List of Arabic Given Names (Male) [ Arabic-Japanese ]
各種アラブ人名辞典(アラ-アラ、アラ-英)・中世から現代までのアラビア語大辞典・現地記事にて確認しながら日本語訳し、プラグインにデータ入力して作っています。「♪発音を聴く♪」をクリックすると発音サンプルの音声が流れます。
現地発刊のアラブ人名辞典5冊前後+串刺し検索で辞典を20~30冊ほどチェックし管理人の自分用メモとし、そこに創作・命名向け情報などをプラス。検索エンジンに全部載るよう全ネームを1ページに出力しています。長いので頭文字別ページや検索をご利用ください。
*アラビア語由来の名前を持っている人=アラブ系・アラブ人ではないので、トルコ、イラン、パキスタンなど非アラブ系の国における発音や表記とは区別する必要があります。(言語によってはアラビア語と少し意味が違ったり、アラブ男性名がその国の女性名になっていることも。)
* [ ] 使用項目/行数が少ない部分は未改訂の初期状態、【 】使用項目は改訂履歴あり。■ ■使用項目は直近改訂あり/新規執筆分で情報の正確性も高めの部分となっています。
*文藝春秋社刊『カラー新版 人名の世界地図』(著:21世紀研究会)巻末アラブ人名リストは当コンテンツの約1/3にあたる件数の人名・読みガナ・語義の転用と思われる事例となっていますが当方は一切関知していません。キャラ命名資料としてのご利用・部分的引用はフリーですが、商業出版人名本へのデータ提供許諾は行っていないので同様の使用はご遠慮願います。
関連記事
『アラブ人名辞典-女性の名前』
『アラブ家名辞典』
『アラブ人の名前のしくみ』(フルネームの構成や敬称・通称のシステムについて)
『英字表記されたアラビア語の名前をカタカナで表記するには?』
『アラビア語の名前ネーミングガイド』(アラブ風創作キャラの命名手順)
名前辞典の見方
カタカナ表記/アラビア語表記/英字表記/日本語での意味[補足]
アラブ人の名前はファーストネーム部分も家名部分も英字表記に揺れがあります。文語のつづりと母音記号に比較的忠実なこともあれば、口語で起きる二重母音の変化を反映したり子音が2個連続しているはずの部分を1文字だけで済ませているケースもありカタカナ化をする時に間違えやすいです。
英字表記については、使われ得るパターンをなるべくたくさん列挙するようにしているので、多用されないつづりも含んでいます。
たとえはハーリドの場合、KhalidとKhaalidのようにアーと長く伸ばす長母音āを1文字だけで表現するKhalidと2文字並べてKhaalidとする方法がありますが、アラブ人やアラビア語由来人名を持つイスラーム教徒が通常用いるのはKhalidの方です。キャラクターネーミングの際はアーを-aa-ではなく-a-、イーを-ii-ではなく-i-、ウーを-uu-ではなく-u-と当て字をしている英字表記を使うのが無難なのでおすすめです。
アラブ人名辞典-男性
Siddiiq、Siddiq、Siddeeqなど
(とても、大いに、常に、いつも必ず)誠実な、実直な、正直な、約束を果たす、有言実行の(者);預言者に下された啓示を嘘つき呼ばわりすることなく正しいとみなしアッラーの教えをしっかり信じている(者)
■意味■
行為者であることを示す能動分詞男性形 صَادِق [ ṣādiq ] [ サーディク ](正直な、嘘をつかない;実直な、約束を違えない)の回数や度合いを強調する語形。
1回きりではない「正直である」「実直である」という継続的な性質を備えていることを示す形容詞的な意味を持つ صَادِق [ ṣādiq ] [ サーディク ] の度合いが非常に強くいつもそうだったこと、決して不誠実なことを常にしなかった人柄であったことを示唆。「常に正直・実直である」「決して嘘をついたりしない」という強いニュアンスとなる。
■由来となった人物■
初代正統カリフだったアブー・バクルにあやかってつける男児名。絶大なカリスマ性を有していた預言者ムハンマド逝去直後のイスラーム共同体を率いるに値すると判断された原因ともなった彼の性格・特質
(1)「(とても、大いに、常に、いつも必ず)誠実な、実直な、正直な、約束を果たす、有言実行の(者)」という能動分詞男性形 صَادِق [ ṣādiq ] [ サーディク ] に対応した意味合い كَثِير الصِّدْقِ [ kathīru-ṣ-ṣidq ] [ カスィール・ッ=スィドク ](大いに実直な)
