目次 / ا ب ت ث ج ح خ د ذ ر ز س ش ص ض ط ظ ع غ ف ق ك ل م ن ه و ي / ء ة ى لا
[ ’alif ] [ アリフ ] の形と書き順を覚えよう
単語の中での形
接続形 | 独立形 | ||
---|---|---|---|
単語の最後 | 単語の途中 | 単語の先頭 | 単独の時 |
ـا | ـا | ا | ا |
×– 次の文字とはつなげません。前の文字とだけ接続できます。×–
アリフ「 ا 」は単語の先頭でハムザ「 ء 」の台として使われたり、単語の途中や終わりで長母音を示したりするのに使われます。
次の文字と連結すると他のアルファベットであるラーム[ ل ]と見分けがつかなくなってしまうので、単語の途中であってもつなげずに必ずいったん切ってから次の文字に移ります。
書き順
独立形
● 上から下へスーッと1本の縦線を書きます。少し左上から斜めに下げていって、基本線のところで終わります。
単語の中での形
- 次の文字とつなげられないので独立形と同じ形を書きます。
- 上から下へスーッと1本の縦線を書きます。少し左上から斜めに下げていって、基本線のところで終わります。
語中
- 前の文字とはつなげられますが次の文字とはつなげられないので、単語の途中ですが書き終わったらいったんそこで切ります。
- 下から上へ縦線を書きます。基本線のところから出発して、少し左斜めに線を持ち上げます。
語尾
- 前の文字を書き終わったら、単語末に来る最後の文字のアリフを書きます。
- 下から上で縦線を書きます。基本線のところから出発して、少し左斜めに線を持ち上げます。
書き順をオリジナル動画で確認
単独の時
単語の途中での形
単独の時+単語の途中での形
YouTube版~単独の時+単語の途中での形
1文字目のアルファベットをアリフと便宜上読んでいるハムザと考える説の場合
アルファベットの数と1文字目の問題
アラビア語の文法学では
アラビア語アルファベットの1文字目はただの ا [ ’alif ] [ アリフ ] ではなく ء [ hamza(h) ] [ ハムザ ] のこと。アリフの姿を取っているのは単語の先頭に来る時の形だからで、ハムザの台としてセットで書かれている。
という説明がなされていることもあります。
これは合字 لا [ lām(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ] を長母音のアリフ、1文字目のアルファベットの実体をハムザとみなす学説と関係しています。
詳しくは
『アラビア文字の書き方を覚えよう~基礎編(★)ラーム-アリフ[ لا ]』
そのためもあってかアラブ人向けの練習帳では ا ではなく أ となっていることが少なくありません。
アリフにハムザが乗っている場合の書き順
アラブ人向けの文字学習教材に多い、ハムザを乗せた形で現れるアルファベット1文字目「アリフ」です。
単語の先頭で母音 [ a ] [ ア ] と [ u ] [ ウ ] を伴う時はこのようにアリフの上にハムザが乗ります。
メインとなる台座のアリフを書いたら、ハムザを書き足します。ハムザは上のc部分を最初に書いたら左斜め下に方向転換し、斜め線を書いて完成です。
このようにハムザ部分を一筆書きするように教えているアラビア語学習書もあります。
アリフの働き
発音コーナーと内容がかぶっていますが、こちらでは表記に関する記述をチョイスして抜粋してあります。
1)長母音āを表すのに使う
長母音を作るパーツとしてのアリフ
前に来る「子音+母音a」の後に続いて長母音としての ا [ ’alif ] [ アリフ ] を書くことで、長母音 ā を表すパーツとなります。
مَا
[ mā ] [ マー ]
【疑問詞】何?
