ひとり歩きの会話集19 アラビア語 (JTBパブリッシング)

ひとり歩きの会話集 19 アラビア語

★★☆☆☆
ぱっと見ただけでは判読できないほど凝っている割には実際の音に忠実という訳でもないルビ
表現も直訳っぽい不自然な箇所がありアーンミーヤ学習書としてはおすすめできず・・・

企画・編集:JTBパブリッシング 第三情報事業部
編集協力:イデア・インスティテュート、中東ビジネスサービス、福島 巖
翻訳:中東ビジネスサービス、イデア・インスティテュート
イラスト:ローグ クリエイティブ、高橋 加菜子(表紙)、上野 悌嗣(本文)
出版社:JTBパブリッシング

本の概要

●初版1997年。何度か表紙・題名の変更込みでの改訂を重ねているようで、私が購入した物は2017年発売の改訂10版でした。

●本文イラストは上野 悌嗣氏が描かれているようなのですが、同氏は流通経済大学講師なども務められたことのある方で、日本サウディアラビア協会等から複数の書籍を出されています。『実用湾岸方言アラビア語』の著者でもあられるので、もしかしたらこの会話集の湾岸方言部分の編集に関わられていたのかな?と思いました。

●挨拶・感謝・お詫び・肯定否定・呼びかけ・聞き返し・依頼希望・知らせる・許可を求める・質問する、という内容の基本表現編は現代標準アラビア語(フスハー)、エジプト方言、湾岸方言、モロッコ方言を収録。海外旅行の場面別会話編はフスハーとエジプト方言のみ。ビジネス会話部分のみフスハー、エジプト方言、湾岸方言の3つ収録。巻末に単語集、街中の標識を例示したイラスト集等があります。

感想

ひらがな・カタカナ・フォント大小・文字の太さで表現した複雑なルビの問題

アラビア語の読みをローマ字で転写せずあくまで日本語のみでより正確に示すことを目指しているらしく、ひらがな・カタカナを混在させた上に文字の大小や太さの違いも駆使しています。この方式は子供や小中学生向けの英語辞書とかでも採用されている物に似ているのですが、工夫しすぎてかえって複雑化してしまっており、パッと見ただけではスラスラ読めないという欠点があるように思います。

海外旅行でちょっとアラビア語を話すだけの目的で作られた会話本であるにもかかわらず、巻頭の発音解説とルビ表記説明を読み込まないといけない、というのはデメリットであるような気がしました。

方言学習用途にはしづらい不正確さ

個人的にこの方式のルビは受け付けない、という気持ち的な部分も大きいのですが、それ以前にこれだけ凝った読みがなの割には実際の読みに近い物になっていないもの問題だと思いました。

شكرا をシュクランではなく敢えて「シュクラヌ」(クとヌが小さい文字サイズ)としていたり、エジプト・カイロ方言ではqではなくハムザになるはずの部分を「ク」と読むようにルビが振ってあったり、窓はシッベークに近いシッバークなのをフスハー同じシュッバークというルビがついていたるといった具合で、語学学習に使うには不備な点が多々見受けられます。

動詞などで人称が違っている部分があったり、エジプト方言の会話部分が直訳のような違和感のある言い回しがあったり、個人的には好きになれない一冊でした…

 

ひとり歩きの会話集 19 アラビア語 ひとり歩きの会話集19 アラビア語
企画・編集:JTBパブリッシング 第三情報事業部
出版社:JTBパブリッシング