サウジアラビア ミスク財団マンガプロダクションズのアニメ・マンガ・ゲーム事業

ミスク財団傘下会社マンガプロダクションズとは

長くなったので『サウジアラビアの娯楽庁、アニメ・マンガ・ゲーム事業、ミスク財団について』から分離しました。サウジアラビア(総合)娯楽庁やミスク財団についてはそちらを御覧ください。

経営母体であるミスク財団とは?

アラビア語名称:مُؤَسَّسَةُ الْأَمِيرِ مُحَمَّدِ بْنِ سَلْمَانَ بْنِ عَبْدِ الْعَزِيزِ الْخَيْرِيَّةُ
アラビア語略称:مُؤَسَّسَةُ مِسْك الْخَيْرِيَّةُ
英語名称:Prince Mohammed bin Salman bin Abdulaziz Foundation
英語略称:MiSK Foundation
日本語略称:ミスク財団
公式サイト:https://misk.org.sa/en/

「ミスク財団」はムハンマド王太子(皇太子)直轄の非営利財団の通称です。

アニメ好きで『ONE PIECE』としても知られるムハンマド王太子(皇太子)は30代後半。アラブ世界では約20年前にシリア系のアニメ専門チャンネルが開局、ADSL普及に合わせ日本アニメ・マンガの情報が身近になり、ONE PIECEなどの人気が一気に高まりました。現在40歳前後のサウジアラビア人はちょうどアニメにはまりやすい高校生ぐらいの時期にそれらの作品に触れて育った世代に当たります。

トップの趣味ゆえにおたく系事業のイメージがつい先行しがちなミスク財団ですが、実際にはサウジアラビア王国の次世代に関連した様々な分野に関与。近未来的都市計画NEOM(ネオム)とはまた別に作られたMohammed Bin Salman Nonprofit City(略称:MISK City、ミスク・シティー)を建設するなど、その存在感は非常に大きいです。

青少年育成、子育て・教育支援、各国へのサウジアラビア人留学生派遣、世界各社と協定を締結しての技術研修などを幅広く実施。非営利財団とはいうものの、サウジアラビア王国のあらゆる事業に関与し驚くべき規模で活動を展開しているとの印象です。

日本ではアニメ・マンガ・ゲーム関係の合作や買収のニュースで知られているこのミスク財団ですが、東京大学を始めとする各大学複数有名企業との間に協定を締結し留学生・研修生を派遣するなど、各方面でのつながりが生まれています。

東京大学に関しては王太子(皇太子)の名前を冠した東京大学ムハンマド・ビン・サルマン未来科学技術センター(MbSC2030)も設立。ミスク財団マンガプロダクションズCEO / マンガ・アラビア編集長でもあるブカーリ・イサム(イサム・ブカーリ)博士が執行委員として参加しています。

マンガプロダクションズ概要

مَانْجَا لِلْإِنْتَاجِ
[ māngā li-l-’intāj ] [ マーンガー・リ・ル=インタージュ ]

英語名称:Manga Productions
日本語名称:マンガプロダクションズ

ミスク財団傘下の会社で、アニメーション・ゲーム・コミックを制作。2019年に東京支社(2023年現在所在地:港区虎ノ門2-10-4 オークラプレステージタワー10階)をオープン。

  • サウジアラビアからのメッセージを世界に届ける
  • 次世代の善き価値観の育成
  • プロレベルの高品質な作品を生み出す
  • 国外から技術移転し、サウジ国内におけるアニメ産業を確立する
  • サウジやアラブ世界の若手クリエイターを支援する

ことを目標に活動しているスタジオとして活動拡大を続けています。

マンガプロダクションズが日本の東映アニメーションと提携してきたことは有名ですが、日本の大学に学生を派遣しゲーム制作技術を学ばせたり、他国とのパートナーシップを結んだりと各方面に進出。

活動紹介やスタッフインタビューによると、

  • マレーシアで技術研修(ミスク財団とKADOKAWAの契約により同社のマレーシア支社に派遣したという報道も)
  • アメリカの企業からオンライン研修をしてもらったり

