ニスバ形容詞(関係形容詞、関連形容詞)の作り方と用法

アラブ人名のフルネームパーツに含まれる出自・帰属先表記ニスバの紹介ページ(アラブ人の名前のしくみシリーズ)から分離したニスバ形容詞の文法まとめページです。

*2023年1月現在ちびちびと加筆中

関連・出自表示「ニスバ」とは

用語の意味とニスバの定義

一般的なアラビア語学習書の説明

نِسْبَة
[ nisba(h) ] [ ニスバ ]
英語表記:Nisba、Nisbah
日本語表記:ニスバ

*文語アラビア語(フスハー)での厳密な発音は語末にふんわり軽い هْ [ h ] を添える [ nisbah ] [ ニスバフ と ニスバハ の中間のような発音 ] ですが、現代会話や口語(方言)では省略され [ nisba ] [ ニスバ ] になってしまうので日本における一般的なカタカナ表記もニスバとなっています。

品詞としては名詞に分類され、通常の文脈では

  1. 帰属
  2. 関係、関連、つながり;親戚関係
  3. 割合、比率

といった意味を示します。英語や日本語で書かれたアラビア語文法書の説明では

  • その名詞に関連している形容詞的表現「◯◯の~」「◯◯的な」「◯◯製の」という語を作る。
  • 元々アラビア語では形容詞という品詞の分類は無いので名詞「◯◯人」といった意味でも使われる。
  • アラブ人名フルネームに関しては自分の出自・由来に関する語を形容詞化して「◯◯出身の」という名乗りのパーツ後方に加えた帰属先表示となる。

という説明になっていることが一般的です。

日本では文法書によって名称が異なる

地名・人名も含む各種名詞「◯◯」を元に作られた形容詞「◯◯の~」「◯◯的な」「◯◯」は文法書によって「ニスバ形容詞」「関係形容詞」「関連形容詞」「関連詞」などと名称がまちまちです。

ただ関係形容詞といった用語は英語の what、which、whatever、whichever 類の名前とかぶってしまうということで、ここでは管理人がアラビア語を習った際に教えられた名称を採用して「ニスバ形容詞」を使いたいと思います。

アラブ式アラビア語文法での定義

ヤーの付加による関連性の表示

アラブの文法書ではニスバは名詞に分類。

*アラビア語には形容詞という品詞は無くアラブ式の文法学だと名詞なりが先行する名詞を修飾しているといったとらえ方をしますが、当ページでは日本におけるアラビア語教育の標準に従い”形容詞”としています。

元になる名詞とヤーを付加した後の名詞との間の血縁関係・友人関係、その人の出身地、学派など何らかの関連性が両者にあることを示すと説明されています。

  • 名詞の語末に重子音化した(シャッダがついた)ي [ yā’ ] [ ヤー(ゥ/ッ) ] をつけることをニスバと呼ぶ。
  • ニスバで付加する ي は يَاءُ النِّسْبَةِ [ ya’u-n-nisba(h) ] [ ヤーウ・ン=ニスバ(フ/ハ) ](ヤー・アン=ニスバ、ニスバのヤー)や يَاءُ النَّسَبِ [ ya’u-n-nasab ] [ ヤーウ・ン=ナサブ ](ヤー・アン=ナサブ、ナサブのヤー)などと呼ばれる。
  • ي の直前に来る文字につく母音は i となる。
  • 語末の ـيّ が語根である كُرْسِيّ のような語はニスバとは呼ばず区別される。
  • 元になる名詞(たとえば لُبْنَان [ lubnān ] [ ルブナーン ](レバノン))は اَلْمَنْسُوبُ إِلَيْهِ [ ’al-mansūb(u) ’ilayhi/’ilaihi ] [ アル=マンスーブ・イライヒ ]、ニスバでヤーがついた名詞(たとえば لُبْنَانِيٌّ [ lubnāniyy / lubnanī(y) ] [ ルブナーニー(ュ/ィ) ](レバノンの;レバノン人))は اَلْمَنْسُوبُ  [ ’al-mansūb ] [ アル=マンスーブ ] と呼ばれる。

という風に定義されています。

ニスバ形容詞の後に主語が続く構文

入れ子状の構文になっていて後半に前半とは違う人・物がニスバ化した語の主語として来る場合は、その主語として扱い主格に。

وَلَدٌ سُورِيٌّ وَالِدُهُ
文語発音:[ waladun sūriyyun/surīyun wāliduh(u) ] [ ワラドゥン・スーリーユン・ワーリドゥフ ]
(彼の)父親がシリア人(であるところ)の(とある)少年

日常会話であまり使わないこともあってか日本語で書かれている初級~中級文法書で見かけることが少ない構文ですが、項目としては分詞や分詞に類似した語の後にその主語が来る構文と同じ原理となっています。

ニスバ形容詞の色々な発音

アラブ人名のフルネームに含まれ定冠詞をつけたりしてラストネーム(海外の家名、名字に相当)のように使うニスバ形容詞ですが、アラビア語に文語(フスハー)と口語(アーンミーヤ)があることから複数の発音が併存している状況となっています。