(2)「預言者に下された啓示を嘘つき呼ばわりすることなく正しいとみなしアッラーの教えを(誰よりも、他のどのイスラーム教徒よりも率先して)しっかり信じている(者)」という派生形第2形動詞 صَدَّقَ [ ṣaddaqa ] [ サッダカ ](正しいと信じる、嘘を言っておらず真実を言っているとみなす)の主体としての كَثِير التَّصْدِيقِ [ kathīru-t-taṣdīq ] [ カスィール・ッ=タスディーク ](人のことを真実だと大いに信じている、相手のことを嘘偽りだと全く思わず全力で信用する)
とが名前の意味として示され得る。
アブー・バクルが言行不一致などしない信頼のおける人物で、預言者ムハンマドの言葉・教えを疑ったりせず正しいものと信じ誠実につき従ったこと、多数決でリーダーとして選ばれるぐらいに皆が「彼は信用に値する極めて誠実な人物だし、誰よりも預言者ムハンマドを通じて広められたイスラームの教えを信じてきた」と思っていた人格者ぶりが由来なので、アラブ・イスラーム男性名としてはかなり宗教色が強い部類に入る。
各地のイスラーム教徒が彼にあやかってスィッディークと命名されてきたが、アラブ諸国ではそれほどポピュラーではなくパキスタン方面など非アラブイスラーム教徒に多く見られる。
■発音と表記■
日本語におけるカタカナ表記としてはスィッディーク、スィッディク、スィディークなど。外国人名表記に多いSi部分のシ表記が多いため、シッディーク、シッディクさらには「ッ」を抜いたシディーク、シディクとカタカナ表記されていることも少なくない。(パキスタン系カレー店などについているシディークという男性名もこの人名。日本語カタカナ表記でSi-となる外国人名をスィではなくShi-と同じシ音で表す慣例が主に関係。)
非アラブ圏のイスラミックネームとしては母音iがaに置き換わったSaddiiq、Saddiq、Saddeeq、Saddeq(日本語におけるカタカナ表記としてはサッディーク、サッディクとなっている可能性高し)も使われているが、صَادِق [ ṣādiq ] [ サーディク ](正直な、嘘をつかない;実直な、約束を違えない)の表記バリエーションの一つでdを2個連ね-dd-にしたSaddiqや別の男性名 صَدِيق [ ṣadīq ] [ サディーク ] のdを2個連ねた英字表記バリエーションSaddiq、Saddeeq等とかぶるのでアラビア文字表記を見て確認・区別する必要が出てくる。特に後者は母音記号が無いと صديق となり全く同じつづりになってしまうため動画などで実際の発音をしないと区別がつかない。
また非アラブ地域ではこの人名にShiddiiq、Shiddiq、Shiddeeq、Shiddeq、Shaddiqという英字表記が使われている例も見られる。日本語におけるカタカナ表記としてはシッディーク、シッディク、シディク、シャッディーク、シャッディク、シャディクが考え得る。これらはスィッディークの称号で呼ばれたアブー・バクルの名前と組み合わせて使われていることから、アラビア語ではスィッディークだったもののSがShiに置き換わったり、Siの母音iがaに替えられSaやShaとなっていると推察可能。Shaddiqについてはインドネシア付近で使用例が多い模様。
またペルシア語等ではアラビア語の ق [ q ] が غ [ gh ] と同音となり置き換わること、アラビア語文語語形のiがeに転じることなどから非アラビア語イスラーム名の英字表記としてスィッディーグ系のSiddiigh、Siddigh、Siddeegh、Siddegh、セッデーグ系のSeddigh、Seddegh、語頭Siの母音iがaに置き換わったサッディーグ系のSaddigh、Saddeghなども存在。
また「gh」を発音の似た「g」に置き換えたスィッディーグ系Siddiig、Siddig、Siddeeg、Siddeg、セッディーグ系Seddiig、Seddig、Seddeeg、Seddeg、サッディーグ系Saddig、Saddeeg、Saddeg、SがShに置き換わったShiddiig、Shiddig、Shaddigもネット検索にて存在確認済。パキスタン系などのイスラーム男性名としては語末にeを加えたSiddique、Shiddique、Shaddiqueなども。この場合-queは「ク」を意図しているものと思われるので「クエ」とカタカナ化しないよう要注意。
槍の穂先、先鋒
[ siを日本語風にshiで発音してシナーンとカタカナ表記されていることも多い。長母音部分を復元しないシナンというカタカナ表記も。]
母音記号あり:سِرَاج [ sirāj ] [ スィラージュ ] ♪発音を聴く♪
Siraj、Siraaj
(明るく輝いている)灯火、ともしび、ランプ、ランタン;明るく輝くもの;(比喩的に:不信仰・無知蒙昧という暗闇から正しき信仰の道へと信徒を)導く光、導き;太陽