とスタッフの育成や待遇も非常に良い様子。

スタッフは全員アラブ人という訳ではなく、従業員リストなどによると既に実績のある欧米出身の人物をライター等として雇い入れてもいるようで、サウジ他の若手育成とコンテンツ制作の推進に役立てている模様です。

なおメディアの報道によると、アラブ世界で唯一日本風アニメを制作しているスタジオだとされています。

CEO(最高経営責任者)

عِصَام بُخَارِيّ
[ ‘iṣām bukhārī(y) ] [ イサーム・ブハーリー ]
公式英字表記:Essam Bukhary
公式日本語表記:ブカーリ・イサム、イサム・ブカーリ

Twitter:https://twitter.com/essambukhary

長いバージョンのフルネーム عصام أمان الله مرزا بخاري、Essam Amanallah Bukharyなどでプロフィール掲載されていることも。ブハーリーは「(ウズベキスタンの都市)ブハラ出身の」というファミリーのルーツを示すニスバで、CEOの一族がウズベキスタンルーツのサウジアラビア住民であることを表しています。

日本における標準的なカタカナ表記に基づけばイサーム・ブハーリーとなるのですが、昔からご本人が氏名を逆にしてkhをカ行とする「ブカーリ・イサム」と使っていたので後者の方が公式表記ということになります。また最近ではアラブ式の順番に戻した「イサム・ブカーリ」の語順でプレスリリースに登場するようにもなってきています。

早稲田大学・大学院卒業。アラブ イスラーム学院文化・広報部長、サウジアラビア王国大使館 文化部 文化アタッシェ、東海大学国際教育センター客員教授、ARINAT社CEOなどを経て現職。キング・アブドゥルアズィーズ大学准教授。

*ARINATはガイナックスとの合作でアニメ『砂漠の騎士』を制作する予定であることを予告していましたが、その後活動が止まってしまったようでサイトの更新も無く砂漠の騎士もリリースされていません。

東京在住時代にはNHKラジオアラビア語講座『話そう!アラビア語』にも出演。東京にあるサウジアラビア大使館に在籍されていた時には留学生事業を牽引するなど色々な業績をお持ちの方だといった印象です。

早稲田の学生だった頃から日本のメディアとはつながりがあり、アラブ人離れした行動力と意思の強さを持った人物でした。サウジアラビアにおけるアニメ・マンガ・ゲーム事業の成功は彼がいてこそだったと言っても過言ではないと思います。

このCEOも含め、マンガプロダクションズにはガチの日本アニメファンが揃っているらしく、「アラブのアニメファンだったらこういうのが嬉しいでしょ」的な部分を的確に攻めてくるのがこのスタジオの特徴だとも言えます。日本企業に任せきりにせず、「ぼくらが考えた最強のアニメ」を打ち出してくるので今後も色々なプロジェクトが誕生していくことが予想されます。

ちなみに『グレンダイザーU』発表会の場にいた「石油王」「社長」と言われている人物が彼で、石油王ではなくムハンマド王太子(皇太子)からアニメ・マンガ・ゲーム事業を任されている実働部隊の大元締め的な役割を負っている現場のトップさんです。

マンガプロダクションズの目標・方針

会社の目標や方針についてもう少し詳しく見てみたいと思います。

マンガプロダクションズはサウジアラビアのムハンマド王太子(皇太子)がトップに立っているミスク財団傘下で、財団が掲げている若者・次世代の育成という目標に沿った作品作りをしています。

「今度これこれこういう日本のアニメを見たいからスポンサーとして資金を出して作ってもらって」というアニメ好きな王太子(皇太子)による鶴の一声でできたというよりは、「大勢のスタッフがいて企画を練って国策に合ったコンテンツを生み出している」というのが実態になります。

報道やインタビューから判明しているマンガプロダクションズの方針・目標は以下の通りです。

産業の基礎作りと若手育成

  • アニメ・ゲーム・コミックといった娯楽産業をサウジアラビア国内で育てる。
  • サウジ人の若手を育成・起用する。
  • イラスト・デザイン・演技などの才能を活かしたい、業界で働きたいと考えている若者を引き上げる。
  • 完全に自力で制作できるようになるまで努力を続ける。
  • 高品質なエンターテインメント作品をリリースし、世界各国に販売する。アニメ産業の盛んな日本にもコンテンツを売り込むことは大きな目標でもある。

