アラビア文字の書き方を覚えよう~基礎編(★)ラーム-アリフ[ لا ]

目次 / ا ب ت ث ج ح خ د ذ ر ز س ش ص ض ط ظ ع غ ف ق ك ل م ن ه و ي / ء ة ى لا

[ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ] の形と書き順を覚えよう

発音を聞いてみる

単語の中での形

接続形 独立形
単語の最後 単語の途中 単語の先頭 単独の時
ـلا ـلا لا لا

×– 次の文字とはつなげません。前の文字とだけ接続できます。×–

لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ](ラーム-アリフ/ラーム・アリフ/ラームアリフ)は ل [ lām ] [ ラーム ] の後に ا [ ’alif ] [ アリフ ] がつながった時の特別な形です。いわゆる合字(リガチャー)というもので、異なる文字がくっついて新しいひとまとまりとしての形状に変身した形になります。

2文字同士を単純に並べて連結し U のような形にするかと思いきや、ل [ lām ] [ ラーム ] の後に ا [ ’alif ] [ アリフ ] という特定の組み合わせにおいてクロスしたような違う形状に変化しています。大昔は U の字のようにつづる書き方もあったようなのですが、現代ではこのページで紹介しているような形状がスタンダードとなっています。

元々手書きのアラビア語文書では合字(リガチャー)が何種類もあるのですが、アラビア語学習書はそうした合字を最大限に排除した活字が採用されており普段見かけることは少ないです。ところが لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ](ラーム-アリフ/ラーム・アリフ/ラームアリフ)だけは例外で、日本で刊行されてきた初級向け学習書などでもアルファベットとその関連文字の表に登場します。

2種類あるラーム-アリフの書き方

通常の学習書に出てくる形


異なる形

書体やフォントによってはこのような形をしていることもあります。この場合はクロスした合字形状ではなく、元のラームの上にアリフを乗せた比較的単純な並び順・組み合わせとなっています。

Windowsのアラビア語フォントでもこのような形状で表示されるものがあり、システムのインターフェースに使われているフォントもラーム-アリフがこの形状になっているので、皆さんもよく見かける形かと思います。

書き順

独立形

通常の学習書に出てくる形


合字を1個だけ個別に書く時の形です。

上を向いた両方の先端(書き始め部分)が太くなっていたり黒猫の短いかぎしっぽのように見えたりするのは、アラビア語学習書などで見本となる書体が横幅のあるカリグラフィーペンで書かれるアラビア書道の形状に依拠しているためです。下の動画に出てくるオレンジの線でもわかる通り、鉛筆やボールペンで書く時には均等な太さの線で曲線を書くだけで出だし部分を折れ線形状にするといったことは不要です。

● 基本線のかなり上からスタート。少しだけ左斜め下に傾いた縦線 / を書き、基本線に近づくにつれて左にカーブさせます。
● 基本線のかなり上に戻り、さっきの書き始め地点から左に行ったところからスタート。右斜め下に斜線 \ を書き、基本線に近づいたら左にカーブさせてさっき書いた線の終点とくっつけます。


一筆で反時計回りに書く方法を紹介している学習書もあります。

単独の時の異なる形


丸みを帯びた左右逆の「L」を書いてから、アリフに相当する縦線を真ん中辺りに下ろします。

単語の中での形


語頭

  • 次の文字とはつなげられないので、さっき紹介した独立形の2種類あるうちのいずれかの形を書きます。

語中

  • 前の文字はつなげられますが、次の文字とは接続できません。
  • 基本線に沿って右から来たら上に向かいます。
  • かなり上の方まで縦線を書いて、来た道から次第に離れた逆Vの字を作ります。
  • 基本線の少し下に向けてスーッと線を伸ばして終点とします。
  • 最後にアリフに相当する部分を右斜め下に書きます。ラームに相当するパーツの中央付近に向かってスーッと斜線を引きます。

語尾

  • 前の文字を書き終わったら、単語末に来る最後の文字ラーム-アリフを書きます。
  • 基本線に沿って右から来たら上に向かいます。
  • かなり上の方まで縦線を書いて、来た道から次第に離れた逆Vの字を作ります。
  • 基本線の少し下に向けてスーッと線を伸ばして終点とします。
  • 最後にアリフに相当する部分を右斜め下に書きます。ラームに相当するパーツの中央付近に向かってスーッと斜線を引きます。

書き順をオリジナル動画で確認

単独の時

単語の途中での形

単独の時+単語の途中での形

YouTube版~単独の時+単語の途中での形

ハムザ(ء)や母音記号を伴う場合

長母音アリフではなくアリフがハムザの台座になっている場合、アリフは発音を表す本体ではないので長母音「ā(アー)」の響きは表しません。

アリフの部分が音価を持たない長母音アリフではなくハムザを伴う声門閉鎖音/声門破裂音の時にはアリフの上下にハムザを書き足すので

لأَ 母音 a(ア)を伴う=[ ’a ] [ ア ] と読む

لأُ 母音 u(ウ)を伴う=[ ’u ] [ ウ ] と読む

لإِ 母音 i(イ)を伴う=[ ’i ] [ イ ] と読む

لأْ 母音を伴わない(無母音)=スクーン記号がつく=[ ’ ] (息を一瞬止める)

