★★★☆☆~★★★★☆
現代文読解に必要な文法知識を効率良く詰め込むための外語大専用教科書
レイアウトがしっかりしていて読みやすい
古典文法・アラビア語学的に厳密でない部分や二段変化・名詞文述部等で独自解釈あり
著者:八木 久美子、青山 弘之、イハーブ・アハマド・エベード
出版社:東京外国語大学出版会
本の概要
●東京外国語大学のアラビア語講義のために作られたテキストで、一般学習者も買えるよう販売されています。大型書店だとアラビア語学習書の棚で実物を見ることも可能です。
●シラバスによれば東京外国語大学アラビア語科だと1年時の春学期(入学~夏休み前)に使用している模様。たったの3〜4ヶ月で文法を一通りばんばん詰め込んでいき残り後半はさっそく作文や実際の文章講読に入っていく、という伝統的アラビア語科詰め込み方式にオリジナル教科書が加わり一層磨きのかかったハードモードなカリキュラムで学生さん達は毎年本当に大変そうですが、細かい解説やコメントも付けられていてボリューム面では充実したものとなっています。
●専攻学生の効率的なレベルアップのために先生たちが頑張って作られたという感じの1冊です。音声ダウンロード・練習問題解答・巻末単語帳も付いているなど、実用性重視の学習書をお求めの一般学習者・独習者にも優しい作りとなっています。
●現代文の読解に必要な事項が一通り載っています。独学であれば数冊目、ゆっくり少しずつ進まれている場合は学習2年目前後の方にちょうど良い内容だと思います。
●シラバスによると大学の講義では『大学のアラビア語 初級表現』と併用されているそうで、アルファベットや数字の書き順とかはそちらのみに掲載されておりこの詳解文法では省略されています。文化学習や例文練習は教科書シリーズの別の本の担当ということらしく、この本には例文・解説・補足・練習問題という必要最低限な内容でおさめられています。必要な事項がシリーズ本に分散して配置してあるので独学の際は詳解文法・初級表現、それが終わったら表現実践を買い揃えた方が良いです。
目次
- アラビア文字の書き方と発音
- 非限定/限定
- 格変化の基本
- 基本名詞文
- 性
- 数
- 指示詞、人称代名詞
- 前置詞
- 動詞「ライサ」と疑問詞「ハル」、「ア」
- 形容詞による修飾とイダーファ表現
- 名詞のまとめ
- 形容詞のまとめ
- 数詞
- 動詞の完了形
- 完了形の応用
- 未完了形直説形の基礎
- 未完了形直説形の応用
- 疑問詞、副詞
- 未完了形接続形、短形
- 命令形
- 動詞「カーナ」
- 動詞の受動態、分詞、動名詞
- ハムザ動詞
- 重語根動詞
- 第1語根弱動詞
- 第2語根弱動詞
- 第3語根弱動詞
- そのほかの動詞
- 名詞節
- 接続詞のまとめ
- 関係節
- 分詞、動名詞の応用
巻末
・練習問題解答
・単語帳
・参考文献
・索引
上とは別に、『もっと学ぶために』というコーナーで詳しい解説や発展的な内容を扱っています。他の入門書に書いていない専攻語授業で話されるような事柄が文章化されているのが良いと思いました。
表記・読みガナなどについて
●母音記号は語末も含めて全部ついています。
●アラビア語部分のルビはローマ字転写で序盤のみ。短期間でアラビア文字を覚えてしまう学生たちが対象の教科書なのでカタカナによるルビもありません。ローマ字ルビがたくさんついていてそれを見ながら音読練習ができるのはこのシリーズの他の本の担当といった感じです。
●文字形状の表で「独立体-頭字体-中字体-尾字体」という並び順になっているので、左←右に並べられた他書のレイアウトと違って少々見づらいです。
●不規則動詞の活用表で動詞派生形の7形と9形学習は不要との理由で「ー」が書き込まれ省かれています。
音声教材
『大学のアラビア語:詳解文法』を聴いてみよう
http://www.coelang.tufs.ac.jp/mt/ar/gmod/courses/c02/
大学のホームページで例文音声を無料で聴くことができます。
