サウジアラビアの娯楽庁・ミスク財団・マンガプロダクションズについて

サウジアラビアとメディア・娯楽産業について

サウジアラビアとエンターテインメント産業

長い間映画館やポップコンサートが禁止だったサウジですがRotanaというサウジ系資本の巨大な音楽レーベルがあり、結構昔からラジオ局を持っていました。現在では衛星テレビ放送チャンネルも増え、ミュージッククリップ・子供番組・映画といったジャンル別に色々な番組を流しています。

またmbcというアラブ世界屈指のテレビ局もサウジ系で、あらゆる種類の娯楽番組を大量に発信。エジプトやイラクといったサウジアラビア以外の地域に合わせた個別チャンネルまであります。

Rotanaはサウード家の王族が所有。mbcも姉妹が前国王に嫁ぎ王家と縁戚関係を持っているビジネスマンが創業した会社で本社はドバイにありますが、近年サウジアラビア本国の影響が増していると言われ経営陣の逮捕や従業員の入れ替えといった大きな動きも見られたとのこと。ムハンマド王太子(皇太子)の方針に従い、チャンネルのサウジアラビア化や本社のドバイ→リヤード(リヤド)移転も今後行われる見込みだとのことです。

サウジ資本のテレビ局の規模にしてはアニメ産業はまだまだ若いのですが、それ以外のテレビ番組制作に関してはそれなりの経験が蓄積されています。サウジアラビアのテレビ局では様々な報道・ドキュメンタリー・コメディー・ドラマ作品を放送。

サウジというとどうしても厳格なイメージが先行しがちですが、ラブソングを歌う歌手も普通に長年活動していたり女性歌手が髪出しのドレス姿でビデオクリップを発表していたりと娯楽に関しては日本で思われているよりはかなり緩いのではないかという気がします。厳しい人もいる一方できっちり戒律を守っていない人もいたりで、国内でも一様ではない感じかと思います。

体制批判につながる発言をしてしまうとテロ組織支援はしていないような昔ながらのイスラーム重視な宗教家が投獄されてしまう可能性もあるせいかサウジ国内から発信される声が非常に大きくなって日本まで届くことはまず無いですが、ワッハーブ派と連動して建国したサウジアラビアがこのように色々なメディアを通じて娯楽を広めていることに関しては近隣諸国の宗教活動家が厳しいコメントをしているのを見かけることがあります。

二大聖地を抱える王国としての立場もあるため、娯楽産業との兼ね合いについては何かと難しいものがあるようです…

「偶像崇拝禁止なのにアニメなんか作っていいの?これって革命的な大事件?」

サウジアラビアはそこまで戒律は厳しくなく、テレビ・ラジオ会社も存在しアニメも多数放映されています。

イスラーム諸国では偶像崇拝につながるような預言者やカリフ、イマームといった重要人物をはっきり描くことは忌避されているためぼんやりした光で表現するといったルールはありますが禁止事項をクリアした上で様々なドラマやアニメが作られています。

ただサウジアラビア自体は元々厳格であろうとするワッハーブ派関係者も少なくなかったため、テレビ放送が解禁になった時には不道徳を世の中に広める悪しき存在だとして抗議活動が巻き起ったこともありました。

王族の一人であったハーリド・イブン・ムサーイド・イブン・アブドゥルアズィーズ王子は自身がモスクで説法を行うなど宗教的に厳格な人物だったのですが、1965年に彼とその支持者らが武装してテレビ局を襲撃するという事件が発生。(最終的にハーリド王子は公安警察との銃撃戦によって死去。)

今ではエンターテインメントを統括する娯楽庁すらあるサウジアラビアですが、色々な議論を経て現在の状況・開国政策に行き着いた形です。

サウジアラビア娯楽庁

娯楽庁の概要

اَلْهَيْئَةُ الْعَامَّةُ لِلْتَّرْفِيهِ
[ hay’atu/hai’atu-l-‘āmma(h) li-t-tarfīh ] [ ハイアトゥ・ル=アーンマ・リ・ッ=タルフィーフ ]
*一般的な読みに基づき2語目と3語目の間を息継ぎした時と同じ切り方で読みガナをつけてあります。
英語名:General Entertainment Authority(略称GEA)

