アラブ人名辞典-男性の名前

List of Arabic Given Names (Male) [ Arabic-Japanese ]

各種アラブ人名辞典(アラ-アラ、アラ-英)・中世から現代までのアラビア語大辞典・現地記事にて確認しながら日本語訳し、プラグインにデータ入力して作っています。「♪発音を聴く♪」をクリックすると発音サンプルの音声が流れます。

現地発刊のアラブ人名辞典5冊前後+串刺し検索で辞典を20~30冊ほどチェックし管理人の自分用メモとし、そこに創作・命名向け情報などをプラス。検索エンジンに全部載るよう全ネームを1ページに出力しています。長いので頭文字別ページや検索をご利用ください。

*アラビア語由来の名前を持っている人=アラブ系・アラブ人ではないので、トルコ、イラン、パキスタンなど非アラブ系の国における発音や表記とは区別する必要があります。(言語によってはアラビア語と少し意味が違ったり、アラブ男性名がその国の女性名になっていることも。)
* [ ] 使用項目/行数が少ない部分は未改訂の初期状態、【 】使用項目は改訂履歴あり。■ ■使用項目は直近改訂あり/新規執筆分で情報の正確性も高めの部分となっています。
*文藝春秋社刊『カラー新版 人名の世界地図』(著:21世紀研究会)巻末アラブ人名リストは当コンテンツの約1/3にあたる件数の人名・読みガナ・語義の転用と思われる事例となっていますが当方は一切関知していません。キャラ命名資料としてのご利用・部分的引用はフリーですが、商業出版人名本へのデータ提供許諾は行っていないので同様の使用はご遠慮願います。

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名前辞典の見方

カタカナ表記/アラビア語表記/英字表記/日本語での意味[補足]

アラブ人の名前はファーストネーム部分も家名部分も英字表記に揺れがあります。文語のつづりと母音記号に比較的忠実なこともあれば、口語で起きる二重母音の変化を反映したり子音が2個連続しているはずの部分を1文字だけで済ませているケースもありカタカナ化をする時に間違えやすいです。

英字表記については、使われ得るパターンをなるべくたくさん列挙するようにしているので、多用されないつづりも含んでいます。

たとえはハーリドの場合、KhalidとKhaalidのようにアーと長く伸ばす長母音āを1文字だけで表現するKhalidと2文字並べてKhaalidとする方法がありますが、アラブ人やアラビア語由来人名を持つイスラーム教徒が通常用いるのはKhalidの方です。キャラクターネーミングの際はアーを-aa-ではなく-a-、イーを-ii-ではなく-i-、ウーを-uu-ではなく-u-と当て字をしている英字表記を使うのが無難なのでおすすめです。

アラブ人名辞典-男性

現在、このディレクトリには 31 の 名前 があります (文字 ナ で始まる)
ナーイフ
母音記号あり:نايف
母音記号あり:نَايِف [ nāyif ] [ ナーイフ ] ♪発音を聴く♪
Nayif、Naayifなど
高い、そびえ立つ(もの/者);高貴な、崇高な(者)

■意味と概要■

動詞 نَافَ [ nāfa ] [ ナーファ ](高い、そびえる;高貴である、崇高である;(一定の年齢に)近づく;(数などが)超える)の能動分詞・男性形 نَائِف [ nā’if ] [ ナーイフ ] の3文字目である声門閉鎖音/声門破裂音ハムザ(ئـ とつづられている ء)部分の発音が口語的な変化である弱文字化 تَخْفِيف [ takhfīf ] [ タフフィーフ ] / تَسْهِيل [ tashīl ] [ タスヒール ] によって ي(y)に置き換わり نَايِف [ nāyif ] [ ナーイフ ] のようなつづりとなったもの。

アラブ人名辞典によっては現サウジアラビア首都付近であるナジュド地方の砂漠地域に居住する部族民の男性名として知られる人名だとしているものもあり、アラビア半島のうち特にサウジアラビア人の名前というイメージが比較的強いと言える模様。実際にサウジアラビア王族にもこの名を持つ人物らが存在する。

