アラブ馬めぐり~サウジアラビア

馬産

アラブ馬

مَرْكَز الْمَلِكِ عَبْدِ الْعَزِيزِ لِلْخَيْلِ الْعَرَبِيَّةِ الْأَصِيلَةِ بِدِيرَاب
King Abdulaziz Arabian Horses Center at Dirab
http://kaahcfao.com/

日本語にすると「ディーラーブ キング・アブドゥルアズィーズ純血アラブ馬センター」というような意味で、アラブ馬の血統維持や生産のためのセンターだそうです。首都リヤード近くにある農業地帯にあるとのこと。2018年時点でオーナー8200名、アラブ馬28360頭が登録されているとウェブページには書かれています。

業務内容は、国内のアラブ馬の登録・出生数や輸入数の把握・栄養管理・治療・血統証明書発行など。

国営ニュースチャンネルでのセンター紹介です。厩舎や獣医師が映っています。

ちなみに純血アラブ馬の生産ですが、色々な動画を見ているとエジプトでもかなりの規模で行われていてアラビア半島の湾岸諸国にも輸出されているそうです。以前モロッコ国王がサウジアラビアの繁殖家に真っ黒な種牡馬をプレゼントした時も、繁殖家がエジプトに持っている牧場に送られたことが報じられました。

サラブレッド競走馬

サウジカップのウェブサイトによると、サウジアラビア国内で調教を受けているのは9,000頭余りのサラブレッド。 繁殖牝馬は5,000頭余り、種牡馬は390頭。毎年2,000頭弱の子馬が生まれているとのことです。

トップの種牡馬(英語ではそうとしか書いてないので種付け数の順位なのか出生産駒数なのかは不明)は、フランスでの競走経験があるJorvick号(米国産、Mizzen Mast [ ミゼンマスト ] 産駒)だと書いてありました。

Saudi Arabian Stud Book
https://ksasb.com/
サウジアラビア・スタッドブック

サウジアラビアのサラブレッド生産と種牡馬についての情報を閲覧できます。最新の情報が載っていないので上で紹介したJorvick号も見当たりません。

観光イベント

大昔に詩の朗読大会も同時開催されていた野外市 سُوق عُكَاظ [ sūq ‘ukāz ] [ スーク・ウカーズ → 口語読みはスーク・オカーズに近いので英字表記はOkaz ] の名を冠した観光イベント「Souq Okaz」ではアラブ馬関連のイベントが各種開催されています。

スーク・ウカーズには女性チームも参加。サウジアラビアの伝統を懐古するイベントなので全員遊牧民風の民族衣装と顔のヴェールという出で立ちで騎乗しています。

競技会・品評会

ビューティーコンテスト(品評会)

サウジアラビアではアラブ馬の美を競うビューティーコンテストがたびたび開催されているそうです。

ターイフでのアラブ馬 美馬コンテストです。会場は مَرْكَز الْمَسَرَّةِ الدُّوَلِيّ لِلْفُرُوسِيَّةِ [ markazu-l-masarrati-d-duwalīyah li-l-furūsīya(h) ](The International Equestrian Center=マサッラ国際馬事センター)。

同じくターイフのマサッラ国際馬事センターでのコンテストの様子です。海外からアラブ馬を評価できる人材を呼び寄せて厳密な審査をしていることが紹介されていました。年齢別に部門を分けて美を競い合ったそうです。

参加資格があるのは国内産のアラブ馬で、国内の各厩舎にいる馬たちが集結して美を競ったとのこと。サウジアラビア国内における純血アラブ馬の生産促進活動の一環として行っているイベントだという説明がなされていました。(動画を見る限りイケメンコンテストというよりは真面目な品評会といった内容のようです。)

アラビア語ですがコンテストの詳しい説明が入っている動画になります。

国内生産と観光促進を兼ねたイベントで、純血アラブ馬の生産というアラブ人の伝統を保持するための活動の一環で実施。上で紹介したKing Abdulaziz Arabian Horses Center at Dirabも参画しています。

寄付をすると、寄附金額に応じたランク付けが行われ最上級協賛者は印刷物・パネルへの名前掲載、センター内の画面にて10分間ビデオ放映、座席などの特別待遇、記念盾贈呈といった特典がてんこ盛り。