自国民の教育とアイデンティティー形成

  • 西洋・東洋世界各国で作られた外国製コンテンツを消費しているサウジアラビアの子どもたちに、自分と同じサウジ人が作ったアニメやコミックを提供する。
  • サウジアラビアやアラブの歴史・偉人を誇りに思うような、ポジティブな次世代を形成する。
  • ジャーニーではアニメの中に大切な信念について子供たちが学ぶよう、クルアーンにも登場する預言者らの物語を挿話として入れている。

サウジ文化のPR

  • サウジアラビア・アラブの文化やキャラクターを海外に輸出し親近感を抱いてもらうことで、サウジ・アラブ・イスラームに好感を持つ層を増やす。
  • 海外製とは異なりアラブ・イスラームの価値観に合致し衣装や仕草が正しく描写されている作品をプロデュースすることで「サウジ人が出ている」「アラブ人が活躍している」という実感を強め、サウジ人やアラブ人が自国の歴史・文化・偉人に関心を持ち誇りに思う気持ちを育てる。

『アサティール 未来の昔ばなし』が放映された時には、「日本の子供たちが作品を気に入り、登場人物にも関心を持った」「同じアニメ制作の目的の一つであるサウジアラビア文化PRが実現できた」という内容の報告がアラビア語動画の形で公開されました。

こうしたビデオからもサウジやアラブの文化・歴史・宗教・偉人にまつわるストーリーの海外輸出を目指しているマンガプロダクションズの姿勢がうかがえるかと思います。

マンガプロダクションズの歴代作品

きこりと宝物(キコリと宝物)

كَنْزُ الْحَطَّابِ
[ kanzu-l-ḥaṭṭāb ] [ カンズ・ル=ハッターブ ]
邦題:きこりと宝物、キコリと宝物

マンガプロダクションズと日本の東映アニメーションとの初の共同制作。2018年5月20日にテレビ東京にて放送。アラビア語版の収録は東京にある東映デジタルセンターで行われれそうで、サウジアラビア、イエメン、イラク等在住の声優さんたちを招聘したのだとか。

サウジアラビアの民話が元になっているというこのアニメの主人公はきこりの男で、夢のお告げに従い宝物を探し当てます。しかし宝物が気になりすぎて平和な生活を失ってしまい、幸せの意味について改めて知るというストーリーになっています。

日本語版です。

アラビア語版(英語字幕つき)です。

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アサティール 未来の昔ばなし

أَسَاطِيرُ فِي قَادِمِ الزَّمَانِ
[ ’asāṭīr(u) fī qādimi-z-zamān ] [ アサーティール・フィー・カーディミ・ッ=ザマーン ]
邦題:アサティール 未来の昔ばなし

マンガプロダクションズと東映アニメーションとの共同制作。

東映にただ外注しただけではなくサウジ側のスタッフも作画に参加。話数が多かったため最初は制作修行のような形で始め、最後の方はアラブ人スタッフの関与比率を大きく上げたのだとか。そのため数字の大きい放送回ほどアラブ人アニメーターの作画部分が多くなっているということのようです。

放送時期的には合作第2弾ということになるのですが、関係者のインタビューからすると映画『ジャーニー』の制作の方が先だったようで動画でジャーニーの方を共同制作2作目と言っていたように記憶しています。そのため、制作を開始した時期としては『きこりと宝物(キコリと宝物)』→『ジャーニー』→『アサティール』だったということになる模様。

アラブ地域では2020年1月より放送。日本ではJ:COMのコミニティチャンネルJ:テレで2020年4月4日より放送開始。現在は動画オンデマンドとして各社が配信。アラビア語版はムハンマド王太子(皇太子)とのつながりが強いサウジ資本テレビ局 mbc のオンデマンド動画配信サービス شاهد(Shahid / シャーヒド)で視聴可能です。