のような表記・発音となります。

例:

لَأْلَأَ
[ la’la’a ](la+’+la+’a)
[ ラッラアとラァラアが混ざったような発音(敢えて記号を使うなら「ラ・ラア」) ]
【動詞・完了形】きらめく、輝く
*アラビア語辞書の慣例上「きらめく、輝く」という現在形で書かれますが、実際には「(男性系の名詞:それは)きらめいた、輝いた」という意味の完了形(過去形)動詞です。

ラーム-アリフとアラビア語における意義

合字の一つラーム-アリフ

ラーム-アリフは ل [ lām ] [ ラーム ] と ا [ ’alif ] [ アリフ ] がつながった時の特殊な形です。

このようにアラビア語にしばしば見られる「2文字が合わさって変形したもの」は合字と呼ばれており、ラーム-アリフはその典型例となっています。

アラビア語にある様々な合字のうち لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ] はただの合字ではなく、単独で発音できない長母音の ا [ ’alif ] [ アリフ ] をアルファベットとして登場させるために ل [ lām ] [ ラーム ] と組み合わせたとも言われています。

لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ](ラーム-アリフ/ラーム・アリフ/ラームアリフ)ですが、ا(アリフ)は単体では長母音 ā を表せるわけではないので、分解すると以下のようになります。

لا
لَ:子音字 ل(l)+母音 a(子音字の上に母音記号ファトハを書き足す)=la
ا:単体では無音価で、長母音 ā の一部を構成する=敢えて言うなら ā の横棒

長母音のアリフというのはそれ自体は音価を持っておらず母音 a を伴う他の子音字の直後につくことで長母音 ā の響きを形成しているので、アラブ人はこうした長母音アリフに ـاْ のようにスクーン記号を書き入れるということをよく行います。

ラーム-アリフをアルファベットの一つに含める学説

لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ](ラーム-アリフ/ラーム・アリフ/ラームアリフ)はアラビア語学習者にもよく知られた合字(リガチャー)です。しかし数ある合字の中で、これだけがアルファベット表に載っている件やアラビア語学での意義が何なのかを教えられることは特に行われていないのが現状です。

管理人は学習年数がかなり経ってからアラブ人向けの文法書や解説動画で知ったのですが、لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ](ラーム-アリフ/ラーム・アリフ/ラームアリフ)は単にその形が特殊だというだけではなく、アリフという字の扱いと音価の問題がからんでいるのだとか。

セム諸語では元々アブジャド文字の1文字目は声門閉鎖音/声門破裂音でしたが、アラビア語では少し事情が違っており、学説によって1文字目を声門閉鎖音/声門破裂音と長母音āの両方を表すとする考えと、1文字目は声門閉鎖音/声門破裂音だけで長母音āを切り離す考えとに分かれています。

لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ](ラーム-アリフ/ラーム・アリフ/ラームアリフ)は後者の考えの時にアラビア文字表に1文字目とは別に登場させていた2文字1組のまとまりで、

アラビア語のアルファベットの1番目の文字はアリフと呼ばれているだけで、実際には声門閉鎖音 ء [ hamza(h) ] [ ハムザ ] のこと。1文字目アルファベットは ا [ ’alif ] [ アリフ ] を台にした ء [ hamza(h) ] [ ハムザ ]。

そして لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ] の方が長母音を表すアリフを示すもので、長母音を形成するのに使われる و [ wāw ] [ ワーウ ](長母音 ū のつづりに使用)や ي [ yā’ ] [ ヤー(ゥ/ッ) ](長母音 ī のつづりに使用)と一緒にアルファベット順の終盤に置き、その2文字の間にはさんで28番目として登場する。

と考えるとのこと。

アラビア語のアラビア語学文法書で29個あるアルファベットに لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ] が含まれると書いてあることがあるのはそのためだとか…

29個説の時にアラビア文字群一覧表(いわゆるアルファベット表)に含めるのですが、「一番最後の29番目ではなくで後ろから2番目の28番目に置く」というのがちょっと勘違いしやすく少々ややこしいかもしれません。

クルアーン朗誦学の超有名専門家アイマン・スワイド師のアラビア文字数に関する講話より。(意味が通りやすいよう、アラビア語学習者になじみの無い語については前後に説明となる語句を追加してあります。なので逐語訳にはなっていません。)

ハムザが1番目のアルファベット、アリフは別に分けて考える学説の一例です。

解説動画要旨:

書字に使われていた文字群 ー اَلْحُرُوف الْمَكْتُوبَة [ ’al-ḥurūfu-l-maktūba(h) ] [ アル=フルーフ・ル=マクトゥーバ ] ー は大昔から使われていたアブジャディーヤ ー اَلْحُرُوف الْأَبْجَدِيَّة [ ’al-ḥurūfu-l-’abjadīya(h) ] [ アル=フルーフ・ル=アブジャディーヤ ] ー の方で全28文字。29個でなかった理由は、声門閉鎖音/声門破裂音ハムザに対応した文字を持っていなかっため。

発音に依拠した文字群 ー اَلْحُرُوف الْمَنْطُوقَة [ ’al-ḥurūfu-l-manṭūqa(h) ] [ アル=フルーフ・ル=マントゥーカ ] ー はアルファベット ー اَلْحُرُوف الْهِجَائِيَّة [ ’al-ḥurūfu-l-hijā’īya(h) ] [ アル=フルーフ・ル=ヒジャーイーヤ ] ー のことでハムザを含めた全29文字。

このアルファベット順はウマイヤ朝期にイラク バスラで活躍したアラビア語文法学成立初期の学者 نَصْرُ بْنُ عَاصِمٍ اللَّيْثِيّ(ナスル・イブン・アースィム・アッ=ライスィー) によるもの。形が似ていて弁別点でお互いを区別する文字同士をまとめ並べた。

このアルファベット順において1文字目の名前はアリフとなっているが、実際にはアリフの名で呼ばれているハムザのこと。

長母音のアリフは後ろから2番目(= و [ wāw ] [ ワーウ ] と ي [ yā’ ] [ ヤー(ゥ/ッ) ] の間)にある لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ] として置かれる。長母音のアリフ自体は母音がつかず(=無母音)、直前に母音 a を必要とするため何か他の文字を先に置かないと発音できない。

アラビア語の定冠詞の لْ [ l ] は単独では発音できないのでアラブ人はアリフの姿をしたハムザ أ を発音の補助として直前に挿入し先行させ أَل ( اَلْ ) [ ’al- ] [ アル= ] としたが、同様に長母音の ا [ ’alif ] [ アリフ ] も文字アルファベット順においては ل [ lām ] [ ラーム ] と組み合わせたアルファベット順における長母音アリフも لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ] として現れる。

残念ながら下のレベルの入門書ではこの لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ] に関する説明を省いてしまっており、アルファベットの1番目は ا [ ’alif ] [ アリフ ] とのみ教えている。

アリフとハムザ

子音である声門閉鎖音を示す ء [ hamza(h) ] [ ハムザ ] は後代になって開発された文字です。

それまでは ا [ ’alif ] [ アリフ ] を使って表記しており、これが現代における ا [ ’alif ] [ アリフ ] と ء [ hamza(h) ] [ ハムザ ] の複雑な関係を生み出しました。

ハムザはアラビア語学習者だけでなくアラビア語ネイティブたちにとっても覚えるのが大変な項目で、フスハー会話なのに口語のように長母音っぽく読んでしまう、誤字脱字が多発するといった原因になっています。

パソコンフォントとラーム-アリフ

入力時の扱い

パソコンのアラビア語キーボードなどではこの لا を1回のキーボードを打つだけで入力できるなど1文字分に近い扱いを受けていますが、カーソルを動かして削除する時には لا の1個ずつに対する削除操作となり2回キーを打たないと لا 全部を消せず、2文字に分解できることがわかります。

Windowsのスクリーンキーボード例です。لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ](ラーム-アリフ/ラーム・アリフ/ラームアリフ)は一番下の段の中央付近に専用のキーが配置されており、1回押すだけでラームとアリフの2文字がくっついた合字が出力されます。

لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ](ラーム-アリフ/ラーム・アリフ/ラームアリフ)はIMEパッドを見てみると「アラビア表示形 B」の中に含まれており、単独形についてはUnicodeの「U+FEFB」(Arabic Ligature Lam with Alef Isolated Form)として割り当てられていることがわかります。

テレビ字幕などにおけるU字形状

パソコンの利用が浸透しテレビ番組でも色々なフォントが使われるようになった昨今、アラビア語学習書やアラビア語書籍で見るような標準的な لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ](ラーム-アリフ/ラーム・アリフ/ラームアリフ)以外を見かけることも増えました。


画像引用元:Al Jazeera Mubasher مشاهد غير معتادة .. اللون الأبيض يزين السعودية

その典型例がU字形状化で、

 
のどちらでもない見た目として登場するので、初めて目にする際「あれっ?この文字何?」「間違いじゃないの?」となりやすいかもしれません。

このような字形はYouTubeのニュース動画やポップソング字幕で最近しばしば見かけるようになっています。

アラブメディアではもはや誤字扱いされずそのまま公開されてはいるのですが、日本のアラビア語学習書ではそうならないように配慮されているので、الأَعلام

に似た形状で印刷になっているものはチェックから漏れた誤植扱いで、常時登場することは基本的に無いです。

 

(2024年10月 説明文の一部修正、TV字幕等における特殊形状について)