■発音と表記■

発音については、人名として نايِف という表記としながらも نَائِف [ nā’if ] [ ナーイフ ] と発音するとの旨(ويلفظ: نائف)が書かれているオンラインのアラブ人名辞典がある。

実際の口語アラビア語による日常会話では نَائِف [ nā’if ] [ ナーイフ ] の「イ(ئِـ)」ははっきりとしたイとなるが、نَايِف [ nāyif ] [ ナーイフ ] についても「يِـ(yi)」をユィとカタカナ表記すべきであるような y を強く感じる発音をするわけではないため後者もナーイフとしか聞こえないような発音が行われるとの印象。そのためアラビア語表記に忠実な英字表記(ラテン文字表記)でNayifやNaayifとなっていても、ナーユィフなどと当て字をせず、標準的なカタカナ表記であるナーイフとするのが無難・自然だと思われる。

また口語(方言)的にiの響きがe寄りになるナーエフに近い発音もしくはナーイフと意図しているであろうNayef、Naayefという英字表記も用いられているが、これについても y を強調したナーイェフというカタカナ表記はやや不自然であることから、実際の発音に近いナーエフという当て字が無難だと思われる。

またアラブ人名の英字表記ではアラビア文字表記に含まれるي(y)の字を抜去した慣用当て字もしばしば行われ、この人名についてもナーイフ(Nayif、Naayif)からyを抜いたNaif、Naaif、ナーエフ/ナーイフからyを抜いたNaef、Naaefなどもしばしば用いられている。

日本語カタカナ表記としてはナーイフ、文字数削減目的や英字表記Naif等を見たままにカタカナ化したナイフ、ナーエフ、ナエフ、ナーイェフ、ナイェフなどが併存。

競走馬名としてはアラブネームのNayefを英語発音したネイエフなども見られるが、Naderをナーデルではなくネイダーと読むのと同様英語読みで、アラビア語男性名としては誤読に当たる。

ナーイル
نَائِل(nā’il→Naail、Nail)♪発音を聴く♪
獲得者、手に入れる(者);手に入れた物、(与えられた)恩恵、贈り物
[ 口語的にiがeに転じた発音だとナーエルに近く聞こえる。その場合の英字表記はNaael、Nael。 ]

ナージー
نَاجِي [ nājī ] [ ナージー ] ♪発音を聴く♪
Naajii、Naji、Naajy、Najy、Naajee、Najeeなど
(敵・死・災難から逃れて)免れる(者)、生き残る(者)、助かった(者);(人やラクダの歩みが)速い

【 動詞 نَجَا [ najā ] [ ナジャー ] (免れる;歩みや走りを速くする)の能動分詞・男性形。動作の主体・主語であることを示す。非限定形かつ語末母音まで全部読む方法では نَاجٍ [ nājin ] [ ナージン ] と発音するが、人名なので ي の字をつける方のつづりでナージーとする。】

【 日本語のカタカタ表記としてはナージー以外にナジも使われている。口語では語末の長母音が短母音化してナージと聞こえることが多い。エジプトなどjをg音に置き換えて発音する地域ではナーギー、ナーギに。そこから派生する英字表記はNaagii、Naagi、Nagi、Naagy、Nagy、Naagee、Nageeなどが考えられる。】

ナージフ
نَاجِح(nājiḥ→Naajih、Najih)♪発音を聴く♪
成功した(人)、成功者、うまくいった(人)
[ カタカナ表記上はナージフが普通だが、フの部分はfではなく喉を狭めてハッと発音するのでhの後に来る母音を読まず子音で止める読み方をした場合にはナージハ寄りで聞こえることがある。 ]

ナースィフ
نَاصِح(nāṣiḥ→Naasih、Nasih)♪発音を聴く♪
助言者、忠告者

ナーズィム
نَاظِم(nāẓim→Naazim、Nazim)♪発音を聴く♪
詩人、作者、調整者
[ 口語的にiがeに転じた場合の発音はナーゼムで、英字表記はNaazem、Nazem。 ]