ウェブサイト:https://www.gea.gov.sa/

2016年5月7日設立。サウジアラビア王国が発表し2016年4月25日付でうちたてた「Saudi Vision 2030(サウジビジョン2030)」を受けて作られた機関で、国内の娯楽産業・イベント統括や経済振興を目的として活動。

映画館やポップコンサートの解禁

サウジ国内では2020年を迎える少し前の時期に、映画館設置・ポップコンサート開催・女性の自動車運転が解禁に。マンガプロダクションズの新作アニメ映画『ジャーニー』も国内映画館で上映され、サウジ初の豪華アニメ映画が自国でも見られるという運びとなりました。

映画館は解禁後新設が進み、2021年4月時点の報道によれば6つの行政地区に含まれる12の街に合計34館設置。視聴覚メディア総合委員会(General Commission for Audiovisual and Media、略称GCAM)の予測によれば2030年の時点で350館に達する見込みだとのこと。

コンサートやイベントには規制や禁止事項がつけられた上での開催許可が出た形ですが、娯楽産業の振興の一環としてコミックの祭典Saudi Comic-Con(コミックコン、コミコン)の第1回目が2017年2月中旬に開催。

男女が接触することを嫌う傾向が以前ほどではないにせよまだまだ強いお国柄だけにNG事項は多いようで初回開催時には違反者が処罰を受けたことも報じられましたが、なかなかの盛況だった模様です。

トゥルキー長官

プロフィール

 Wikimedia Commonsより

تُرْكِيّ آلُ الشَّيْخِ
[ turkī(y) ‘ālu-sh-shaykh/shaikh ] [ トゥルキー・アール・ッ=シャイフ ]
トゥルキー・アール・アッ=シャイフ
公式英字表記:Turki Alalshikh

*日本ではトルキ・アル=シャイフという表記が使われるなどしていますが文語では上記のような発音で、口語だとトルキー・アール・ッ=シェイフ/シェーフに近い読まれ方をします。

*アル=シャイフと書かれていることもあるため定冠詞のal-(アル=)と間違えやすいのですが、長官のラストネーム部分は「~家」を示すアールという名詞になっています。

آلُ الشَّيْخِ [ ‘ālu-sh-shaykh/shaikh ] [ トゥルキー・アール・ッ=シャイフ ] 家はアラビア語で「シャイフ(師)の一家」を意味。タミーム族の系譜で、サウード家によるサウジアラビア王国の建国に関わったハンバル派・ワッハーブ派の法学者 مُحَمَّدُ بْنُ عَبْدِ الْوَهَّابِ [ muḥammad bnu ‘abdi-l-wahhāb ] [ ムハンマド・ブヌ・アブディ・ル=ワッハーブ ](ムハンマド・イブン・アブドゥルワッハーブ)の子孫らが名乗っている家名です。

トゥルキー氏は1981年12月4日生まれ、既婚。クンヤ(通称)は أَبُو نَاصِر [ ’abū naṣir ] [ アブー・ナースィル ](ナースィルの父)。アラブ諸国で日本アニメの放送本数が本格的に増え始めた頃が子供時代で、20歳前後の時にアニメ専門チャンネルができたりインターネット高速回線普及でファンサブやファンイラストなどが出回り始めたといった感じの世代に相当。

アール=シャイフからの娯楽庁長官任命と国内における議論

(アッ=)シャイフ家はサウジアラビア王国建国の理念と結びついたワッハーブ派の厳格なイスラームを支え多くの法学者を輩出してきた家系だったため、彼や前任者のようなシャイフ家のメンバーが娯楽庁トップに任命された際には「これまでイスラームと結び付けられてきたアール・アッ=シャイフの家名がエンターテインメント関連の報道が流れるたびに聞かれるようになってしまった。」といった波紋もあったようです。

青年層のアニメ視聴に肯定的なトゥルキー長官

アラブ世界では「アニメ=子供・ファミリー向け」という扱いがずっとされており、アニメを青年以上の年齢が楽しむことに関しては否定的な世論もまだまだあります。

そのような中、トゥルキー・アール・アッ=シャイフ長官はアニメはキッズ専用ではないし日本やアメリカなどでは大人だって視聴しているとTwitterでつぶやき話題となりました。

