ドバイカハイラクラシックと出走馬アラビア語馬名の読み方&意味

レース名のカハイラとは?

レース名ドバイカハイラクラシック(Dubai Kahayla Classic)のカハイラですが、アラビア語では كُحَيْلَة [ kuḥayla(h)/kuḥaila(h) ] [ クハイラ ] と書きます。ドバイのレースではクハイラではなくカハイラとなっていますが、おそらく口語発音に即した英字表記だからだと思われます。

クハイラはアラブ馬の祖となった牝馬の名前とされており、كُحَيْلَة الْعَجُوز [ kuḥaylatu/kuḥailatu-l-‘ajūz ] [ クハイラトゥ・ル=アジューズ ](クハイラト・アル=アジューズ、クハイラトゥルアジューズ)という名前で歴史書に残されています。

アジューズはアラビア語で「老人、老女」という意味の名詞ですが、アラブ馬関連ソースによるとクハイラという牝馬の所有者のあだ名・通称だったようです。なのでクハイラト・アル=アジューズで「アジューズの(所有馬)クハイラ」といった意味になる模様。

このクハイラ号ですが、預言者ムハンマドが喉がカラカラの状態で水場に殺到した馬達にあえて号令をかけて召集した際、我慢してしっかり命令を聞いて集まったという忠実で優秀な اَلْخُيُولُ الْخَمْسُ [ ’al-khuyūlu-l-khams ] [ アル=フユール・ル=ハムス ](5頭の牝馬、the Five)の1頭だとされています。

現代アラブ世界においてこの5牝馬の血統(五大血統)は名馬の証として好まれており、彼女の血統はクハイラーンやクハイラと呼ばれています。

出馬表に含まれるアラビア語由来馬名のアラビア語発音と意味

馬名のカタカナ化について

ドバイワールドカップデーの第1レースは毎回純血アラブ馬限定のレース「ドバイカハイラクラシック(Dubai Kahayla Classic )」となっています。

「アラビア語由来の名前を英字表記に直した出馬表でどう発音すればよいのかわからない」というコメントをネット上で複数見かけたので軽くまとめてみることにした、というのが当コンテンツ作成のきっかけでした。

出走馬は欧米で生産されたケースが多く欧米各国の現地発音とアラビア語発音との間に乖離が出る傾向が強いです。このページでは文語アラビア語で行われるアラビア語実況の際にどのような発音になるかに即して紹介しており本国や英語実況での読まれ方とは異なっていますのでご注意ください。

なお、馬名のアラビア語表記と発音は現地の競馬ニュース記事・厩舎、競馬チャンネルのSNS記事、レース動画で確認の上記載しています。

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2023年

ドバイワールドカップデーレースカード一覧
https://www.dubairacingclub.com/racing/race-meeting/dubai-world-cup-saturday-0/racecard

Emirates Racing Authority版カハイラクラシック出馬表
https://emiratesracing.com/node/3?id=3236&tab=0

発走時間はアラブ首長国連邦ドバイの現地時間15:30(時差は5時間、日本時間20:30に相当)です。

 1 – AF ALAJAJ(إي إف العجاج)

エー・エフ・アル=アッジャージュ もしくは エー・エフ・アル=アジャージュ。

昨年も参戦しているので馬名の詳細については ↓ 下の2022年レース出走馬名リストを参照願います。

2 – BARAKKA(بركة)

英字表記を見ただけではバラッカと読めますが、アラビア語ニュースの表記と当日のアラビア語中継からすると بَرَكَة [ baraka(h) ] [ バラカ ] を意図した命名だと思われます。

意味は「(神からの)恩恵、祝福」。とても縁起が良い言葉です。

3 – DERGHAM ATHBAH(درغام عذبة / درغام عذبه)

デルガーム・アズバ。アズバはオーナーの「Athbah Racing」から取った冠号かと。

昨年も参戦しているので馬名の詳細については ↓ 下の2022年レース出走馬名リストを参照願います。

4 – DERYAN(دريان)