ナースィル
نَاصِر(nāṣir→Naasir、Nasir)♪発音を聴く♪
勝利の助けとなる(者)、援助者;ワーディー(ワジ、涸れ川)へと向かう水の流れ
[ エジプト元大統領はナセルという名前で書かれていることも多いが、彼のファーストネームや家名がこのナースィルだという訳ではないので注意。フルネームに含まれる عَبد النَّاصِر(‘abdu-n-nāṣir→エジプト口語読み‘abde-n-nāṣer)は2語セットでアッラーのしもべを意味するアブド◯◯シリーズだが、その一部だけを取って日本語化したものである。 ]
[ 口語的に読むとiがeに転じてナーセルに近くなり、英字表記もNaserに。sを2個連ねた、Nassir、Nasserといった表記もある。日本語ではナセルとカタカナ表記されていることも多い。]

ナーディル
نَادِر(nādir→Naadir、Nadir)♪発音を聴く♪
珍しい、稀な
[ 口語的に読むとiがeに転じたナーデルとなり、英字表記はNaader、Naderに。レバノン系アメリカ人であるラルフ・ネーダー(Ralph Nader)のネーダー(Nader)はこのナーデルを英語読みしたもの。なお日本ではNaderの長母音部分を復元しないナデルというカタカナ表記が多く見られる。]

ナーヒド
母音記号無し:ناهض
母音記号あり:نَاهِض [ nāhiḍ ] [ ナーヒド ] ♪発音を聴く♪
Nahid、Naahid
立っている(者);活動的な、精力的な(者);戦闘の準備ができている、敵との戦闘に臨む、敵と対決すべく急いで向かう(者);上り坂の道;高い場所;飛ぶことができるようになった鳥の雛(ひな)・幼鳥;獅子、ライオン(の別名の一つ)

■意味と概要■

「立ち上がる、起きる」といった意味を持つ動詞 نهض(母音記号あり:نَهَضَ [ nahaḍa ] [ ナハダ ])の動作主・行為者であること、もしくはそれが表す状態にあることを意味する能動分詞語形の男性形。副次的な語義をどの程度まで掲載しているかはアラブ人名辞典によってまちまちで、獅子の別名であるという記載があるものと無いものとに分かれる。

なお、獅子の別名としては発音が酷似した1文字違いで نَاهِض [ nāhiḍ ] [ ナーヒド ] どある程度語義もかぶっている ناهد(発音記号あり:نَاهِد [ nāhid ] [ ナーヒド ] )もあり男性名としても用いられている。ただし نَاهِد [ nāhid ] [ ナーヒド ] は女性名としては「乳房がこんもりと高い、胸が大きな、巨乳の(女性)」という意味。

■発音と表記■

口語的にiがeに転じた発音ナーヘドに対応した英字表記はNahed、Naahed。実際の発音ではナーヒッド、ナーヘッドに近く聞こえることもあるが、カタカナ表記としてはナーヒドないしはナーヘドが無難かと。

日本語カタカナ表記としてはナーヒド、ナヒド、ナーヘド、ナヘド、ナーヒッド、ナヒッド、ナーヘッド、ナヘッドなどの混在が考え得る。

ナーフィウ
نَافِع(nāfi‘→Naafi'、Nafi')♪発音を聴く♪
役に立つ、有益な [ 英字表記で上手く表せない喉を引き絞る子音 ع(アイン。「‘」などで表す。)の音を反映させる都合上、Nafie、Nafia、Nafeaなどの表記バリエーションが生じる。語末を子音=無母音で止める発音だとナーフィァに近く聞こえることがある。]

ナイーム
نَعِيم(na‘īm→Naiim、Naim、Naeem)♪発音を聴く♪
安楽、快適、幸福

ナウファル
نَوْفَل [ nawfal / naufal ] [ ナウファル ] ♪発音を聴く♪
Nawfal、Naufal
海;(広大な海のごとく)寛大で気前が良い(男);(大いなる)恵み、(多大なる)恩恵;(少年・青年に関して)顔が美しい、美青年、美貌の青年;ハイエナのオス;ライオンの仔;キツネの仔;犬の仔、子犬