■意味と概要■
イスラーム教の聖典クルアーン(コーラン)にも出てくる古い語。元々はペルシア語を経由してインドから伝わった外来語だったという。名詞としては明るく輝く灯火・ランプ・ランタン以外にも比喩的に唯一神アッラーやイスラームという宗教が信徒に与える導きを光としてたとえる用法などがある。
■発音と表記■
日本語のカタカナ表記ではスィラージュ、英字表記Sirajそのままに読んだり文字数削減をするためといった理由から長母音部分を省略したスィラジュ、最後の j をジュではなくジとしたスィラージ、スィラジなどが使われ得る。
また日本語カタカナ表記では外国語の「si(スィ)」音を「shi(シ)」と聞こえる日本語式のカタカナ化がしばしば行われるため、シラージュ、シラージ、シラジュ、シラジなどもこの人名「スィラージュ」の表記ゆれとなり得る。
エジプト首都カイロならびに周辺地域方言、イエメン、オマーン、サウジアラビアなどの一部方言のように ج の「j」発音が「g」音に置き換わって [ sirāg ] [ スィラーグ ] になるケース、もしくは英語のgentleのようにgでつづって「j」(文語アラビア語の/ʤ/、レヴァント方言の/ʒ/)と読ませることを意図したケースに対応したSirag、Siraag(スィラージュもしくはスィラーグ)といった英字表記もある。
加えて英語のenableのようにeとつづってイと読むケース、もしくは口語的にiがeに転じたセラージュ、セラーグ寄りになった発音に即した英字表記としてはSeraj、SeraajならびにSerag、Seraagがある。
この他、口語アラビア語では語頭のس(s)についている母音iが脱落して [ srāj ] [ スラージュ ] となる発音もあり、英字表記Sraj、Sraajが派生する。母音iがuに置き換わって [ surāj ] [ スラージュ ] と読めるようなSuraj、Suraajという英字表記も併用されるなどしている。
母音記号あり:سِرَاج الدِّين [ sirāju-d-dīn ] [ スィラージュ・ッ=ディーン ] ♪発音を聴く♪
宗教(信仰の)の灯火、ともしび
[ sirāj部分はsiがshiと聞こえる日本語式のシラージュ、長母音を復元しないシラジュというカタカナ表記も多く見られる。dīn部分も長母音を復元しないディンというカタカナ表記が見られる。]
母音記号あり:سِرْحَال [ sirḥāl ] [ スィルハール ] ♪発音を聴く♪
Sirhal、Sirhaal
オオカミ(狼);ライオン(獅子)
■意味と概要■
男性名や男性名由来の部族名として使われている名詞 سِرْحَان [ sirḥān ] [ スィルハーン ] の1文字違いの同義語。
■発音と表記■
英語のenableのようにeとつづってイと読むケース、もしくは口語的にiがeに転じたセルハーン寄りになった発音に即した英字表記としてはSerhal、Serhaalがある。携帯電話にアラビア語キーボードが無かった時代に普及したチャットアラビア語の影響から、SNSのユーザーネーム等では語頭の ح [ ḥā’ ] [ ハー(ゥ/ッ) ] を数字の7に置き換えたSir7al、Sir7aal、Ser7al、Ser7aalなどが使われ得る。
日本語カタカナ表記としてはスィルハール、そして慣用表記におおい英字表記Sirhalにそのまま当て字したもしくは字数削減といった目的から「ー」を取ったスィルハルに加え外来語への当て字でしばしば行われるスィ(si)音のシ(shi)置き換えという慣用表記のためにシルハール、シルハルなども使われ得る。ただしアラビア語では شِرْحَال [ shirḥāl ] [ シルハール ](*このような語はアラビア語大辞典類にも載っておらず実在しないと言える)というのは全く別物として扱われるので、アラビア語として発音する場合は要注意。
母音記号あり:سِرْحَان [ sirḥān ] [ スィルハーン ] ♪発音を聴く♪
Sirhan、Sirhaan
オオカミ(狼);ライオン(獅子)
■意味と概要■
男性名だけでなく男性名由来の部族名としても使われてきた名詞で、イスラーム以前のジャーヒリーヤ時代からあった古い人名。語末が1文字違う سِرْحَال [ sirḥāl ] [ スィルハール ](♪発音を聴く♪)も同様の意味を持つ同義語とされ、男性名としても用いられている。
