単語の先頭にaが来る場合(a—)
単語の先頭に来る場合は「ア」とカタカナ表記すれば大丈夫です。
ع(アイン)という学術書では「‘」を使って示す子音や、ء(ハムザ)という「’」で示す子音がセットになっているのに省略されていることもしばしばあります。英字表記で単にa—と書いてあっても、日本語のアと同じ「’a」なのか、喉を引きしぼってゥアと発音する「‘a」なのか、元のアラビア語表記を知らないと区別は難しいです。
- أَشْرَف ashraf → ’ashraf(アシュラフ)
- أَنْوَر anwar → ’anwar(アンワル)≠ アンワー[語末のarをアーと読まないよう注意]
- عَنْتَر antar → ‘antar (アンタル)[喉を締めつけて出す方の「ア」
- عَادِل adil → ādil → ‘ādil(アーディル)[喉を締めつけて出す方の「アー」]
カタカナ表記にしてしまうとどちらも「ア」なので特に気にしなくても大丈夫だと思います。
単語の途中にaが来る場合(-a–)
ع(アイン)の「‘」やء(ハムザ)の「’」が隠れていない場合
短母音のaが他の子音に続いていて、アに近い子音が隠れていない場合は以下のようにカタカナ化すれば大丈夫です。
ba(バ)、ta(タ)、tha(サ)、ja(ジャ)、ha(ハ)、kha(ハ)[ハとカの中間のかすれた音なので(カ)とカタカナ表記されている場合も多いですが、アラビア語屋的には(ハ)が普通です]、da(ダ)、dha(ザ)[英語の定冠詞のtheと同じ舌を歯ではさむザの方です]、ra(ラ)、za(ザ)、sa(サ)、sha(シャ)、gha(ガ)[gaとは違い、うがいをする時のように喉をこすって発音するガです]、fa(ファ)、qa(カ)[kよりも口の奥で出すコァに近いカです]、ka(カ)[英語と同じkaもしくはキャに近いカです]、la(ラ)、ma(マ)、na(ナ)、wa(ワ)、ya(ヤ)
ع(アイン)の「‘」やء(ハムザ)の「’」が隠れている場合
「‘」+aで「‘a」(ア)の時
ただの短母音aではなく、アラビア語表記上はع(アイン)「‘」+a=喉を締めつけて出す「ア」であることもあります。
- أَسْعَد アスアド(’as‘ad)
語頭アスのアは軽いア、後半アドのアは喉を締めつけるアインのアです。どちらもカタカナにしてしまうと同じアなので気にする必要はあまりありません。
日常的な英字表記では「’」や「‘」は書かないことが多く、asadとなります。獅子を意味するأَسَد「アサド」(’asad)から「’」を取ったasadと全く同じ英字表記になってしまうので、asadとある場合はカタカナ化の際に注意が必要です。
aを伴わない単独の「‘」や「’」をaに置き換えて英字表記している場合
アラビア語の文語表記では母音を一切伴わない子音だけの部分が、短母音aとして英字表記されている例があります。
- سَعْد サアド(sa‘d)→ saad → sad
サアドとカタカナ表記する名前です。sa+’+dで真ん中に母音を伴わない単独のアイン「‘」がはさまっているので、「サァド」に近い発音となります。
この「‘」とaで置き換えた場合の英字表記がsaadです。元々サアドという読みですが、人によっては「サード」と同じように聞こえるかもしれません。同じ人名ながら、サアドとサード2通りのカタカナ表記が日本のウェブサイトでも混在しています。
さらにsaadのaを1個抜いてしまったsadという英字表記もありますが、元をたどればサアドです。サッドよりはサアドというカタカナ表記が適当かと思います。 - مَأْمُون (ma’mūn)→ maamūn = māmūn → maamoon、maamoun、maamun、mamun 等
アラビア語の文語に忠実に読めば「マッムーン」もしくは「マァムーン」に近いのですが、口語では「a」+「’」の組み合わせは長母音の「ā」に変わりやすく、「マームーン」となります。日本語のウェブページでマアムーンとマームーン、2通りのカタカナ表記が混在しているのはそのためです。
マームーンという読みに即した英字表記にはmaamoon、maamounがありますが、長母音を示す部分を一部省略したmaamun(マームンと読めますが、元をたどればマームーン)、長母音部分を全部取っ払ってしまったmamun(マムンと読めますが…)など、英字表記には色々なバージョンが存在します。
単語の最後にaが来る場合(—a)
表記の通り語末がただの短母音な場合
名前の最後がaで終わっているのは、女性名のことが多いです。
- fātima(ファーティマ)♀
—-aと書いてあるものの、実は—āで語末をアーとのばす名前も多いので要注意です。
長母音の横棒が消えただけで元は「—a」ではなく「—ā」な場合
長母音の記号が省略されている場合、元々はāなのでカタカナ表記では「アー」に戻します。
- طٰهٰ taha → tāhā → ṭāhā(ターハー)[重い発音の ط (t) は下点がつくことがあります] ♂
- يَحْيَى yaḥya → yaḥyā(ヤフヤー)♂
- نَجْوَى najwa → najwā(ナジュワー)♀
学術書的な表記では—ā’なのに通常—āや—aになっている場合
さらに「ـــاء」(ā’)=長母音のā+語末ء(ハムザ)から「’」が取れて単なるāで英字表記されたり、長母音の横棒まで取れてaで英字表記されたりしているケースです。
文語では「ـــاء」(ā’)を [ アーゥ ] もしくは [ アーッ ] に近い音で読むにも関わらず、英字表記ではただのaになっている少々ややこしい事例です。
例えばأَسْمَاء(’asmā’)という名前は
- 文語:’asmā’(アスマーゥ、アスマーッ)
アスマーッに近い発音に聞こえます。日本語のウェブページなどで「アスマーゥ」というカタカナ表記がされている人名がありますが、それがこの名前になります。「アスマーゥ」は語末のハムザまで忠実に読むことを意図して採用されたものですが、日本においてメジャーなカタカナ表記ではありません。 - 口語:’asmā(アスマー) → asmā → asma
口語的な読み方では最後にハムザがついている名前を、ただの長母音ā(アー)のように発音します。学術的な人名表記での「’」や長母音を示す横棒を全部取り去ってしまうと、asmaになります。口語では最後のāが短めに発音されて「アスマ」に近く聞こえることもあるかもしれません。ただ、カタカナ表記にする時はasmā「アスマー」ぐらいまで戻すのが良いような気もします。