アラブ人名辞典-男性の名前

List of Arabic Given Names (Male) [ Arabic-Japanese ]

各種アラブ人名辞典(アラ-アラ、アラ-英)・中世から現代までのアラビア語大辞典・現地記事にて確認しながら日本語訳し、プラグインにデータ入力して作っています。「♪発音を聴く♪」をクリックすると発音サンプルの音声が流れます。

現地発刊のアラブ人名辞典5冊前後+串刺し検索で辞典を20~30冊ほどチェックし管理人の自分用メモとし、そこに創作・命名向け情報などをプラス。検索エンジンに全部載るよう全ネームを1ページに出力しています。長いので頭文字別ページや検索をご利用ください。

*アラビア語由来の名前を持っている人=アラブ系・アラブ人ではないので、トルコ、イラン、パキスタンなど非アラブ系の国における発音や表記とは区別する必要があります。(言語によってはアラビア語と少し意味が違ったり、アラブ男性名がその国の女性名になっていることも。)
* [ ] 使用項目/行数が少ない部分は未改訂の初期状態、【 】使用項目は改訂履歴あり。■ ■使用項目は直近改訂あり/新規執筆分で情報の正確性も高めの部分となっています。
*文藝春秋社刊『カラー新版 人名の世界地図』(著:21世紀研究会)巻末アラブ人名リストは当コンテンツの約1/3にあたる件数の人名・読みガナ・語義の転用と思われる事例となっていますが当方は一切関知していません。キャラ命名資料としてのご利用・部分的引用はフリーですが、商業出版人名本へのデータ提供許諾は行っていないので同様の使用はご遠慮願います。

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名前辞典の見方

カタカナ表記/アラビア語表記/英字表記/日本語での意味[補足]

アラブ人の名前はファーストネーム部分も家名部分も英字表記に揺れがあります。文語のつづりと母音記号に比較的忠実なこともあれば、口語で起きる二重母音の変化を反映したり子音が2個連続しているはずの部分を1文字だけで済ませているケースもありカタカナ化をする時に間違えやすいです。

英字表記については、使われ得るパターンをなるべくたくさん列挙するようにしているので、多用されないつづりも含んでいます。

たとえはハーリドの場合、KhalidとKhaalidのようにアーと長く伸ばす長母音āを1文字だけで表現するKhalidと2文字並べてKhaalidとする方法がありますが、アラブ人やアラビア語由来人名を持つイスラーム教徒が通常用いるのはKhalidの方です。キャラクターネーミングの際はアーを-aa-ではなく-a-、イーを-ii-ではなく-i-、ウーを-uu-ではなく-u-と当て字をしている英字表記を使うのが無難なのでおすすめです。

アラブ人名辞典-男性

現在、このディレクトリには 22 の 名前 があります (文字 シ で始まる)
シハーブ
شِهَاب(shihāb→Shihaab、Shihab)♪発音を聴く♪
炎;星、流星
[ アラビア語では物事~学問・戦闘において鋭い感覚を持ち巧みな腕を有する有能な人物をこのシハーブ(星、流星)に例える。]
[ 口語的な発音でiがeに転じシェハーブに近く聞こえるケースに基づいたShehaab、Shehabという英字表記も多い。なお日本語では長母音を復元しないシハブというカタカナ表記が見られる。 ]

シハーブ・アッ=ディーン(シハーブッディーン)
شِهَاب الدِّين(shihābu-d-dīn→Shihaab al-Din、Shihab al-Din)♪発音を聴く♪
信仰の星・流星、宗教(イスラーム)の星・流星
[ アラビア語では物事~学問・戦闘において鋭い感覚を持ち巧みな腕を有する有能な人物をこのシハーブ(星、流星)に例える。]
[ 口語的な発音でiがeに転じシェハーブに近く聞こえるケースに基づいたShehaab、Shehabという英字表記も多い。 ]

