アラビア語における合字
文字同士がくっついて変身~合字とは?
合字(ligature)とは複数の文字がくっついて1つの文字として変身したもののことを言います。
アラビア語にはこの合字が多数あり、基本線に沿って左側の真横に次の文字を書くのではなく下方向に次の字を垂らすつづりなどが行われます。
薄い水色で塗ったのは、合字などで教科書の活字体とは違うつづり方をしている部分になります。
『アラビア文字の本向け書体ナスフと手書き書体ルクア』でも紹介している通り、現代において広く見られる基本線に沿ってアラビア文字を横に引っ張った感じできれいに整列させて書いていく方式は、英国人研究者のLane(レイン)が自分のアラビア語-英語辞典で導入した活字体がアラブ世界に逆輸入されたものです。
アラビア語学習と合字
アラビア語の一般的な学習書では、ラームとアリフが連結して1文字扱いされるラーム-アリフを除けばこの合字は登場しません。
しかし元々アラビア文字のつづり方自体がこの合字を多用するスタイルであるため今でも普通に残っていて、一部の書籍やウェブサイトでも使われています。また昔の資料を読む必要のあるなど人は、アラビア語学習の比較的早い時期でこの合字を一通り学ばれているかと思います。
この縦方向や斜め方向に積み上げていくつづり方は手書き書体であるルクアにも共通しており、アラブ人ネイティブの書いた手紙やメモを読む際にも関わってきます。アラビア文字の読み書きは合字とルクア書体を覚えるとすごく楽になるので、早い時期に覚えてしまうのが良いかもしれません。
とりあえず、合字の具体的な一覧表を掲載している日本語のウェブページが見当たらないようだったので作ってみました。
合字や基本線に並ばない位置関係の組み合わせ
それでは実際の例を画像で見ていきたいと思います。
ج ح خ 関連
ج ح خ + ج ح خ
同じ文字同士の連結です。左真横につなげず、またペンを一度上げて紙から離すこともせず、そのまま下方向にZの字を書くようにして連結させます。
ジャバラ状に折りたたまれるため、似た文字を区別するためについている弁別点の位置も狭苦しそうな感じになります。
ب ت ث + ج ح خ
ب ت ث の書き始めの短い棒が上から下ではなく下から上の逆向きに変わります。そこから左斜め下→右斜めにジグザグさせて、次に来る ج ح خ を書きます。
س ش + ج ح خ
س ش を書いたら ج ح خ を下方向にたたんで書きます。
ص ض + ج ح خ
ص ض を書いたら ج ح خ を下方向にたたんで書きます。
ع غ + ج ح خ
こちらも真下に垂らします。
ف ق + ج ح خ
ف を書いた後に右へ戻ってから真下の位置に ج ح خ を書きます。خ の弁別点が1個前の文字である ف の前に来ます。
ق との組み合わせも ف と全く同じです。
ل + ج ح خ
ل の後も少し左に書いてから右に戻って ج ح خ を書きます。
ي + ج ح خ
ب ت ث の時と同じです。ج が続く時は前の ي の弁別点と少しだけ離れて並びます。
ر 関連
ب ت ث س ش ص ض ن ي + ر
ر の前で基本線よりも上に持ち上げてから書かれます。
ز 関連
ب ت ث س ش ص ض ن ي + ز
ز の前で基本線よりも上に持ち上げてから書かれます。
ل 関連
ل + ا
こちらのラーム-アリフは入門書にも出てくるかと思います。ل と ا だけであれば لا になり、ل が前にある他の字と連結している場合は ـلا になります。
ك 関連
ك + ا ل
ك の ـكـ は左に縦棒状である ا や ل が来ると下半分が丸まってペタッとくっつきます。
ك + م + ا ل
ك + م + ا ل の合せ技です。كـ の真下に小さく م が入りますが、左の近い距離に縦棒状の ا や ل がいるので文字1個をはさんでくっついてしまっています。
م 関連
ب ت ث س ش ص ض ي + م
ب ت ث س ش ص ض ي などは م を書き始める前に形を変えて、右斜め上から م に向かって降りてくるようにします。
ب ت ث س ش ص ض ف ق ي + م + ا
上の組み合わせにさらに ا が続いた例です。使っているのがパソコン用のフォントなので م 部分が違うことがあるかもしれませんが、位置関係はだいたいこんな感じです。
ج ح خ + م + ا
م を間にはさんでいるので、これも基本線から離れ一直線に並んでいません。
ك + م
ك は 語頭形 كـ の下半分を幅狭に書き、少し左に書いてからすぐ下に م を生やします。
ل + م
ل を書いたらほんの少しだけ左に進み、すぐに下から م を垂らします。م の後にさらに他の字が続く場合、ل の棒を縦に書いたら左に進まずそのまま右斜めにちょこっと棒を飛び出させて م とします。
ل + م + ج ح خ
合字のコンビネーションです。
ه 関連
ب ت ث س ش ص ض ي + ه + ا
ه の語中形が V のようになっています。また ه には右斜め上から入るので、ب ت ث ي などの書き始めの短い棒が上から下ではなく逆の下から上に書かれます。
ل + ه + م
ه は単語の途中にありますが、ل の真下から生えて語頭形のような形状になっています。
ي 関連
ب ت ث + ي
1字目の ب ت ث を書いたら左に少し書いてから右に戻り、そこから下に ي を垂らします。弁別点が下にある ب は ي の弁別点の少し離れた位置に並びます。
実際の単語で見る合字の例
上の行が合字なし、下の行が合字ありです。比較できるようにだいたい同じ位置に単語を並べてあります。
比較サンプル(1)
比較サンプル(2)
比較サンプル(3)
比較サンプル(4)
比較サンプル(5)
比較サンプル(6)
比較サンプル(8)
比較サンプル(8)
比較サンプル(9)
Arabic Ligatures