たとえば「アッ=ティグナリー」単独で農学者・植物学者の人名を言う場合は語末格母音「u」を落とした発音を行うのですが、

اَلطِّغْنَرِيّْ

純文語的休止形発音:[ ’aṭ-ṭighnariyy / ’aṭ-ṭighnarīy ] [ アッ=ティグナリー(ュ/ィ) ]
日常会話風休止形発音:[ ’aṭ-ṭighnarī ] [ アッ=ティグナリー ]
口語風語末短母音化発音:[ ’aṭ-ṭighnari ] [ アッ=ティグナリ ]

がそれぞれ使われているためどれか一つだけが正解でということにはなりません。どれも間違いではないものの、日常会話や日本におけるアラブ人名の表記では

発音サンプル1:

発音サンプル2:

のようにニスバのヤー(ナサブのヤー)である「yy」のうち最後の1字を落とした「-iy」すなわち「-ī」音までを残した [ ’aṭ-ṭighnarī ] [ アッ=ティグナリー ] が標準として扱われています。

アラブ人名のラストネームが「イ」の響きで終わり英字表記が「al-◯◯◯i」になることが非常に多いのはそのような事情によります。

ニスバ(形容詞)の作り方

ここではゲームキャラクターのモデルになった農学者・植物学者のニスバ「Tighnari(ティグナリー)」を例に名詞からニスバ形容詞(この場合は固有名詞からフルネームに加える形容詞)を作る過程を紹介していきたいと思います。

イベリア半島のイスラーム教徒支配地域(アル=)アンダルスで活躍した農学者・植物学者

اَلطِّغْنَرِيّ
[ ’aṭ-ṭighnarīy ] [ アッ=ティグナリー(ュ/ィ) ]
一般的英字表記:al-Tighnari、Al-Tighnari
標準的日本語カタカナ表記:アッ=ティグナリー、ティグナリー

のようなフルネームパーツのニスバ部分は通常定冠詞 اَلْ  [ ’al- ] [ アル= ](al-)が含まれていますが、ニスバ形容詞を作る時にはまず定冠詞をつけない非限定形を作ります。

ニスバとして用いる名詞の語形を確認する

アッ=ティグナリー(ティグナリー)の出身地は通常アラビア語で

طِغْنَرُ
語末格母音を省略しない文語発音:[ ṭighnaru ] [ ティグナル ]
語末格母音を省略した通常の発音:[ ṭighnar ] [ ティグナル ]

となります。このティグナル村の名前を構成する子音は
*発音についてはアラビア語アルファベット部分にはってあるリンク先の各解説ページをご覧ください。

  • ط
    [ ṭā’ ] [ ター(ゥ/ッ) ]
    普通の ت [ t ] 音を重くこもらせて発音する「ṭ」。
  • ـغـ
    [ ghayn / ghain ] [ ガイン ]
    英語 get の「g」はアラビア語に存在せず、喉の摩擦を加えてこすれたような音で発音する「gh」。「g」と「h」の2文字が連続している訳ではありません。なお英語と違って黙字化して読まない「gh」音はアラビア語には存在しないので必ず「ガ・ギ・グ」のいずれかでカタカナ化します。
  • ـنـ
    [ nūn ] [ ヌーン ]
    英語や日本語の「n」音と同じです。
  • ـر
    [ rā’ ] [ ラー(ゥ/ッ) ]
    単独では日本語の「ラ」に似たはじき音、-rr-と連なって重子音化した時は現代文語・口語会話発音だと巻き舌になります。ここでは「r」1個なので日本語の「ル」に近く発音すれば良いのですが、アラブ人はこれも巻き舌で発音してしまう人が多いです。

で、母音はつづり上に現れません。

辞書などでは文字の上下に発音記号をつけて厳密な読み方を示しているので、それに従って طِغْنَرُ [ ṭighnaru ] [ ティグナル ] という風につづりとして現れている子音の間に母音を入れる/入れないを決めつつ発音を行います。

しかしアラビア語には最後の「u」は主格を表す母音で、アラビア語では地名を単独で読む場合などでは発音せず省略してしまいます。そうした休止形(ワクフ)では「r」の後の母音「u」が省略され無母音化し طِغْنَرْ [ ṭighnar ] [ ティグナル ] に。アッ=ティグナリー(ティグナリー)の出身地が本来つけるべき母音を全部反映させた Tighnaru ではなく Tighnar と英字表記されているのもそのためです。

この地名はニスバ形容詞化の前に語形を変形させる必要が無いので、このままニスバ語尾をつけることになります。

語末に ニスバ形容詞の يّ(yy)を付加する

出自を示すのに用いる地名・部族名などを名詞からニスバ形容詞特有の語尾をつけることで変形してからフルネームのパーツとして使います。

地名・部族名は語形によって変形が必要ですが、最終的には重子音化され同じ子音が2個連続しシャッダ(ـّ)という記号で1文字にまとめられた يّ(yy)を語末に加えます。
*アラビア語文法用語で يَاء النِّسْبَةِ [ yā’u-n-nisba(h) ] [ ヤーウ・ン=ニスバ ](ニスバのヤー)もしくは يَاء النَّسَبِ [ yā’u-n-nasab ] [ ヤーウ・ン=ナサブ ](ナサブのヤー)と呼ばれているものです。