文法モジュールの1コーナーとして提供されているので個別ダウンロードのみ。一括ダウンロード用の圧縮フォルダ提供等はありません。しかもファイル名と章・節の番号とがあまりリンクしていなかったりしたため、iPhoneやiPadで使えるように準備するMP3編集ソフトでの作業が多めでちょっと面倒でした。
気になった点
アラビア語の状況や文法に関する細かい説明が正確でない記述が混ざっている
フスハーとアーンミーヤの位置づけと関係性、アリフやハムザの性質など、言語学がらみの部分でアップデートされていない情報の掲載や不正確な記述が見られます。
- 西洋から輸入されたので句読点の用法が定まっておらず学校で教えられることも無い
▶現地の国語授業や正書法(正字法)教科書に句読点の項目があって授業単元に含まれています。各国のカリキュラム準拠eラーニング動画にも普通に句読点学習が出てきます。どの国も説明は一緒で西洋での用法をそのまま継承した使い方がされています。これは詳解文法が書かれる前から現地の文法書に載っていました。 - アーンミーヤは文字に書かれない
▶SNS全盛時代ということもありアーンミーヤのアラビア文字表記は普通に行われています。アーンミーヤ文をウェブフォーラム等においてアラビア文字で書くというのは詳解文法が作られるだいぶ前にもうある程度普及していました。 - ハムザの性質とハムザト・アル=ワスル(ハムザトゥルワスル、ハムザトルワスル、接続ハムザ)やワスラ記号の本当の意味に触れられないままずっと文法説明が続く。
といった解説が掲載されているのが気になりました。
事実を知らないままオリジナル解釈を作ってしまわれたのか学生さんの負担を減らすために文法用語の多用を避けたりわざと改変したりして解説を書かれたのかは不明ですが、外国語大学が出版した文法書であるにもかかわらずアラビア語文法の解釈を独自に変更している部分が時折混じっているのが気になりました。
構成としては良くできており地域研究分野で学ぶ学生さんならこれで十分だとは思いますが、最初に読んで何周かしてさらに2~3年経ってからまた戻って来た時に「あれ?」とひっかかる記述が結構ありました。自分自身初めて読んだ頃はそこまで気付かなかったので、アラビア語を学び始めたばかりの段階の方であれば特に違和感も無く読了して終わり、というのが普通かもしれません。
厳密には誤用とされている用法を肯定する傾向がある点
現代では皆もうそっちの語形を使っているから、أُولَائِكَ をウーラーイカと発音するのは敢えてそうしている(≒間違いではない、と受け取れるニュアンス)、語中ハムザを違うつづりで書いている人が大勢いるから、といった感じにアラブ圏で広く使われている用法・語形・発音を許容する傾向が強く、アラブ世界で اَلْأَخْطَاءُ الشَّائِعَةُ(よくある誤用) と呼ばれている事項をやっても構わないと示唆しているように受け取れる記述がいくつか見られました。
二段変化でない語形を二段変化に含めてある点
詳解文法では本来三段変化の語まで二段変化の項目に入れて教えています。三段変化の定義も本来のアラビア語文法とは違うニュアンスで説明されています。書店で買える市販の文法書で二段変化をこのようなオリジナル解釈・独自分類で説明しているのはこの本だけだと思います。
活用の見た目上のパターンだけで二段/三段と分けているので、アラビア語文法における本来の二段変化・三段変化とは全然違う分類になっています。
元々日本で発売されてきた代々のアラビア語文法書では「二段変化」は اَلْمَمْنُوعٌ مِنَ الصَّرْفِ [ ’al-mamnū‘ mina-ṣ-ṣarf ] [ アル=マムヌーウ・ミナ・ッ=サルフ ](アル=マムヌーウ・ミン・アッ=サルフ)の訳語として使われてきました。今でも他書では従来通りの説明をしているのですが、詳解文法とその流れをくんだ三省堂のデイリー辞書だけは本来三段変化の語でも二段変化と呼ぶタイプの方式です。