ご本人は今でもアニメを見るタイプの方らしく、Twitter公式アカウントで好きなアニメ作品として『NARUTO -ナルト-』『ONE PIECE』『鬼滅の刃』『BLEACH』『MONSTER』『進撃の巨人』を挙げています。進撃の巨人の映画が公開された際にも見に行って称賛するコメントを出したことが現地ニュースで報じられていたほどです。

サウジアラビア娯楽庁のトゥルキー・アール・アッ=シャイフ長官が2021年3月中旬にマンガプロダクションズを訪問。現場スタッフのSNSコメントによると、大いに激励されやる気が倍増したとのこと。

アニメエクスポの開催

娯楽庁はアニメイベントであるサウジ アニメエクスポ(エキスポ)「SAUDI ANIME EXPO 2019」を開催。行列ができ3日間で3万8千人近い来客があったとか。

作品紹介展示、漫画家トークショー、大物歌手を呼んでのアニソンコンサート、コスプレ大会等が行われ大盛況。

現地を訪れたファンによるレポート動画です。

キャラクターデザインコンテストも開かれ、「馬に乗るのが得意で頑丈だけれど優しくて、他人を助けることを厭わない親切なベドウィンの青年」という設定のキャラ مُصْلِحٌ [ ムスリフ ] が第1位に。(サウジ人が自国の人を描いているだけあって正確な衣装・髪型・武器になっています。)

ちなみにサウジ初のアニメエキスポは電通によるプロデュースだったそうです。

ミスク財団

ミスク財団概要

مُؤَسَّسَةُ الْأَمِيرِ مُحَمَّدِ بْنِ سَلْمَانِ بْنِ عَبْدِ الْعَزِيزِ الْخَيْرِيَّةُ
[ mu’assasatu-l-’amir muḥammad bni salman bni ‘abdil-‘azīz ’al-khayrīya(h)/’al-khairīya(h) ]
[ 文語風発音:ムアッササトゥ・ル=アミール・ムハンマド・ブニ・サルマーン・ブニ・アブディ・ル=アズィーズ・アル=ハイリーヤ ]
[ 口語風発音:ムアッササトゥ・ル=アミール・ムハンマド・ビン・サルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズ・アル=ハイリーヤ ]
*一般的な読みに基づき語の間を息継ぎした時と同じ切り方で読みガナをつけてあります。

略称:مُؤَسَّسَةُ مِسْك الْخَيْرِيَّةُ [ ムアッササト・ミスク・(ア)ル=ハイリーヤ ]

英語名:Prince Mohammed bin Salman bin Abdulaziz Foundation(略称the MiSK Foundation)

*ムハンマド王太子(皇太子)の王太子就任4周年を祝うマンガプロダクションズによる祝賀ツイート。アラビア文字で「おおせのままに 我が主よ」という旨のメッセージが記載されています。

2011年にサウード家のムハンマド・ビン・サルマーン氏により創立した非営利の財団・慈善団体です。日本での一般的なカタカナ表記は「ムハンマド・ビン・サルマン」。なおビンは「~の息子」という意味の名詞を口語読みしたもので、手前のムハンマドが本人のファーストネーム、後のサルマーンが父親の名前となります。「サルマン皇太子の財団」と紹介している記事もありますが誤りで、王太子本人の名前自体はムハンマドのみとなります。

慈善団体とありますが、実際の活動を見る限りサウジアラビア国内の若者を育成し国外の提携先に派遣したりする政府系機関に近い感じだという印象です。

略称のMiSKはアラビア語名称を縮めたもので、現地ではムハンマド王太子(王国ですが日本では皇太子と書いてあることも多いです)の名前を掲げた財団であり彼の理念を体現した組織だと称賛されるなどしています。

またアラビア語で مِسْك [ misk ] [ ミスク ] は麝香を指し、良い意味で熟語にも使われる名詞でもあります。

若手・次世代を国の重要な財産と位置づけ、教育・メディア・文化・科学技術といった各部門の振興を目標に活動。学校運営、世界各国の有名大学とパートナーシップを結んでサウジ人学生らを派遣する事業も行っているとのこと。

ミスク財団の活動内容

ミスク財団の活動紹介ビデオです。非営利財団であること、国家の重要な資産である若者を教育・メディア・文化の各分野において育成・支援に注力することがまず語られています。

