アラブ人の名前のしくみ~ムハンマド、アフマド、アブドゥッラーが多いのはなぜか?

世界的に多い男性名ムハンマド

ムハンマドさんだらけになりやすいアラブ諸国やイスラーム諸国の名前事情

アラブ世界では国を問わずムハンマドさんがとにかく多いことで有名です。アラブ以外のイスラーム教徒家庭でもムハンマドという名前が人気であるために「◯◯国で一番多い名前はムハンマド」と報じられることもしばしばです。

ムハンマドという人名は命名の由来になっている預言者ムハンマドが生まれた地であるアラビア半島に限らず、「相手の名前がわからなければとりあえずムハンマドとでも呼んでおけば大丈夫」「街中で知り合いのムハンマドを呼んだら何人もふり向いた」「留学したら知り合いのアラブ人がムハンマドだらけだった」といった話がしばしば聞かれるほど多く、諸外国ではこの名前の男性の数がイスラーム教徒コミュニティーの規模を示す目印の一つともなっています。

アラブ諸国における男性名ムハンマドの人気

アラブ人の名前のしくみ~命名事情・人気ランキング:パレスチナ編』に過去のランキング推移や1年間にムハンマドちゃんと名付けられる男の赤ちゃんの実数が書いてあるのですが、パレスチナのヨルダン川西岸地区では常に名前ランキング断トツの1位を堅持。2015年に生まれた36,049名の男児のうち、4,829名がムハンマドという名前で出生登録しています。

一方エジプトでは、『アラブ人の名前のしくみ~命名事情・人気ランキング:エジプト編』にあるように、1,400万人超がムハンマドというファーストネームを持っているという統計結果が報じられたことがありました。

14 مليون مصرى باسم محمد.. و6 ملايين أحمد و4 ملايين محمود
『1400万人のエジプト人がムハンマド…アフマドは600万人、マフムードは400万人』
(2020年1月17日)

2020年初めに報道されたエジプト国内の統計記録に関する内容によると、ポピュラーな男性名を持つ国民の数は以下の通り。

  • مُحَمَّد [ muḥammad ] [ ムハンマド ]
    1,400万人超
  • أَحْمَد [ ’aḥmad ] [ アフマド/アハマド ]
    600万人
  • مَحْمُود [ maḥmūd ] [ マフムード/マハムード ]
    400万人

記事では2017年時点のエジプト人総人口が約9550万人だったと記されていました。単純計算すると、エジプト男性の4人に1人ぐらいがムハンマド(口語発音はモハンマド等)さんということになるでしょうか。

若い世代についてはもっと違う名前の人も多いのだろうとは思いますが、上で紹介したランキングでも断然の1位なので不動の地位は今後も揺らぐことが無いものと推測できます。

*記事には詳細が書いてありませんが、ムハンマドさんとして数えられている人が1400万と非常に多いのは「ムハンマド・アンワル」「ムハンマド・フスニー(口語発音はホスニー)」「ムハンマド・アリー」のような昔は命名が可能だった複合名も含まれているからなのでは?という気がしないでもないです。

ラストネーム(ファミリーネーム、名字、家名)部分にムハンマドが多い理由

アラブ諸国やイスラーム諸国には近現代日本のような姓の統一的なシステムが無い場合が多く、何種類もあるフルネームの形式のうち姓・名字・家名に相当するパーツであるラストネームの位置に父や祖父もしくは曽祖父といった父系の男性名を使うことがしばしばあります。

そうなると姓・名字・家名にその人の父親や祖父の名前が入ることになるので、その地域に多い男性名であればあるほどファーストネームの後に来るラストネームとしての使用頻度が高くなります。

これは姓の統一的な制度を持っていない地域で「◯◯◯・ムハンマド」という2パーツ形式のフルネームで名乗る人がそれだけ多くなるということを意味しています。

実際には先祖の職業にちなんだ家名など色々なラストネームがあるのですが、そういう多彩な家名のバリエーションは統計上マイナーな部類に入れられはじかれてしまうので、ムハンマドという父親/祖父/曽祖父を持っていて「◯◯◯・ムハンマド」というフルネームを名乗っている人々の後半部分が地域最多の”姓・名字”として上位に食い込んでくることになります。「

アラブ世界に色々な種類の出自表示があることを十分に把握していない統計で「アラブ人に最も多い名字はムハンマド」のように現状に即しているとは言えない結果が出やすいのはそのような事情によります。

しかし上でも説明した通り、基本的にはムハンマドという代々引き継いでいる家名があるわけではなくたまたま父親や祖父の名前をラストネームとして使っているだけだったりするので、「◯◯◯・ムハンマド」さんの子供がアフマドだとするとそのアフマドの2パーツフルネームは「アフマド・◯◯◯」、アフマドの息子マフムードの2パーツフルネームは「マフムード・アフマド」と1個ずつずらしていくことが普通に行われています。

そのため「◯◯で一番多い名字はムハンマド」のように報道がされていても、日本の鈴木や山本といったメジャーな名字と同じに考えない方が良いです。

なぜ男児名は定番ネームに命名が集中するのか?

