アラブ人名と敬称の使い方
目上には尊敬の表現や敬称をきっちりつける
アラブ人は身近な相手、対等な相手に対しては敬称無しでファーストネームを呼んだりしますが、目上の人物に対してだったりかしこまってきちんと名前を挙げたりする時にはまめに敬称をつける傾向があるように思います。
特に国家元首など目上の人物をファーストネームや国王・首長といった肩書きだけで呼び捨てにすることはせず、「~様」「~殿下・閣下」に相当する名詞を足したり、二人称の人称代名詞を単数の「あなた」ではなく複数の「あなた様方」に変えたり、長寿や健康を祈願する表現を挿入したりと、覚えるべき表現が結構多いです。(管理人はこうした丁寧表現を知らない頃かなり目上の人物に肩書きだけで呼びかけてしまったことがあります。もう一度やり直したいぐらい恥ずかしい思い出となってしまいました…)
ちなみに敬称や長寿祈願のお祈り文をたくさんつけまくることに関してはアラブ人も色々と思うところはあるようで、皮肉を込めた呼びかけやコメディのギャグとして使われることがあります。本来丁寧な敬称「貴方様」でも会話シーンや文脈によっては「で、貴方様は~ってか?ケッ!」みたいなニュアンスになることも。
基本的に敬称の直後はファーストネーム
英語のMr./Mrs./Missや、日本語の「~さん」「~様」に対応する表現ですが、日本のように「山田さん」「鈴木」さんと家名だけで呼ぶことは基本的にせず、フルネームで呼ばない時には本人のファーストネームを使います。
- 敬称+本人のファーストネームだけ
- 敬称+本人のファーストネームから始まるフルネーム
前後に色々な物が追加される
文中やスピーチでは名前の前後に色々と付け足すことも多いです。「~様」「~陛下」に相当する名詞や、「アッラーが彼をお守りくださいますように」「彼の寿命が長きものとなりますように」のような祈願文を挿入する場合は、アラビア語文で以下のような順番で並べていきます。
「~様」「~陛下」等に相当する名詞+敬称・肩書き+本人の名前+祈願文
جَلَالَةُ الْمَلِكِ ـــ حَفِظَهُ اللهُ
[ jalālatu-l-malik — ḥafiẓahu-llāh ]
[ ジャラーラトゥ・ル=マリク・~・ハフィザフ・ッラー(フ) ]
~国王陛下-アッラーが彼をお守りくださいますように-
日本語の~さん、英語のMr.などに相当するもの
男性
اَلسَّيِّدُ ـــ [ ’as-sayyid / ’as-saiyid・~ ] [ アッ=サイイド・~ ] 【男性】(既婚・未婚を問わず)~さん、~氏 ♂ |
سَيِّدٌ [ sayyid(un) / saiyid(un) ] [ サイイド(ゥン) ](主、長)の語頭に定冠詞 al- [ ’al- ] [ アル= ] をつけたものです。定冠詞の直後に来る音が س [ s ] なので発音がアル=からアッ=に変わります。なお、sayyidのay部分は二重母音になるので英字表記ではaiと書かれていることも多いです。
人名部分が限定された名詞なので、同格的に並べるために名詞の限定・非限定を合わせるため敬称部分に定冠詞(英語のtheに相当)がついています。
ファーストネームだけの時
ٌاَلسَّيِّدُ مُحَمَّد
[ ’as-sayyid/ ’as-saiyid muḥammad ] [ アッ=サイイド・ムハンマド ]
【男性】ムハンマドさん、ムハンマド氏
Mr. Muhammad
*男性の人名でアラビア語由来の名前は語末が-un、-in、-anの三段変化をしますが、固有名詞なので限定扱いとなります。
フルネームの時
اَلسَّيِّدُ مُحَمَّدٌ عَادِلٌ
[ ’as-sayyid/ ’as-saiyid muḥammad ‘ādil ] [ アッ=サイイド・ムハンマド・アーディル ]