アラビア語辞典には ذِئْب [ dhi’b ] [ ズィッブとズィィブを混ぜたような発音 ](オオカミ(狼))の同義語とのみ書いてあるものもあるが、大きめの辞典だとオオカミ(狼)以外に أَسَد [ ’asad ] [ アサド ](ライオン(獅子))といった語義も併記されている。これはアラビア半島の現在サウジアラビア王国首都エリアとなっているナジュド地方ではオオカミを意味する語として用いられていた一方、イスラーム教の二大聖地がマッカ(メッカ)とアル=マディーナ(マディーナ、メディナ)を擁するヒジャーズ地方(フザイル族方言)ではライオンを意味する語として用いられていたという差異に起因するという。
中世に書かれた大辞典類に載っているその他の語義としては「犬」、「馬」、「水溜め、水桶の中央部」など。
なお母音記号が無いと全く同じつづりになる سَرْحَان [ sarḥān ] [ サルハーン ] は「心ここにあらずな、上の空の、ぼんやりとした」という人の心理状態を示す名詞・形容詞となっているが、現代では混同する人がしばしばおり狼というつもりでサルハーンと命名する事例も見られるという。
■発音と表記■
英語のenableのようにeとつづってイと読むケース、もしくは口語的にiがeに転じたセルハーン寄りになった発音に即した英字表記としてはSerhan、Serhaanがある。
携帯電話にアラビア語キーボードが無かった時代に普及したチャットアラビア語の影響から、SNSのユーザーネーム等では語頭の ح [ ḥā’ ] [ ハー(ゥ/ッ) ] を数字の7に置き換えたSir7an、Sir7aan、Ser7an、Ser7aanなども用いられている。
日本語カタカナ表記としてはスィルハーン、そして慣用表記におおい英字表記Sirhanにそのまま当て字したもしくは字数削減といった目的から「ー」を取ったスィルハンに加え外来語への当て字でしばしば行われるスィ(si)音のシ(shi)置き換えという慣用表記のためにシルハーン、シルハンなども使われ得る。ただしアラビア語では شِرْحَان [ shirḥān ] [ シルハーン ](*このような語はアラビア語大辞典類にも載っておらず実在しないと言える)というのは全く別物として扱われるので、アラビア語として発音する場合は要注意。
Su‘uud、Su‘ud、Suuud、Suud、Suoud、Suoodなど
幸福、幸運
【 男性名としても使われる名詞 سَعْد [ sa‘d ] [ サアド(サァドに近く聞こえることも)](幸福、幸運)の不規則複数形(語幹複数形) سُعُود [ su‘ūd ] [ スウード ]((数々の、複数の)幸福、幸運)。
口語発音・よくある誤用系発音として سَعُود [ サウード ] [ sa‘ūd ] が多用されている。日本語のら抜き言葉同様フスハー(文語アラビア語)としては誤用だと意識せずサウードと発音する人が非常に多い。通常はよくある間違いとしてアラビア語関連記事で紹介されているが、1文字目 س [ s ] に母音uではなく母音aを付加する سَعُود [ サウード ] [ sa‘ūd ] という発音が「幸福、幸運」に関連する強調語形だと説明している人名辞典なども見られる。
サウジアラビアの英語や日本語の国名は文語語形 سُعُود [ su‘ūd ] [ スウード ]((数々の、複数の)幸福、幸運)ではなく口語発音の方の سَعُود [ サウード ] [ sa‘ūd ] を使用。
本来の文語(フスハー)語形に合致した「サウジアラビア王国」のアラビア語名称は、形容詞化したニスバ形容詞(関連形容詞)が「王国」を意味する名詞に形容詞修飾を行っている اَلْمَمْلَكَة الْعَرَبِيَّة السُّعُودِيَّة [ ’al-mamlakatu-l-‘arabīyatu-s-su‘ūdiya(h) ] [ アル=マムラカ(トゥ・)ル=アラビーヤ(トゥ・)ッ=スウーディーヤ(フ/ハ) ](*ة(ター・マルブータ)部分のトゥを読み飛ばすのは現代会話風のややブロークンな発音方法)となる。
口語発音・よくある誤用系発音が اَلْمَمْلَكَة الْعَرَبِيَّة السَّعُودِيَّة [ ’al-mamlakatu-l-‘arabīyatu-s-sa‘ūdiya(h) ] [ アル=マムラカ(トゥ・)ル=アラビーヤ(トゥ・)ッ=サウーディーヤ(フ/ハ) ] の方だが、サウジアラビア王室とのつながりがある放送局等では母音記号のついた書道作品で「サウード」ではなく「スウード」になっている他、アラブ諸国のフスハーによるニュースでも国名(の一部)を「アッ=スウーディーヤ」と発音するなど、文語としてはSa-ではなくSu-の方が正式だと認識されていることが推察可能。