マンガプロダクションズはメディア部門に含まれており、学習教材や役に立つエンターテインメントコンテンツの生産という事業に相当しているようです。

次世代となる国民の幅広い年齢層を対象に活動している様子が写っています。子どもたちにはITを活用した授業やテクノロジー教育。青年らには各種イベントやクリエイターとなる人材の支援なども。

ムハンマド皇太子(王太子)個人と直結している組織のため同氏の動向がミスク財団全体に影響することが考えられます。しかし現在のところ各方面で活動し、今まで企画が立ち上がったり日本企業とのコラボが発表されたきり未完成に終わったアニメ・コミックが多かった中で複数作品をリリースしてきたという点においても若者らの目から見てわかりやすい業績を上げている模様です。

資金の流れが変わったりしない限り日本のアニメ・ゲーム業界への関与・進出も続くものと思われます。

日本企業との提携

日本に関してはみずほ銀行との提携関係があり、銀行部門に就きたい学生の研修も実施されたのだとか。

サウジアラビアのミスク財団、アニメ・ゲームの作画や制作、金融ビジネスなど日本企業でインターンシップ研修を実施』という記事でクウェア・エニックス、東映アニメーション、SNK、みずほ銀行がインターンシップ研修の受け入れ先になったことが書かれており、『ミスク財団、日本のゲームやアニメ企業、銀行でインターンシップ研修を6月末から実施中。』にその時の様子をおさめた写真が掲載されています。

ミスク財団とマンガプロダクションズが日本の各大学にインターンシップ生を派遣している話は『日本・サウジ産学連携強化をめざして、ミスク財団バドル・アルアサーケル氏来日を記念しマンガプロダクションズ活動報告会』で報じられており、東海大学・東京大学・東京工科大学・名古屋大学ほかで再生可能エネルギーや自動車工学、ゲームデザイン等を学ばせ帰国させていることが紹介されています。

マンガプロダクションズ

マンガプロダクションズ概要

مَانْجَا لِلْإِنْتَاجِ
[ māngā li-l-’intāj ] [ マーンガー・リ・ル=インタージュ ]

英語名称:Manga Productions
日本語名称:マンガプロダクションズ

ミスク財団傘下の会社で、アニメーション・ゲーム・コミックを制作。2019年に東京支社をオープン。

  • サウジアラビアからのメッセージを世界に届ける
  • 次世代の善き価値観の育成
  • プロレベルの高品質な作品を生み出す
  • 国外から技術移転し、サウジ国内におけるアニメ産業を確立する
  • サウジやアラブ世界の若手クリエイターを支援する

ことを目標に活動しているスタジオだとのこと。

マンガプロダクションズは日本の東映アニメーションと提携していることは有名ですが、日本の大学に学生を派遣しゲーム制作技術を学ばせたり、他国とのパートナーシップを結んだりもしているとか。活動紹介やスタッフインタビューを見たのですが、マレーシアで技術研修(ミスク財団とKADOKAWAの契約により同社のマレーシア支社に派遣したという報道も)を受けたり、アメリカの企業(企業名は未公開)からオンライン研修をしてもらったり、色々しているようでした。

スタッフは全員アラブ人という訳ではなく、従業員リストなどによると既に実績のある欧米出身の人物をライター等として雇い入れてもいるようで、サウジ他の若手育成とコンテンツ制作の推進に役立てている模様です。

なおメディアの報道によるとアラブ世界で唯一日本風アニメを制作しているスタジオだとのこと。

マンガプロダクションズの目標・方針

会社の目標や方針についてもう少し詳しく見てみたいと思います。

マンガプロダクションズはサウジアラビアのムハンマド皇太子(王太子)がトップに立っているミスク財団傘下で、財団が掲げている若者・次世代の育成という目標に沿った作品作りをしています。

「今度これこれこういう日本のアニメを見たいからスポンサーとして資金を出して作ってもらって」というアニメ好きな皇太子(王太子)による鶴の一声でできたというよりは、「大勢のスタッフがいて企画を練って国策に合ったコンテンツを生み出している」というのが実態になります。

報道やインタビューから判明しているマンガプロダクションズの方針・目標は以下の通りです。

産業の基礎作りと若手育成

  • アニメ・ゲーム・コミックといった娯楽産業をサウジアラビア国内で育てる。
  • サウジ人の若手を育成・起用する。
  • イラスト・デザイン・演技などの才能を活かしたい、業界で働きたいと考えている若者を引き上げる。
  • 完全に自力で制作できるようになるまで努力を続ける。
  • 高品質なエンターテインメント作品をリリースし、世界各国に販売する。アニメ産業の盛んな日本にもコンテンツを売り込むことは大きな目標でもある。