■意味と概要■

語根 ن - ف - ل(n - f - l)からなる名詞で و [ w ] は語根に含まれない。كَثْرَة [ kathra(h) ] [ カスラ(フ/ハ) ](多量、大量、多さ)に関連した كَوْثَرٌ [ kawthar / kauthar ] [ カウサル ](多量、大量、潤沢;多くの恵み、潤沢な恩恵)同様に語根を余剰の و [ w ] を含む فَوْعَلٌ [ faw‘al(n) / fau‘al(n)] [ ファウアル(ン) ] 語形に当てはめたもので、誇張・度合いの強調を意味。名詞 نَافِلَة [ nāfila(h) ] [ ナーフィラ(フ/ハ) ]((分け前・権利・義務などの枠を超えたものとしての)余剰、余計、追加分;義務ではない随意の礼拝;戦利品;贈り物、授かり物、恩恵、恵み;(息子の息子としての)孫)の誇張・強調であるという説明、もしくはそれと同様の意味を持つ نَفَل [ nafal ] [ ナファル ]、نَفْل [ nafl ] [ ナフル ] の誇張・強調であるといった説明が文法書やクルアーンの注釈書などに書かれている。

アラビア語で「海」は寛大さの象徴・比喩のひとつ。中世から現代に至るまでのアラビア語辞典・大辞典によるとナウファルは「海」、「(海のごとく)寛大で気前が良い人物」という語義がメインである模様。なお動物に関してはハイエナのオスまでの掲載に留まるものが多く、ライオンの仔やキツネの仔まで載っている辞典は少ない。

ナウファルはイスラーム以前のジャーヒリーヤ時代から使われてきた伝統的な古い男性名で、ジャーヒリーヤ時代のクライシュ族にも نَوْفَلُ بْنُ عَبْدِ مَنَاف [ nawfal(u)/naufal(u) bnu ‘abdi manāf ] [ ナウファル・ブヌ・アブディ・マナーフ ](ナウファル・イブン・アブド・マナーフ、意味は「アブド・マナーフの子ナウファル」。)という男性がいた。預言者ムハンマドの祖父 عَبْدُ الْمُطَّلِبِ [ ‘abdu-l-muṭṭalib ] [ アブドゥ・ル=ムッタリブ ] の父方おじに当たる。

■発音と表記■

-aw-部分はアラビア語では二重母音 [ au ] [ アウ ] を表すため英字表記も-aw-つづりと-au-つづりの両方が見られる。アラビア語文語の二重母音「aw(=au)」部分は日常会話・口語ではou(オウ)もしくはō(オー)音になることが多く、ノウファルやにノーファルに対応したNowfal、Noufal、Noofal、そして-oo-を1文字に減らしたNofalといった英字表記が見られる。Nofalについては文語発音のナウファルが口語で変化したノウファル、ノーファルを意図した当て字なので、アラブ人名としては現地で発音されることが無い読みであるノファルとカタカナ表記しないことを推奨。

英語のoath(誓い)の「oa-」部分の発音を取り入れたと思われるNoafalなども。これについてはノーファルという発音を意図したものということでノアファルとカタカナ表記しないよう要注意。

これ以外には口語的に後半の-alが-elに転じたナウフェル、ノウフェル、ノーフェルといった発音に対応しているNawfel、Naufel、Noufel、Noofel、Nofel、Noafelなども使われている。

ナウワーフ
نَوَّاف(nawwāf→Nawwaaf、Nawwaf)♪発音を聴く♪
高い、非常に長身な
[ 強調の意味がある語形。アラビア語のnawwāfをカタカナ表記にする場合、aw部分が二重母音auに相当するので小さなッのナッワーフではなくナウワーフとした方がより正確。同様に、「第1の」という意味の أَوَّل(’awwal)もアッワルではなくアウワルとカタカナ表記するのが一般的。]

ナジーブ
نَجِيب(najīb→Najiib、Najib、Najeeb)♪発音を聴く♪
高貴な生まれの、名家出身の、傑出した、賢い、理知的て理解の早い、見識のある
[ カイロ方言でjがgと読まれるエジプトなどではナギーブになる。jをgで置き換える場合の英字表記はNagiib、Nagib、Nageebなど。Naguibという表記もある。ナジーブ、ナギーブに関しては日本語では長母音を復元しないナジブ、ナギブというカタカナ表記も見られる。]

