★★★☆☆
現地教科書コピーに日本語解説をつけて製本化した感じのテキスト
文字表を集合住宅に見立てた覚え方のコツは詳しいがかえって難解な印象
著者:森 伸生、山形 洋一
出版社:国際語学社
著者の先生について
森 伸生 先生
1951年生まれ。拓殖大学政経学部卒業後、非常勤講師職を経てサウジアラビアのウンム・アル=クラー大学でイスラーム学を専攻し卒業(イスラーム布教・文化学士)。サウジアラビア日本大使館専門調査員、拓殖大学 海外事情研究所教授を経て、現・拓殖大学イスラーム研究所教授/所長。
山形 洋一 先生
同じ国際語学社から『おもしろく学ぶネパール語』という本を出された山形 洋一 先生と同じ方だと思われます。1946年生まれ、東京大学農学部卒業、農学博士(応用昆虫学)。ネパール、インド滞在経験に触発されWHOやJICAの専門家としての道を選ばれ世界各地に赴任。熱帯病を媒介する昆虫の 駆除法開発に従事されていたようです。山形豪さんという写真家が息子さんで「FROM THE LAND OF GOOD HOPE 懐かしき異郷」という展覧会を一緒に開催されたこともあったのだとか。
本の概要
●国際語学社という東京都豊島区にあった出版社から1992年発売。私が古本で入手した物は2005年の第5刷でした。国際語学社は『まずはこれだけ アラビア語』『まずはこれだけ エジプト・アラビア語』も出していた語学系出版社でしたが倒産。現在は中古市場で古本を探す形になります。
●1~10ページがアラビア文字や記号の解説、11~20ページが3階建て30室マンションにアルファベットを配置していくという独自の覚え方秘訣の説明、22~89ページが文字練習帳、90~92ページが人名練習帳、93~121ページが単語練習帳、124~128ページが草書体(クルア書体)のサンプル、129ページが地名リスト、130ページが新聞・広告等から抜粋したロゴ、という構成です。
●ج ح خ を真横に書いていく一般的なつづりり方と斜め左下につづっていく方法の2通りが載っています。最近のアラビア語入門書では触れられていないポイントです。
表記について
●日本語部分はワープロ打ちした物を一度プリントアウトして原稿にしたのかややドットを感じるフォントで文字もやや不鮮明です。アラビア文字解説の部分は現地の書籍をコピーした後でアラビア語部分に母音記号だけ手書きで追加してあるように見えます。
●アラビア文字・単語練習帳や例文は現地で発行されたアラビア語教科書から取ってものと思われます。コピーに日本語での意味とローマ字転写(英字表記)をくっつけて再度コピーして作ったらしく、灰色になっているなぞり書き部分がにじんだ感じになっていて母音記号等も半ばかすんでいる箇所が多いです。
●誤字脱字は少なめです。
感想
●アルファベット表を集合住宅に見立てて配置していくという覚え方の秘訣部分はとても丁寧なのですが、無声音・有声音といった用語が説明無く使用されていたりギリシア語・ラテン語との関連性が引き合いに出されていたりと、アラビア語を気軽に学びたい非多言語学習勢にとっては決してわかりやすいとは言い難いように感じました。これを読んで一発で覚えられる方のほうが少ないのではないでしょうか。普通にアルファベットを覚えてしまうよりも遠回りな手順な気もします。
●今は『アラビア文字を書いてみよう読んでみよう』(白水社)や『読める書ける アラビア文字練習プリント』(小学館)といった本がありますので、初学者特に独学の方はそれらの本を最初の1冊とすることをおすすめします。
(2022年2月修正)
アラビア文字の第一歩 読み方と書き方 著者:森 伸生、山形 洋一 出版社:国際語学社 |