ニスバ形容詞化する際には語末についていた主格の格母音が طِغْنَرُ [ ṭighnaru ] [ ティグナル ] のように「u」であっても直後に続く يّ のせいで強制的に「i」となってしまいます。(アラビア語では y 音は非常に強く接続する相手の名詞の語末についていた母音を強制的に i 音にしてしまうという性質があります。)

そのため طِغْنَرُ [ ṭighnaru ] [ ティグナル ] 語末の「u」を「i」に変更。それに日本語文法書でニスバ語尾と呼ばれることもある يّ(yy)を足し、最終的に طِغْنَرِيّ [ ṭighnariyy ] というニスバ形容詞が出来上がります。

طِغْنَرِيّ
[ ṭighnariyy ] [ ティグナリィイ ]
【ニスバ形容詞】ティグナル村の;ティグナル村出身の
【名詞的に~非限定】ティグナル村住人、ティグナル村出身者

学術書などでティグナリーの発音表記語末が「-iyy」になっているのはこのような事情によります。日本語のカタカナ表記でニスバ形容詞の語末を「-ィイ」のようにしている場合があるのもここから来ています。

しかしアラビア語の「iy」は現代文語アラビア語(フスハー)では長母音の「ī」と同等なので、発音表記で置き換わって

طِغْنَرِيّ
[ ṭighnarīy ] [ ティグナリー(ユ/イ) ]

に。文語アラビア語(フスハー)の発音では最後の「y」をきちんと読むので「ティグナリー」というよりは「ティグナリーィ」に近い読み上げを行うことになります。

さらに現代では日常会話風・口語的な発音で最後の「y」音が落ちて

طِغْنَرِيّ
[ ṭighnarī ] [ ティグナリー ]

になってしまいます。アラブ人名の英字表記に添えられた発音表記や日本語におけるカタカナ表記はこのやや簡略化されたニスバ形容詞の読み方に沿ったものとなっています。

また口語・方言の会話ではこうした語末ののばす長母音「ī」は短母音の「i」になってしまうこと、英字表記では長母音を示す横棒をつけた Tighnarī ではなく Tighnari が多用されていることから、日本語表記で「ティグナリー」よりも「ティグナリ」のような書き方が広く用いられる一因となっています。

 

ニスバ形容詞を作る際に語形変形が必要となる事例

部族名や地名に ـِيّ [ īy(un) ] を加えただけで作られるニスバの例

語末や語形を変えなくてもそのままニスバ形容詞にするための ـِيّ [ -iyy / īy (un/in/an) ] を足すだけで良い基本パターンです。

語末にある格を示す母音や非限定を示す「n」(タンウィーン)をつけない休止形(ワクフ)語形部分+母音「i」+重子音化「yy」

語末にある格を示す母音や非限定を示す「n」(タンウィーン)をつけない休止形(ワクフ)語形部分+長い母音「ī」(+子音化「y」)

で非限定形のニスバ形容詞を作ってから、語頭に定冠詞اَلْ [ ’al- ] [ アル= ] を接頭させます。実際の発音に忠実なカタカナ表記等を行う場合は、定冠詞直後に来る子音(太陽文字/月文字)次第で起こる「l」音の同化について有無を把握する必要があります。

  • بَغْدَادُ
    語末の母音まで全部読む発音:[ baghdādu ] [ バグダードゥ ]
    語末母音を省く休止形発音:[ baghdād ] [ バグダード ]
    【固有名詞~地名・二段変化名詞】バグダード(バグダッド)

    • بَغْدَادِيٌّ
      語末の母音まで全部読む発音:[ baghdādiyyun / baghdādīyun ] [ バグダーディーユン ]
      語末母音を省く文語的休止形発音:[ baghdādiyy / baghdādīy ] [ バグダーディーュ / バグダーディーィ ]
      日常会話・口語的発音:[ baghdādī ] [ バグダーディー ]
      【ニスバ形容詞~非限定・主格】バグダードの、バグダード出身の(人が/は)

      • اَلْبَغْدَادِيُّ
        語末の母音まで全部読む発音:[ ’al-baghdādiyyu / ’al-baghdādīyu ] [ アル=バグダーディーユ ]
        語末母音を省く文語的休止形発音:[ ’al-baghdādiyy / ’al-baghdādīy ] [ アル=バグダーディーュ / アル=バグダーディーィ ]
        日常会話・口語的発音:[ ’al-baghdādī ] [ アル=バグダーディー ]
        【名乗りにおけるニスバ~定冠詞+ニスバ形容詞・主格】バグダードの、バグダード出身の(人が/は)
        ▶ 代表的英字表記:al-Baghdadi / Al-Baghdadi
        ▶ 標準的日本語表記:アル=バグダーディー