*「サウジアラビア王国」の名称に含まれるサウジ部分は「サウード家の~」という意味。第一次サウード王国の拠点ともなった(アッ=)ディルイーヤをかつて統治していた مُقْرِن [ muqrin ] [ ムクリン ] 家出身の首長 سَُعُود [ su‘ūd /(口語発音)sa‘ūd ] [ スウード/(口語発音)サウード ] のファーストネームが由来。彼の息子ムハンマドが第一次サウード王国の王となり、ムクリン家からスウード(サウード)家に家名が切り替わった。】
【 この人名ではSuとūの後に ع [ ‘ayn / ‘ain ] [ アイン ] という子音がはさまっている。咽頭(のどひこ/のどち◯この奥にあるのどの上部分)を締めつけて出す子音で、この人名では母音無しの無母音(スクーン記号がついた)状態で発音されるためスウードというよりはスゥオード、ソオードに近く聞こえることも。
この ع [ ‘ayn / ‘ain ] [ アイン ] は英字表記だと「‘」(/ ‘ / ʿ)のような記号で表すなどするが、日常生活でアラブ人各自が用いる英字表記では「‘」は脱落してしまい、代わりに [ -u‘ū- ] 付近の喉に力を入れる発音をa、ao、euなどに置き換えるなどする。長母音ūがuu、u以外にou、ooで表現される傾向も合わせたSuuud、Suud、Suoud、Suood、Suaod…などかなり自由なつづりも含めた各種バリエーションが併存。
語頭のSuを口語的なSoに置き換えたソオード寄りの発音に即したSo‘ud、Souud、Soud、Sooud、Soood、Soeud…他も使われている。
携帯電話にアラビア語キーボードが無かった時代に普及したチャットアラビア語の影響から、SNSのユーザーネーム等では語中の ع [ ‘ayn/‘ain ] [ アイン ] を数字の3に置き換えたSu3uud、Su3ud、Su3oud、Su3ood、So3uud、So3ud、So3oud、So3oodなども用いられている。
日本語におけカタカナ表記はスウード、スウドなどが使われ得る。】
Subaah、Subah
美少年、美男子;灯火の炎
【 動詞 صَبُحَ [ ṣabuḥa ] [ サブハ ](顔が輝かしく美しい、美貌である)が由来。
クウェート首長家の名称についてはこの صَبَاح [ ṣabāḥ ] [ サバーフ ](朝)という意味だと説明している人名辞典もあるが、別の男性名 صُبَاح [ ṣubāḥ ] [ スバーフ ](美少年、美男子;灯火の炎)だとしている人名辞典も複数ある。
そのためアラブのメディアでは家名を آل صُبَاح [ ’āl(u) ṣubāḥ ] [ アール・スバーフ ](アール・スバーフ、「スバーフ家」の意)もしくは定冠詞を伴って آل الصُّبَاح [ ’āl(u) ’aṣ-ṣubāḥ ] [ アール・ッ=スバーフ ](アール・アッ=スバーフ、「アッ=スバーフ家」の意味)と発音していることが少なくなく、英語で書かれた専門書や現地サイト等で「Al Subah」「al-Subah」といった表記が存在するのもそのため
なお صَبَاح [ ṣabāḥ ] [ サバーフ ](朝)と似た人名としてはサッバーフ(実際の発音はサッバーハに近いこともある)があるが、これは語根という基本となる子音3文字パーツを صَبَاح [ ṣabāḥ ] [ サバーフ ](朝、午前)と共有している姉妹語で صَبَّاح [ ṣabbāḥ ] [ サッバーフ ](大いに輝いている、とても輝いている(もの);朝に来る(者);朝の飲み物を注ぐ(人);朝に飲食される(物))という語形違いの別男性名。】
【 日本における学術的・標準的なカタカナ表記ではスバーフとなるが、日本語のフはいわゆる「f」であるため原語での発音はむしろスバーハに近い。そのためこの人名のカタカナ表記ではスバーフ、スバーハ、スバフ、スバハが混在し得る。
なお語末の-ahはアラビア語では英語のように「アー」と伸ばさないのでスバー、スバとするとアラビア語から離れた英語発音に基づくカタカナ表記となる。】
母音記号あり:صُهَيْب [ ṣuhayb / ṣuhaib ] [ スハイブ ] ♪発音を聴く♪
Suhayb、Suhaib
赤褐色の、赤髪の、赤毛の(もの/人)
■意味と概要■
髪の毛や体毛が赤毛気味、金髪気味、黄(土色)髪気味の明るい色をした人間や動物を指すのに使う名詞・形容詞 أَصْهَبُ [ ’aṣhab ] [ アスハブ ](赤褐色の、赤髪の、赤毛の(もの/人))の縮小形語形。アラブ人向けのアラブ人名辞典では掲載しているものとそうでないものとに分かれる、非メジャー男性名。