アサティールは2050年という未来のサウジアラビア首都リヤド(=リヤード)に住むアスマ(=アスマー)という老女が孫たちにアラビア半島の昔話や偉人の逸話を語って聞かせるというストーリーで、サウジの子どもたちも知っているような有名人物が1人ずつ登場。

アラビア語版主題歌の作詞・作曲・歌唱はアラブアニメ界のアニソン女王 رَشَا رِزْق [ rasha rizq ] [ ラシャー・リズク ](公式英字表記:Rasha Rizk)が担当。日本に同等のアニソン歌手がいないと言っても過言ではないぐらいにとにかく大量のアニメソングを歌っており、Spacetoon世代は1日に何度も彼女の持ち歌を耳にして育ったこともあってアラブ諸国における人気は絶大です。

本作ではサウジアラビア出身といったアラブ人の若手声優を起用する一方で、アラブの吹き替えアニメ界の大御所・レジェンドたちをゲスト声優という形で次々に出演させました。

グレンダイザー主人公役を演じたジハード・アル=アトラシュ氏。彼以外にもアニメ特集で必ず登場するような豪華な顔ぶれが出演。夢の詰め合わせとでも言うべきメンバーをゲスト役として集めたようです。各声優さんたちのゲスト出演動画を見ましたがびっくりするほどのラインナップでした。

昔話アニメの أَسَاطِيرُ فِي قَادِمِ الزَّمَانِ [ ’asāṭīr fī qādimi-z-zamān ] [ アサーティール・フィー・カーディミ・ッ=ザマーン ](邦題:アサティール 未来の昔ばなし)制作時代にサウジアラビア系ニュースチャンネルで紹介されたマンガプロダクションズの現場風景です。

同社の目標はアニメ・ゲーム技術のサウジ移転とアニメ産業のサウジ国産化ならびに同産業の確立、サウジ製コンテンツを日本や世界に輸出すること。

サウジアラビア側でストーリーを考え、日本側で制作。マンガプロダクションズはサウジと日本にチームがおり、それぞれが日本のパートナーと協同し作業。

同社のスタッフは日本語ができるので情報伝達も容易。キャラデザイン・背景・衣装・ボディーランゲージといった要素が正しく描かれるよう参画。

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ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語

2021年夏に公開されたマンガプロダクションズと東映アニメーションとの共同制作映画です。サウジ製コンテンツ世界輸出の足がかりと位置づけられている力作となっています。

各国語版の声優陣が豪華極まりないドリームチーム状態なのも特徴で、日本語版の主要キャラを古谷徹、三石琴乃、神谷浩史、中村悠一、中井和哉、黒田崇矢各氏が担当。

日本のアニメ事業を真似て各種公式グッズも作られ、主人公アウスのフィギュア限定販売も行われるなど、マンガプロダクションズがやってみたいと思っていたであろう様々な試みが実行に移された形です。

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サウジアラビア王国建国記念ビデオ

マンガプロダクションズはムハンマド王太子(皇太子)支持メッセージや王国の建国記念日に合わせての高画質祝賀ビデオなども作成。毎年日本のスタジオに制作を依頼しており、日本人アニメーターらが参加しての共同制作になっています。

スタッフ名一覧はYouTubeの動画タイトル下にあるので、サウジ側スタッフがどの部分に関わっているかもそちらで確認可能です。

2019年

2019年公開の『كل عام والوطن الغالي بخير』[ kull(u) ‘ām(in) wa-l-waṭanu-l-ghālī bi-khayr/khair ] [ クッル・アーム・ワ・ル=ワタン・ビ・ハイル ](どの年も愛しき祖国が安寧でありますように)。

アメコミ?風の劇画調映像でサウード家による闘争を描いており、冒頭でヒジュラ暦1319年つまり西暦1902年の出来事であることが示され、アブドゥルアズィーズ王による(アッ=)リヤード奪還がテーマになっていることがわかります。最後に近代サウジアラビアを背景に登場するのはサルマーン国王とムハンマド王太子(皇太子)。

2020年

2020年9月公開の『العوجا』[ ’al-‘awjā/‘aujā、口語発音は‘ōjaなど ] [ アル=アウジャー(ッ)、口語発音はオウジャやオージャ ]。オージャはサウード家の居城があるなどする王家拠点の地名です。