部族名や地名を少し変えてから ـِيّ [ īy(un) ] を加える必要があるニスバの例

語形によっては一部を切り取ったり語形を変えたりしてからニスバ形容詞を作る必要があります。

定冠詞を取る

定冠詞اَلْ [ ’al- ] [ アル= ] は固有名詞の先頭に接頭しているので除去してから ـِيّ [ -iyy / -īy ] [ ◯◯イー(ユ/ィ) ] を加えてニスバ形容詞を作ります。

英字表記の場合は地名や部族名などの前についている定冠詞「al-」「Al-」「al」「Al」を取ることになります。

  • اَلْعِرَاقُ
    語末の母音まで全部読む発音:[ ’al-‘irāqu ] [ アル=イラーク ]
    語末母音を省く休止形発音:[ ’al-‘irāq ] [ アル=イラーク ]
    【固有名詞~地名・定冠詞つき】イラク

    • عِرَاقِيٌّ
      語末の母音まで全部読む発音:[ ‘irāqiyyun / ‘irāqīyun ] [ イラーキーユン ]
      語末母音を省く文語的休止形発音:[ ‘irāqiyy / ‘irāqīy ] [ イラーキーュ / イラーキーィ ]
      日常会話・口語的発音:[ ‘irāqī ] [ イラーキー ]
      【ニスバ形容詞~非限定・主格】バグダードの、バグダード出身の(人が/は)

      • اَلْعِرَاقِيُّ
        語末の母音まで全部読む発音:[ ’al-‘irāqiyyu / ’al-‘irāqīyu ] [ アル=イラーキーユ ]
        語末母音を省く文語的休止形発音:[ ’al-‘irāqiyy / ’al-‘irāqīy ] [ アル=イラーキーュ / アル=イラーキーィ ]
        日常会話・口語的発音:[ ’al-‘irāqī ] [ アル=イラーキー ]
        【名乗りにおけるニスバ~定冠詞+ニスバ形容詞・主格】イラクの、イラク出身の(人が/は)
        ▶ 代表的英字表記:al-Iraqi / Al-Iraqi
        ▶ 標準的日本語表記:アル=イラーキー

ة(ター・マルブータ)を取る

女性名詞の語末につく主に女性化用法の ةター・マルブータ)がある場合は、除去してから ـِيّ [ -iyy / -īy ] [ ◯◯イー(ユ/ィ) ] を加えてニスバ形容詞を作ります。

英字表記の場合は典型的女性名詞語形の語末にある「-a」もしくは「-ah」部分を除去する形となります。

*このような女性名詞語末は「h」をふんわり読んで [ マッカフ ] と [ マッカハ ] の中間のように聞こえる [ makkah ] [ マッカ(フ/ハ) ] と発音するのがアラビア語文語(フスハー)本来の休止形(ワクフ)発音ですが、現代会話・口語的な発音では [ makka ] [ マッカ ] となります。同じ名前なのに Makkah、Makka といった英字表記が混在しているのはそのためです。

  • مَكَّةُ
    語末の母音まで全部読む発音:[ makkatu ] [ マッカトゥ ]
    語末母音を省く休止形発音:[ makkah / makka ] [ マッカ(フ/ハ) ]
    マッカ(メッカ)
    【固有名詞~地名・二段変化】マッカ(メッカ)

    • مَكِّيٌّ
      語末の母音まで全部読む発音:[ makkiyyun / makkīyun ] [ マッキーユン ]
      語末母音を省く文語的休止形発音:[ makkiyy / makkīy ] [ マッキーュ / マッキーィ ]
      日常会話・口語的発音:[ makkī ] [ マッキー ]
      【ニスバ形容詞~非限定・主格】マッカ(メッカ)の、マッカ(メッカ)出身の(人が/は)

      • اَلْمَكِّيُّ
        語末の母音まで全部読む発音:[ ’al-makkiyyu / ’al-makkīyu ] [ アル=マッキーユ ]
        語末母音を省く文語的休止形発音:[ ’al-makkiyy / ’al-makkīy ] [ アル=マッキーュ / アル=マッキーィ ]
        日常会話・口語的発音:[ ’al-makkī ] [ アル=マッキー ]
        【名乗りにおけるニスバ~定冠詞+ニスバ形容詞・主格】マッカ(メッカ)の、マッカ(メッカ)出身の(人が/は)
        ▶ 代表的英字表記:al-Makki / Al-Makki
        ▶ 標準的日本語表記:アル=マッキー

注意:
ة(ター・マルブータ)直前の子音が弱文字である ي [ y ](ヤー)や و [ w ](ワーウ)、長母音 [ ā ] [ アー ] の場合は و [ w ] の字を加えてから ـوِيّ [ -wiyy / -wī(y) ] とします。

語末がアリフ(ـا)やアリフ・マクスーラ(ـى)で「-an」もしくは「-ā」音で終わっている名詞

اَلِاسْمُ الْمَقْصُورُ
[ ’ali-smu-l-maqṣūr ] [ アリ・スム・ル=マクスール ]
語末から数えて2文字目の子音への短母音「a」付加、語末つづりがアリフ(ـا)やアリフ・マクスーラ(ـى)であることによって「-an」もしくは「-ā」音で終わっている名詞。