恵まれた境遇から一転して売り飛ばされ奴隷にまで身を堕とした後アラビア半島で当時多神教徒たちの巡礼地として栄えていた神殿メッカ(マッカ)に逃れ、布教が始められたイスラームにおいて初のローマ人解放奴隷信徒として預言者ムハンマドの教友になった男性の名前としても有名。
■発音と表記■
-ay-部分はアラビア語では二重母音-ai-を表すため英字表記もSuhaybとSuhaibという2系統の英字表記が併存。アラビア語文語の二重母音「ay(=ai、アイ)」部分は日常会話・口語ではei(エイ)もしくはē(エー)音になることが一般的で、スヘイブに対応したSuheyb、Suheib、スヘーブに対応したSuheeb(*スヒーブと読まないよう要注意)、Suheb(*アラビア語としてはスヘブやスヘッブではなくスヘーブのような発音を意図)といった英字表記が使われている。
口語的にuがoに転じてソハイブとなった発音に対応した英字表記はSohayb、Sohaib。これに二重母音部分の変化が加わったソヘイブに対応したSoheyb、Soheib、ソヘーブに対応したSoheeb、Sohebなどが加わる形となる。
またイラク方言のように二重母音部分がエイ(ei)やエー(ē)ではなくイェ(ie)のような響きになることがある方言でのスヒェイブやスヒィエーブ的な発音に対応していると思われるSuhieb(*スヒエブではないので要注意)、またu→oの変化を加えたソヒェイブやソヒィエーブ的な発音に対応していると思われるSohieb(*ソヒエブではないので要注意)といった英字表記も存在する。
母音記号あり:سُهَيْل [ suhayl / suhail ] [ スハイル ] ♪発音を聴く♪
Suhayl、Suhail
素直な(人)、温和な(人)、柔和な性格の(人)、従順な(人);平野、平地;【星の名前】カノープス(りゅうこつ座α星)
■意味と概要■
イスラーム以前のジャーヒリーヤ時代から使われてきた伝統的なアラブ男性名。
星の名前であることから日本では女性キャラクターのネーミングに使われたりもしているが、アラブ人名としては女性にも使える男女共用ネームではなく男性名という認識。アラブ人名辞典でも男性名の項目に掲載されている、男性名と明記されているなど女性のスハイルさんは非常に珍しくSNSでも「スハイルは男性名」「スハイルさんって女性を初めて見かけた」「スハイルって名前のアカウントなのに中の人が女性でいぶかしんだ」といった投稿があるなどするが、一応実在はしている。
対応する女性名としては名詞・形容詞の男性形語末に付加することで女性化する機能を持つ ة(ター・マルブータ)のついた سهيلة(母音記号あり:سُهَيْلَة [ suhayla(h) / suhaila(h) ] [ スハイラ ](素直な(人)、温和な(人)、柔和な性格の(人)、従順な(人)))があり、そちらはスハイルの女性バージョンとしてアラブ人名辞典にもたいてい掲載されている。
*人名辞典には سُهَيْلَة [ suhayla(h) / suhaila(h) ] [ スハイラ ] は良い意味のみが載っているが、アラビア語辞典によると"スハイラ"は実際の人名もしくは風の名称として大嘘つきの代名詞ともなりことわざに登場することも。أَكْذَبُ مِنْ سُهَيْلَة [ ’akdhabu min suhayla(h)/suhaila(h) ] [ アクザブ・ミン・スハイラ ](スハイラよりも嘘つきだ)でとんでもない大嘘つきだ、スハイルの上をいくとんでもない嘘つき野郎だ、という意味になるという。ただし現在ではあまり使われていないようでウェブ検索してもヒット数は非常に少ない。
سُهَيْل [ suhayl / suhail ] [ スハイル ] は名詞・形容詞である سَهْل [ sahr ] [ サフル(日本語のフがf音であるため誤解しやすいが「h」はカタカナのハ実際にはサハルに近く聞こえる) ](容易な、簡単な;(性格が)温和な、柔和な(人/男性);平らな、緩やかな;平野)の縮小形で、「小さな」「愛らしい」というニュアンスを添えたりするアラブ人名によくある語形。
星の名前としては古来から主にカノープス(りゅうこつ座α星)のことを指す名称として知られ、「明るい」という意味でスハイルとの名になったという説明がなされるなどしている。アラビア語辞典では真夏の酷暑期が終わり実った果実が熟す時期(アラブ世界では西暦の8月24日)に夜空に登場するとても明るい星といった記述が一般的。イランのホラーサーンまで行くと見えなくなり、見えるのはイラクまでだといったことも古いアラビア語辞典では言及されている。