アラブ流流鏑馬

マディーナ(メディナ)で初めて行われたアラブ風流鏑馬 اَلرِّمَايَة بِالْقَوْسِ [ ar-rimāya(h) bi-l-qaws / bi-l-qaus ] [ アッ=リマーヤ・ビ=ル=カウス ](弓による射的)の大会の映像だそうです。サウジアラビアは馬に乗って部族同士の戦争をしていた歴史があり、馬に乗りながら刃物を振り回す・疾走しながら槍で突く・矢を放つ・銃を発砲するといった技術が残っているようです。

動画の最初には的に向かって矢を射るアラブ式流鏑馬、中盤は地上でのアラブ式弓道、最後に槍で地上のパネル(杭)を突き刺してゲットする競技が出てきます。

パネル(杭)取り競技

サウジアラビアの騎馬技術自慢動画にも出てくる伝統的な技 اِلْتِقَاطُ الْأَوْتَادِ [ ’iltiqāṭu-l-’awtād/’autād ] [ イルティカートゥ・ル=アウタード ](وَتَِد=杭、اِلْتِقَاط=取る・拾うこと)の動画はネット上で多数公開されています。

これはテントペギング(tent pegging)という馬術競技で世界各国で行われているのだとか。

サウジアラビア国内に競技団体があり、動画に写っている青年たちはチーム نُومَاس [ nūmās ] [ ヌーマース ] ー فَرِيق نُومَاس لِاتْلِقَاطِ الْأَوْتَادِ(NOMAS TENT PEGGING TEAM)ー を結成して競技練習を行っているそうです。パネル(杭)を刺すのは槍や剣で、イスラーム初期の頃から伝わっているアラブの騎士たちの戦闘技術なのだとか。

彼らがチーム4人で並走している時に「ハムダーニーヤの純血アラブ馬です。素晴らしいですね。」と褒めながら撮影をしているのですが、اَلْحَمْدَانِيَّة [ ハムダーニーヤ] というのはアラビア馬の由緒ある人気血統の名称になります。

7:30過ぎでは槍よりも剣の方が難しいこと、剣を2つ持っての二刀流はハーリド・イブン・アル=ワリードが得意としていたという言い伝えについて話しています。(この二刀流を得意としていたアラブの騎士は両脚で馬をコントロールしていたそうで、イスラーム初期の共同体でも傑出した騎馬技術だと見なされていたようです。イスラーム史上で二刀流ができたことが知られていた偉人はハーリド・イブン・アル=ワリードとアッ=ズバイル・イブン・アル=アウワームの2人だけという記述も見かけました。)

サウジ国外でも行われている競技だそうで、アラビア半島各地からの参加がある競技会にも同チームは参加しているとのこと。

最後に出てくるのは遺跡で、馬に乗った人物が槍を持っている絵が残っているという説明をしています。新石器時代からこの地域の人々は槍を片手に馬に乗っており、杭取り競技が非常に歴史の長い伝統だと撮影者はコメントしていました。

杭取り競技の選手権に出場したサウジアラビア代表チーム・ヌーマースを取材した時の番組録画です。初試合では3位。クウェート・カタール、・UAE・オマーンのチームなどが参加した湾岸諸国競技会では2位。南アフリカでの試合では2位、剣部門の個人競技で優勝した選手もいたとのこと。

サウジ南部のナジュラーンで杭取り競技人口が増えているというニュースです。0:20過ぎにインタビューを受けているのは国際審判の方だそうです。白く塗られたスタンドから吊るされた輪っかはオレンジやレモンを突き刺す競技の練習道具だとのこと。

観光乗馬

紅海沿いの خَلِيج سَلْمَان [ khalīj salmān ] [ ハリージュ・サルマーン ](サルマーン湾)は英語でKhalij Salman Beachとして知られる海辺の観光地らしく、海辺を外乗している様子がアップされていました。

動画の題名は『サルマーン湾のウンム・ル=ハマーム厩舎』。サルマーン湾に馬運車で来て馬たちに海遊びさせている様子が映っています。

競馬

イスラームと競馬

サウジアラビアはイスラームで禁じられた賭博行為全般に対して厳しい措置を取る国家ですが、預言者ムハンマドによって競馬は容認されていたことから競馬については認められています。