以下の例は人名・地名ではありませんがルールとしては一緒です。

語根のみの3文字からなる名詞
  • عَصًا
    [ ‘aṣan ] [ アサン ]
    【名詞~非限定】杖、棒

    • اَلْعَصَا
      [ ’al-‘aṣā ] [ アル=アサー ]
      【名詞~定冠詞つき・限定】(その)杖、(その)棒
  • فَتًى
    [ fatan ] [ ファタン ]
    【名詞~非限定】青年、若者

    • اَلْفَتَى
      [ ’al-fatā ] [ アル=ファター ]
      【名詞~定冠詞つき・限定】(その)その青年、(その)若者

動詞派生形の受動分詞でも何でも無い語根3文字のみの名詞の場合は語末の元々の語根が و [ w ] と ي [ y ] どちらの弱文字化に関係無く و [ w ] に置き換えた上で ـِيّ [ -iyy / -īy ] [ ◯◯イー(ユ/ィ) ] を加えてニスバ形容詞を作り、語末部分を ـَوِيّ [ -awiyy / – awīy ] [ -アウィー(ュ/ィ) ] に。第2語根(全3文字中の真ん中、語末から数えて2番目)についている母音「a」は保持されます。

  • عَصَوِيٌّ
    語末の母音まで全部読む発音:[ ‘aṣawiyyun / ‘aṣawīyun ] [ アサウィーユン ]
    語末母音を省く文語的休止形発音:[ ‘aṣawiyy / ‘aṣawīy ] [ アサウィーュ / アサウィーィ ]
    日常会話・口語的発音:[ ‘aṣawī ] [ アサウィー ]
    【ニスバ形容詞~非限定・主格】杖・棒の
  • فَتَوِيٌّ
    語末の母音まで全部読む発音:[ fatawiyyun / fatawīyun ] [ ファタウィーユン ]
    語末母音を省く文語的休止形発音:[ fatawiyy / fatawīy ] [ ファタウィーュ / ファタウィーィ ]
    日常会話・口語的発音:[ fatawī ] [ ファタウィー ]
    【ニスバ形容詞~非限定・主格】青年・若者の
語根以外の字が加わるなどして4文字以上からなる名詞
基本は語末弱文字の除去

4文字以上からなる名詞の場合は語末の「-an」もしくは「-ā」音を表す弱文字アリフ(ـا)やアリフ・マクスーラ(ـى)部分を除去し、ـِيّ [ -iyy / -īy ] [ ◯◯イー(ユ/ィ) ] を加えてニスバ形容詞を作ります。

  • بُخَارَى
    [ bukhārā ] [ ブハーラー ]
    【固有名詞~地名】ブハラ *現ウズベキスタンの都市

    • بُخَارِيٌّ
      語末の母音まで全部読む発音:[ bukhāriyyun / bukhārīyun ] [ ブハーリーユン ]
      語末母音を省く文語的休止形発音:[ bukhāriyy / bukhārīy ] [ ブハーリーュ / ブハーリーィ ]
      日常会話・口語的発音:[ bukhārī ] [ ブハーリー ]
      【ニスバ形容詞~非限定・主格】ブハラの、ブハラ出身の(人が/は)
4文字名詞かつ2文字目が子音のみ(無母音、スクーン「ـْ」記号つき)の場合

4文字からなる名詞でかつ2文字目が(無母音、スクーン「ـْ」記号つき)の場合、以下の2通りが可能。

  1. 語末の弱文字を و [ w ] に置き換えてからニスバ語尾 ـِيّ [ -iyy / -īy ] [ ◯◯イー(ユ/ィ) ] を加えて語末部分を ـَوِيّ [ -awiyy / – awīy ] [ -アウィー(ュ/ィ) ] にする。
  2. 語末の弱文字を و [ w ] に置き換えてからニスバ語尾 ـِيّ [ -iyy / -īy ] [ ◯◯イー(ユ/ィ) ] を加え、さらに و [ w ] 手前には長母音アリフ(ا)を挿入して語末部分を ـَاوِيّ [ -āwiyy / -āwīy ] [ ◯◯アーウィー(ユ/ィ) ] にする。

パターン1:ـَوِيّ [ -awiyy / – awīy ] [ -アウィー(ュ/ィ) ]

  • طَنْطَا
    [ ṭanṭā ] [ タンター ]
    【固有名詞~地名】タンター(タンタ)*エジプトの地名

    • طَنْطَوِيٌّ
      語末の母音まで全部読む発音:[ ṭanṭawiyyun / ṭanṭawīyun ] [ タンタウィーユン ]
      語末母音を省く文語的休止形発音:[ ṭanṭawiyy / ṭanṭawīy ] [ タンタウィーュ / タンタウィーィ ]
      日常会話・口語的発音:[ ṭanṭawī ] [ タンタウィー ]
      【ニスバ形容詞~非限定・主格】タンターの、タンター出身の(人が/は)

パターン2:ـَاوِيّ [ -āwiyy / -āwīy ] [ ◯◯アーウィー(ユ/ィ) ]