預言者ムハンマドの名前であるため

エジプトに関する記事で挙げられていた「ムハンマド」「アフマド」「マフムード」。これらに命名が集中してきた理由は、預言者ムハンマドの名前や別名もしくは語根を同じくする語だからです。

イスラーム以前のジャーヒリーヤ時代にはわずかしかいなかったというムハンマドさんが爆発的に増えたのもそのためでした。

ムハンマドはイスラーム最後の預言者かつ使徒である人物の本名。またアフマドは彼が持つ複数の別称・あだ名・通称のひとつとして広く知られる男性名。マフムードはムハンマドやアフマドと同じ語根「ḥ-m-d」(称賛・称賛に関連した意味を付与する文字の組み合わせ)から成っていて、受動分詞であるムハンマドとほぼ同様の意味を持っています。

命名された人の多さは、エジプト国民の間で長く続いてきた預言者ムハンマドに対する崇敬の念と直結しています。

  • 預言者ムハンマドのように立派な人物になってほしい。
  • 最後の預言者・使徒であるムハンマドを強く尊敬している自分の気持ちを我が子の名付けに託したい。
  • ムハンマドという名付けがイスラーム共同体での慣習になっておりそれに従ってより良いとされる名前をつけてやりたい。
  • ムハンマドという名前をつけると子供がより幸せになれる気がする。
  • 祖父がムハンマドなので彼にちなんで孫に同じ名前をつけたい。

など動機は人によって異なるとは思うのですが、現地のトーク番組を視聴したりしていると「神性がある訳でもない普通の人間なのに、あそこまで高い徳を備えていて理想的な人物となることができた。だからこそ一層自分が近づきたい、我が子が目指して欲しいという願望を抱きやすい。」という話が出てくることもあり、そうした預言者ムハンマドの性質が彼にあやかっての命名を助長する一因になっているのだろうと感じることがあります。

預言者ムハンマドの別名

アラブ人の名前のしくみ~ファーストネーム(イスム)』ではアラブ地域、イスラーム共同体で好まれる赤ちゃんの名前や命名が推奨されていない・禁止されている名前について紹介しています。

別名として確定しているもの

預言者ムハンマドにあやかって命名される男児名は本名である

  • مُحَمَّدٌ
    [ muḥammad ] [ ムハンマド ] ♪発音を聴く♪
    Muhammad
    意味は「称賛された、讃えられた、称賛に値する、称賛されるべき」
    *動詞派生形第2形の受動分詞。文語では-un/-in/-anとタンウィーンを伴う格変化つきで読まれ [ ムハンマドゥン ] [ ムハンマディン ] [ ムハンマダン ] になりますが、文語の軽いトークや口語では省かれ [ ムハンマド ] で通っています。口語風にuがoに転じるとモハンマドという発音になりMohammadという英字表記に変化。さらに-adの部分が-edに転じてモハンメドという発音になりMuhammed、Mohammedといった英字表記に変化します。地域によっては語頭の母音が脱落したMhammad、Mhammedという書き方も見られます。日本語ではモハメド、ムハマド等色々なカタカナ表記をされますが全部元はムハンマドで同一の人名になります。

以外にもあり、彼の別名が由来である男性名も好まれて昔から使われてきました。多くのイスラーム関連サイトで預言者ムハンマドの別名として紹介されているのは以下の通りです。