しかし心身を鍛錬する、イスラームの敵を負かすための力とする、イスラームの軍勢を強化するといった意味の利用であって、海外で行われているような大規模な賭博行為という意味の競馬は認められていません。

サウジアラビアでは勝ち馬を予想する投票のようなものを行い、見事1着になったら賞金をもらえるというシステムをとっているそうです。賭博ができないので、あくまでラッキーくじ引きのような感じに留めてある模様です。

Race Information
https://www.frusiya.com/pages/raceinfo.php

サウジアラビアの場合、勝ち馬候補を選ぶ投票を英語でnomination、アラビア語で تَرْشِيح [ tarshīḥ ] [ タルシーフ ](候補馬選び、候補指名)と呼んでいるみたいです。

主催団体

نَادِي فُرُوسِيَّة الرِّيَاضِ(リヤード馬事クラブ)
نَادِي سِبَاقَاتِ الْخَيْلِ بِالرِّيَاضِ(リヤード競馬倶楽部)
Equestrian Club of Riyadh(リヤード馬事クラブ)
Jockey Club Of Saudi Arabia(サウジアラビア ジョッキークラブ)
https://www.frusiya.com/

日本語ではリヤド馬事クラブと表記される団体がサウジアラビア国内での競馬を主催。(同じウェブサイトですが、馬事クラブとか競馬クラブとかジョッキークラブとか複数の名称を名乗っているようで、いずれもこちらのウェブサイトにリンクされています。)

Kingdom of Saudi Arabia – The Jockey Club
Racing Rules 2019
https://www.frusiya.com/assets/plugins/pdf/web/viewer.html?file=/fileman/Uploads/Rules%20and%20Regulations/Rule_reguler_2019_English.pdf

サウジアラビアジョッキークラブによるレース規定です。

競馬場

場所はリヤード(リヤド)のキング・アブドゥルアズィーズ競馬場(競馬場はアラビア語で مَيْدَان [ maydān / maidān] [ マイダーン ] )。夏季のみ避暑リゾート地である高原ターイフ(標高1,800m超)のキング・ハーリド競馬場に場所を移して行われています。

レースに備えて仕上げを行っている馬たちの様子をレポートした動画です。

ターイフのキング・ハーリド競馬場です。

レース風景

Frusiya Channel
https://www.youtube.com/channel/UCZdyqA-rsQLcKP4UCfgFaTA

サウジアラビアの馬事専門TVチャンネルです。色々なレース録画を見ることができます。

サウジカップ

كَأْس السُّعُودِيَّةِ
The Saudi Cup
https://www.thesaudicup.com/

サウジアラビアが新設した世界最高賞金額の競馬レースで、第1回が2020/2/29に行われました。場所はリヤード(リヤド)のキング・アブドゥルアズィーズ競馬場。

サウジカップレース動画のアラビア語版です。国営チャンネルが放映したものになります。

若者たちが投稿する騎馬技術自慢動画

サウジアラビアではアラブ馬で疾走しながら数々の乗馬技術を披露する動画の投稿が数多く行われています。サウジアラビアは遊牧部族民が非常に多く現代でも馬の扱いが上手い若者が少なくないようです。

他の地域のアラブ人たちからは預言者ムハンマドとともに遠征して回った騎士たちの末裔だけのことはあると称賛のコメントが寄せられていることが多いように思います。

視聴数1860万人に迫る人気動画

乗り手は دَوَّاس البرَاهِيم التَّمِيمِيّ [ dawwās ’al-brahīm at-tamīmī(y) ] [ ダウワース・アル=ブラーヒーム・アッ=タミーミー ](dawwāsは戦闘相手を踏み倒して回る勇敢なる者といった意味の男性名)氏。古くから続く部族であるタミーム族の青年だそうです。

鞍無しで疾走する愛馬の上に立って挨拶、地面にある赤いパネルを武具で突き刺してゲット、立ち乗りのまま敬礼、馬上で片足立ち、頭絡を外して投げ捨てたてがみだけつかんで騎乗といった技能を披露しています。