自国民の教育とアイデンティティー形成

  • 西洋・東洋世界各国で作られた外国製コンテンツを消費しているサウジアラビアの子どもたちに、自分と同じサウジ人が作ったアニメやコミックを提供する。
  • サウジアラビアやアラブの歴史・偉人を誇りに思うような、ポジティブな次世代を形成する。
  • ジャーニーではアニメの中に大切な信念について子供たちが学ぶよう、クルアーンにも登場する預言者らの物語を挿話として入れている。

サウジ文化のPR

  • サウジアラビア・アラブの文化やキャラクターを海外に輸出し親近感を抱いてもらうことで、サウジ・アラブ・イスラームに好感を持つ層を増やす。
  • 海外製とは異なりアラブ・イスラームの価値観に合致し衣装や仕草が正しく描写されている作品をプロデュースすることで「サウジ人が出ている」「アラブ人が活躍している」という実感を強め、サウジ人やアラブ人が自国の歴史・文化・偉人に関心を持ち誇りに思う気持ちを育てる。

『アサティール』が放映された時には、日本の子供たちが作品を気に入り登場人物にも関心をもったという内容の報告がアラビア語動画の形で公開されました。こうしたビデオからもサウジやアラブの文化・歴史・宗教・偉人にまつわるストーリーの海外輸出を目指しているマンガプロダクションズの姿勢がうかがえるかと思います。

CEO(最高経営責任者)

 引用元:https://twitter.com/essambukhary

عِصَام بُخَارِيّ
[ ‘iṣām bukhārī(y) ] [ イサーム・ブハーリー ]
公式英字表記:Essam Bukhary
公式日本語表記:ブカーリ・イサム

Twitter:https://twitter.com/essambukhary

長いバージョンのフルネーム、عصام أمان الله مرزا بخاري、Essam Amanallah Bukharyなどでプロフィール掲載されていることも。ブハーリーは「(ウズベキスタンの都市)ブハラ出身の」というファミリーのルーツを示すニスバです。

早稲田大学・大学院卒業。アラブ イスラーム学院文化・広報部長、サウジアラビア王国大使館 文化部 文化アタッシェ、東海大学国際教育センター客員教授、ARINAT社CEOなどを経て現職。キング・アブドゥルアズィーズ大学准教授。

*ARINATはガイナックスとの合作でアニメ『砂漠の騎士』を制作する予定であることを予告していましたが、その後活動が止まってしまったようでサイトの更新も無く砂漠の騎士もリリースされていません。

東京在住時代にはNHKラジオアラビア語講座『話そう!アラビア語』にも出演。東京にあるサウジアラビア大使館に在籍されていた時には留学生事業を牽引するなど色々な業績をお持ちの方だといった印象です。

マンガプロダクションズの歴代作品

きこりと宝物(キコリと宝物)

كَنْزُ الْحَطَّابِ
[ kanzu-l-ḥaṭṭāb ] [ カンズ・ル=ハッターブ ]
邦題:きこりと宝物、キコリと宝物

マンガプロダクションズと日本の東映アニメーションとの初の共同制作。2018年5月20日にテレビ東京にて放送。アラビア語版の収録は東京にある東映デジタルセンターで行われれそうで、サウジアラビア、イエメン、イラク等在住の声優さんたちを招聘したのだとか。

サウジアラビアの民話が元になっているというこのアニメの主人公はきこりの男で、夢のお告げに従い宝物を探し当てます。しかし宝物が気になりすぎて平和な生活を失ってしまい、幸せの意味について改めて知るというストーリーになっています。

日本語版です。

アラビア語版(英語字幕つき)です。

関連記事

アサティール 未来の昔ばなし

أَسَاطِيرُ فِي قَادِمِ الزَّمَانِ
[ ’asāṭīr fī qādimi-z-zamān ] [ アサーティール・フィー・カーディミ・ッ=ザマーン ]
邦題:アサティール 未来の昔ばなし