  • أَحْمَد
    [ ’aḥmad ] [ アフマド / アハマド ] ♪発音を聴く♪
    Ahmad
    意味は「称賛された、より称賛された、最も称賛された」。
    *比較級・最上級の語形。ムハンマドと同じ語根。口語風にaがeに変わるとアフメドもしくはアハメドという発音になり、英字表記もAhmedに。なおAhはアーという音ではないので、アラブ式発音に即したカタカナ化をする場合はアーマド、アーメドとしないよう注意。カタカナ表記のルールによりアフマドと書かれることが多いものの、’afmadではなく’aḥmadなので実際の発音はアハマドに近いです。
  • مُصْطَفًى
    [ muṣṭafā ] [ ムスタファー ] ♪発音を聴く♪
    Mustafa
    意味は「選ばれた、選ばれし、選別された」
    *動詞派生形第8形の受動分詞。本来はタンウィーンを伴う [ ムスタファン ] という語形ですが人名として読む場合は語末の-n を省いた [ ムスタファー ] で発音されています。日本では末の長母音を復元しないムスタファというカタカナ表記が多く見られます。口語的にuがoに転じモスタファーに近く聞こえる場合の英字表記はMostafaなど。
  • أَمِين
    [ ’amīn ] [ アミーン ] ♪発音を聴く♪
    Amin、Ameen
    意味は「正直な、誠実な、安全な」
  • كَرِيم
    [ karīm ] [ カリーム ] ♪発音を聴く♪
    意味は「寛大な、高潔な、高貴な、気前が良い」
    *気前が良く客人を十二分に歓待するのはアラブで重視される美徳の一つです。
  • ِعَبْد الله
    [ ‘abdu-llāh(i) ] [ アブドゥ・ッラー ] ♪発音を聴く♪
    Abd Allah、Abdullah
    意味は「アッラーのしもべ」
    *アブド◯◯型人名の基本形で、女性版は أَمَة اللهِ [ ’amatullāh ] [ アマトゥ・ッラー ](Amat Allah、Amatullah、アマトゥッラー)です。
    *日本語表記の都合上元々の単語の切れ目通りにアブド・アッラーと中点を入れて書かれたりもしますが、アラビア語では実際には息継ぎせずにアブドゥッラーと一気読みで発音されます。語末は元々は母音iのついたhがあるのでアブドゥッラーヒなのですが、語末の母音を省略するワクフではアブドゥッラーもしくはアブドゥッラーに近く聞こえます。さらには口語的に読むとアブダッラー、アブドッラーなどと聞こえるため英字表記もAbdallah、Abdollahなどと実に様々。口語ではアブドゥッラ、アブダッラと最後の長母音が短めに聞こえることもあるためかAbdulla、Adbolla、Abdallaといった英字表記も存在します。

別名だと一部で信じられているもの

またクルアーンの章名にもなっている神秘の文字も一部では預言者ムハンマドの呼びかけであり別名だと考えられているとか。厳密には別名ではないそうですが、別名だと信じあやかって命名する人も少なくないとのこと。

  • طٰهٰ
    [ ṭāhā ] [ ターハー ] ♪発音を聴く♪
    Taha
    *クルアーン第20章「ター・ハー」章冒頭に出てくる神秘文字で、はっきりとした意味はわかっていないようです。預言者ムハンマドへの語りかけだと解釈されることもありイスラーム世界では彼の別名だと考える人も少なくないそうですが、イスラーム法学者らの意見によると違うのだとか。イスラーム法学的にはター・ハーのようにクルアーンの章句を男児名とすることは推奨はされていない模様。
  • يَاسِين
    [ yāsin ] [ ヤースィーン ] ♪発音を聴く♪
    Yasin、Yaseen
    *クルアーンの第36章『ヤースィーン』が由来。こちらもターハーと同じではっきりとした意味はわかっておらず神秘文字と呼ばれることも。ヤースィーン章はクルアーンの中でも最も重要な章の一つとされていること、また預言者ムハンマドへの語りかけだと解釈し彼の別名だと扱って我が子に命名する人も少なくないそうですが、厳密には違うのだとか。日本語ではヤーシーン、ヤシーン等とカタカナ表記されていることも多いです。

男性名マフムード

エジプトで400万人いるとされるマフムード(マハムード)さん。

  • مَحْمُود
    [ maḥmūd ] [ マフムード / マハムード ] ♪発音を聴く♪
    Mahmud、Mahmood、Mahmoud
    意味は「称賛された、褒め称えられた(者)」
    *受動分詞で、ムハンマドとほぼ同じ意味を持ちます。真ん中部分は f ではなく h なので、マフムードというよりはマハムードに近く聞こえます。MaがMeに転じたMehmood、Mehmoudという英字表記も。なお、ahはアーと伸ばす訳ではないのでアラビア語ではマームードとは発音しません。

預言者ムハンマドの本名と同じ語根でWikipediaやウェブページによっては彼の別名と書いてあることもあるのですが、イスラーム法学者によるとクルアーン等に根拠を見出すことはできず別称とは言えないそうです。

しかしながら一般では預言者ムハンマドの名前との関連で命名する人が少なくないようです。

ムハンマド+違う名前の2個セットでファーストネーム1個

ムハンマド単体ではなく、他の名前と組み合わせるパターンもあります。これは近年のパソコンによる国民ID登録の都合で複合名禁止が各国で進んでいることもあって減ってきてはいるようなのですが、近現代のアラブ地域でしばしば見られたタイプの命名になります。