このカノープスは南の空に現れることから、北をシャーム(現在のシリア)方面、南をヤマン(イエメンのアラビア語名称)方面という名称で呼ぶ当時の慣習に基づき「南(イエメン方向)のスハイル」を意味する سهيل اليماني(母音記号あり:سُهَيْلٌ الْيَمَانِي [ 簡略発音:suhaylu/suhailu-l-yamānī ] [ スハイル・ル=ヤマーニー ](スハイル・アル=ヤマーニー))という別名の一つを持つに至った。
ちなみにネットでは「スハイル(ソヘイル)はアラビア語で"星"の意味」との情報が流通しているが誤り。現代アラビア語では単なる「星」は نجم(発音記号あり:نَجْم [ najm ] [ ナジュム(ナジムに近く聞こえることも)] が用いられるのが一般的で、スハイル(ソヘイル)はカノープス(りゅうこつ座α星)という特定の星の名前を指す。
■発音と表記■
[ suhayl ] [ スハイル ] の「ay」部分は二重母音「ai」のことなので発音表記としてはsuhaylとsuhailが混在している。
口語的発音(方言による日常会話での発音)としてはに二重母音ay/ai(アイ)がei(エイ)やē(エー)に寄ったスヘイル、スヘールがあり、英字表記はSuheil、Suhelなどが派生。同じく口語的な発音でuがo寄りのsu→soに転じたソハイル、ソヘイル、ソヘールに聞こえる発音により派生する英字表記はSohayl、Sohail、Souhayl、Souhail、Soheil、Souheil、Sohelなどがある。
Sufyaan、Sufyan
歩みを急ぐもの(者)、飛翔を急ぐもの(者);風に巻き上げられたちり・ほこり、ちりを運ぶ雲
【 古くからある男性名。預言者ムハンマドらを迫害したマッカ(メッカ)クライシュ族側の指導者的人物であった أَبُو سُفْيَان [ ’abū sufyān ] [ アブー・スフヤーン ](=アブー・スフヤーン・サフル・イブン・ハルブ)の通称に含まれるスフヤーンがこの人名。彼の本名(ファーストネーム本体)は صَخْر [ ṣakr ] [ サフル ](「岩」の意味)だったが「スフヤーンの父」という意味のクンヤ形式ラカブであるアブー・スフヤーンで後代まで通っているため本名サフルを知らない人の方が多い。
また彼にはこの他にも أَبُو حَنْظَلَة [ ’abū ḥanẓala(h) ] [ アブー・ハンザラ ](ハンザラの父)という自分の長男の名前からつけられた通称(クンヤ)があった。ハンザラは彼の実子の名前でウマイヤ朝の祖ムアーウィヤにとっては母親違いの兄弟にあたる。】
【 短母音u部分をouで表現したSoufyaan、Soufyanもしばしば使われているが基本的にはソウフヤーン、ソウフヤンではなくスフヤーン、スフヤン系統の発音を意図しているつづりなので要注意。口語的にuがoに転じてにソフヤーン寄りになった発音に対応した英字表記はSofyaan、Sofyan。
yの字を使わず-fyan部分を-fianの類に置き換えたSufiaan、Sufian、Sofiaan、Soufiaan、Sofian、Soufianなどもあるが、アラビア語としての実際の発音はスフィアーン、スフィアン、ソフィアーン、ソフィアンではなくy音が入ったスフィヤーン、スフィヤン、ソフィヤーン、ソフィヤンに聞こえるものと思った方が無難。】
健全な、無傷の、欠陥が無い
[ سَلْمَان=サルマーンの縮小形名詞=小さなサルマーン という説明も。スライマーンはイスラームにおける預言者スライマーン(=ソロモン)の名前として好まれている。]
[ 口語的に二重母音アイをエイもしくはエーで読むとスレイマーンやスレーマーンと聞こえる。その場合の英字表記はSuleiman、Sulemanなど。uがoに転じてソライマーンやソレイマーン、ソレーマーンと聞こえる発音に基づいた英字表記はSolaiman、Soulaiman、Soleiman、Soleman、Souleiman、Solemanなど。Sの後の母音が抜けて音が詰まった感じの発音に即した英字表記としてはSlayman、Slaiman、Sleyman、Sleiman、Slemanなど。]
母音記号あり:سُلَيْم [ sulaym / sulaim ] [ スライム ] ♪発音を聴く♪
Sulaym、Sulaim
(被害・事故・損害・病害・不信仰から)無事な、免れて;無傷の、健康な、安全な;小さなサリーム
■意味と概要■