ナジュド
نَجْد(najd→Najd)
小高い場所、台地、高地、高原;高く盛り上がった道;勇敢で傑出している男、鋭敏・活動的で他の者の追随を許さない勇敢な男;呼ばれた際にすぐに返事をする男、返事が早い男;巧みな、腕の良い;木が生えていない場所、植生が無い土地;サウジアラビアの首都(リヤド/リヤード)がある地方の名前(ナジュド/ネジュド/ネジド);胸、乳房;悩み、苦悩、悲しみ
[ 文語ではjの部分に母音がつかないのでナジドに近い発音だが、口語ではjの後に母音がはさまってナジェドに近くなることも多く英字表記でNajedとなっていることもしばしば。 ]

ナジュム
母音記号無し:نجم
母音記号あり:نَجْم [ najm ] [ ナジュム(実際にはナジムに近く聞こえることも) ] ♪発音を聴く♪
Najm
星;スター、花形;茎を持たない形状の植物

■意味と概要■

「星」を意味する名詞に由来する男性名。天体の星という意味以外にも、芸能人・人気者・花形といったいわゆる英語や日本語の「スター」と同じ意味で用いられることも多い。

نَجْم [ najm ] [ ナジュム ](星;スター、花形)自体は男性名詞かつ男性の名前として使われるため、アラブの女性名として使う場合は複数形の نُجُوم [ nujūm ] [ ヌジューム ](星々)にするか、星1個を表しかつ女性名詞であることを示す ة(ター・マルブータ)がついた女性形(女性バージョン)である نَجْمَة [ najma(h) ] [ ナジュマ ]((1個の)星)となる。「星」の意味で創作物のキャラクターやペットに命名する場合は女性キャラに「ナジュム」と命名しないよう要注意。

■発音と表記■

学術書などではカタカナ表記がナジュムとなっているが、j部分は母音uはつかず無母音のjであることからナジムに近く聞こえたりする。また口語ではjの後に補助の母音が追加されることが広く行われており、[ najim ] [ ナジム ] や [ najem ] [ ナジェム ] のような発音に変化しやすい。そのため文語での読みの母音記号に出てこないeをjの後に付け足しナジェム寄りにしたNajemという英字表記も多い。

また方言ではna(ナ)がne(ネ)となり、エジプト首都カイロ近辺方言などではjがgになってネグムという発音になるため、ネジュムに対応したNejm、ネジムに対応したNejim、Nejemといった英字表記も存在する。さらにエジプト首都カイロ近辺方言などではjの音がgの音に置き換わるため、ネグムという発音に対応した英字表記がNegmなども使われている。

またjではなくgを用いた表記に関しても補助母音を追加したNagim、Nagem、Negim、Negemなどがあるが、必ずしもエジプト方言風発音のガ行発音を意図しているとは限らずナジム、ナジェム、ネジム、ネジェムといった発音を意図している可能性もあるため、動画などで本人がどう発音しているのか確認が必要な場合も。

ナジュム・ アッ=ディーン(ナジュムッディーン)
نَجْم الدِّينِ(najmu-d-dīn→Najm al-Diin、Najm al-Din、Najmuddin、Najmuldinなど)♪発音を聴く♪
宗教(信仰)の星

ナシュワーン
母音記号無し:نشوان
母音記号あり:نَشْوَان [ nashwān ] [ ナシュワーン ] ♪発音を聴く♪
Nashwaan、Nashwan
酔っている、酔い始めている(、酩酊している);酔っ払い(の男);(酒を飲んで)楽しげ・嬉しそうにしている、 ;(吉報・勝利などによって)喜びに包まれている、歓喜し酔いしれている

■意味と概要■

女性名として使われた事例もあるが、アラブ世界では基本的には男性名との扱いでイスラーム以前のジャーヒリーヤ時代から使われていた名前。

形容詞的意味と名詞的意味を持ち合わせており、同じ فَعْلَانُ [ fa‘lān(u) ] 語形である سَكْرَانُ [ sakuran ] [ サクラーン ] と似たような意味だが、アラビア語辞典によるとひどく酔っている酩酊状態ではなく酔い始めの最初の段階の様子、ワインなどの酒を飲んでご機嫌な状態になってきた様子を表す模様。