  • طَنْطَا
    [ ṭanṭā ] [ タンター ]
    【固有名詞~地名】タンター(タンタ)*エジプトの地名

    • طَنْطَاوِيٌّ
      語末の母音まで全部読む発音:[ ṭanṭāwiyyun / ṭanṭāwīyun ] [ タンターウィーユン ]
      語末母音を省く文語的休止形発音:[ ṭanṭāwiyy / ṭanṭāwīy ] [ タンターウィーュ / タンターウィーィ ]
      日常会話・口語的発音:[ ṭanṭāwī ] [ タンターウィー ]
      【ニスバ形容詞~非限定・主格】タンターの、タンター出身の(人が/は)

語末タンウィーンが ـٌ(-un)の代わりに ـٍ(-in)になっている名詞

اَلِاسْمُ الْمَنْقُوصُ
[ ’ali-smu-l-manqūṣ ] [ アリ・スム・ル=マンクース ]
通常のタンウィーン فَاعِلٌ と違って語末にある弱文字のせいで主格:قَاضٍ [ qāḍin ] [ カーディン ]・属格:قَاضٍ [ qāḍin ] [ カーディン ]・対格:قَاضِيًا / قَاضِياً [ qāḍiyan ] [ カーディヤン ] という語形に変形しているタイプの名詞。

語末が ـَاء(-ā’)で終わっている名詞

اَلِاسْمُ الْمَمْدُودُ
[ ’ali-smu-l-mamdūd ] [ アリ・スム・ル=マムドゥード ]
صَحْرَاءُ [ ṣaḥrā’ ] [ サフラー(ゥ/ッ)とサハラー(ゥ/ッ)の中間のような発音 ](砂漠)のように語末が ـَاء [ -ā’ ] [ -アー(ゥ/ッ) ] で終わっている名詞。

ـَاء [ -ā’ ] [ -アー(ゥ/ッ) ] 部分が女性の目印になっている女性名詞

語末の ءハムザ)は必ず و [ w ] に置き換え、その後にニスバ語尾 ـِيّ [ -iyy / -īy ] [ ◯◯イー(ユ/ィ) ] を加えて語末部分を ـَاوِيّ [ -āwiyy / – āwīy ] とします。

  • صَحْرَاءُ
    語末の母音まで全部読む発音:[ ṣaḥrā’u ] [ サフラーウとサハラーウの中間のような発音 ]
    語末母音を省く文語的休止形発音:[ ṣaḥrā’(u) ] [ サフラーゥ/ッとサハラーゥ/ッの中間のような発音 ]
    日常会話・口語的発音:[ ṣaḥrā ] [ サフラーとサハラーの中間のような発音 ]
    【名詞~女性・非限定・主格】砂漠

    • صَحْرَاوِيٌّ
      語末の母音まで全部読む発音:[ ṣaḥrāwiyyun / ṣaḥrāwīyun ] [ サフラーウィーユン / サハラーウィーユン ]
      語末母音を省く文語的休止形発音:[ ṣaḥrāwiyy / ṣaḥrāwīy ] [ サフラーウィーュ/サフラーウィーィ・サハラーウィーュ/サハラーウィーィ ]
      日常会話・口語的発音:[ ṣaḥrāwī ] [ サフラーウィー / サハラーウィー ]
      【ニスバ形容詞~非限定・主格】砂漠の
男性名詞で語末が ـَاء [ -ā’ ] [ -アー(ゥ/ッ) ] になっている場合
基本は ء(ハムザ)の保持

語末の ءハムザ)をそのまま保持した上でニスバ語尾 ـِيّ [ -iyy / -īy ] [ ◯◯イー(ユ/ィ) ] を加えて語末部分を ـَائِيّ [ -ā’iyy / – ā’īy ] とします。

  • قَضَاءٌ
    語末の母音まで全部読む発音:[ qaḍā’u ] [ カダーウン ]
    語末母音を省く文語的休止形発音:[ qaḍā’ ] [ カダーゥ/カダーッ ]
    日常会話・口語的発音:[ qaḍā ] [ カダー ]
    【名詞~男性・非限定・主格】司法、裁判

    • قَضَائِيٌّ
      語末の母音まで全部読む発音:[ qaḍā’iyyun / qaḍā’īyun ] [ カダーイーユン ]
      語末母音を省く文語的休止形発音:[ qaḍā’iyy / qaḍā’īy ] [ カダーイーュ / カダーイーィ ]
      日常会話・口語的発音:[ qaḍā’ī ] [ カダーイー ]
      【ニスバ形容詞~非限定・主格】司法の、裁判の

語末が重子音の ـيّ [ -yy ] で終わっている名詞

語末に重子音(シャッダ記号つき)の ـيّ [ -yy ] がある場合、そのヤーがニスバのパーツであっても語根由来のものであっても同じように除去。その上で最後ニスバのヤー ـيّ [ -yy ] をつけ直します。

元の語の語末ヤー ـيّ [ -yy ] 手前に2文字ある場合はその2文字の直後を ـَوِيّ [ -awiyy / – awīy ] [ -アウィー(ュ/ィ) ] に。2文字目についている母音「a」とします。