【男性】ムハンマド・アーディルさん、ムハンマド・アーディル氏
Mr. Muhammad Adil
*ムハンマド・アーディルという2語タイプのフルネームの場合です。ちなみにこの場合はアーディルが父の名前か祖父の名前かは見ただけ・聞いただけでは確定しきれません。人によってラストネーム部分に本来の「本人の名前+父の名前+祖父の名前」からどちらを取るかが分かれるためです。
*フルネーム以外で呼びかける時は、上に出てきた例のように「アッ=サイイド・ムハンマド」(Mr. Muhammad)とします。
肩書きとの組み合わせで「~閣下」
役職・肩書きと組み合わせることもされます。大統領という意味の肩書きとセットの時は英語のMr. President(大統領閣下)に対応。
اَلسَّيِّدُ الرَّئِيسُ ـــ
[ ’as-sayyidu-r-ra’īs・~ ] [ アッ=サイイド(ゥ)・ッ=ライース・~ ]
~大統領閣下
Mr. President ~
女性
اَلسَّيِّدَةُ ـــ [ ’as-sayyida(h) / ’as-saiyida(h)・~ ] [ アッ=サイイダ・~ ] 【女性】(既婚)~さん、~夫人 ♀ |
سَيِّدَةٌ [ sayyida(h/tun) / saiyida(h/tun) ] [ サイイダ(トゥン) ](婦人、夫人)の語頭に定冠詞 al- [ ’al- ] [ アル= ] をつけたものです。定冠詞の直後に来る音が س [ s ] なので発音がアル=からアッ=に変わります。
اَلسَّيِّدَةُ فَاطِمَةُ
[ ’as-sayyida(h) / ’as-saiyida(h) fāṭima(h) ] [ アッ=サイイダ(トゥ)・ファーティマ ]
【女性】ファーティマさん、ファーティマ夫人
Mrs. Fatima(h)
*女性名は男性名と異なり、アラビア語由来の語であっても語末が-tun、-tin、-tanとなるようなタンウィーンのnを受け容れない二段変化となります。
*アラビア語の女性名詞の語末の文法が理由でFatimaとFatimahの2通りの英字表記が混在しています。理由については『アラビア語アルファベットの発音を覚えよう~ター・マルブータ[ ة ]』『英字表記されたアラビア語の名前とカタカナ化~女性名語末のター・マルブータ』で紹介しています。
مَدَام ـــ [ madām・~ ] [ マダーム・~ ] 【女性】(既婚)マダム~ ♀ |
フランス語のマダムをそのまま使う洋風かつ口語的な敬称です。定冠詞無しで使います。「マダム・◯◯(の店)」といった具合にブティック等の店舗名になっていることも。
ُمَدَام سَارَة
[ madām sāra(h) ] [ マダーム・サーラ ]
【女性】マダム・サーラ、サーラ夫人
Madam Sara(h)
口語的な表現ということもあり、ニュースや書籍で見かけることは少ないです。
未婚女性
اَلآنِسَةُ ـــ [ ’al-’ānisa(h) / ’al-’ānisa(h)・~ ] [ アル=アーニサ(トゥ)・~ ] 【女性】(未婚)~さん、~嬢 ♀ |
近代になってからレバノン人の翻訳家がフランス語のマドモアゼル(マドモワゼル)に対応するアラビア語として考案したものだそうです。
اَلْآنِسَةُ لَيْلَى
[ ’al-’ānisa(h) / ’al-’ānisa(h) laylā/lailā ] [ アル=アーニサ(トゥ)・ライラー ]
【女性】ライラーさん、ライラー嬢
Miss Layla
*ライラーは女性化のアリフ・マクスーラがついていることから見た目上何も格変化していないように見えますが、二段変化扱いで لَيْلَى の لَى 部分にあるファトハ(母音aの記号)が本来の母音記号ダンマやカスラの代理をしているという解釈になるとのこと。