アラビア語-英語辞典やアラビア語-日本語辞典では深く酔っている、酩酊状態である、陶酔状態で恍惚としているといったイメージを示す語義も載っているが、アラビア語大辞典などでは سَكْرَانُ فِي أَوَّلِ سُكْرِهِ や سَكْرَانُ فِي أَوَّلِ أَمْرِهِ などと定義されており酒飲みの序盤、酔い始めた最初の段階であり、酩酊・泥酔状態よりは軽く酔い始めて嬉しそうにしている様子が本来の意味に近いことがわかる。

■発音と表記■

日本語カタカナ表記としてはナシュワーン、ナシュワン。

また長母音āがē寄りになる方言におけるナシュウェーン、そしてその長母音が短めに詰まったナシュウェンに近い口語発音に即したNashween、Nashwenといった表記もまれに見られる。

ナスーフ
نَصُوح(Nasuuh、Nasuh、Nasouh、Nasooh)大いに忠告・助言を行う(者)、誠実な、忠実な[強調の意味がある語形]

ナスィーフ
نَصِيف(naṣīf→Nasiif、Nasif、Naseef)♪発音を聴く♪
公正な(者)、半分ずつに二等分する(者)、(物の)半分、ヴェール
[ sを2個重ねたNassif、Nasseefといった表記も多い。日本では日本語的にsをshiでカタカナ化したナシーフという表記が見られる。]

ナスィーム
母音記号無し:نسيم
نَسِيم [ nasīm ] [ ナスィーム ] ♪発音を聴く♪
Nasiim、Nasim、Naseem
よそ風、微風;心地良い風

■意味と概要■

アラビア語辞典での定義は「木を動かしたり足跡を消したりしない柔らかな風」、「風が強まる前の最初の吹き始め」、「心地良い風、そよ風」など。

日本語記事では「ナシームはアラビア語で海風という意味」と紹介しているものもあるが、不正確な情報。ナスィーム単体が元々海風という意味を持っている訳ではなく、海風という意味の時は「海」を意味する名詞 بَحْر [ baḥr ] [ バフル/バハル ] を添えた نَسِيمُ البَحْرِ [ nasīmu-l-baḥr ] [ ナスィーム・ル=バフル/バハル ] で「海風、海から陸へと吹くそよ風」、その逆の陸風の時は「陸」を意味する名詞 بَرّ [ barr ] [ バッル ] を添えた陸から海へと吹く نَسِيمُ البَرِّ [ nasīmu-l-barr ] [ ナスィーム・ル=バッル ] で「陸風、陸から海へと吹くそよ風」という区別がなされている形となっている。

■発音と表記■

フランス語などで濁点化を防ぐといった目的からsを2個連ねたNassiim、Nassim、Nasseemという英字表記もあるが、これらはナスィームのことでナッスィーム、ナッスィム、ナッセームと発音することは特に意図していないので要注意。また口語風にaがeに転じたネスィーム寄りになった発音に対応したNesiim、Nesim、Nessiim、Nessim、Nesseemなども派生。

日本ではナスィーム、当て字の際に長母音を抜いたナスィム以外にも外国語への当て字における慣習からsi(スィ)がsh(シ)音に置き換わったナシーム、ナシム、ネシーム、ネシムといったカタカナ表記が見られる。

ナズィール
نَذِير(nadhīr→Nadhiir、Nadhir、Nadheer)♪発音を聴く♪
警告者、警告、警報、(悪いことが起きる)前兆
[ アラビア語の口語でしばしばdhがzに置き換わることもあってか、NazirやNazeeerという英字表記も存在する。日本では日本語的にdhをj音と聞こえるナジールや、長母音を復元しないナジルでカタカナ表記されていることが多い。]