デルヤーン。

一昨年も参戦しているので馬名の詳細については ↓ 下の2021年レース出走馬名リストを参照願います。

6 – HAMEEM(حميم)

ハミーム。

アラビア語馬名の英字表記では「EE」は長母音「ī(イー)」を表すことが多いです。

アラビア語ニュースでのアラビア文字表記は حميم [ ḥamīm ] [ ハミーム ](親しい、親密な)。とても仲の良い友人を形容するのに使ったりします。

7 – HAYYAN(حيان)

ハイヤーン。

一昨年も参戦しているので馬名の詳細については ↓ 下の2021年レース出走馬名リストを参照願います。

8 – JETHJATH(جثاث)

ジェスジャース。

アラビア語ニュースでのアラビア文字表記は جثاث となっているものもありますが正しくは جثجاث のようです。

文語アラビア語(フスハーでは)جَثْجَاث [ jathjāth ] [ ジャスジャース ] ですがそれを口語(方言)発音したジェスジャースを英字表記にしたものがこの馬名である模様です。

ジャスジャースは香りが良い黄色の花をつけるキク科植物で英訳は Pulicaria(プリカリア)。日本語だとノミヨケ草などと訳されています。

11- MUJEEB(مجيب)

ムジーブ。

派生形第4形動詞 أَجَاب [ ’ajāba ] [ アジャーバ ](答える、応える)の能動分詞 مُجِيب [ mujīb ] [ ムジーブ ](答える(者)、応える(者))。期待に応えて快走する様子がイメージできる馬名となっています。

12 – RAJEH(راجح)

ラージェフ。

昨年も参戦しているので馬名の詳細については ↓ 下の2022年レース出走馬名リストを参照願います。

14 – SALWA(سلوى)

サルワー もしくは サルワ。

سَلْوَى [ salwā ] [ サルワー ] はアラブの女性名としてもポピュラーな名詞で、元々の意味は「慰め、慰安;(鳥の)ウズラ」。そばにいると優しく癒やしてくれる存在というイメージを与える馬名です。

文語(フスハー)発音ではサルワーと語末を長母音で発音するのですが、口語(方言)だとサルワと短くなることが多いです。

2022年


引用元: Emirates Racing Authority(ERA)出馬表

アラブ馬は各国で生産されているのでアラビア語でない馬名も含まれています。2022年出走馬のうち2021年とかぶっておらずかつアラビア語由来の語を含んでいるもののみピックアップしてみました。

ちなみに日本でもおなじみのクリストフ・ルメール騎手は2番のASHTON TOURETTES(フランス)に騎乗予定。

 1 – AF ALAJAJ(إي إف العجاج)

エー・エフ・アル=アッジャージュ もしくは エー・エフ・アル=アジャージュ。

アラビア語には「エー」「エ」の発音が無いので、血統を示す「AF」部分を「イー」「イフ」と同じつづりで「エー・エフ」と読ませています。

また英字表記では ALAJAJ でアラジャジュやアルアジャジュと読めそうですが、英語実況では「アルアジャージュ」に近く発音している過去レース動画がありました。

なお意味上は AL が定冠詞、AJAJ が名詞で分かれます。アラビア語ではアジャージュとアッジャージュのどちらかだろうと推測できますが現地のメディアも発音が分かれており確定が難しいように感じました。

アル=アッジャージュの場合

過去のアラビア語実況では「アル=アッジャージュ」と発音しているものが多く、当日のDubai Racingチャンネルでも「アル=アッジャージュ」と連呼していました。それらに従う場合は「エー・エフ・アル=アッジャージュ」に。