「~様」「~殿」に対応する尊敬表現
حَضْرَةُ ـــ [ ḥaḍratu-・~ ] [ ハドラトゥ・~ ] 【男性・女性と組み合わせて】~様、~殿 |
名詞の意味自体は「存在;近く、そば;出席、臨席(の場)」など。
二人称の人称代名詞接続形(貴男の、貴女の、貴方がたの)や他の敬語・肩書きと組み合わせて「~様」「~殿」といった意味を添えます。会話において相手に尊敬を込めつつ呼びかける際にも多用されます。(詳しくは「呼びかけ」のページを別途作成してまとめる予定です。)
人称代名詞接続形との組み合わせ
حَضْرَة [ ḥaḍra(h) ] [ ハドラ ] と人称代名詞接続形(二人称)との組み合わせ例です。呼びかけに際しては使い方を間違えると「で、あなた様は~な訳?」的な皮肉やあてこすりになることがあるので注意。
- َحَضْرَتُك
[ ḥaḍratuka ] [ ハドラトゥカ ] ♂・単
【男性・単数】丁寧な呼びかけで、「貴男様」。口語発音はハドラタック等。 - ِحَضْرَتُك
[ ḥaḍratuki ] [ ハドラトゥキ ] ♀・単
【女性・単数】丁寧な呼びかけで、「貴女様」。口語発音はハドラティク等。 - حَضْرَتُكُمْ
[ ḥaḍratukum ] [ ハドラトゥクム ] 複数
حَضَرَاتُكُمْ
[ ḥaḍarātukum ] [ ハドラートゥクム ] 複数
【複数】丁寧な呼びかけで「貴方様方」。単数の相手にこの複数形で呼びかけると単数よりも尊敬表現として強くなります。
他の肩書き・敬称との組み合わせ
حَضْرَةُ السَّيِّدِ ـــ
[ ḥaḍratu-s-sayyid/saiyid・~ ] [ ハドラトゥ・ッ=サイイド・~ ]
【男性】~様、~殿
上で出てきた「~氏」との組み合わせ例です。
肩書き
教授・教師・先生
اَلْأُسْتَاذُ ـــ [ ’al-’ustādh・~ ] [ アル=ウスターズ・~ ] 【男性】~先生 ♂ |
اَلْأُسْتَاذَةُ ـــ [ ’al-’ustādha(h)・~ ] [ アル=ウスターザ(トゥ)・~ ] 【女性】~先生 ♀ |
ジャーヒリーヤ時代には存在しなかった語で、ペルシア語から輸入された外来語だと説明されていることが多いようです。教職に限らず、先生と呼ばれるような知識人・文化人にも使ったりします。(日常会話ではホワイトカラーの人などより幅広い対象に対し敬称として使われる傾向があります。)
口語ではuがoに変わってオスターズに近く聞こえるようになる以外にも、dhを歯で舌をはさまないzの音で発音することが起きたりするため、英字表記ではUstaz、Ostadh、Ostazといったバリエーションが見られます。
اَلْأُسْتَاذُ سَالِمٌ
[ ’al-’ustādh sālim ] [ アル=ウスターズ・サーリム ]
【男性】サーリム教授、サーリム先生
Prof. Salim
اَلْأُسْتَاذَةُ نُورْهَانُ
[ ’al-’ustādha(h) nūrhān ] [ アル=ウスターザ・ヌールハーン ]
【女性】ヌールハーン教授、ヌールハーン先生
Prof. Nurhan
敬称を加える場合
اَلسَّيِّدُ الْأُسْتَاذُ ـــ
[ ’as-sayyidu/saiyidu-l-’ustādh・~ ]
[ アッ=サイイドゥ・ル=ウスターズ・~ ]
【男性】~教授氏、先生~氏 ♂
Mr. Prof. ~
اَلسَّيِّدَةُ الْأُسْتَاذَةُ ـــ
[ ’as-sayyidatu/saiyidatu-l-’ustādha(h)・~ ]
[ アッ=サイイダトゥ・ル=ウスターザ・~ ]
【女性】~教授、先生~夫人 ♀
