トラベル アラビア語会話手帳―ことばに親しみ こころに触れ合う旅 (高野 晶弘)

トラベル アラビア語会話手帳―ことばに親しみ こころに触れ合う旅

★★★★☆
リアリティあふれるエジプト方言会話集
現地情報は古くなってしまっているが国民性観察は詳しく今でも十分参考になる

著者:高野 晶弘
出版社:語研

著者の先生について

1951年生まれ2004年死去。1977年東京外国語大学アラビア語学科卒業。7年間のNHK勤務の後、1975年~1987年の間にエジプトで通算5年間生活。フリーランスで活動する傍ら、エジプト現代小説の翻訳(上エジプト小説集、ナギーブ・マハフーズ『蜃気楼』)やアラビア語辞書編纂に従事。

先生オリジナル辞書はHans Wher級の大型辞書になるということで業界内で大いに期待されていましたが、テニス中に体調を崩され急逝。未完となった辞書は後に「アラブ世界の活字文化とメディア革命」研究会より『高野版現代アラビア語辞典』として非売品の形で発行されたとのことです。

本の概要

●第1章『アラビア語に親しむ』はアラビア語の概要、アーンミーヤの話、アルファベット、文法解説、挨拶や会話での相槌・返事といった基本表現。第2章『アラビア語で旅する』は場面別旅行会話集で、入国・空港から市内へ・ホテルで・両替・市内交通・道を尋ねる・観光・買物・食事・娯楽・電話&郵便・予約と再確認&変更・帰国・事故・病気の全15場面を収録。

●場面別会話集ではまず最初に現地事情を解説したコラムのような物があり、続いて『基本となる表現』、『覚えておくと良い表現』がまとめられています。会話は対話スキット方式ではありませんが、『まずはこれだけ エジプト・アラビア語』と違ってこちら側のセリフだけでなくエジプト人側のセリフもちゃんと載っているので実用性はちゃんとあると思います。

●第3章は『アラビア語圏の国々を知る』で、エジプト理解の手引き、エジプト観光案内、エジプト以外のアラブの国々の紹介、が載っています。エジプトをよく知る高野先生ならではの洞察やエジプトあるあるが色々書かれているので、エジプト方言の勉強目的でなくても一読する価値はあると思います。

表記・誤字脱字について

●ページの左半分が日本語、右半分がアラビア語となっています。アラビア語部分は日本語と同じぐらいの大きさのフォントなので小さいと感じる人もいるかかもしれません。アラビア語には母音記号はついていません。アラビア文字の上に左→右方向でカタカナのルビがついています。カタカナルビは単語ごとではなく1文ごとです。アラビア文字と位置を揃えているということはありません。

●アラビア語文法解説部分のみローマ字転写の読みガナが併記されています。LC転写、IPA、ISO等ではなく高野先生オリジナル表記かな?と思います。

●アラビア語部分の誤字脱字は少ない部類に入ると思います。

感想

文法解説やエジプト・アラブ関連のコラムも長いので実質的な会話集部分のボリュームはそう多くありませんが、日常会話の相づちや受け答えで活用できそうなちょっとした表現が色々載っているので参考になります。

古本で購入した発行年月が古めのエジプト方言本の中では一番良かったです。田中四郎先生の本も秀逸ですが、年代が古すぎるのと旅行会話とは違うので高野先生の本の方がおすすめと言えるかもしれません。

 

トラベル アラビア語会話手帳―ことばに親しみ こころに触れ合う旅 トラベル アラビア語会話手帳
著者:高野 晶弘
出版社:語研