シャーキル
شَاكِر(shākir→Shaakir、Shakir)♪発音を聴く♪
感謝している(者)、称賛している(者)→神の恩恵に対し感謝し称える者
[ 口語的な発音ではiがeに転じてシャーケルと聞こえる。その場合の英字表記はShaaker、Shaker。]

シャーディー
شَادِي(shādī→Shaadii、Shaadi、Shadi、Shady、Shaadee)♪発音を聴く♪
歌い手、歌手
[ shadyというつづりの場合は英語のshady(シェイディー)と同じつづりなので間違えやすいが、a部分を二重母音で読むことはせず長母音āに復元してシャーディーと読む必要がある。 ]

シャーヒーン
母音記号無し:شاهين
母音記号あり:شَاهِين [ shāhīn ] [ シャーヒーン ] ♪発音を聴く♪
Shahin、Shaahiin、Shaheenなど
ハヤブサ(falcon);タカ(hawk)

■意味と概要■

中期ペルシア語(パフラヴィー語)起源の名詞が由来。ペルシア語である شاه [ shāh ](王)と名詞を形容詞化する接尾辞 ين からなる複合語で「王の(kingly)」という意味を持つとのこと。

鳥の種類の科学的な分類が確立していなかった大昔から使われていた語ということもあり、ハヤブサ(falcon)以外にタカ(hawk)となっていたりと指す内容・訳はまちまちの模様。現代になってから研究の結果を受けタカ目ハヤブサ科からハヤブサ目ハヤブサ科に変更されたため、1960年代に出版されたアラビア語辞典だと「タカ(الصقر)の仲間」(صَقْر [ ṣaqr ] [ サクル ])と書いてあったりする。

■発音と表記■

この人名についてはシャヒーンという日本語カタカナ表記が多い。サウジアラビア人らの監修によって作られた鉄拳(TEKKEN)キャラクターであるサウジアラビア人戦士シャヒーン(Shaheen)がその代表例。キャラクター原案に関わったサウジ人ゲーマー氏の談話によると、当初はラシード(正しく信仰の道に導かれた人)のような名前が候補に挙がっていたもののキャラのイメージに合わないとしてアラブ文化の象徴であり力強いイメージを与えるシャヒーンを提案したのだとか。

文語アラビア語(フスハー)では شَاهِين [ shāhīn ] [ シャーヒーン ] だが、口語アラビア語では語形の都合上途中の長母音「ā(アー)」が短くなって [ shahīn ] [ シャヒーン ] に聞こえることも多い。上記のようなカタカナ表記シャヒーンはそうしたアラビア語方言での発音に対応している。英字表記としてはShahin、Shaheenが多く、他にはShaahiin、Shaahin、Shaaheenなどが用いられている。

2個連なっているeeを1個に減らしたShahen、Shaahenなどもあるが、アラビア語としては原則シャーヒーンであとはたいていがシャヒーンという発音なのでシャーヘーン、シャーヘン、シャヘン、シャーヘンとカタカナ表記しないよう要注意。

またフランス語圏やフランス語の影響が強いモロッコ、アルジェリア、チュニジア、レバノン系アラブ人名の場合はShをChで当て字をするChahin、Chaahin、Chaheen、Chahenさらにはフランス語圏アラブ人名風語尾「-ne」としたChahineなども多用されている。なおこれらはアラビア語発音準拠のカタカナ表記をする場合はシャーヒーン、シャヒーン系の当て字となるため、見たままの当て字であるチャヒン、チャーヒン、チャーヘーン、チャヘン、チャヒネ等としないよう要注意。

なおこの人名の日本語カタカナ表記としてはシャーヒーン、シャヒーン、シャヒンなどが実際に使われている。

シャーヒド
شَاهِد [ shāhid ] [ シャーヒド ] ♪発音を聴く♪
Shaahid、Shahid
目撃者;証人、証言者

【 動詞 شَهِدَ [ shahida ] [ シャヒダ ] の能動分詞「~する者/物」語形。英字表記がShahidだと、このシャーヒドという能動分詞を強調した語形である別の男性名 شَهِيد [ shahīd ] [ シャヒード ](殉教者、宗教や祖国のために自らを犠牲をして捧げる者;目撃者(*強調語形なので目撃行為を度々するニュアンス含む);証人)と見た目上区別がつかないので要注意。】

