★★☆☆☆
「超やさしい=基礎文法をわかりやすく説明した文法書」ではないので注意
文法解説が少なく初学者向け導入本としては単語集の割合が大きすぎる印象
著者:杉沢 理
出版社:南雲堂フェニックス
著者の方について
本の巻末プロフィール紹介によると、1950年生まれ、1972年明治大学商学部卒業、1976年サウジアラビア大学国立キングアブドルアジーズ大学留学、帰国後翻訳会社勤務を経て有限会社ヒラールを設立、とあります。色々な場所でアラビア語の講師をされていたようです。
本の概要
●1997年初版。管理人が購入した物は2001年の初版第3刷でした。
●ミミズの這ったようなアラビア文字が原因で勉強を投げ出してしまう人たちが多いアラビア語の学習事情をふまえ、違和感の無いアラビア語との出会い創出を目指して本書を作られたとの記述あり。
●内容ですが、アラビア語の生い立ちについて(7ページ)、アルファベットの読み書き方法(10~21ページ)、発音記号と名前(22~25ページ)、名前の書き方(26~28ページ)、文法紹介(29~36ページ)、会話編(38~58ページ)、単語集(59~91ページ)、練習問題、巻末資料、動詞と派生形の話(113ページ)、アラビア語講座紹介(114~115ページ)です。
●文法編は「アラビア語の読み書きのためのやさしい文法」ということでタンウィーン、定冠詞、太陽文字・月文字、ワスラ記号、名詞、形容詞、人称代名詞の基本を掲載。初級文法のごく最初のみ紹介されています。
●会話編は場面別に会話文を並べたタイプの会話表現集です。対話スキット方式ではありません。会話文に含まれる単語の意味をまとめた欄外表記・単語集はありません。
●単語集は使用頻度が低いと思われる物も多く、収録の基準が何だったのかは不明です。名詞が非常に多く動詞が少ないです。完了形・未完了形動詞もカバーしていない本なので自力で会話するのも難しく、こうした単語集が有用だったのかどうか少々疑問が残ります。
表記と誤字脱字について
●アラビア文字にカタカナによる読みガナがついています。母音記号は単語の一部のみついています。語末は母音記号省略。語末以外の語中でも書かれていない箇所が多いのでカタカナの読みガナを見ないと単語の発音はわかりません。
●アルファベットのアリフは母音で音価はア・イ・ウと説明されています。ذ の音価は dh ではなく th と表記されており、同じアルファベット表で ث が全く同じ th でかぶってしまっているので紛らわしいように思いました。重たい音の ص ض ط ظ は音価を示す英字の下に点がついておらず س د ت ز のそれと重複してしまっています。
●ء は単独で使われずアリフ・ワーウ・ヤーとくっつけて使うと書かれていますが、実際には単独表記があることに反した記述になっています。
●通常ハムザをつけるべきアリフにハムザが乗っていないことが多いです。何も要らないアリフにマッダ記号が付いているタイプミスもありました。
●母音記号のつけ違いもかなり多く見受けられます。単なるタイプミスというよりも学習時に起きがちな記憶違いや口語メインで生活していることによる母音の覚え違いに由来するケースに近い誤字脱字の仕方が多い(命令形動詞の語頭に付くアリフの母音が違う、未完了形動詞や派生形分詞の第2語根に付く母音が違う、語末が弱文字の弱動詞の受動分詞に付く母音記号が違う、動詞派生形未完了形の語頭に付く母音が違う等)のが気にかかりました。またファトハを書くべき対格の場所に主格の母音記号ダンマが付いている、というケースもありました。
感想
●アラビア語を初めて勉強する人向けの本ということですが、図解方式で理解しやすい『読める書ける アラビア文字練習プリント』に比べるとページ数も少なく文字のつづり方の説明も短いです。
●文法説明も初歩の初歩というごくさわりだけで終わってしまうので、アラビア語の初級文法をわかりやすく噛み砕いて懇切丁寧に説明した物をお求めの方のニーズには合致していないと思います。
●上でも書きましたが、単なるタイプミスではないと思われる誤字脱字が多いです。特に単語集部分は誤字脱字が多いので修正しながらでないと間違って覚えてしまう恐れがあります。この本を最初の学習書として採用し細部まで読み込んで覚えることはおすすめできないです。
(2022年2月修正)
超やさしいアラビア語入門 著者:杉沢 理 出版社:南雲堂フェニックス |