男性名としてもポピュラーな سَلِيم [ salīm ] [ サリーム ](主な意味:(被害・事故・損害・病害・不信仰から)無事な、免れて;無傷の、健康な、安全な)の縮小語形。「小さなサリーム」の意。小さくて愛らしいといったニュアンスを与える語形だが、アラビア半島の部族社会にはこうした縮小語形の男性名が非常に多く、スライムもその一つ。
なおカタカナ表記では「スライム」と同じになるが、ドラクエやファンタジーものに出てくるモンスター「スライム」の名称にもなっている英単語「slime」(どろどろしたもの、ぬるぬるしたもの;ヘドロ;粘液)とは無関係。
■発音と表記■
縮小語形でない方の元になった سَلِيم [ salīm ] [ サリーム ] も本項目の سُلَيْم [ sulaym / sulaim ] [ スライム ] も母音記号が無いと全く同じアラビア語表記 سليم になってしまう。どちらの発音なのかは添えられた英字表記や動画などにおける発音で確認する必要がある。
-ay-部分はアラビア語では二重母音-ai-(アイ)を表すため英字表記も-ay-つづりと-ai-つづりの両方が見られる。アラビア語文語の二重母音「ay(=ai)」部分は日常会話・口語ではei(エイ)もしくはē(エー)音になることが一般的で、スレイムに対応したSuleym、Suleim、スレームに対応したSuleem、また2個連なっているeeを1個に減らしたSlemといった英字表記が使われている。
また口語的にSの直後に来る母音uがoに転じたソライムに対応した英字表記Solaym、Solaim、上で起こる発音変化と組み合わさったソレイムに対応したSoleym、Soleim、ソレームに対応したSoleem、Solemなども派生。
さらに語頭のsは口語(方言)だと母音が取れて無母音化しやすいため、Sとlの間の母音が除去されたSlaym、Slaim、Sleym、Sleim、Sleem、Slemなども使われ得る。
根拠、証拠、権力、支配権、統治権、スルターン(=スルタン)
[ 口語的にuがoに転じてソルターンと読まれた場合の英字表記はSoltaan、Soltan、Soultanなど。 ]
小さな黒→ちょっと色黒→褐色の、茶色の
[ أَسْوَد(’aswad、アスワド)=黒い の縮小形として。小さな黒の、少し黒いという意味。]
[ 口語では二重母音アイがエイやエーになるため、スウェイドやスウェードに聞こえる。その場合の英字表記はSuweyd、Suweid、Suweid、Suweed。さらに口語におけるu→oの変化を反映した英字表記はSowayd、Sowaid、Soweyd、Soweid、Soweed。Sの後の母音が脱落した発音に基づくSwayd、Swaid、Sweyd、Sweid、Sweedなども派生する。]
正しい、健全な、高潔な、敬虔な、小さなサーリフ
[ صَالِح(ṣāliḥ、サーリフ)の縮小形。「小さいサーリフ」の意。]
[ 口語では二重母音アイがエイやエーになるため、スウェイリフやスウェーリフに聞こえる。その場合の英字表記はSuweylih、Suweilih、Suweilih、Suwelihなど。さらに口語におけるu→oの変化を反映した英字表記はSowaylih、Sowailih、Soweylih、Soweilih、Sowelihなど。Sの後の母音が脱落した発音に基づくSwaylih、Swailih、Sweylih、Sweilih、Swelihなども派生し得る。lih部分のiがeに転じた口語読みで~リフ→~レフとなった場合の英字表記はSuwayleh、Suwaileh、Suweyleh、Suweileh、Suweleh、Soawyleh、Sowaileh、Soweyleh、Soweileh、Sowelehなど…]
安全な、無事な、健康な、無傷の
[ سَالِم(sālim、サーリム)の縮小形。「小さなサーリム」の意。]
[ 口語では二重母音アイがエイやエーになるため、スウェイリムやスウェーリムに聞こえる。その場合の英字表記はSuweylim、Suweilim、Suweilim、Suwelimなど。さらに口語におけるu→oの変化を反映したソワイリム、ソウェイリム、ソウェーリムを反映した英字表記はSowaylim、Sowailim、Soweylim、Soweilim、Sowelimなど。Sの後の母音が脱落した発音に基づくSwaylim、Swailim、Sweylim、Sweilim、Swelimなども派生し得る。lim部分のiがeに転じた口語読みで~リム→~レムとなった場合の英字表記はSuwaylem、Suwailem、Suweylem、Suweilem、Suwelem、Soawylem、Sowailem、Soweylem、Soweilem、Sowelemなど…]