اَلْمَمْنُوعٌ مِنَ الصَّرْفِ 自体はアラブのアラビア語文法学で定義が決まっており、どれが二段変化なのかという種類は定まっています。詳解文法で「二段変化」に含められている双数、男性規則複数、女性規則複数などは従来式ルールに従うならば全部二段変化ではありません。
タンウィーンを受け容れないことは二段変化を特徴づける指針の一つなのですが、عَالٍ の類は弱文字のせいで見た目上分かりづらいだけでアラビア語文法学では三段変化の変形扱いです。しかし詳解文法では二段変化と定義しています。
アラビア語文法学でアル=マムヌーウ・ミン・アッ=サルフでないと明記されているものを「二段変化」として文法書に記載するのは、著者の先生の覚え違いや認識不足でない限り全てオリジナルネーミング・独自定義ということになるのですが、本には注意書きが無いのでどのような経緯でこのような解説が創案されたのかは不明です。
言語学や文学を専攻したり将来人にアラビア語を教える予定のある方は必ず他の中級以上の文法書で上書きをされることをおすすめします。こうした独自改変は教わっても人に教える類のものではないように思います。(管理人は昔「派生形の形や母音記号が違うぐらい構わない。辞書を調べて訳が作れればその細かい解釈は過程は気にしない。」というタイプの方に教わったことがあり苦労しました。最初から正確に教えてもらうのに越したことはないです…)
現代文重視で古典を読みたい人にはあまり向いていない
この詳解文法は現代文読解能力向上に主眼を置いているようで、既に廃れた古典文法の活用形は切り捨てられていたりします。そうした用法は活用表を見るようにとの脚注が書かれているのみか、活用表が載っていても「もう使わない」と時代遅れになっている件が念押しされているかのどちらかで、将来古典資料を読む学生さんのことはあまり考えられていないように感じました。
動詞派生形9形は「ほとんど目にすることがない」と書かれており、日本のアラビア語学習界隈でも「9形を見たことが無い」と言う方が大勢いらっしゃるのですが、実際には人の顔色・身体的特徴を表現するフレーズなので美肌・美容やハディースのような人の容姿を詳細に叙述する人物伝などでは普通に出てきます。執筆者の先生方が読まれている資料・記事に普段出てこないという理由で「ほとんど目にすることがない」と断言されているであろう点は残念に思いました。
アサド政権賛美のフレーズが例文に入っている
大学のアラビア語シリーズに共通なのがシリアのアサド政権支持を示唆するスキットや例文が含まれている点です。これは発刊以降ネット上でも度々話題になったことがあるのでご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
詳解文法は一見普通の文法学習書ですが「私たちはあなたを愛します、バッシャールよ」という例文が用意されておりアラビア語から日本語に訳すようになっています。知っている人が読めばアサド政権賛美の定番フレーズの一つだとわかるのですが、これを言うかどうかで悩み抜き祖国を捨てたり命を落としたりしている人々がいることを考えると毎年学生さんに音読させ和訳させるのは単なるジョークでは済まされないものがあるような気がします…
感想
●複数の入門書を2~3冊読み終えた既習者が文法事項を確認しながら速習するにはもってこいの本です。解説の正確性や精度はともかく、これだけ基礎事項が詳しく見やすいレイアウトになっている学習書はなんだかんだいって貴重なのではないでしょうか。翻訳や作文に活用できそうな現代文読解能力養成重視のテキストを探している方に向いていると思います。
●練習問題が各項目に必ずついているので中級学習者の問題集としても使えます。
●アラビア語専攻学生を短期詰め込みで高いレベルまで一気に押し上げるべくガリガリ勉強させるための教科書なので、普通に書店で売っているような学習書とは作られた経緯・目的が全く違います。初学者に親切なわかりやすさを追求した入門書ではないので、独習者の方は初めての1冊に選ばない方が良いです。