預言者ムハンマドの名前に恩寵を求めてくっつける

2語以上の名前を組み合わせて1セットとしてファーストネームにする、複合名ー اِسْم مُرَكَّب [ ’ism murakkab ] [ イスム・ムラッカブ ] ーのパターンです。形としては「ムハンマド・◯◯」という◯◯部分に、アフマド、アリー、アミーン、ファールークといった別の名前を置いたものになります。

アラビア語では تَبَرُّك [ tabarruk ] [ タバッルク ] (祝福・恩寵があるようにと願うこと)目的でムハンマドという名前と組み合わせるファーストネーム、という書かれ方をしていることが多いです。イスラーム誕生期の先人らが行っていた命名の習慣とは異なるといった理由でイスラーム法学的な見地からは良くないとされる複合名の形式ですが、赤ちゃんに預言者ムハンマドの名前を通じて恩寵や幸運が舞い込むようにとしばしばこのような命名が行われてきたそうです。

ムハンマドの部分は預言者にあやかってつけたものでファーストネームの本体・メインなのは2語目の方ということらしく、ムハンマドさんが非常に多いことも手伝って他の人から呼ばれる時は「◯◯」の部分だけという感じになりやすい模様。

ムハンマド・◯◯タイプ複合名の実例

  • مُحَمَّد حُسْنِيّ [ muḥammad ḥusnī(y) ]
    Muhammad Husni、ムハンマド・フスニー
    口語的に発音するとムハンマド・ホスニーとかモハンマド・ホスニーとかになります。
  • مُحَمَّد أَنْوَر [ muḥammad ’anwar ]
    Muhammad Anwar、ムハンマド・アンワル
  • مُحَمَّد عَلِيّ [ muḥammad ‘alī ]
    Muhammad Ali、ムハンマド・アリー

エジプトではこのような命名をした場合、本人が有名人として知名度 شُهْرَة [ shuhra(h) ] [ シュフラ ] を得た場合はムハンマド部分が省略されてフスニーやアンワルの部分だけでファーストネームが呼ばれるようになった例が一般的です。そのためエジプト元大統領たちも普段メディアではフスニー、アンワルというファーストネームで報道されていました。

ムバーラク 元エジプト大統領の例

エジプトのムバーラク元大統領の名前はムハンマド・ホスニー・ムバーラクもしくはムハンマド部分を省略した通称のホスニー・ムバーラクをフルネームとして報道することが多かったのですが、彼の場合「ムハンマド・ホスニー」がファーストネームで「ムバーラク」がラストネームです。

本人・父・祖父3つの名前を並べたフルネームとは違いこれには父親の名前(アッ=サイイド)は登場しません。ムバーラクも祖父ではなく、何代か前の御先祖様の名前で家名的に使っているものになります。

サーダート 元エジプト大統領の例

(アッ=)サーダート元大統領の名前ムハンマド・アンワルのアンワルについても同様で、フルネームはムハンマド・アンワル・アッ=サーダートもしくはムハンマド部分を省略した通称のアンワル・アッ=サーダートとして報道することが多かったのですが、彼の場合「ムハンマド・アンワル」がファーストネームで「アッ=サーダート」がラストネームです。

「アンワル」は父親の名前ではなく本人の「ムハンマド・アンワル」の1組が彼のファーストネームになります。父親の名前はアンワル・ムハンマドもしくは略してムハンマドだった模様。

彼の兄弟も複合名で、ムハンマド・アーティフ(通称アーティフ、口語風発音はアーテフ)だったとのこと。

定番ネームを裏付ける言説

大昔から常時赤ちゃんネーム人気ランキングの上位を堅持している名前ですが、預言者ムハンマドの本名やクルアーンで実際に言及があることから彼の別名とされている男性名以外にも、預言者言行録(ハディース)で挙げられている「良い名前」だから選ばれるといった背景があります。

預言者ムハンマドじきじきのおすすめネーム

イスラーム法学者らによって真正のハディースとされているものの中に、赤ちゃんの命名に関する話が含まれています。

إِنَّ أَحَبَّ أَسْمَائِكُمْ إِلَى اللهِ عَبْدُ اللهِ وَعَبْدُ الرَّحْمٰنِ

「あなた方の名前の中でアッラーに最も愛される名前は、アブドゥッラーやアブドゥッラフマーンです。」といった意味の預言者ムハンマドの言葉です。

アブドゥッラーは預言者ムハンマドや彼の息子(幼少期に死去)の名前としても知られており、現代でも強い人気を誇っています。実際には「それ以外の名前でもよろしい」ということらしいのですが、最良の名前として言及されているのが上記の2つです。