マンガプロダクションズと東映アニメーションとの共同制作。東映にただ外注しただけではなくサウジ側のスタッフも作画に参加。話数が多かったため最初は制作修行のような形で始め、最後の方はアラブ人スタッフの関与比率を大きく上げたのだとか。なので数字の大きい放送回ほどアラブ人アニメーターの作画部分が多くなっているということらしいです。

放送時期的には合作第2弾ということになるのですが、関係者のインタビューからすると映画『ジャーニー』の制作の方が先だったようで動画でジャーニーの方を共同制作2作目と言っていたように記憶しています。

アラブ地域では2020年1月より放送。日本ではJ:COMのコミニティチャンネルJ:テレで2020年4月4日より放送開始。現在は動画オンデマンドとして各社が配信。第1話はサンプルとして全部見られたりするようです。

アサティールは2050年という未来のサウジアラビア首都リヤド(=リヤード)に住むアスマ(=アスマー)という老女が孫たちにアラビア半島の昔話や偉人の逸話を語って聞かせるというストーリーで、サウジの子どもたちも知っているような有名人物が1人ずつ登場。

アラビア語版主題歌の作詞・作曲・歌唱はアラブアニメ界のアニソン女王 رَشَا رِزْق [ rasha rizq ] [ ラシャー・リズク ](公式英字表記:Rasha Rizk)が担当。日本に同等のアニソン歌手がいないと言っても過言ではないぐらいにとにかく大量のアニメソングを歌っており、Spacetoon世代は1日に何度も彼女の持ち歌を耳にして育ったこともあってアラブ諸国における人気は絶大です。

本作ではサウジアラビア出身といったアラブ人の若手声優を起用する一方で、アラブの吹き替えアニメ界の大御所・レジェンドたちをゲスト声優という形で次々に出演させました。

グレンダイザー主人公役を演じたジハード・アル=アトラシュ氏。彼以外にもアニメ特集で必ず登場するような豪華な顔ぶれが出演。夢の詰め合わせとでも言うべきメンバーをゲスト役として集めたようです。各声優さんたちのゲスト出演動画を見ましたがびっくりするほどのラインナップでした。

関連記事

ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語

2021年6月に公開となるマンガプロダクションズと東映アニメーションとの共同制作映画です。サウジ製コンテンツ世界輸出の足がかりと位置づけられている力作となっています。

放映時期の順番からすると3番目ですが、制作開始順で並べた場合にはこのジャーニーが2作目になるようです。CEOインタビュー等では「2作目」と明言されています。

詳しくは
サウジ・日本合作アニメ映画『ジャーニー』について

海外とのパートナーシップ

日本の東映アニメーションとの提携

東映との提携のきっかけ

2021年5月に公開された『海外市場開拓の紹介』という動画で東映アニメーションの清水慎治顧問が提携の経緯を語っています。

サウジアラビアがまだ観光客の受け入れをしていなかった約10年前、王子だったムハンマド王太子(皇太子)が東映の清水氏らを招聘し歓待。東映作品の大ファンだというムハンマド王太子(皇太子)はその時既にサウジアラビアがアニメ産業に参入することを希望していたようで、清水氏といつか一緒に仕事をしようという話になったのだとか。

後半は合作エピソード。インターンを2ヶ月受け入れたこと、サウジ人スタッフたちが非常に優秀で画力もあったこと、日本人が驚くほどにやる気・喜びに満ちていたことなど。絵を描きたくてたまらず皆残業して宿舎に帰ろうとしなかったそうです。頼まれてカラオケに連れて行ったら皆日本語でアニソンを熱唱した話も紹介。

サウジアラビアと日本との合作

マンガプロダクションズによるサウジアラビア初の長編アニメ『ジャーニー』は日本の東映アニメーションとの合作で4DX技術を採用。

日本語ニュースではサウジ初のアニメ映画という点が強調されたため「日本で作ってサウジはお金を出しただけなのでは?なんでサウジ製を名乗っているのか?」と疑問に思われた方も多かったようですが、本国では共同制作であり未だアニメ産業の黎明期にあるサウジ側が日本の東映に加わる形で作られたことがきちんと説明されています。