*厳密には3文字目の ـيّ のうち1文字目の ـيْـ を除去し、2文字目の ـيـو に置き換えるという考え方をするとのこと。

  • عَلِيٌّ
    語末の母音まで全部読む発音:[ ‘aliyyun / ‘alīyun ] [ アリーユン ]
    語末母音を省く文語的休止形発音:[ ‘aliyy / ‘alīy ] [ アリーュ / アリーィ ]
    日常会話・口語的発音:[ ‘alī ] [ アリー ]
    【人名(男性名)~男性・限定・主格】アリー

    • عَلَوِيّ
      語末の母音まで全部読む発音:[ ‘alawiyyun / ‘alawīyun ] [ アラウィーユン ]
      語末母音を省く文語的休止形発音:[ ‘alawiyy / ‘alawīy ] [ アラウィーュ / アラウィーィ ]
      日常会話・口語的発音:[ ‘alawī ] [ アラウィー ]
      【ニスバ形容詞~非限定・主格】アリーの、アラウィー(派)の

語形自体を組み替えてからのヤー付加

語形を変えてからニスバ形容詞にすることもあります。

  • قُرَيْش
    [ quraysh / quraish ] [ クライシュ ]
    クライシュ族

    • قُرَشِيّ
      語末の母音まで全部読む発音:[ qaurasiyyun / qurashīyun ] [ クラシーユン ]
      語末母音を省く文語的休止形発音:[ qaurasiyy / qurashīy ] [ クラシーュ / クラシーィ ]
      日常会話・口語的発音:[ qurashī ] [ クラシー ]
      【ニスバ形容詞~非限定・主格】クライシュ族の

      • اَلْقُرَشِيّ [ al-qurashī(y) ] [ アル=クラシー ]
        al-Qurashi、クライシュ族出身の ← 名乗りにおけるニスバ

*クライシュのニスバについては語形変化の無い اَلْقُرَيْشِيّ [ ’al-qurayshī(y) / ’al-quraishī(y) ] [ アル=クライシー(ュ/ィ) ] という形もあります。

限定/非限定と格変化に応じた発音のバリエーション

非限定形のニスバ形容詞と語末の格変化

日本で出されている学習書や歴史関係書籍・辞典などに載っているニスバ形容詞は休止形(ワクフ)と呼ばれる系統の発音で、実際の文語アラビア語(フスハー)の文中では語末に格を示す母音などが加わります。

アラビア語の名詞や形容詞は文中での働きに応じて主格、属格(≒所有格)、対格(≒目的格)の3種類に格変化します。ニスバ形容詞に関しては定冠詞がつかず他の語からの属格支配も何も受けていない状態では「格を示す母音+非限定形であることを示す子音 n」が語尾について回ります。

主格:

طِغْنَرِيٌّ
[ ṭighnariyyun / ṭighnarīyun ] [ ティグナリーユン ]
ティグナル村出身の(人が/は)

属格:

طِغْنَرِيٍّ
[ ṭighnariyyin / ṭighnarīyin ] [ ティグナリーイン ]
ティグナル村出身の(人の)

対格:

طِغْنَرِيًّا / طِغْنَرِيّاً
[ ṭighnariyyan / ṭighnarīyan ] [ ティグナリーヤン ]
ティグナル村出身の(人を)
*対格だけは語末に اアリフ)を書き足します。これは対格の時だけ休止形発音が [ ṭighnariyyā / ṭighnarīyā ] [ ティグナリーヤー ] となることに由来したものです。なおタンウィーン記号(ـً)を書く位置は上で示したように学説が分かれており2通り存在します。

定冠詞をつけ限定された場合

アラブ人名英字表記に含まれる定冠詞al-と実際の発音

フルネームに加える時は本人のファーストネームなどを形容詞修飾する形で後置するので、上の非限定形ニスバ形容詞から定冠詞を含んだ限定形に変えます。

アラビア語の定冠詞اَلْ [ ’al- ] [ アル= ] ですが、ل [ l ] の直後に調音部位の近い子音が来ると同化を起こして発音が変化してしまいます。ティグナリーの場合は طِغْنَرِيّ [ ṭighnariyy / ṭighnarīy ] [ ティグナリー(ユ/イ) ] と1文字目の子音が定冠詞との発音同化を起こす ط「ṭ」(太陽文字)なので

اَلطِّغْنَرِيّ
◯ 正しい発音:[ ’aṭ-ṭighnariyy / ’aṭ-ṭighnarīy ] [ アッ=ティグナリー(ュ/ィ) ]
✕ 誤った発音:[ ’al-ṭighnariyy / ’al-ṭighnarīy ] [ アル=ティグナリー(ュ/ィ) ]

となります。人名録として英字表記する際は発音の変化を反映させず一律で「al-T◯◯」などする慣例があるので、書かれているつづりと実際の読み上げとの間に誤差が生じるので要注意です。

人名録に載っているフルネームを主格で発音する場合の母音の揃え方

文中に置かれていない時の単独フルネームでは本人のファーストネームが主格なので、ニスバ形容詞をニスバの部分に置く場合は「定冠詞をつけて限定化する」「語末には主格を示す母音 u を足す」ことになります。

