ミニ通訳 海外旅行会話 アラビア語 (語研)


★★☆☆☆~★★★☆☆
海外旅行での買物や飲食をメインとしたエジプト方言会話本
ローマ字表記だがسとص等の区別が無く、lとr取り違えもあるため語学学習には不適

編者:Language Research Associates、小池 百合子
校閲・吹き込み:Samir H.Raouf
出版社:語研

編者の先生について

小池 百合子 氏
国会議員を経て東京都知事に就任された小池百合子氏の経歴はWikipedia等に詳しく書かれているのでそちらをご覧下さい。ちなみに、小池氏は親御さんがエジプトのカイロで日本料理店を経営されていました。御本人は1970年台前半に留学。カイロ・アメリカン大学でアラビア語の研修を受けた後、カイロ大学の文学部社会学科へ入学・卒業されたとのこと。本書は政界転身される前のプロフィールが載っていて、各国VIPの通訳・日本アラブ協会アラビア語講師と書かれています。

Samir H.Raouf 氏
本のプロフィール欄によると、1950年エジプトのカイロ生まれ。1972年アズハル大学卒業。1977年来日。発売当時はNHKラジオジャパンにおける翻訳・アナウンサー業をメインでされていたようです。東京外国語大学や拓殖大学等におけるアラビア語講師経験もあるとのこと。

本の概要

●1981年初版。絶版のため中古で購入しました。私が入手した物は1993年発行の第12刷でした。音声教材はカセットテープですが、古本だったこともあり本のみの購入となりました。

●100ページ弱の薄い本です。この本の編者である小池 百合子氏の『3日でおぼえるアラビア語』にあった文法説明を省き、海外旅行に必要な通関・両替、緊急事態、ホテル、レストラン、メニュー、酒と飲み物、交通、観光、ショッピング、通信、病気・医療関連の基本単語や会話(掲載量は少ないです)を収録。

●会話部分は全てエジプト方言です。一部併記されているアラビア語部分はフスハーです。

●編者とありますが実質小池 百合子氏の著書なのではないかと思われます。ローマ字表記、誤字脱字、今では使用が稀になってきている遠称ديكهاが使われている点などが『3日でおぼえるアラビア語』と同じです。

表記と誤字脱字

●日本語/エジプト方言のローマ字表記(/一部でフスハー版のアラビア文字表記)が一行に並べて書いてあります。

●会話部分は英字でその上にカタカナでの読みガナがついています。LC方式のローマ字転写やIPA記号による表記ではありません。سとصはs、حとهはh、زとظはz、تとطはtという風に似たような音の違うアラビア文字を同一の英字で書いてしまっているので、元のアラビア文字つづりやローマ字転写での本来の表記を知っていないと、間違った音で発音してしまう原因になります。語学学習教科書としておすすめできません。

●母音が入らず子音のみでアラビア文字表記ならスクーン付きになっている箇所に母音がはさまっている、テーブルいくつかの単語でrとlが取り違えられている(『3日でおぼえるアラビア語』にも同じ誤字が複数あります。おそらく小池氏が耳で覚えられていたためlとrどちらなのか正確に記憶されていなかったためなのではないかと思います。)、シャッダ(重子音)ではない語で-kk-、-ss-、-bbのように子音を重ねてローマ字表示している、など語学学習目的で細かい部分を突き詰めて覚えたい人には気になる箇所が多いと言えます。

感想

●絶版な上に『3日でおぼえるアラビア語』の抜粋に近い内容なので、小池氏の本が欲しいという方でも特にこちらをわざわざ中古で購入する必要は無いかもしれません。

●ローマ字転写が不正確なのでエジプト方言の教科書としてはおすすめできないです。

 

ミニ通訳 海外旅行会話 アラビア語
編者:Language Research Associates、小池 百合子
出版社:語研