ナズミー
نَظْمِيّ(naẓmī(y)→Nazmii、Nadhmii、Nazmi、Nadhmi、Nazmy、Nadhmy、Nazmee、Nadhmee)♪発音を聴く♪
整理・統制・組織の(に関連した)、秩序を好む(者)
[ ظ はzで英字表記してある場合とdhの場合との2通りがある。文語ではdhの強勢音だが、口語ではzの強勢音となり地域差・方言差が見られる。日本語ではナズミー、ナズミ以外にもナドミとカタカナ表記されていることがある。アラビア語においては厳密には語末を発音するとnaẓmīyとなるためナズミーュ、ナズミーィのように聞こえるが、口語など日常的な会話では単なるnaẓmīのナズミーと聞こえる発音をしていることが多い。この場合はアクセント位置が前方にずれる。 →♪発音を聴く♪]

ナスリー
نَصْرِيّ(naṣrī(y)→Nasrii、Nasri、Nasry、Nasree)
勝利の、援助の、支持の
[ 厳密には語末を発音するとnaṣrīyとなるためナスリーュ、ナスリーィのように聞こえるが、口語など日常的な会話では単なるnaṣrīのナスリーと聞こえる発音をしていることが多い。この場合はアクセント位置が前方にずれる。 ]

ナスル
1)نَسْر(nasr→Nasr)♪発音を聴く♪
ワシ、鷲
2)نَصْر(naṣr→Nasr)♪発音を聴く♪
勝利、援助、支援

ナスル・アッ=ディーン(ナスルッディーン)
نَصْر الدِّينِ(naṣru-d-dīn→Nasr al-Diin、Nasr al-Din、Nasruddin)♪発音を聴く♪
宗教(信仰)の勝利
[ トルコ民話に出てくるナスレッディン・ホジャの「ナスレッディン」はこの名前から。]
[ 定冠詞al-読みが口語のel-に置き換わったナスレッディンNasrredinといったバージョンもある。]

ナスル・アッラー(ナスルッラー)
نَصْر اللهِ(naṣru-llāh→Nasr Allah、Nasrullah)♪発音を聴く♪
アッラーの勝利
[ ヒズブッラー(ヒズボラ)の書記長 حَسَن نَصْر الله(ḥasan naṣrullāh→口語的発音はnaṣrallā(h)、Hassan Nasrallah、ハサン・ナスルッラーフもしくはハサン・ナスラッラー)のフルネームの一部としても広く知られる。有名な種牡馬ナスルーラの名前はここから。 ]
[ 文語で語末まで厳密に読めば子音のhがあるためナスルッラーフという発音になる。しかしながら日常では口語的にhがほとんど聞こえないナスルッラーのような発音が多く、アクセント位置も前方にずれる。口語ではナスラッラーという発音になることが多く、そこからNasrallahという英字表記が派生する。♪発音を聴く♪]

ナダー
نَدَى [ nadā ] [ ナダー ] ♪発音を聴く♪
Nadaa、Nada
露、夜露;湿気、湿り気;雨;寛大さ
【 有名マンガ『サトコとナダ』に出てくるナダはこの名前。女性名としての使用が多いが男性名として使われることもある。アラビア語で雨水や露は恵みの象徴のため大昔から人名としても好まれてきた。】
【 口語(話し言葉、方言)ではナダーではなく短くなったナダに近く聞こえることが一般的。日本語ではナダーよりも語末の長母音が短母音化したナダというカタカナ表記の方が多く見られる。】

ナディーム
نَدِيم [ nadīm ] [ ナディーム ] ♪発音を聴く♪
Nadiim、Nadim、Nadeemなど
(飲む際の、宴席での)同伴者、同席者;飲み友達、飲み仲間、呑み友達、呑み仲間;仲間、友達、親友

【 (主に夜に)飲んだり談話を楽しんだりする場や宴での同伴者・同席者という意味。同席して一緒に飲んで・談話する相手のこと。歓談や芸能を楽しむ سَمَر [ samar ] [ サマル ](夜の会話/談話/歓談/宴席)と関連付けて使われることも。

酒宴以外における同伴者・同席者を指すのにも用いられるが、主にアルコール類の摂取を伴う場について言う言葉であるため、命名してから「酒を共に飲む相手というイスラーム的でない由来の名前をつけてしまいました。改名すべきでしょうか?」という相談を法学者にしている人の例なども見られる。