サウジアラビア王国建国までに数々の戦いを繰り広げたサウード王家の面々と戦場における活躍の様子を描いた作品で、最後は現国王やムハンマド王太子(皇太子)らとはためくサウジアラビア国旗で締めくくり。

2021年

2021年9月の建国記念日祝賀ビデオ『وطننا نفديه』[ waṭanunā nafdīh(i) ] [ ワタヌナー・ナフディーヒ ]。直訳は「我らが祖国に我らは身を捧げます」。

大切な国土サウジアラビア王国の象徴と思われる木箱を守る軍人、消防士、国民ら。白昼夢のようなビジョンから覚醒した少年。皆が強大な敵と戦って守った木箱の鍵を開けると中にはサウジアラビア王国の国旗が入っていた、というストーリー。

2022年

2022年はサウジアラビア名物とそのアラビア文字つづりを次々に登場させ、最後に「س(s)の字の国は?」「اَلسُّعُودِيَّة [ ’as-su‘ūdīya(h) ] [ アッ=スウーディーヤ ](サウジアラビア)!」と子どもたちが声を揃えて祖国の名前を叫ぶといった構成。

サウジアラビア国旗カラーのオリジナルロボットが伝統的な冬の防寒毛皮コートであるファルワをまとって現れたり、アラビア湾岸に名を轟かせたという隻眼の海の漢 رحمة الجلاهمة(ラフマ・アル=ジャラーヒマ)が出てきたりと、短い動画ながら盛りだくさんの内容となっています。

サウジアラビアのシンボルを多数登場させていること、非常に美麗な映像であることから歴代の建国記念日祝賀ビデオの中でも閲覧数が多く、「サウジ人が作ったサウジのアニメがこんなにハイクオリティーだなんて嬉しい」「よくやった」「みんなのことが誇らしい」「新作アニメのプロモということなら本編を見てみたい」といった絶賛コメントが寄せられています。

2023年

この年の祝賀ビデオは国防とサウジアラビア王国を支える人々がテーマ。主人公は国旗を身にまとった凛々しい少年。街中に出現する巨大モンスターとの戦いに現代の戦闘機、タイムリープしてきた過去と未来の戦士ら、宇宙戦艦が加わるというストーリーになっています。

最後のシーンでは少年のおじちゃんも国防の士だったことが判明。少年も祖父の思いを引き継ぎ国を愛し祖国のために尽くす若者に育っていくことを示唆したラストに仕上がっています。

途中異次元から出現した国に貢献する人々はサッカー選手、女性職員、音楽家なども含まれておりエンターテインメント政策や女性の社会進出・就業を推進する同国の方針を反映していると言えそうです。

昨年同様アニメ制作は日本のCygames(サイゲームス)が担当。監督は井端義秀氏。

マンガプロダクションズのグレンダイザー事業

アラブ世界におけるグレンダイザーのライセンスを獲得したものミスク財団傘下マンガプロダクションズで、ダイナミック企画(Dynamic Planning)らとグレンダイザー新作計画 ProjectG を立ち上げ。

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ギネス記録達成のグレンダイザー立像

ダイナミック企画とパートナーシップ契約を結び新作制作計画を発表したサウジアラビア王国ムハンマド王太子(皇太子)直営団体ミスク財団傘下マンガプロダクションズ(Manga Productions)が2022年12月に全高33.7mのグレンダイザー像を建設しギネス認定され話題になりました。

ゲーム『UFOロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも』

アラブ地域では2023年11月14日発売予定となっているゲーム『 مغامرات الفضاء جريندايزر: وليمة الذئاب 』(ムガーマラートゥ・ル=ファダー(ッ)・グレーンダーイザル:ワリーマトゥ・ッ=ズィアーブ、意味は「宇宙の冒険グレンダイザー:狼たちの饗宴」)を発表。開発時には敵側怪獣のデザインコンテンストも行われました。

日本語版タイトルは『UFOロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも』で11月13日発売予定だとか。