関連ページ
アラビア半島の口語詩 شَيْلَة(シャイラ)
(部族・民族・祖国・国家元首などを称賛する内容が多いアラビア半島地域の口語詩シャイラについてまとめたページです。)

スィルハーン族の青年

下の部族関連記事でも紹介しているスィルハーン族の青年による騎乗技術自慢動画です。並走しての飛び乗り、立ち乗り、手ぶらでの立ち乗り、銃を持っての射撃、前後逆さ乗りなど。

BGMについて

サウジアラビアの馬動画でBGMとして使われているのがこちらの歌です。題名は『يَا بَنَاتَ الرِّيحِ』[ yā banāta-r-rīḥ ] [ ヤー・バナータ・ッ=リーフ ](おお風の娘たちよ)もしくは『 بَنَات الرِّيحِ 』[ banātu-r-rīḥ ] [ バナートゥ・ッ=リーフ ](風の娘たち)と書かれています。馬がテーマの詩なのでたびたび利用されているようです。ジャンルとしては部族称賛詩と同じ口語詩のシャイラに分類される模様。

こちらはYouTube動画にもよく利用されているナシード風のバージョンです。楽器を使わないので宗教歌の一種であるナシードに似ていますがシャイラも元々は伴奏無しだったとのこと。

こちらは画面に歌詞が出てくるバージョンです。

「風の娘たち」というのは馬のことを指します。というのもイスラームではアッラーが南風からアラブ馬を作り出したとされているためです。ちなみにアラビア語で風は女性名詞です。

こちらは作者自らが朗唱しているバージョンです。詩の作者は عَوَّاد الرَّغَيَان [ ‘awwād ar-raghayān ] [ アウワード・アッ=ラガヤーン ] 氏。部族名由来のニスバは اَلْعَنِزِيّ [ al-‘aniz(z)ī(y) ] [ アル=アニズィー ] でアニザ族出身の詩人です。息子さんも少年詩人として活躍しており親子で売れっ子らしいです。

アウワード氏は馬が好きなのか、『 عِشْق الْخَيْل 』[ ‘ishqu-l-khayl / -khail ] [ イシュク・ル=ハイル ](馬への愛)という詩も発表しています。

こちらは歌手による歌つきバージョンで、画面にて歌詞を見ることができます。お前は馬が好きだな、おい馬好きよ、と人から言われるが、この感情はそういう言葉では表しきれないものなのだ…みたいな出だしで始まる詩となっています。

部族単位での馬イベント

フザイル族

هُذَيْل [ hudhayl / hudhail ] [ フザイル ] はヒジャーズ地方のマッカ(メッカ)近辺に大昔から住んでいた部族で、イスラーム黎明期にはクライシュ族の隣接地域に居住。そのこともあり彼らの話していたアラビア語はクルアーンの言語でもある標準アラビア語(フスハー)に近く、أَفْصَح قَبَائِل الْعَرَبِ [ ’afṣaḥ(u) qabā’ili-l-‘arab ] [ アフサフ・カバーイリ・ル=アラブ ](アラブで最もアラビア語が清純な部族、アラブで最もフスハーに近いアラビア語を話す部族)と呼ばれてきました。

彼らの別名は他にもあって、「アラブのクルド人」(しょっちゅう戦争をしていたことから)、「砂漠の海賊たち」、「ヒジャーズの盾」、「弾薬の軍勢」、「詩と戦争の部族」など。

部族番号は515だそうで、フザイル族関連の動画では車に「هذيل 515」(フザイル 515)というステッカーが貼ってあるのを見かけることがあります。

フザイル族が別の分家の客人を出迎えている動画だそうです。他の部族もそうなのですが、高級な4WDにシャイフ(族長、家長、部族の重鎮)らが乗っていて、出迎える側の若者たちが騎馬隊のように並走するというのがスタンダードな形式になっているようです。どの動画でも馬かラクダのどちらかを見かけます。

パネルを見ると双方とも出身部族を示すニスバがフザイル族のそれなので、部族の分家違いということのようです。客人を大歓迎し、プレゼントとして出迎える側のシャイフが自分の厩舎にいる純血アラブの牡馬を贈っているシーンが写っています。