تَسَمَّوْا بِأَسْمَاءِ الأَنْبِيَاءِ ، وَأَحَبُّ الأَسْمَاءِ إِلَى اللهِ عَبْدُ اللهِ وَعَبْدُ الرَّحْمٰنِ، وَأَصْدَقُهَا حَارِثٌ وَهَمَّامٌ، وَأَقْبَحُهَا حَرْبٌ وَمُرَّةُ

「預言者たちの名前をつけなさい。アッラーに最も愛される名前はアブドゥッラーやアブドゥッラフマーンです。最も誠実な名前はハーリスやハンマームなど。最も醜悪なのはハルブやムッラです。」といった意味の預言者ムハンマドの言葉です。

  • حَارِث [ ḥārith ] [ ハーリス ] ♪発音を聴く♪
    Harith
    意味は「耕す者、耕作者、農夫、財産を集める者、獅子(ライオン)」。
    *口語的な英字表記はHarethなど。
  • هَمَّام [ hammām ] [ ハンマーム ]
    Hammam
    ジャーヒリーヤ時代からあった古い男性名で、意味は「勇敢な、活動的な、強い意志の持ち主、獅子(ライオン)」など。
  • حَرْب [ ḥarb ] [ ハルブ ]
    Harb
    意味は「戦争、戦い、激しい戦いをする勇猛な男」。現代では命名が非常に少なくなっている男性名です。
  • مُرَّة [ murra(h) ] [ ムッラ ]
    Murra、Murrah
    意味は「苦味、苦いこと」。

預言者の言葉だと信じられているが実際はそうでないもの

خَيْرُ الْأَسْمَاءِ مَا عُبِّدَ وَحُمِّدَ، وَخَيْرُهَا عَبْدُ اللهِ وَعَبْدُ الرَّحْمٰنِ

これは語根が ح – م – د「ḥ-m-d」であるムハンマドやそれに類する名前や、عَبْد [ ‘abd ] [ アブド ] 某という名前が最良である、アブドゥッラーやアブドゥッラフマーンが良い、という内容の話です。

この言説はアラブ世界でムハンマド、アフマド、マフムード、アブドゥッラー、アブドゥッラフマーン、アブド◯◯さんが多い理由の一つとなっています。しかしながら人々が預言者ムハンマドの語ったと信じているこの言葉が本当に彼の言説だと証明する根拠は無く、イスラーム法学者たちからハディースとしては真正ではないとの判断が示されています。

このような感じで、アラブ世界では厳密には違うもののイスラーム的である、預言者の言葉であると信じて命名されている名前があったり実践されている風習があったりします。

預言者ムハンマドが共同体の赤ちゃんにつけた名前

وُلِدَ لِي غُلاَمٌ، فَأَتَيْتُ بِهِ النَّبِيَّ صَلَّى اللهُ عَلَيْهِ وَسَلَّمَ فَسَمَّاهُ إِبْرَاهِيمَ، فَحَنَّكَهُ بِتَمْرَةٍ، وَدَعَا لَهُ بِالْبَرَكَةِ وَدَفَعَهُ إِلَيَّ

預言者ムハンマドの教友(サハーバ)だったアブー・ムーサーが語った内容です。

「私に男児が生まれたので、彼を連れて預言者様ーアッラーが彼を祝福され平安を授けられますようにーのところへと行きました。彼はイブラーヒームと命名してくださり、ナツメヤシでタフニークを行われ、祝福を祈願され、それから私へと戻されました。」

イブラーヒームはイスラームにおける預言者(アブラハムに相当)の名前で、幼少期に亡くなった預言者ムハンマドの息子の名前でもありました。

このことからもイブラーヒームという男性名も昔から好まれ、愛されてきた赤ちゃんネームだと言えるかと思います。

生まれた赤ちゃんの健康祈願ータフニーク


تَحْنِيك [ taḥnīk ] [ タフニーク / タハニーク ] の様子です。預言者時代から伝わるスンナ(慣習)だそうで、正しい方法や注意点を説明した動画がYouTubeにも色々とアップされていました。

水で柔らかくしたナツメヤシ(デーツ)を用意し、お母さんの母乳を飲ませる前に指で赤ちゃんの上あごに塗りつけてモグモグさせる形式なのだとか。

 

(2023年7月 姓・名字がムハンマドという人が多く見える理由)