TVアニメ『グレンダイザーU』

ゲームに続き2023年8月には新作TVアニメ『グレンダイザーU』が2024年放映予定であるとの発表も。マンガプロダクションズが行うのは海外配信、ライセンシングだとのこと。

  • 監督:福田己津央
  • 脚本:大河内一楼
  • キャラクターデザイン:貞本義行
  • オリジナルサウンドトラック:田中公平

映画『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』の時同様、アニメ好きが高じてマンガプロダクションズに入社を果たしたという経路をたどっていることが多いサウジ側関係者たちが考えたであろう夢の布陣となっており、日本でも話題になっているかと思います。

その他の契約

キャプテン翼

2023年4月4日、マンガプロダクションズは株式会社TSUBASAとのパートナーシップ締結を発表。『キャプテン翼』の制作協力および配給を含む内容となっています。

今はまだ新作発表などは行われていませんが、ムハンマド王太子(皇太子)ゆかりの放送局MBCが持つサウジアラビア系ニュース専門チャンネルで「グレンダイザーの新作が発表されました。次はキャプテン翼の新作が見てみたいですね。」とのアナウンスが流れるなどしていたので、ひょっとすると将来的にマンガプロダクションズ関与による新作制作→MBC Anime(MBCアニメ)で放送→オンデマンドでも配信、ということも起き得るかもしれません。

またこれと前後して、実在するサッカークラブである南葛SCの外資系ユニフォームパートナーになったことも発表されています。

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ビデオゲーム開発

ゲーム産業確立を目指して

インターンシップ制度を活用しての海外派遣と研修、コンテストを開催してのキャラクターデザイン採用など、ビデオゲーム産業を打ち立てようという試みもなされています。

マンガプロダクションズが公開している講演会動画。大学の施設で開催されたもので、ゲーム産業や海外研修の話など大変真面目な内容のレクチャーとなっています。

サウジ人ゲームキャラ「ナジュド」の投入

THE KING OF FIGHTERS XIVではアラブ人女性がデザインしたキャラデザインコンテスト優勝作品を元にしたナジュドを2018年4月から配信開始。サウジアラビアの首都リヤード(リヤド)を舞台にしたステージが用意されました。

デザインコンペはSNKとマンガプロダクションズが開催したもので、告知を見た若者たちが応募。

2017年11月に結果が発表され、サウジアラビア人女性がデザインしたサウジ出身女性キャラが選ばれました。

2018年にはファンアートコンテストも開催。

国際的パートナーシップを通じた人的交流と地元人材育成

日本の東映アニメーションとの提携

東映との提携のきっかけ

2021年5月に公開された『海外市場開拓の紹介』という動画で東映アニメーションの清水慎治顧問が提携の経緯を語っています。

サウジアラビアがまだ観光客の受け入れをしていなかった約10年前、王子だったムハンマド王太子(皇太子)が東映の清水氏らを招聘し歓待。東映作品の大ファンだというムハンマド王太子(皇太子)はその時既にサウジアラビアがアニメ産業に参入することを希望していたようで、清水氏といつか一緒に仕事をしようという話になったのだとか。

後半は合作エピソード。インターンを2ヶ月受け入れたこと、サウジ人スタッフたちが非常に優秀で画力もあったこと、日本人が驚くほどにやる気・喜びに満ちていたことなど。絵を描きたくてたまらず皆残業して宿舎に帰ろうとしなかったそうです。頼まれてカラオケに連れて行ったら皆日本語でアニソンを熱唱した話も紹介。

サウジアラビアと日本との合作

マンガプロダクションズによるサウジアラビア初の長編アニメ『ジャーニー』は日本の東映アニメーションとの合作で4DX技術を採用。

日本語ニュースではサウジ初のアニメ映画という点が強調されたため「日本で作ってサウジはお金を出しただけなのでは?なんでサウジ製を名乗っているのか?」と疑問に思われた方も多かったようですが、本国では共同制作であり未だアニメ産業の黎明期にあるサウジ側が日本の東映に加わる形で作られたことがきちんと説明されています。