【 口語風発音でiがeに転じてシャーヘドに近くなった発音に対応した英字表記はShaahed、Shahed。】

■キャラ名について■

『ファイアーエムブレム 無双風花雪月』クロード(カリード)兄のシャハドはこの名前の可能性高し。Shahidという英字表記である点、その上日本語カタカナ表記でシャハドとなる点がアラビア語名シャーヒドのパキスタン付近における英字表記などと重なるため。

英語版ではシャヒードと発音しているものの、アラブ式ではナーデルと発音するNaderが英語版でナデール、弟クロードの本名Khalidがハーリド、カーリドではなくカリードと前半にある長母音「ー」が全部後半に移動した発音となっていることから、シャヒードよりもシャーヒドが由来であるパターンが優勢だと思われる。(英語では□ā□i□語形のアラブ人名を□a□ī□のように発音することが多いため。ただし制作陣が2つの紛らわしい男性名を混同していないことが前提の推測。)

シャーヒル
شَاهِر [ shāhir ] [ シャーヒル ]
Shahir、Shaahir
明らかな、はっきりしている(もの);剣を抜き払った、剣を抜いた(者)

シャーミル
شَامِل(Shaamil、Shamil)全てを含む、包括的な、全体的な[口語寄りの発音と表記ではシャーメル、Shamel]

シャアバーン
شَعْبَان(sha‘bān→Shaabaan、Shaaban、Shaban)♪発音を聴く♪
シャアバーン月(イスラームのヒジュラ暦における8月)
[ 通常太陰暦であるイスラームのヒジュラ暦8月に生まれた人が命名される名前。シャアバーンは分岐、分断、離散の意味。命名の由来については、ラマダーン月とラジャブ月の間にあって両者を分断しているから、暑さが厳しくなった時期に水を求めて各地に散っていく様を示すから、といった諸説があるという。]
[ 喉の奥を締めつけて発音するアインを示す「‘」部分は英字表記でaaとして書かれるか省略されa1個になることが多い。その場合の英字表記はShaaban、Shabanなど。原語の発音にはシャアバーンもしくはシャァバーンが近いが、英字表記からカタカナ化するとシャーバーン、シャバンというカタカナ表記が生まれることとなる。]

シャウキー
شَوْقِيّ(shawqī(y)/shauqī(y)→Shawqii、Shawqi、Shauqii、Shauqi)♪発音を聴く♪
憧憬の、熱望の、望みの
[ 厳密には語末を発音するとshawqīy/shauqīyとなるためシャウキーュ、シャウキーィのように聞こえるが、口語など日常的な会話では単なるshawqī/shauqīのシャウキーと聞こえる発音をしていることが多い。この場合はアクセント位置が前方にずれる(→♪発音を聴く♪)。また二重母音のアウは口語でオーやオウのような音に転じやすいため、英字表記でもShooqi、Shouqiなどになっていることがある。またqがkで書かれる場合も少なくなく、その場合はShauki、Shawqki、Shooki、Shoukiなどに。またシリア~エジプトにかけた地域ではqの音が声門閉鎖音のハムザになる方言が多く、シャウイーもしくはショウイーのように発音される。]

シャクール
شَكُور(shakūr→Shakuur、Shakur、Shakour)♪発音を聴く♪
大いに感謝している(者)、神の恩恵への感謝と称賛に大いに励む者
[ 「大いに~」という強調の意味がある語形。]

シャヒード
母音記号無し:شهيد
母音記号あり:شَهِيد [ shahīd ] [ シャヒード ] ♪発音を聴く♪
Shahiid、Shahid、Shaheed
殉教者、宗教や祖国のために自らを犠牲をして捧げる者;目撃者;証人