『フザイルの騎手たち』という題名の動画です。こんな感じで部族の若者たちが一緒に乗馬をすることはよくあるようです。他の部族も似たような動画をアップしていて、競馬場で部族カップのようなことをしている光景を見ることもできます。

マッカ(メッカ)の乗馬クラブでの草競馬でフザイル族の青年が一着になった時の動画だとのこと。

幼少期から馬に乗っていたフザイル族の青年がアブドゥルアズィーズ国王選手権なる競技会に参加した時の記録だそうです。

大河ドラマのようなシーンではイスラームの軍勢が周辺各地に進軍した際にアラブ馬が活躍した話をしています。フザイル族は非常にアラブ馬を好んでおり、優秀な騎士を輩出していたのだそうです。

タミーム族の青年も上で紹介した動画でやっていましたが、槍で地上のパネル(杭)取りはサウジアラビア国内における騎乗技術自慢の定番となっている模様。

スィルハーン族

اَلسِّرْحَان [ as-sirḥān ] [ アッ=スィルハーン ](スィルハーン族)の若者たちが騎馬団を組んで砂漠地帯を騎乗している様子をおさめた動画です。馬の脚のバンテージも含め、馬具は洋風のものを使用している模様。

全員同じ部族の成員ですが、枝分かれしている分家がいくつもあるようで騎乗者リストにはファーストネーム+分家名+部族名ニスバが記載されています。

サウジアラビア各部族の騎乗イベントは部族抗争などがあった時代に武器を使用していたことの名残りらしく、銃を持ったまま乗っていることが多いです。

ちなみにこの動画のBGMも部族を称賛するシャイラ詩となっています。

アール・ハサン族

こちらは部族紹介のビデオです。آل حَسَن [ ’āl ḥasan ] [ アール・ハサン ](ハサン家、ハサンファミリー)は ターイフの南東部で暮らしている بَنو سُفْيَان [ banū sufyān ] [ バヌー・スフヤーン ](スフヤーン族)の分家、آل سَاعِد [ ’āl sā‘id ] [ アール・サーイド ] がさらに枝分かれしてできたファミリーだとのこと。ヒジャーズ地方でも特に標高が高い山のある地域に住まう誇り高き部族、という風に動画では自己紹介しています。

1:43に出てくるのは戦争時に築き上げた砦、古い時代の石造住居、貯蔵庫跡だそうです。2:40以降は果物や花といった農作物の名産品、良質なはちみつの生産を紹介。3:47ぐらいから تَعْشِير [ ta‘shīr ] [ タアシール ] の様子が映っています。

アニザ族

عَنِزَة [ ‘aniz(z)a(h) ] 族はアドナーン系ラビーア族から派生した部族で、シャンマル族と居住区域が重なっていたことから長きにわたってライバル関係にあったことで有名です。アニザの遊牧していたグループはシリア近辺を往来。定住していたグループはサウジアラビアのナジュド地方に居住。馬の生産で有名な部族だったとか。部族番号はB-52。

アニザ族がシャンマル族の来訪を歓迎している光景です。馬に乗った部族の成員が騎馬隊のようにして集団で客人を出迎えています。ラクダ隊が騎馬隊の横にいるのが見えます。

アニザ最年少の馬乗りとして馬に乗ったままの男の子を部族のテント内でお披露目している光景です。目上の年長者たちがテント内にずらりと座っていて、アニザの小さな馬乗りに「マーシャッラー」(これぞ神が望み給うたこと、すばらしい)、「アッラー・ヤフミーク」(アッラーがお前さんを守ってくださいますように)と声をかけています。

画像は粗いですが、1980年頃にイギリスのテレビ局が取材したアニザ族の馬乗り名人の様子だそうです。元々は警備隊の乗馬訓練光景を取材した番組で、制服を来た隊員たちが障害飛越や伝統的な手法(テントペギング、飛び乗り)を取り入れて訓練を行っている様子のひとコマとして流れたものだとのこと。