具体的には資金を出すスポンサーになるだけの外注ではなく、

  • サウジ側があらすじを考える。
  • アラブ・イスラーム文化的にどのような作品にすべきかという全体的な監修を日本語が堪能で東京在住歴が長かったCEOが担当。
  • 日本の制作陣をサウジアラビアに招いてアラブ文化やサウジアラビアの風土を実際に見て感じてもらう。
  • マンガプロダクションズには東京支社があり、日本国内における制作の各工程にスタッフを入れ作業に参加させる。
  • 海外製アニメは衣装・武器・戦闘スタイル・ジェスチャーなどが間違っているため、アラブ人側が資料を提供すると共にアニメーター側から質問があればそれに答える。

といった形でコンテンツづくりに参加しているとのこと。

コンテストの開催

マンガプロダクションズと東映が合同で開催したイベントの様子です。

両会社は2017/11/13にイラスト&キャラクターデザインコンテストも開催。東映アニメーションのスタッフに自作品を見てもらえるという豪華なイベントだったようです。

前半はサウジアラビア人クリエイターらに日本人有名漫画家(尾田栄一郎氏、鳥山明氏)の生活ぶりを披露する東映アニメーション清水慎治氏の談話。後半はサウジのマンガプロダクションズ社によるコンテストと表彰。

趣味・二次創作・大学での専攻等を通じイラストの才能を身につけた若手の発掘・支援活動をジャーニー等公開前からずっと行っていたことがうかがえます。

東映アニメーションの決算報告書

東映アニメーションとサウジアラビアとの提携事業については東映側の決算報告などにも記載されています。どの時期にどの作品の作業をしているかを確認することも可能です。

KADOKAWAコンテンツアカデミーによるマンガ講座

アニメ・マンガ・ゲーム等の制作と並行して、マンガプロダクションズはKADOKAWA Contents Academy(KADOKAWAコンテンツアカデミー)と共催でマンガの描き方講座も開催。

MANGA ART LAB(マンガ・アート・ラボ)といったプログラム名にて開催。マンガプロダクションズ、経営母体のミスク財団(初期開催分)、政府機関 هَيْئَةُ الْأَدَبِ وَالنَّشْرِ وَالتَّرْجَمَةِ [ hay’atu/hai’atu-l-’adab(i) wa-n-nashr(i) wa-t-tarjama(h) ] [ 会話調簡易文語発音:ハイアトゥ・ル=アダブ・ワ・ン=ナシュル・ワ・ッ=タルジャマ ](The Literature, Publishing & Translation Commission、サウジ文学・出版・翻訳委員会)などがサウジアラビア王国で初のマンガ技術ブラッシュアップ講座として参加者を募集。

特に画力が高い参加者4名は東京で行われた最終レッスン課程に進み、東京アニメーター学院(Tokyo Animator College)で講義を受けている様子などがマンガプロダクションズによって紹介されました。

サウジアラビアではネットで情報を集め独学でイラストを学んでいる若者が多いこともあり、国が開催するマンガ講座の関心はなかなか高いようで、現地に行けない参加希望者も多いことから今ではワークショップがオンライン参加も可能な方式に変わるなどしています。

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日本人クリエイターの招待

映画『ジャーニー』を作るにあたって、マンガプロダクションズはサウジアラビアやアラブのことを良く知ってもらうために日本側制作陣を王国に招待。

作曲家の和田薫氏がマンガプロダクションズスタッフに伴われ、伝統音楽のパフォーマンスに耳を傾けたり、踊りの輪に加わったりしている様子が写っています。CEOインタビューによるとサウジアラビア滞在は合計2回で、サウジアラビアやアラブの音楽に触れてもらったとのことです。

マンガプロダクションズはこのような形でミスク財団との連携やスタジオの様々な活動を公開しその成果を国内外にPRしています。

2018/4/7にリヤードのミスク財団関連施設で開催されたという講演会。マンガプロダクションズのブカーリ・イサム(イサム・ブカーリ)CEOが通訳。最初にサウジアラビアを訪れていた俳優の伊藤 淳史氏のトークと質問会。33:00ぐらいで静野孔文監督が登場し観客が拍手で迎えています。

ミスク財団の若手育成プログラムに従い、サウジアラビアではこうした講演会やワークショップが頻繁に開催されています。