酒宴を開き人を侍らせること自体はイスラーム以前のジャーヒリーヤ時代からアラブ人は行っていたが、ペルシア的要素を多分に有していたアッバース朝時代にも宮廷内での飲酒が行われていた。カリフに同伴して酒類を飲んだり作詩をしたりする職業的・専門的なナディームらがおり宮廷文化の一端を担った。享楽的傾向で知られ『千夜一夜物語(アラビアンナイト)』にも登場するアブー・ヌワースもその一人。彼は現代イラクの首都バグダードに銅像があるほか、彼の名前を冠したアブー・ヌワース通りは魚の丸焼きマスグーフ専門店の名所としても知られる。

アブー・ヌワース通りはイラク経済全盛期にレストランやナイトクラブがずらりと並び、イラク人らの会食でにぎわい外国人観光客が多数訪れる観光名所だった。エジプトの新聞はかつて「バグダードで人を見失ったらアブー・ヌワース通りに行けば良い。相手も必ずそこを通るだろうからきっと見つけられるはずだ。」と書いたことすらあったとか。旧政権崩壊後は国民の生活水準変化により気軽にマスグーフランチを楽しむことも難しくなり、アブー・ヌワース通りの店舗も多数閉店したという。

なお نَدِيم [ nadīm ] [ ナディーム ] 自体は動詞 ندم から得られる分詞類似の فَعِيلٌ [ fa‘īl(un) ] [ ファイール(ン) ] 語形だが、「飲み・宴席で相伴する」という動詞は動詞派生形第3形の نَادَمَ [ nādama ] [ ナーダマ ] や第6形の تَنَادَمَ [ tanādama ] [ タナーダマ ] が用いられる。

第1形(基本形) نَدِمَ [ nadima ] [ ナディマ ] は「後悔する」という全く違う概念を示すが、これに関しては「元々 مُنَادَمَة [ munādama(h) ] [ ムナーダマ ](飲み・宴席での同伴)は مُدَامَنَة [ mudāmana(h) ] [ ムダーマナ(フ/ハ) ] の子音字の位置があべこべになったもので إِدْمَان الشَّرَابِ [ ’idmānu-sh-sharāb ] [ イドマーヌ・ッ=シャラーブ ]((相伴役との)飲酒にひたること、酒を飲んでばかりいること)という意味だった語の子音字が入れ替わりこのような文字順になった」という文法学者の説が中世の複数アラビア語大辞典等で紹介されている。しかし نَدِيم [ nadīm ] [ ナディーム ] の語源に関しては他にも諸説あるといい、確定した学説ではない模様。

なおペルシア文学などの飲酒にまつわる詩に出てくる酌人の方は سَاقِي [ sāqī ] [ サーキー ](水を注ぐ者;酒を注ぐ者、お酌をする人)。非限定形の時の語形は سَاقٍ [ sāqin ] [ サーキン ]。水などを注ぐという意味の動詞の能動分詞男性形。しばしば若人・青年が担当したため少年愛とからめて語られることも少なくなかった。】

【 長母音ī(イー)を表す英字表記は複数通りあり、-ii-を使ったNadiim、-i-を使ったNadim、-ee-を使ったNadeem、-e-1文字に減らしたNaedm、-y-を使ったNadym、-ie-を使ったNadiem、-ei-を使ったNadeim、-ea-を使ったNadeamなどが併存。アラビア語に即した発音をベースにする場合はナデム、ナダイム、ナディエム、ナデイム、ナデアムとカタカナ表記をしないことを推奨。

日本語におけるカタカナ表記としてはナディーム、ナディム。】

ナビーフ
نَبِيه(nabīh→Nabiih、Nabih、Nabeeh)♪発音を聴く♪
分別がある、明敏な、利発な、名家の生まれの、高貴な
[ レバノンの政治家Nabih Berri(ナビーフ・ビッリー、もしくは口語読みに即したナビーフ・ベッリー)のファーストネームでもある。 ]

ナビール
نَبِيل(nabīl→Nabiil、Nabil、Nabeel)♪発音を聴く♪
高貴な、名家の出身の