■意味と概要■

動詞 شَهِدَ [ shahida ] [ シャヒダ ]()の能動分詞「~している;~する者/物」 شَاهِد [ shāhid ] [ シャーヒド ](目撃者;証人、証言者)の強調形。物事を目撃する行為を度々していること、目撃する行為が常態化していることを示唆するニュアンスを含む分詞類似語 صِفَة مُشَبَّهَة [ ṣifa(tun) mushabbaha(h) ] [ スィファ(トゥン)・ムシャッバハ ] と呼ばれるもの。

殉教者という意味ではイスラームのために戦い身を捧げた人物以外にも称賛・評価・同情されるべきプラスの死に対して広く使われており、文脈に応じて殉死者、殉職者、犠牲者、死者という意味に訳すべきケースも少なくない。

■商業作品キャラクター名として■

『ファイアーエムブレム 無双風花雪月』クロード(カリード)兄のシャハドはこの名前ではなくシャーヒドの方の可能性高し。Shahidという英字表記である点、その上日本語カタカナ表記でシャハドとなる点がアラビア語名シャーヒドのパキスタン付近における英字表記などと重なるため。シャハドという発音・カタカナ表記の名詞・人名 شَهْد [ shahd ] [ シャフド/シャハド ]((蜜蝋と分離していない状態の)はちみつ;蜂の巣)があるがそちらは女性名なので、Shahidと書いてシャハドと当て字をする非アラビア語圏イスラーム男性名だと考える方が適切だと思われる。

■発音と表記■

英字表記がShahidだと男性名としても用いられる同根姉妹語 شَاهِد [ shāhid ] [ シャーヒド ](目撃している(者/物)、目撃者;証人、証言者) と本項目の شَهِيد [ shahīd ] [ シャヒード ](殉教者、宗教や祖国のために自らを犠牲をして捧げる者;目撃者;証人)との区別がつかず、元のアラビア語表記を見ないとわからないので要注意。

なお、サウジアラビア系放送局MBCのオンデマンド動画配信プラットフォーム شاهد(Shahid)は派生形第3形動詞 شَاهَدَ [ shāhada ] [ シャーハダ ](見る、視聴する)の命令形(2人称・男性・単数)شَاهِدْ [ shāhid ] [ シャーヒド ](見て、視聴して)が由来だが、日本語記事では誤った位置に長母音「ー」を置いたシャヒードとして紹介されている。しかしながら本項目のシャヒード(殉教者;目撃者;証人)とも شَاهِد [ shāhid ] [ シャーヒド ](目撃している(者/物)、目撃者;証人、証言者) とも別物の同根姉妹語となっている。

シャビーブ
شَبِيب [ shabīb ] [ シャビーブ ] ♪発音を聴く♪
Shabiib、Shabib、Shabeebなど
青年である、若々しい(者);美男の(青年)、美貌の(青年)、色白で髪が黒い(青年)

【 2種類の意味を持つ動詞 شَبَّ [ shabba ] [ シャッバ ](青年になる;馬が両前脚をはね上げる、馬がはね上がる、馬がはね回る)のうち「青年になる」の意味の方から派生した形容詞的意味を持つ分詞類似の名詞語形。少年時代を終え青年期に入り成長を遂げている男子であること、若々しく活力に満ちている様子などを示唆。

現代では父親かそれ以前の祖先の名前由来のラストネーム、ファミリーネーム(家名、日本の名字に相当)「シャビーブ家」という意味として使われているケースも少なくない。】

【 長母音ēを表すeeを1個に減らしたShabebという英字表記もあるがシャベブ、シャベッブとカタカナ化せずシャビーブもしくは日本語風に「ー」を抜いたシャビブとするのが無難。口語発音のシェビーブに対応した英字表記はShebiib、Shebib、Shebeeb、Shebeb。こちらもシェビーブもしくはシェビブ程度にしておくカタカナ表記が無難かと。】