その場合の語形は عَجَّاجٌ [ ‘ajjāj ] [ アッジャージュ ] で「喧騒を巻き起こす;埃を巻き上げる;川や海が激しい波音を立てる」という意味になります。父馬が AF ALBAHAR という海に関連していると思われる馬名なので産駒に潮騒や怒涛をイメージする名前をつけたのかもしれません。日本の「メイショウドトウ」のドトウに通じるものがある感じがします。

ちなみに、定冠詞無しで إي إف عجاج [ ’ē ’ef ‘ajjāj  ]  [ エー・エフ・アッジャージュ ] と表記されていることもあるようです。

アル=アジャージュの場合

当日のアブダビスポーツチャンネル2における実況では「アル=アジャージュ」発音をしていました。その場合は「エー・エフ・アル=アジャージュ」に。

この場合 j を2個連ねない語形の عَجَاجٌ [ ‘ajāj ] [ アジャージュ ] となり「喧騒;埃;(川や海の)激しい波音、潮騒、怒涛」という名詞になります。定冠詞無しで إي إف عجاج [ ’ē ’ef ‘ajāj  ]  [ エー・エフ・アジャージュ ]。

5 – DERGHAM ATHBAH(درغام عذبة / درغام عذبه)

デルガーム・アズバ。

文語発音 [ dirghām ‘adhba(h) ] [ ディルガーム・アズバ ] の口語風発音に即した英字表記になります。

ATHBAH はオーナーである Athbah Racing、生産牧場であるAthbah Studمربط عذبة)に関連のある冠名(のようなもの)。「アズバ」はサウジアラビアなどにある地名でもあり甘みや水が純水であることをイメージさせる名前となっています。

-th- は英語の think ではなく that のように濁点つきです。また -ah は女性名詞の語末特有の表記で長母音のアーとはしないのでアスバー、アズバーではなくアズバが一番現地語発音に近くなります。

デルガームは文語 دِرْغَام [ dirghām ] [ ディルガーム ] の口語発音になります。ディルガームは ضِرْغَام [ ḍirghām ] [ ディルガーム ] 語頭の重たい「ḍ」の字が軽い発音の「d」に置き換わったもので、意味は「獅子;勇敢な、強い」など。

8 – HADI DE CARRERE(هادي دو كارير)

ハーディー・ドゥ・カレール。

HADI 部分のみアラビア語。هَادِي [ hādī ] [ ハーディー ] は「導く者、導き手」という意味のアラブ男性名。口語だと語末の長母音が短くなって「ハーディ」に聞こえることも多いです。

アラビア語に無い発音が含まれるので、[ hādī dū kārīr ] [ ハーディー・ドゥー・カーリール ] と読めるつづりが代用として使われています。

馬名が長いこともあってカタール(カタル)で出走した時の実況では「ハーディー」部分だけ取ってハーディー、ハーディーと連呼されていました。

なおフランス語では語頭の h は読まないということで、フランス語競馬実況を見た限りではハーディー部分を「アディ」と発音しているようでした。

9 – HAMDANI KHALED ALKHALEDIAH(حمداني خالد الخالدية)

ハムダーニー・ハーレド・アル=ハーレディーヤ。

文語読み [ ḥamdanī(y) khālid ’al-khālidīya(h) ] [ ハムダーニー・ハーリド・アル=ハーリディーヤ ](*実際にはつなげ読みの法則に従いアが抜けてハムダーニー・ハーリドゥ・ル=ハーリディーヤ)の口語発音です。

後半は冠名で、前半の حَمْدَانِيّ [ ḥamdanī(y) ] [ ハムダーニー ] は人名ハムダーンを形容詞化したもので「ハムダーンの」、خَالِد [ khālid ] [ ハーリド ] はオーナーであるサウジアラビア王族と同じ名前の男性名で意味は「永遠の、非常に長生きの」です。

英語風発音だと kh 部分は「カ」となりハムダーニー・カーレド・アル=カーレディーヤに近く聞こえたりするとは思うのですが、アラビア語実況ではハムダーニー・ハーリド・(ア)ル=ハーリディーヤになります。