●独学の教材にする場合は数ヶ月で終えるのは難しい気がします。レベルが合っていないと1年かそれ以上かかったり、運が悪いと挫折してしまって終わらない可能性もあります。ちょうど良い時期(初級と中級の間ぐらい)に使われるのがポイントかもしれません。
●この本についてかなり厳しい書評もあるようですが実践力養成テキストとしては決して悪くない気がします。言語学や文法学が専門の先生方が執筆されたのではないこと、一部の情報を後から上書きする必要があることを承知の上で使えば大丈夫だと思います。内容からして特に地域研究といった現代アラブ社会メインの用途でアラビア語を必要とされている方に向いていると思います。
●管理人自身は言語学やアラビア語教育が専門の先生が書かれた厳密な内容の学習書の方が好きなこと、個人的に後からの覚え直しで苦労した経験があることもあり、オリジナル解釈・誤用肯定の示唆・古典文法規則軽視傾向・アラビア語の実態に関する不正確な紹介が外国語大学アラビア語科という専門機関には合わないような気がしたので★を3.5としました。
(2022年3月修正)
読書メモ
通し読みの時に訂正やメモを入れた場所の記録です。iPad内の電子メモが消えた時のバックアップ代わりに置いてあるものです。細かい場所は省いてあるので全部を網羅した正誤表にはなっていません。
- p.3:アーンミーヤは(中略)書き言葉として使われることは、原則的にはありません
▶ ここ20年ほどインターネット経由のウェブフォーラム、SNS利用やスマホ普及で口語アラビア語のアラビア文字表記が拡大し定着している。 - p.14:最初の「ا」以外、アラビア文字はすべて子音
▶ 日本ではアリフはもはや特定の音価を持たないという説明が一般的だが、アラブ世界ではハムザの字を考案した後もアルファベット1文字目は子音である声門閉鎖音/声門破裂音としての地位を廃しておらず、アリフという名を借りたハムザだと見なす学説がメジャー。かつて東京外国語大学アラビア語科で言語学枠の教授だった内記良一先生はこの件をふまえ文法書にアリフの音価を声門閉鎖音/声門破裂音と記載。 - p.14:「ا」を除くアラビア文字は、その名称の最初の子音がその文字の発音
▶ アリフも同様。アラブの文法学では依然として1文字目が長母音アリフと声門閉鎖音/声門破裂音ハムザが兼業しているかもしくはアリフの名を借りたハムザが独占していると見る学説が通用しており、文字名 [ ’alif ] [ アリフ ] の「ア」で母音 a を発音する前に先立つ声門破裂部分「’」がアリフ(ハムザ)の発音に対応している。 - p.17:29 ء 特定の音を表しません
▶ 声門閉鎖音/声門破裂音。他の子音と違い声門の開閉なので異質かつ子音として認識されづらいが子音。 - p.19:ハムザが全ての欄において「ء」になっている
▶ 他書では通常語頭・語中・語末の位置に合わせ台座に載っている形状を全パターン掲載。 - p.22:「ا」および「ء」にこれらの記号がつくと、母音だけで「a」、「i」、「u」と発音
▶ 日本語で母音を単独に発音する時と同様、母音だけ発音しているように思われがちなだけで声門閉鎖音/声門破裂音の発音が先立っている。アラビア語では語頭が声門破裂無しの短母音で開始することが無く、アリフやハムザに母音記号をつけた時は /ʔa/ /ʔi/ /ʔu/ になるため母音だけの /a/ /i/ /u/ とは違っている。 - p.26:「ا」の文字があたかもそこにかかれていないかのように、まったく発音されないことを示している(中略)なお、「ٱ」の次に来る文字には母音が付きません。
▶ ハムザト・アル=ワスル(ハムザトゥルワスル、ハムザトルワスル)について言及しないまま説明しているが、アリフの字が発音されないことを示す記号ではなくアリフを台座としたハムザを発音しないという意味の記号。「ٱ」の次の子音に母音がつかないのは元々ハムザトゥルワスルが1字目を無母音で開始させないために付加した補助的なものであることに由来している件の言及無し。 - p.28:「mak」の部分にアクセントが来るはずですが、実際には「ta」にアクセントが来ます。