シャフィーク
شَفِيق(shafīq→Shafiiq、Shafiq、Shafeeq)♪発音を聴く♪
思いやりのある、あわれみ深い、優しい

シャムス
母音記号無し:شمس
母音記号あり:شَمْس [ shams ] [ シャムス ] ♪発音を聴く♪
Shams
太陽

■意味と概要■

アラビア語で天体の太陽を意味する名詞。メソポタミアの太陽神シャマシュ(Shamash)の流れをくむ名称で、語末のsh音がアラビア語ではs音に置き換わっている。天体の名称を指す名詞としては女性扱いだが、女性名としても男性名としても使われる。

イスラーム以前のジャーヒリーヤ時代にはアラビア半島で月の神=父、太陽の神=母、金星=子といった多神教崇拝・天体崇拝・偶像崇拝が行われており عَبْد شَمْس [ ‘abd(u) shams ] [ アブド・シャムス ](太陽のしもべ、太陽神のしもべ、シャムス神のしもべ)という男性名も存在した。「猫好きおやじ」「猫おじさん」というあだ名で知られる預言者ムハンマドの教友 أَبُو هُرَيْرَةٍ [ ’abū hurayra(h) / ’abū huraira(h) ] [ アブー・フライラ ] も改宗前はアブド・シャムスというファーストネームだったが、唯一神信仰に合致する名前に改名したとされている。

なおこのシャムスという名前は複合名が禁止された国で従来使われていた شَمْس الدِّين [ shamsu-d-dīn ] [ シャムス・ッ=ディーン ](宗教の太陽)というラカブ由来の男性名の代替として使われたり、شَمْس الدِّين [ shamsu-d-dīn ] [ シャムス・ッ=ディーン ] という名前を持つ男性を普段周囲が呼ぶ時の通称として使われてもいるという。

■ネーミングの際の注意点■

【定冠詞アルは取る】

天体としての名称 اَلشَّمْس [ ’ash-shams ] [ アッ=シャムス(注:アシャムス、ア・シャムス、ア=シャムスではないのでネーミング時には要注意) ](太陽)には定冠詞 اَلْ [ ’al- ] [ アル= ] が直後の ش(sh)音の影響で発音変化した「アッ」がついており、アラビア語対応ネーミング辞典でもアッ=シャムス、アッ・シャムス、アッシャムスなどと載っていたりする。

ただし人名として使う時は定冠詞 اَلْ  [ ’al- ] [ アル= ](al-)はつけない。アラビア語で「太陽」という意味を調べたりネットで検索したりすると宇宙にある天体の名前としての「太陽」が出てくるためにキャラクターや動物にそのままアッシャムス、アッ=シャムスと命名してしまっているケースが非常に多いが、人や動物への命名では英語の the にあたるアッの部分は抜くのが基本なのでアッ抜きのシャムスとすることを強く推奨。

【シャムスのスを取ってシャムやアッシャムとしない】

なおネット等では「アラビア語でアッシャムは太陽の意味」「アラビア語でシャムは太陽」と書かれていることがあり、ゴドルフィンアラビアン(ゴドルフィンバルブ)の幼名・本名も「アラビア語で太陽を意味するシャムだった」と説明されている記事も複数見られる。
しかしながらアラビア語ではそのような事実は無く、アッシャムスやシャムスからスを取ってアッシャムやシャムにしても太陽という意味を保つということは無いので要注意。アラビア語は単語のパーツになる文字(語根)であるs(ス)の部分を切り取ってしまうと言葉の意味を表せなくなり、太陽という意味の単語ではなくなってしまうため。アラブ人に「アッシャム」「シャム」といっても太陽と理解されることは無い。

【響きが似ているものの別の名称と混同しない】

アラビア語は長母音(音が「ー」と長く伸びる)か短母音(「ー」と伸びない)かどうか、アラビア文字上は同じつづりでも発音が少し違うかどうかによって全然違う意味になることがあるので、アラブ人名の意味解説やキャラクターネーミングの時には不要な「ー」を足したり発音を少し変えたりしないよう要注意。