Mrs. Prof. ~
اَلْآنِسَةُ الْأُسْتَاذَةُ ـــ
[ ’al-’ānisatu-l-’ustādha(h)・~ ]
[ アル=アーニサトゥ・ル=ウスターザ・~ ]
【女性】~教授氏、教授~嬢 ♀
Miss Prof. ~
尊敬表現を足す
حَضْرَةُ الْأُسْتَاذِ ـــ
[ ḥaḍratu-l-’ustādh・~ ] [ ハドラトゥ・ル=ウスターズ・~ ]
【男性】~教授/先生(御)机下、~教授/先生様、~教授/先生殿
さらにへりくだって相手への尊敬を明確にした感じの表現になるかと思います。
博士・ドクター
اَلدُّكْتُورُ ـــ [ ’ad-duktūr(u)・~ ] [ アッ=ドゥクトゥール・~ ] 【男性】~博士、ドクター~ ♂ |
اَلدُّكْتُورَةُ ـــ [ ’ad-duktūra(h)・~ ] [ アッ=ドゥクトゥーラ・~ ] 【女性】~博士、ドクター~ ♀ |
こちらも外来語です。博士号を持っている人や、(博士号の有無は問わず)医師に使います。
母音記号上は [ ’ad-duktūr ] [ ’ad-duktūra(h) ] ですが、実際にはuがoになって [ ’ad-doktōr ] [ アッ=ドクトール ]、[ ’ad-doktōra(h) ] [ アッ=ドクトーラ ] と聞こえることが多いかと思います。
اَلدُّكْتُورُ سُلَيْمَانُ عَلِيٌّ
[ ’ad-duktūr sulaymān/sulaimān alī(y) ] [ アッ=ドゥクトゥール・スライマーン・アリー ]
【男性】スライマーン・アリー博士、ドクター・スライマーン・アリー
Dr. Slayman/Slaiman Ali
*د. سليمان علي のように د [ d ] の字の後にピリオドを置く、略した欧米風の表記もあります。
*スライマーン・アリーという2語タイプのフルネームの場合です。ちなみにこの場合はアリーが父の名前か祖父の名前かは見ただけ・聞いただけでは確定しきれません。人によってラストネーム部分に本来の「本人の名前+父の名前+祖父の名前」からどちらを取るかが分かれるためです。
*フルネーム以外で呼びかける時は「アッ=ドクトール・スライマーン」(Dr. Sulaiman)とします。
اَلدُّكْتُورَةُ سَمِيرَةُ غَانِمٌ
[ ’ad-duktūra(h) samīra(h) ghānim ] [ アッ=ドゥクトゥーラ・サミーラ・ガーニム ]
【女性】サミーラ・ガーニム博士、ドクター・サミーラ・ガーニム
Dr. Samira(h) Ghanim
*サミーラ・ガーニムという2語タイプのフルネームの場合です。ガーニムは父や祖父の名前というよりはもっと前の先祖名を家名として名乗っているケースもある男性名だったりします。ともあれラストネーム扱いなので、フルネーム以外で呼びかける時は「アッ=ドクトーラ・サミーラ」(Dr. Samira)とします。
敬称を加えた場合+「~氏」
اَلسَّيِّدُ الدُّكْتُورُ ـــ
[ ’as-sayyid/saiyidu-d-duktūr → -doktōr・~ ]
[ アッ=サイイドゥ・ッ=ドクトール・~ ]
【男性】~博士氏 ♂
Dr. Mr. / Mr. Dr. ~
確認したところアラブ圏でも「Dr. Mr.」「Mr. Dr.」という英字表記を使うことがあるようなので併記しておきました。女性バージョンについては以下の通りです。
اَلسَّيِّدَةُ الدُّكْتُورَةُ ـــ
[ ’as-sayyidatu/saiyidatu-d-duktūra(h) → -doktōra(h)・~ ]
[ アッ=サイイダトゥ・ッ=ドクトーラ・~ ]