▶ 「ta」にアクセントが来るのが普通だが、古典アラビア語重視系文法書では「mak」部分にアクセントが来るような発音の存在に触れられていることがある。 - p.37:発音には関係なく「ا」を書き加えなければならない
▶ 休止形では本来長母音 ā として読むことから付加されたアリフなので、発音に関係無い訳ではない。現代でもフスハーの音読でアーと読んでいるナレーションは多い。 - p.37:「ـاء」「ء」「ى」「ة」で終わる語は例外 / (脚注)ただし「شَيْءٌ」は、対格で「شَيْئًا」
▶「ء」を含めるのは誤り。شيء は他の「ء」で終わる語と同様にアリフを書き加えているだけ。これはアラビア語文法の正書法(正字法)の教科書に載っている項目で、نوء – نوءًا や بطء – بطئًا といったルール通りにしているもので、例外表記ではない。 - p.39:名詞文の主語は、意味上、限定されていなければなりません。
▶「意味上」となっているが、原則として限定されていなければいけないとされる一方で本書で触れられている存在・所有を表す構文以外にも特定の構文・条件下で主語部分が非限定名詞になることがある。 - p.42:アラビア語文法の一部として確立しているとは言えません。(中略)文法の一環として句読点の使い方を学ぶことはありません。
▶ アラブ各国の国語(アラビア語)カリキュラムに組み入れられており علامات الترقيم という単元・項目で学ぶ。大学だと論文を書くための正書法(正字法)や作文技術の講義に出てきたりする。西洋からの輸入なので西洋における用法をそのまま踏襲したルールとなっている。各国での差は特に無く、学校の教科書以外にアラビア語文法の正書法(正字法)専門書などでも確認することが可能。詳解文法発刊当時の前から文法書に載っていた。 - p.43:「ة」という文字の特性として、この文字の直前の文字の発音記号はかならず「ـَ」となる
▶ 直前が長母音 ā で ـاة となっているケースでは違う。長母音アリフにスクーンを書くこともあるので、その場合は ـاْة と表記されることになり直前の発音記号はスクーンになる。 - p.71:この文における補語は「هو الممثل」という「文」です。
▶︎ これは詳解文法のオリジナル解釈で、الرجلُ هو الممثلُ という文に関してはアラビア語文法では هُوَ は主部と述部を切り分ける ضَمِير الْفَصْلِ でイウラーブ上の格は無く、الرجلُ が主語で الممثلُ が述語でそれぞれ主格になる。違う学説だと الرجلُ が1個目の主語、هو が2個目の主語で الممثلُ が述語となりそれぞれ主格と見るという見方もあるとか。 - p.273:「لٰكِنَّ」は通常、段落や話題の初めにおいてのみ用いられ、「وَلٰكِنَّ」は段落や話題の途中で用いられます。
▶ لٰكِنَّ には元々はそのような区別は定義されておらず文中や同じ話題の中でも و 無しだったりする。現代文の例文を多く扱った文法書では「،」のように一旦区切った後に وَلٰكِنَّ が比較的多く来る印象はあるがそこまで明確な使い分けは無いように見受けられる。アラビア語文法学の本でも「لٰكِنَّ は و をつけて使うことがある」と記されているが、段落や話題の最初云々といった内容を挙げているものは特に見当たらず。文法学としての定義ではなく、執筆者の印象や現代における一般の用法・習慣が文法説明に混入している可能性あり。 - p.281:「لٰكِنْ」は通常、段落や話題の初めにおいてのみ用いられ、「وَلٰكِنْ」は段落や話題の途中で用いられます。
▶ 同上。非常に短い短文中でもそうでない文でも لٰكِنْ の語形で現れる例文が複数あるため。アラビア語の文法書やアラブ人児童生徒向けの逆接構文単元でも確認済み。
大学のアラビア語 詳解文法 著者:八木 久美子、青山 弘之、イハーブ・アハマド・エベード 出版社:東京外国語大学出版会 |