شَمْس [ shams ] [ シャムス ](太陽)- 男性名&女性名
شَمْسَة [ shamsa(h) ] [ シャムサ ](口語語形:太陽)- 女性名
شَمُوس [ shamūs ] [ シャムース ]【男女共通語形】(気難しい、頑固な(男性/女性);夫に対して反抗的な(女性);人の言うことを聞かず誰もその背中に乗せようとしない暴れ馬など乗用家畜)- 男性名&女性名

■アラブ世界における太陽のイメージ■

日本では「アラブ世界における太陽のイメージは冷酷非情、傲慢、死の象徴、悪魔の化身。女性に君は太陽みたいだと言うとけなし言葉となり怒られる。」という都市伝説があるが全くの誤り。アラビア語では太陽と並んで人の美点についてほめる比喩表現として使われてきた天体(詳細:『アラブ世界における月と太陽~目次』)となっている。

女性などを月にたとえるのは太陽が非情で月が優しいという二項対立ではなく、ふくよかで色白の男性・女性に美貌ににているため。現代では「月みたい=美人、美男」で定着しているが、丸みがあり輝く太陽も元は同じ発想から美貌のたとえに使われてきたほか、「太陽みたいな女性」は輝かしい様子、見返りを求めない情愛を与え皆の人生を明るく照らしてくれる母親・女性の形容などに使用。

一方男性に関しては古くは美貌、中世などにおいては誰の追随も許さない高貴さ・地位の高さや月・星にたとえらえる他の貴族・要人らがかすむほどの光を放つ偉大な統治者、そして現代では非常に寛大な父性愛のたとえとして使われるなどしている。シーア派では偉大さと神秘性などから共同体指導者たるイマームを太陽と表現することが多い。

■発音と表記■

口語における無母音部分「m」に母音「i」の挿入が起こりシャミス系に変わった発音を反映したShamis、Shamesや「u」を挿入したShamusといった英字表記も。またフランス語圏である北アフリカのマグリブ方言地域ではシャ・シ・シュ音をshではなくchで表記するためChams、Chamis、Chamesといったつづりも多用されている。チャムス、チャミス、チャメスと発音させる意図は無いのでカタカナ表記の際には要注意。

シャムスッディーン(シャムス・アッ=ディーン)
شَمْس الدِّين [ shamsu-d-dīn ] [ シャムス・ッ=ディーン ] ♪発音を聴く♪
Shams al-Diin、Shams al-Din 宗教の太陽
【 功労者などに与えられた称号(ラカブ)がファーストネームとして定着したもの。「宗教」は具体的にはイスラームのこと。なお شَمْس [ shams ] [ シャムス ](太陽)は女性名・男性名の両方として使われるが、シャムスッディーン(シャムス・アッ=ディーン)は男性名としてのみ用いられる。】

シャラフ
شَرَف(sharaf→Sharaf)♪発音を聴く♪
名誉、栄光、高貴、高い場所、高位

シャリーフ
شَرِيف(sharīf→Shariif、Sharif、Shareef)♪発音を聴く♪
高貴な、名家出身の、名誉ある
[ 預言者ムハンマドの子孫はシャリーフと総称されることがある。 ]

シャルフーブ
شَلْهُوب [ shalhūb ] [ シャルフーブ ] ♪発音を聴く♪
Shalhuub、Shalhub、Shalhoub、Shalhoob
炎、火炎

【 男性名、家名として使用。アラビア語の名前・固有名詞辞典でシリア語、アラム語由来と説明されている。火の燃焼もしくはその炎などを指すという。

家名としてはサウジアラビア、シリア、レバノンなど複数地域で見られる。映画『アラビアのロレンス』で Harith(アラビア語では حَارِث [ ḥārith ] [ ハーリス ] だが日本ではハリト表記が多い)族族長 Ali(アラビア語では عَلِيّ [ ‘alī(y) ] [ アリー(ュ/ィ) ] だが日本ではアリ表記が一般的)役を演じた عُمَر الشَّرِيف [ ‘umar ’ash-sharīf ] [ ウマル・アッ=シャリーフ/(口語発音)オマル・ー ](オマル・シャリフ、オマー・シャリフ)の出身家系がこのシャルフーブだった。