【女性】~博士氏、博士~夫人 ♀
Dr. Mrs. / Mrs. Dr. ~
اَلْآنِسَةُ الدُّكْتُورَةُ ـــ
[ ’al-’ānisatu-d-duktūra(h) → -doktōra(h)・~ ]
[ アッサイイダトゥ・ッ=ドクトーラ・~ ]
【女性】~博士氏、博士~嬢 ♀
Dr. Miss / Miss Dr. ~
敬称を加えた場合+「~氏」&「~教授、先生」
欧米の「Mr. Prof. Dr.」をそのままアラビア語化したものなのかな、という印象です。
اَلسَّيِّدُ الْأُسْتَاذُ الدُّكْتُورُ ـــ
[ ’as-sayyidu/saiyidu-l-’ustādhu-d-duktūr → -doktōr・~ ]
[ アッ=サイイドゥ・ル=ウスターズ・ッ=ドクトール・~ ]
【男性】~教授・博士氏 ♂
Mr. Prof. Dr. ~
اَلسَّيِّدَةُ الْأُسْتَاذَةُ الدُّكْتُورَةُ ـــ
[ ’as-sayyidatu/saiyidatu-l-’ustādhatu-d-duktūra(h) → -doktōra(h)・~ ]
[ アッ=サイイダトゥ・ル=ウスターザトゥ・ッ=ドクトーラ・~ ]
【女性】~教授・博士氏 ♀
Mrs. Prof. Dr. ~
اَلْآنِسَةُ الْأُسْتَاذَةُ الدُّكْتُورَةُ ـــ
[ ’al-’ānisatu-l-’ustādhatu-d-duktūra(h) → -doktōra(h)・~ ]
[ アル=アーニサトゥ・ル=ウスターザトゥ・ッ=ドクトーラ・~ ]
【女性】~教授・博士氏 ♀
Miss Prof. Dr. ~
尊敬表現を足す
حَضْرَةُ الدُّكْتُورِ ـــ
[ ḥaḍratu-d-duktūr → -doktōr・~ ] [ ハドラトゥ・ッ=ドクトール・~ ]
【男性】~博士様、~博士殿、~博士(御)机下;(医師宛で)~先生様、~先生殿、~先生(御)机下、~先生(御)侍史
さらにへりくだって相手への尊敬を明確にした感じの表現になるかと思います。
エンジニア・技師
اَلْمُهَنْدِسُ ـــ [ ’al-muhandis・~ ] [ アル=ムハンディス・~ ] 【男性】~技師、~エンジニア ♂ |
اَلْمُهَنْدِسَةُ ـــ [ ’al-muhandisa(h)・~ ] [ アル=ムハンディサ・~ ] 【女性】~技師、~エンジニア ♀ |
هَنْدَسَةٌ [ handasa(h/tun) ] [ ハンダサ(トゥン) ](工学)関連の人物につけます。工学部を卒業した人、エンジニアと呼ばれる技術職に携わる人などが該当します。(工学部卒でない人にもつけることがあります。)
「ハンダサ」(工学)という語はペルシア語由来の外来語で元々は治水・水路の土木工事技術を指していたようですが、今では工学全般やITなど多くの分野を含みます。
ٌاَلْمُهَنْدِسُ أَحْمَدُ طَنْطَاوِيّ
[ ’al-muhandis ‘aḥmad ṭanṭāwī(y) ] [ アル=ムハンディス・アフマド・タンターウィー ]
【男性】アフマド・タンターウィー技師、アフマド・タンターウィー エンジニア
Eng. Ahmad Tantawi
*タンターウィーはファミリーの出身地タンターに由来する形容詞語形の家名です。ファーストネームのアフマドだけで呼ぶ場合は「アル=ムハンディス・アフマド」(Eng. Ahmad)とします。
*口語ではuがo、iがeに転じたモハンデスという発音になりやすいです。対応する英字表記はMohandes。
اَلْمُهَنْدِسَةُ زَهَا حَدِيدٌ
