での形

接続形 独立形
単語の最後 単語の途中 単語の先頭 単独の時
ـة ة

語尾でのみ使います

ター・マルブータは「結ばれたター」という意味で、普通の開いた ت(ター、tを示す子音)を ه(ハー、hを示す子音)のように丸めて上に点を2個つけたものです。

基本線に乗るように三角がかったoの字の形を書き、後から上に点を2個つけます。


書き順

独立形


● アルファベットを1個だけ個別に書く時の形です。

● 基本線の上からスタート。時計回りに三角がかったoの字の形を書きます。
● 一番下は基本線の位置に来ます。基本線の上にちょうど乗るように  ه を書きます。
● 後から上に点を2個つけます。
*アラブ人の子供向け動画だと点の書き順が右の点が先で左の点が後といった具合に日本の文法書とは左右順が逆になっていることがあります。

単語の中での形

一般的な教科書向け活字書体

語尾

  • 前の文字を書き終わったら、単語末に来る最後の文字のター・マルブータを書きます。ベース部分の形は ه と全く同じです。
  • 基本線に沿って右から来たら線を持ち上げ、斜め左上に行きます。
  • いったんペンを紙から離します。
  • てっぺんから少し下がった位置からスタート。反時計回りにcの字を書きます。
  • 後から上に点を2個つけます。
    *アラブ人の子供向け動画だと点の書き順が右の点が先で左の点が後といった具合に日本の文法書とは左右順が逆になっていることがあります。
ベース部分の一筆書きバージョン

学習書によってはこちらの語尾形を掲載していることもあります。手書き用のルクア書体(日本の行書体に相当)など日常的な書き方に近いと言えます。

ベース部分を左回りに巻いて書く方法で、鉛筆を紙から離さず一気にくるりと巻いて、最後に上に点を2個書き足したら完成です。
*アラブ人の子供向け動画だと点の書き順が右の点が先で左の点が後といった具合に日本の文法書とは左右順が逆になっていることがあります。

書き順をオリジナル動画で確認

単独の時

単語の途中での形

単独の時+単語の途中での形

YouTube版~単独の時+単語の途中での形

ター・マルブータとその表記

ター・マルブータに人称代名詞が接続した場合

تَاءٌ مَرْبُوطَةٌ [ tā’ marbūṭa(h) ] [ ター マルブータ ] に属格(所有格)の人称代名詞が接続すると、ター・マルブータ(=結ばれたター)ではいられなくなり、普通の ت [ tā’ ] [ ター ] に置き換わります。

سَيَّارَةٌ
[ sayyāra(tun) ] [ サイヤーラ(トゥン) ]
(1台の)車(は/が)←ここでは例として主格を挙げてあります

سَيَّارَتُهُ
[ sayyāratuhu) ] [ サイヤーラトゥフ ]
彼の車(は/が)←主格

このような普通のターは、تَاءٌ مَفْتُوحَةٌ [ tā’ maftūḥa(h) ] [ ター(ゥ/ッ)・マフトゥーハ ] (ター・マフトゥーハ、意味は「開かれたター」)もしくは تَاءٌ مَبْسُوطَةٌ [ tā’ mabsūṭa(h) ] [ ター(ゥ/ッ)・マブスータ ](ター・マブスータ、意味は「広げられたター」)と呼ばれています。

ター・マルブータが語末に来ない例

ター・マルブータは文語だと語末以外には来ないというルールがありますが、複合語になっている口語的な職業名表記だと強引に語中に持ってきてしまっているのを見かけます。

たとえば تكمة をトルコ語由来の職業名語形に変えた تُكْمَةجِي / تُكْمَةچِي  [ tukmachi(/ī) ] [ トゥクマチ(ー) ](アラビア語で書かれたイラク系移民向けのイラク方言辞典には鋳造業者のことだと書かれています)など。

これがそのまま家名になって مُحَمَّد التُكْمَةجِي [ muḥammad ’at-tukmachī(/i) ] [ ムハンマド・アッ=トゥクマチ(ー) ](*口語だと最後の長母音が短母音化するのでトゥクマチーとトゥクマチを併記してあります)といったフルネームになっている方も少ないながら実在している模様。

スペースを空けて التكمة جي と分かち書きしているケースもありますが、くっつけてトゥクマチーとしている場合が多いように見受けられます。

また羊頭などを煮込んだ料理パーチャ(より口語的発音ではパーチェ)を提供する料理人という意味の بَاجَة جِي / بَاجَةجِي / پاچة چي / پاچةچي [ pāchachī(/i) ] [ パーチャチ(ー) ] も同様の例ですが、口語に多い ة 部分の ه 表記が起き باجه جي などと書かれていることも多いです。

イラク元首相 Adnan al-Pachachi [ アドナーン・アル=パーチャチー ](日本語ではパチャチとかパチャーチとカタカナ表記されていることが多いですが元の発音はパーチャチーです)氏のラストネーム部分も الباجه جي が標準的つづりとなっています。

あえて開いたターでつづる男性名

アラブ圏のレヴァント地方やエジプトなど、オスマン朝支配下にあった国々では ة( ター・マルブータ)ではなくあえて ت(開いたター)でつづる特殊な男性名があります。

これはオスマン朝期由来のトルコ語風表記と言われる人名で、بَهْجَة [ bahja(h) ] [ バフジャ ](喜び;輝き;美しさ)を بَهْجَتْ と書いて [ bahjat ] [ バフジャト ](エジプトの首都地域方言だとバフガト)と発音するものです。

「スペルミスに違いない」と気を利かせたつもりで بَهْجَة に書き直してしまうと逆にに間違いになってしまうので要注意です。このオスマン語風男性名は開いたターで書いて、ター・マルブータつきの時のようにバフジャとせず t 音を読み飛ばさないでバフジャトと発音するのが正解です。