ホースマン

ハッサーン・アル=ジュハニー氏

جُهَيْنَة [ juhayna / juhaina ] [ ジュハイナ ] 族出身の青年 حَسَّان الْجُهَنِيّ [ ḥassān al-juhanī(y) ] [ ハッサーン・アル=ジュハニー ] 氏のYouTubeチャンネルではアラブ馬の馴致、子馬の飼育方法解説、気性の荒い馬の扱い方講座、遠乗り、アラブ風流鏑馬の様子を色々と視聴することができます。

馬の育成・馴致のコツや自分のところの厩舎の紹介、愛馬をかわいがっている様子などを見ることができます。コメントにも馬とすごく仲が良いとか、馬を褒めている時の言葉がとても優しいとか書かれていて、実際に見ていて微笑ましい動画も。

馬房に入ると攻撃してくる仔馬の扱いを厩務員に指導しているシーンです。

生まれてから日が経っていない仔馬の世話講座です。写っているのは前日に生まれたホヤホヤの仔馬だそうです。

愛馬の دَهْمَاء [ dahmā’ ] [ ダハマー(/ダフマー)] との散歩と追いかけっこです。دَهْمَاء [ dahmā’ ] [ ダハマー(/ダフマー)] というのは أَدْهَم [ ’adham ] [ アドハム ] の女性形、「真っ黒な、漆黒の、青毛の」という意味です。日本語でいうと「クロ」みたいな感じでしょうか…

「タアーリー」(=牝馬1頭に対する「おいで」です。牡馬1頭に対しては「タアーラ」。)と呼びかけると駆け寄ってくるのがかわいいです。「マーシャ(ー)ッラー」(文語だとマー・シャーアッラーですが口語だとマーシャッラーに近くなります)はこれぞアッラーが望み給うたもの、という意味で「素晴らしい」という表現になります。「タバーラカッラー」はアッラーに祝福あれ、という意味で前者のマーシャ(ー)ッラーとセットで言われることが多い文言になります。

ウマル・アール・アフヤー・アッ=シャリーフ氏

サウジアラビアのリヤード近郊ジャナードリーヤ地区の厩舎が集まっているエリアで مَرْبِط الشَّرِيفِ [ marbiṭu-sh-sharīf ] [ マルビトゥ・ッ=シャリーフ ](アッ=シャリーフ・スタッド)を経営しているウマル・アール・ヤフヤー・アッ=シャリーフ氏のYouTubeチャンネルもおすすめです。

飼育馬のコンテスト出場準備や受賞の様子、馬の毛色や鳴き声に関する解説、ホースレスキューのレポートなどを視聴できます。

アラブ馬ビューティーコンテスト出場の記録です。

アラブ馬の飼育以外にも飼料・敷料販売ショップも経営。

サウジアラビアの夏の猛暑と馬の体調について。汗だくになっている馬の様子、疝痛が起きやすい傾向、真夏に少なくない数の仔馬が死亡している話など。熱がこもりやすい厩舎・馬房の悪い作り、屋根無しで砂漠地帯の炎天下で放牧している人がいる件など。3:24あたりに出てくる飼育場は良い例で、屋根付きの場所が用意されているのが見えます。

同氏によると馬を死なせてしまったという相談はたびたびあるようです。エアコンも暑さ対策もちゃんとしていなければ人が熱中症で亡くなるように、馬だって同じく耐えられずに死んでしまうのだと警告しています。

ムハンマド・アル=フカイル氏

مُحَمَّد الْحُقَيْل [ muḥammad al-ḥuqayl / al-ḥuqail → サウジ方言でal-hugailもしくはal-hogail ] [ ムハンマド・アル=フカイル→サウジ方言でフガイルもしくはホガイル ] 氏は、上のウマル氏の動画で「乗馬界のレジェンド」として紹介されていた人物です。

若者たちの前で初めての乗馬講座をしている場面です。

扉やドアがついたどんな場所も嫌がって入ろうとしない馬を扉の向こうのエリアにすんなり入れる方法を指南。

扉やドアがついたどんな場所も嫌がって入ろうとしない馬を馬房に入れる方法を指南。

الخيول العربيّة في العالم العربيّ – المملكة العربيّة السعوديّة
إهداء إلى العشّاق اليابانيّين للخيل العربيّ الأصيل