このような長母音のアリフは اَلْأَلِف اللَّيِّنَة [ ’al-’alifu-l-layyina(h)/laiyina(h) ] [ アル=アリフ・ッ=ライイナ ](直訳は「柔らかいアリフ」「柔和なアリフ」)と呼ばれており、アルファベットを全部で29文字とみなす学説では合字 لا [ lam(u)-’alif ] [ ラーム-アリフ ](ラーム-アリフ)としてアルファベット順の終盤である28番目に置かれるなどします。
長母音アリフとスクーン記号
長母音のアリフ部分に母音がつかないこと(無母音)を示す記号スクーンがついていることもあります。これは「長母音アリフ自身はどの母音も受け入れず、単体では何の音も持たない。」というアラブ式アラビア語学における考えを反映したものです。
ْمَا
[ mā ] [ マー ]
2)ハムザの台になる
アリフは単語の先頭などに来る ء [ hamza(h) ] [ ハムザ ] [ ’ ] と組み合わせる台としても使われます。
アラビア語のアルファベットを28文字とみなす学説では、1文字目が長母音のアリフと声門閉鎖音/声門破裂音のハムザを兼業しているという理解になるとのこと。母音がつく場合は長母音としてのアリフではなくアリフという كرسيّ [ kursī(y) ] [ クルスィー(ュ/ィ) ](台座)に置かれたハムザとして扱われます。
このようにアリフに乗っているハムザは اَلْأَلِف الْيَابِسَة [ ’al-’alifu-l-yābisa(h) ] [ アル=アリフ・ル=ヤービサ ](直訳は「乾いたアリフ」)と呼ばれるなどします。
アリフにハムザをのっけて母音を足したら [ ’a ][ ア ]・[ ’i ][ イ ]・[ ’u ][ ウ ]
長母音のパーツとなり母音を受け入れないアリフアリフ自体に独自の子音は割り当てられていないので、声門閉鎖音/声門破裂音である ء [ hamza(h) ] [ ハムザ ] [ ’ ] に母音をつけた場合としての発音を行います。
見た目はハムザが無いのに実は隠れているだけの場合
前に他の語が来てつなげ読みする際に発音を省略する一部の語頭ハムザは、アリフとセットであるにもかかわらず書かないというルールがあります。これを هَمْزَة الْوَصْلِ [ hamzatu-l-waṣl(i) ] [ ハムザトゥ・ル=ワスル ](直訳は「連結のハムザ」。ワスルは「連結、結合」の意。)と呼びます。
*ハムザトゥルワスル(ハムザトゥ・ル=ワスル)は本によってハムザトルワスル、ハムザト・ル=ワスル、語末母音を加えたハムザトルワスリなど表記はまちまちです。日本語で書かれた学習書で一番多いのはハムザトルワスルかもしれません。
このような場合、ハムザが隠れているだけで単独時もしくは直前の語とつなげ読みをしない時は上で紹介したハムザと母音とを組み合わせた発音になります。
ハムザが書いていないからといって、アリフそのものがア・イ・ウの発音を持っている、アリフが母音を示している、という考え方はアラビア語文法学ではしません。母音記号は隠れているハムザにつけられたものです。
長母音のパーツとなり母音を受け入れないアリフ自体に独自の子音は割り当てられていないので、声門閉鎖音/声門破裂音である ء [ hamza(h) ] [ ハムザ ] [ ’ ] に母音をつけた場合としての発音を行います。
3)対格を示すタンウィーンにおける添え字的な用法
対格タンウィーンの基本的なつづり
三段変化をする名詞や形容詞などの対格(目的格)では語末の音が [ -an ] [ -アン ] になりますが、特定の例外を除いた場合において添え字として ا [ ’alif ] [ アリフ ] を書き足します。
休止(ワクフ)形ではなく語末の格母音やタンウィーン(-an)まで全部読むケースではいわゆる添え字に近いのでアリフ自体が [ -an ] の音を示すという訳ではなく、発音しないのに文字だけ書いてある形となります。
対格のタンウィーン記号を書く場所
日本語で書かれた文法書やアラブ人向けの正書法(正字法)教本ではアリフの前に来る本来の語末文字の上にタンウィーン記号を書く
كتابًا
が教えられているだけのことも多いのですが、実際にはアリフの上に書いて
كتاباً
とする学説もあってそっちも正解なのだとか。そのため本でもネイティブが書いた文章でも後者の表記が多く見られます。