أَبُو عَبْدِ اللهِ مُحَمَّدُ بْنُ مَالِكٍ الْمُرِّيُّ الطِّغْنَرِيُّ الْغَرْنَاطِيُّ

学者名として単独でアッ=ティグナリーと言う時は休止形(ワクフ)発音の اَلطِّغْنَرِيّْ [ ’aṭ-ṭighnariyy / ’aṭ-ṭighnarīy ] [ アッ=ティグナリー(ュ/ィ) ] で構わないのですが、上のように前後に別のニスバがはさまっている状態で息継ぎ無しの一気読みをした場合、純文語的な発音では定冠詞先頭の [ ’a ] [ ア ] 音が落ちるので

الْمُرِّيُّ الطِّغْنَرِيُّ الْغَرْنَاطِيُّ
[ -ṭ-ṭighnarīyu- ] [ ・ッ=ティグナリーユ・ ]

に変わります。

ニスバ形容詞を含むフルネームが文中に来た場合

限定形のニスバ形容詞と語末の格変化

非限定形の時と同様、定冠詞がついたニスバ形容詞は実際のアラビア語の文中では語末に格を示す母音が加わります。

アラビア語の名詞や形容詞は文中での働きに応じて主格、属格(≒所有格)、対格(≒目的格)の3種類に格変化します。アラビア語文を文語(フスハー)としてきっちり母音をつけながら読む場合はフルネームの前パーツに関してこの格変化部分を正しく読む必要があります。

ニスバ部分に関しては

主格:

اَلطِّغْنَرِيُّ
[ ’aṭ-ṭighnariyyu / ’aṭ-ṭighnarīyu ] [ ティグナリー ]
(その)ティグナル村出身の(人が/は)

属格:

اَلطِّغْنَرِيِّ
[ ṭighnariyyi / ṭighnarīyi ] [ ティグナリー ]
(その)ティグナル村出身の(人の)

対格:

اَلطِّغْنَرِيَّ
[ ṭighnariyya / ṭighnarīya ] [ ティグナリー ]
(その)ティグナル村出身の(人を)
*定冠詞がついて限定された時には対格でも語末に اアリフ)は書き足しません。

となります。また前後に別のニスバがはさまっている状態で息継ぎ無しの一気読みをした場合、純文語的な発音では定冠詞先頭の [ ’a ] [ ア ] 音を落として発音上の連結を行います。

文中での格に合わせて語末につく母音や特殊な名詞の語尾を一部入れ替える

アラビア語文中に埋め込む場合はフルネーム全体の格が主格・属格・対格のどれになるかを確認し、各パーツが正しく格変化・語形変化できているかチェックを行います。

特に「◯◯の父」といったクンヤでは特殊変化をする اَلْأَسْمَاءُ الْخَمْسَةُ [ ’al-’asmā’ul-l-kamsa(h) ] [ アル=アスマーウ・ル=ハムサ ](五名詞)を含むので、主格は أَبُو [ ’abū ] [ アブー ]・属格は أَبِي [ ’abī ] [ アビー ]、対格は أَبَا [ ’abā ] [ アバー ] と書き換えるのを忘れないよう要注意です。

主格:

أَبُو عَبْدِ اللهِ مُحَمَّدُ بْنُ مَالِكٍ الْمُرِّيُّ الطِّغْنَرِيُّ الْغَرْنَاطِيُّ
[ ’abū ‘abdi-llāhi muḥammadu bnu mālikini-l-murrīyu-ṭ-ṭighnarīyu-l-gharnāṭīyu ]
[ アブー・アブディッラーヒ・ムハンマドゥ・ブ・マーリキニ・ル=ムッリー・ッ=ティグナリー・ル=ガルナーティー ]

属格:

أَبِي عَبْدِ اللهِ مُحَمَّدِ بْنِ مَالِكٍ الْمُرِّيِّ الطِّغْنَرِيِّ الْغَرْنَاطِيِّ
[ ’abī ‘abdi-llāhi muḥammadi bni mālikini-l-murrīyi-ṭ-ṭighnarīyi-l-gharnāṭīyi ]
[ アビー・アブディッラーヒ・ムハンマディ・ブ・マーリキニ・ル=ムッリー・ッ=ティグナリー・ル=ガルナーティー ]

対格:

أَبِا عَبْدِ اللهِ مُحَمَّدَ بْنَ مَالِكٍ الْمُرِّيَّ الطِّغْنَرِيَّ الْغَرْنَاطِيَّ
[ ’abā ‘abdi-llāhi muḥammada bna mālikini-l-murrīya-ṭ-ṭighnarīya-l-gharnāṭīya ]
[ アバー・アブディッラーヒ・ムハンマ・ブ・マーリキニ・ル=ムッリー・ッ=ティグナリー・ル=ガルナーティー ]

このような発音は日常会話では行いませんがTV・ラジオ番組も含めて文語度が高めな純フスハー的読み上げ方ではしばしば登場するので、必要な方は使い分け・読み分けができるようにしておく必要があるかと思います。