彼は元々はキリスト教徒でレバノン家系のエジプト国籍保持者・エジプト出身と紹介されていることが多いが、現地ニュース記事等によるとシャルフーブ家自体はダマスカスがルーツで父方シャルフーブ家がダマスカス出身、母方がラタキア出身ファミリーの生まれだという。】

【 フランス語圏風のChalhoub、Chalhub、Chalhoobといった表記も見られる。チャルフーブと発音する訳ではないので要注意。また-ou-はアラブ人名表記では [ u ] [ ウ ] や [ ū ] [ ウー ] を表すことが多く、ここでもシャルフーブの「ū(ウー)」音を意図。シャルホウブとはカタカナ化しない。】

シュアイブ
شُعَيْب(shu‘ayb/shu‘aib→Shuayb、Shuaib)♪発音を聴く♪
民、民衆
[ イスラームにおける預言者の一人シュアイブの名前。]
[ شَعْب(シャアブ=民の意)の縮小形名詞とも説明される。]

シュクリー
شُكْرِيّ(shukrī(y)→Shukrii、Shukri、Shukry、Shukree)♪発音を聴く♪
感謝の
[ 厳密には語末を発音するとshukrīyとなるためシュクリーュ、シュクリーィのように聞こえるが、口語など日常的な会話では単なるshukrīのシュクリーと聞こえる発音をしていることが多い。この場合はアクセント位置が前方にずれる(→♪発音を聴く♪)。また口語的にuがoに転じるとショクリーという発音になる。その場合の英字表記はShokrii、Shokri、Shokry、Shokree。]

シュジャーウ
شُجَاع [ shujā‘ ] [ シュジャーウ(シュジャーァ、シュジャーアに近く聞こえることも) ] ♪発音を聴く♪
Shujaa’、Shuja’、Shujaa、Shujaなど
勇敢な、勇猛な、勇気がある(人)

【 形容詞・名詞の男性形で男性名として用いられる。】

【 語末の子音についた母音まで丁寧に読むと主格ではシュジャーウに近い発音になるなどするが、日常的な読まれ方では語末子音の格母音は省略するためシュジャーァ、シュジャーアと聞こることの方が多い。英字表記では語末の子音を「’」なりで文字化しないことが多く、日本語カタカナ表記ではシュジャーのように語尾がただの長母音になっていることも少なくない。日常的な発音に即したつづりが採用されているためシュジャーウそのものな感じのShujaau、Shujauのような英字表記はほぼ使われていないとの印象。

語末の字は喉を引き締めた感じの発音をする ع [ ‘ayn / ‘ain ] [ アイン ] という字だがこれに相当する「’(もしくは‘)」を使ったShujaa’、Shuja’、Shujaa‘、Shuja‘を人名の日常的表記にしていることは少ない。携帯電話にアラビア語キーボードが無かった時代に普及したチャットアラビア語の影響から、SNSのユーザーネーム等では語頭の ع [ ‘ayn/‘ain ] [ アイン ] を数字の3に置き換えたShujaa3、Shuja3なども用いられているが、多いのは ع [ ‘ayn/‘ain ] [ アイン ] に対応する部分の文字化を省いたShujaaやShujaといった英字表記。

エジプト方言などでは ج [ j ] の音が文語アラビア語(フスハー)には無い g 発音に置き換わってシュガーウ(シュガーァ、シュガーア)となり英字表記Shugaa、Shugaなどが派生する。ただし男性名ジョージのつづりGeorgeのようにShugaa、Shugaと書いてあってもシュジャーウ(シュジャーァ、シュジャーア)と発音することを意図している場合があり、G始まりのつづりを使っている=エジプト系アラブ人とは限らない。

また口語風にuがoに転じたショジャーァ、ショジャーアそしてエジプト等発音であるショガーァ、ショガーアに対応した英字表記としてShojaa、Shoja、Shogaa、Shoga他が挙げられる。】