[ ’al-muhandisa(h) zahā ḥadīd ] [ アル=ムハンディサ・ザハー・ハディード ]
【女性】建築家 ザハー・ハディード
(ザハー・ハディード技師、ザハー・ハディード エンジニア)
Eng. Zaha Hadid
*建築家ー اَلْمُهَنْدِسَة المِعْمَارِيَّة [ ’al-muhandisatu-l-mi‘mārīya(h) ] [ アル=ムハンディサトゥ・ル=ミウマーリーヤ ] ーのザハー・ハディード(ザハ・ハディド)氏にもアル=ムハンディサの敬称がつきます。
*彼女のように欧米をベースに活躍した人物の場合、アラブ諸国外の世界各国においてはアラブ式にザハー氏とせず、ハディード氏と書かれれることが多くなります。(ちなみにハディードは曽祖父の名前で、彼女や甥姪の代はもう家名として使うようになった模様です。)
スポーツ選手
サッカー選手の肩書き
اَلْكَابْتِن ـــ [ ’al-kābtin → ’al-kyapten・~ ] [ アル=キャプテン/キャブテン・~ ] |
つづり通りに読めば [ アル=カーブティン ] ですが、英語のCaptainをそのまま輸入して使っているため実際には [ アル=キャプテン ] もしくはpが発音できない人はbと読み [ アル=キャブテン ] と発音しているのが普通のように思います。
كَابْتِن الْفَرِيقِ [ kyapten(u-)(’a)l-farīq ] [ キャプテン・(ア)ル=ファリーク ] というと文字通りチームのキャプテン、主将なのですが、サッカー関係者に関しては現役・引退を問わず「キャプテン・~」と呼ばれているのをテレビのサッカー番組でも良く見かけます。
なお、このキャプテンは軍人の称号にも使われ女性将校を指す اَلْكَابْتِنَة [ al-kābtina(h) → ’al-kyaptena(h) ] [ アル=キャプテナ/キャブテナ ] という表記がニュース記事等で使われたりもしているようです。
اَلْكَابْتِن حُسَامٌ الْبَدْرِيُّ
[ ’al-kyapten ḥusam ’al-badrī(y) ] [ アル=キャプテン・フサーム・アル=バドリー ]
キャプテン・ホサーム・エル=バドリー
Captain Hossam El Badry
実在のサッカー関係者です。現役をとうの昔に引退してエジプト代表チームの指導なども行っている立場ですが、今でもキャプテンの称号をつけて報道されたりしています。
*日本ではホサム・エルバドリ、ホッサム・エルバドリ等とカタカナ表記されている人物です。文語通りに読んで表記すればHusam Al Badri等、フサーム・アル=バドリーとなるのですが、英字表記がエジプト方言の口語発音に即したものが広く使われているので、そのような場合は文語よりもブロークンな読みに基づいたホサーム・エル=バドリーとカタカナ表記する感じかと思います。
*ssはsの表記の別パターンで、ホッサムと読ませることを意図したつづりではありません。フランス語圏などではs1文字だと濁点がついてしまうため、ssにして回避しているのを良く見かけます。HossamをHosamにし、aの長母音を戻しHosāmとすると元の発音ホサームが復元できます。
*Elはエジプト方言の定冠詞です。文語では Al [ アル ] ですがエジプト人の名前なので El [ エル ] になっています。定冠詞はハイフンでつなぐバージョンが有名ですが、このようにハイフン無しスペースありで書くことも結構多いです。
*Badryのyは長母音イーの音を示します。ニスバと呼ばれる出身地や出身部族を示す形容詞語形のファミリーネーム(ラストネーム)は男性形だと語末が [ –ī(y) ] [ –イー ]となり、Badri以外にもこうしたBadryというyを使った英字表記が多く見られます。