具体的には資金を出すスポンサーになるだけの外注ではなく、

  • サウジ側があらすじを考える。
  • アラブ・イスラーム文化的にどのような作品にすべきかという全体的な監修を日本語が堪能で東京在住歴が長かったCEOが担当。
  • 日本の制作陣をサウジアラビアに招いてアラブ文化やサウジアラビアの風土を実際に見て感じてもらう。
  • マンガプロダクションズには東京支社があり、日本国内における制作の各工程にスタッフを入れ作業に参加させる。
  • 海外製アニメは衣装・武器・戦闘スタイル・ジェスチャーなどが間違っているため、アラブ人側が資料を提供すると共にアニメーター側から質問があればそれに答える。

といった形でコンテンツづくりに参加しているとのこと。

コンテストの開催

マンガプロダクションズが2017/11/13に開催したイラスト&キャラクターデザインコンテストの様子です。東映アニメーションのスタッフに自作品を見てもらえるという豪華なイベントとなっています。

前半はサウジアラビア人クリエイターらに日本人有名漫画家(尾田栄一郎氏、鳥山明氏)の生活ぶりを披露する東映アニメーション清水慎治氏の談話。後半はサウジのマンガプロダクションズ社によるコンテストと表彰風景。

趣味・二次創作・大学での専攻等を通じイラストの才能を身につけた若手の発掘・支援活動の様子が伝わってきます。

ちなみに最後の方に写っているのは病床から参加した青年で、商品を受け取って笑顔でポーズ。病室に好きなフィギュアが並べてあるのがちらっと写っています。

日本人クリエイターの招待

映画『ジャーニー』を作るにあたって、マンガプロダクションズはサウジアラビアやアラブのことを良く知ってもらうために日本側制作陣を王国に招待。

作曲家の和田薫氏がマンガプロダクションズスタッフに伴われ、伝統音楽のパフォーマンスに耳を傾けたり、踊りの輪に加わったりしている様子が写っています。CEOインタビューによるとサウジアラビア滞在は合計2回で、サウジアラビアやアラブの音楽に触れてもらったとのことです。

マンガプロダクションズはこのような形でミスク財団との連携やスタジオの様々な活動を公開しその成果を国内外にPRしています。

2018/4/7にリヤードのミスク財団関連施設で開催されたという講演会。マンガプロダクションズのブカーリ・イサムCEOが通訳。最初にサウジアラビアを訪れていた俳優の伊藤 淳史氏のトークと質問会。33:00ぐらいで静野孔文監督が登場し観客が拍手で迎えています。

ミスク財団の若手育成プログラムに従い、サウジアラビアではこうした講演会やワークショップが頻繁に開催されています。

ビデオゲーム開発

ゲーム産業確立を目指して

インターンシップ制度を活用しての海外派遣と研修、コンテストを開催してのキャラクターデザイン採用など、ビデオゲーム産業を打ち立てようという試みもなされています。

マンガプロダクションズが公開している講演会動画。大学の施設で開催されたもので、ゲーム産業や海外研修の話など大変真面目な内容のレクチャーとなっています。

サウジ人ゲームキャラ「ナジュド」の投入

THE KING OF FIGHTERS XIVではアラブ人女性がデザインしたキャラデザインコンテスト優勝作品を元にしたナジュドを2018年4月から配信開始。サウジアラビアの首都リヤード(リヤド)を舞台にしたステージが用意されました。

デザインコンペはSNKとマンガプロダクションズが開催したもので、告知を見た若者たちが応募。

2017年11月に結果が発表され、サウジアラビア人女性がデザインしたサウジ出身女性キャラが選ばれました。

2018年にはファンアートコンテストも開催。

SNKの株式取得

2020年11月末、サウジアラビアのミスク財団がゲームメーカーSNKの株式のうち33.3%を取得、ゆくゆくは51%という過半数にまで増やす予定であるというニュースが話題になりました。

株式の取得自体はすぐに行われた訳ではなく、翌年の3月に完了。これにはマンガプロダクションズではなく、ミスク財団の別の完全子会社であるElectronic Gaming Development Company(エレクトロニック・ゲーミング・ディベロプメント・カンパニー、略称EGDC)が介在。

