アラビア語の初歩の初歩 (平田 伊都子/南雲堂)

アラビア語の初歩の初歩

★★☆☆☆~★★★☆☆
当時としては画期的だったオール手描きイラストのアラビア語紹介本
70年代テイスト全開なので読む人を選ぶ可能性あり

著者:平田 伊都子
出版社:南雲堂

著者の方について

大阪出身。京都工芸繊維大学卒業。本書が出版された当時はCMプランナー、イラストレーター、TV・週刊誌・深夜放送のレポーターをされていたとのこと。女性バイクライダーでアフリカ、アラブ地域を旅されている中でアラビア語に興味を持ち学習者となられたようです。『アラビア語の初歩の初歩』を書かれた後アラブ イスラーム学院に入学(1982~1986年在籍)。

本の中で「カダフィ大佐に会いたいからアラビア語を勉強している」と書かれていましたが、実際に夢が叶い数回に渡るインタビューも行われたそうです。アラブ・イスラーム関連の本に加え『カダフィ正伝』という伝記も出版されています。

最近はジャーナリストとして活動されている模様。

本の概要・感想

●1979年出版。私が古本で買った物は1981年の第7刷でした。

●70年代テイストのイラストと手書き文字の組み合わせです。手書き文字はカリグラフィーペンで書いた感じの大きな文字です。読みガナはカタカナでアラビア文字に合わせ左←右の逆方向となっています。手書きアラビア文字の行間が狭いので読みガナは一直線上に揃っておらずやや読みづらいです。

●恋愛沙汰に関連した例文が多いです。一人の男性をアラブ人女性と筆者が取り合って喧嘩していたり、アラブ人女性が離婚訴訟を起こして慰謝料を手に入れた後飛行機で旅立つシーンがあったり、骸骨の鼻にタバコが刺さっていたり、アラブ人男性が見ている映画の画面にベッドシーンの男女の写真が貼り付けてあったり、巻末で編集スタッフやお世話になった人達の首から上写真をあみだくじ上の線の下に吊り下げてあったり、70年代的個性が詰められているので万人受けする学習書とはかなり違っています。

●日本語文は当時流行っていたカタカナを多用したものになっています。「مع السلامة さよう・・・」「デタ~!難しいのがデタ~!喉をひきしめて、イザ!」「オヤ、こんちわ~」「ぼ、ぼく、とても忙しいの サイナラ!!」といった感じなので、時代が全くかぶっていない今どきの若い方たちにはきついかもしれません😅

●オールイラストのアラビア語本ですが扱っている文法の範囲は意外と広く、活用表も双数や女性複数を含めた全ての人称がフルセットで載っています。

●学習者の方が書かれた本としては誤字脱字が少ない方だと思うのですが、時折文法上の間違いから来る誤記が見受けられました。

●「تكسر الرجل 彼女は男を折る」(*足を骨折させる、ではなく男性のプライドをへし折るような感じのイラストに添えられた例文です)のように妙な言い回しのオリジナルフレーズが散見されます。

●アラビア語学習書が少なかった時代に出された画期的な本ということで一見の価値はあるかもしれませんが、見やすい活字でよくまとまっている初級学習者向けの本があれこれ揃っている現在の状況で敢えておすすめするという感じではないです。当時を懐かしむとか資料として見るとかであればありかもしれません。ただ学習書として例文を暗記するといった使い方はされない方が良いかもしれません。

(2022年2月修正)

アラビア語の初歩の初歩 アラビア語の初歩の初歩
著者:平田 伊都子
出版社:南雲堂