なおどちらの学説に依拠するかによって分かれるということで、通常同じ文の中ではどちらか一つの表記方法で統一する感じです。混在させないことをおすすめします。
対格のタンウィーンだけアリフを書き足す理由
なお休止(ワクフ)といってその語の直後で息継ぎをする場合、アラビア語では語末の格を示す母音や非限定であることを表すタンウィーン(-nの音の添加)が取れます。
しかしこれには名詞や形容詞などの対格(目的格)の時だけタンウィーンの -an 部分を長母音の -ā で発音するという違うルールが存在します。
これはイスラーム以前からずっと続いていた古い読み方で、対格(目的格)・非限定の語については休止形(ワクフ)の際に語末の格母音(a)とタンウィーンの(-n)を取るのではなく長母音 ā として発音したことが由来です。非限定名詞において対格(目的格)だけ余分なアリフを書き足すのはこのような事情によります。
كِتَابَا
[ kitābā ] [ キターバー ]
【対格(目的格)・休止形(ワクフ)】(とある)本を
このような発音はフスハー日常会話やニュース番組ではまず使いませんが、現代でも文学作品の朗読や国語としてのアラビア語授業の例文講読などで現役で行われています。
4)動詞の語末における添え字
完了形動詞の三人称・男性・複数では語末に発音しない余分な ا [ ’alif ] [ アリフ ] がつきます。
كَتَبُوا
[ katabū ] [ カタブー ]
【動詞完了形・三人称男性複数】彼らは書いた
これは「ここは語末ですよ」と示すための区切り線のような役割を持っているアリフで、発音はしないのに表記だけされている添え字になります。
なので [ カタブーアー ] や [ カタブーワー ] のようにアリフに相当する発音を追加することはしません。
アリフの発音とハムザとの関係
アリフからのハムザの切り分けという歴史
日本で発売されている詳しいタイプのアラビア語文法書では「アリフ自体は特定の子音を表さない」という説明が一般的です。
そのような本と同じ考え方の先生だと「昔はアリフの音価が現在のハムザの持つ声門閉鎖音/声門破裂音だったが、その後 ء [ hamza(h) ] [ ハムザ ] にバトンタッチ。現在はアリフは音価を持たないということになっている。」という説明をセットでされることも。
ただ調べてみるとわかるのですがアラビア語文法学ではアリフとハムザは完全に分離しきっておらず、1番目のアルファベットであるアリフがハムザを兼業しているとかアリフの実体がハムザだとか色々な説があるようです。
関連記事
『アラビア語アルファベットの発音を覚えよう~ハムザ[ ء ]』
アリフとの関連性が非常に強いハムザの性質や発音の方法についてはこちらの記事をお読みください。喉を通る息を一瞬せき止める様子を示したレクチャー動画なども紹介しています。
アラビア語のアルファベットを29個をする学説におけるアリフとハムザの位置づけ
このような違いがあるため、アラビア語アルファベットの1文字目をアリフ兼ハムザと見る場合はアルファベット数が28個、アリフとハムザを別に見る場合はアルファベット数が29個という扱いになります。
ただ文法書によっては1文字目がハムザで、長母音を形成するアリフの方は合字である لا [ lam ’alif ] [ ラーム-アリフ ] として現れると説明しているケースも。
エジプトの文法学専門家 عَبَّاس حَسَن [ ‘abbās ḥasan ] [ アッバース・ハサン ] 先生の著書『اَلنَّحْوُ الْوَافِى』[ ’an-naḥwu-l-wāfī ] [ アン=ナフウ・ル=ワーフィー ](*エジプト出版書籍なので語末の ي には点がついていません)によると、この場合はアリフが単体では発音できないことからラームにくっつけて登場させているという考え方をするそうで、メインはアリフなのだとか。
そしてこの説に従う場合はラーム-アリフ(=アリフ)を29個あるうちのアルファベットの1つと見るとのことです。
なおWright(ライト)の文法書では1文字目がアリフを台座にしたハムザで、合字ラーム-アリフはアルファベット順の最後にある و と ي の間に割り込ませて و لا ي と並べるのだという解説が載っています。(いわゆる長母音を形成する弱文字トリオ。)