4/6に開催された株主総会でサウジアラビア側関係者らがSNK役員に就任しました。今後更に17.7%を取得し51%保有に引き上げられることになっています。

公式発表
ムハンマド・ビン・サルマン財団(MiSK 財団)が株式会社 SNK の役員候補者 3 名の任命を株主
総会で発表』
SNK取締役会の役員に就任したのは“Badr bin Hamoud Albadr(バドル・ビンハムード・アルバトル)”氏とありますが、誤字があり最後のバトルはバドルが正しいです。バドル・ビン・ハムード・アル=バドルはいわゆる3パーツタイプのフルネームで、メディアでは2パーツタイプの短いフルネームBadr Al Badr/AlBadr/Albadr [ バドル・アル=バドル ](バドル・アルバドル、なお英字部分はAlとBadrを分かち書きしたりしなかったりで揺れがあります)となっていることが多いです。

マンガプロダクションズ関連の報道から

昔話アニメの أَسَاطِيرُ فِي قَادِمِ الزَّمَانِ [ ’asāṭīr fī qādimi-z-zamān ] [ アサーティール・フィー・カーディミ・ッ=ザマーン ](邦題:アサティール 未来の昔ばなし)制作時代にサウジアラビア系ニュースチャンネルで紹介されたマンガプロダクションズの現場風景です。

同社の目標はアニメ・ゲーム技術のサウジ移転とアニメ産業のサウジ国産化ならびに同産業の確立、サウジ製コンテンツを日本や世界に輸出すること。

サウジアラビア側でストーリーを考え、日本側で制作。マンガプロダクションズはサウジと日本にチームがおり、それぞれが日本のパートナーと協同し作業。

同社のスタッフは日本語ができるので情報伝達も容易。キャラデザイン・背景・衣装・ボディーランゲージといった要素が正しく描かれるよう参画。

ジャーニー制作にまつわるマンガプロダクションズ関連の動画やインタビュー
サウジ・日本合作アニメ映画『ジャーニー』について~(5)関係者インタビュー集
マンガプロダクションズの方針、重視しているポイント、合作の詳細について紹介されているインタビューやアニメーター・アラビア語版声優出演番組など。

スタッフ紹介

アニメーター:ファラフ・アーリフ氏

サウジのマンガプロダクションズが開催した東映アニメーション清水氏との集い&イラストコンテストに参加し、その後入社したという فَرَح عَارِف [ faraḥ ‘ārif ] [ ファラフ・アーリフ ] 氏。

昔話アニメ『アサティール』制作風景もまじえてのインタビュー動画となっています。

ジャーニー封切り前にサウジ系メディアmbcのラジオ局で放送されたファラフ・アーリフ氏のインタビューです。

日本との合作という前例の無い事業だったためどのようにプロジェクトを進めていくかというノウハウも無く、アラブ式のボディーランゲージを撮影して日本のスタッフらにレクチャーしたといったエピソード、東映にはサウジにこれだけのクリエイターらが揃っていることに対して驚かれたこと等を披露。

今のサウジアラビアでは芸術活動に対する国の関心が強く支援もなされており、アーティストたちにとっての黄金時代だと感じているのだとか。アニメーター、イラストレーターだけではなくサウジ人の声優らも活躍と職業訓練の場所を得られることができ、やる気にあふれた若手が協力し合って完成したのが映画『ジャーニー』だったと語っています。

ファラフ・アーリフ氏のイラストです。Twitterアカウントのプロフィールによると以前はMyrkott(マンガプロダクションズに先行して活動・映画制作したサウジアラビアのアニメスタジオ)でアニメーターをされていたようです。

Myrkott時代に女性誌から取材を受けた際の記事にはお兄さんがテレビ業界で働いておりアニメ業界に入る道筋を示してくれたことが書かれています。お兄さんは سَمير عَارِف [ サミール・アーリフ ] というお名前で、ドラマの監督などをされている有名な方のようです。ファラフ氏自身子供時代にテレビ業界にいたそうですが自分がやりたいのはイラストの方だと自覚したのだとか。

かわいらしい三頭身キャラクターなども。彼女のオリジナルキャラクターだそうです。名前は فروحة الصغيرة [ ファッルーハトゥ・ッ=サギーラ ](ファッルーハ・アッ=サギーラ、「ちっちゃなファッルーハ」の意)。ファッルーハはファラフの愛称形だと思われます。ファッルーハで「ファッルーハちゃん、小さなファラフちゃん」的な感じかと。

サウジアラビア国営テレビチャンネル(チャンネル1)に子役として出演していた頃のファラフさん。子供番組でトークをしたり歌ったりしていた頃の動画が現在でも残っています。関連動画のコメントには彼女がイラストレーターになったことを記しているものもありました。