なお視聴したアラビア語実況によっては口語風に母音がはさまってハムダーニーをハマダーニーと発音しているアナウンサーもいました。

10 – JARIF(جارف)

ジャーリフ。

前半が長母音 ī なのでアラビア語実況ではジャリフではなく [ jārif ] [ ジャーリフ ] と発音されます。

意味は「(川などの)流れが激しい、激流の;(感情など物事が)圧倒的な、押し寄せる」。先頭に向かって激走してくるイメージを与える馬名だと言えるかと思います。

ちなみに英語実況だとジャリーフに聞こえたりします。

13 – MUNIR DU SOLEIL(منير دو سوليّ)

ムニール・ドゥ・ソレイユ。

ムニール部分のみアラビア語で مُنِير [ munīr ] [ ムニール ] (光っている、照らす、明るい)から。

MUNIRだとムニルと読みたくなるところですが、後半に長母音 ī があるのでアラビア語の通りにカタカナ表記するとムニールとなります。

ちなみに口語アラビア語では u 部分が o になる [ monīr ] [ モニール ] という読み方も多いです。

14 – RAJEH(راجح)

ラージェフ。

文語発音ラージフの口語発音に即した英字表記です。رَاجِح [ rājiḥ ] [ ラージフ ] は「優勢な、優っている;好ましい;ありそうな、起こり得る」の意。

なお英語実況だとラージェ、ラージャに近く聞こえたりするようです。(アラビア語では -eh [ -エフ ] と読む部分を英語風に「エ(ー)」で発音するため。)

16 – LAMET SHAMEL QA(لاميت شامل)

ラーメート・シャーメル。(*ラメット・シャーメルのアラブ風発音。)

アラビア語ではラメットを正確に表記できないので、当て字をして [ lāmīt ] [ ラーミート ] と読めるつづりでラーメートもしくはラメートに近い発音をします。ただし実際のアラビア語中継では「ラーミート・シャーミル」と読まれる可能性が高いかもしれません。

シャーメルはアラブ男性名でもある شَامِل [ shāmil ] [ シャーミル ] の口語風発音に即した英字表記です。意味は「全てを含む、包括的な、全体的な」。

SHAMEL はそのままだとシャメルとカタカナ表記したくなるところですが、アラビア語に即した場合はシャーメルとなります。

なお、アラビア語の競馬ニュースでは LAMET SHAMEL 部分しか書かれていなかったのでアラビア語発音も QA 抜きにしてあります。

また競馬ニュース記事によっては لاميت شاميل というつづりになっていることも。全部外来語と見て「ラーミート・シャーミール(ラーメート・シャーメール)」と発音する意図での表記だと思われます。

2021年

2021年3月27日にドバイのメイダーン競馬場で開催されたドバイワールドカップ。
*日本語で一般的なカタカナ表記はメイダンです。文語のマイダーンの口語発音がメイダーン、メーダーンになります。


引用元: Emirates Racing Authority(ERA)出馬表

以下にアラビア語での元の発音を馬ごとにまとめました。あくまでアラビア語実況でどのように発音されるのかに注目してのカタカナ表記ですのでご注意願います。

レース結果http://www.emiratesracing.com/node/6?id=3099&tab=0

1 – AF ALWAJEL(اي اف الوجل)

エー・エフ・アル=ワジェル。

おそらく文語の وَجِل [ wajil ] [ ワジル ](びくびくしている、怯えている)の口語風発音 [ wajel ] [ ワジェル ] から。アラビア語では文語の i が口語で e になることが多いので、wajil → wajel という馬名表記になったものと思われます。

なお AF といった2文字は純血アラブ馬の名前につける血統を示す文字群になります。

2 – AL ROBA’A AL KHALI(الربع الخالي)

アッ=ロバア・アル=ハーリー。

ルブアルハリ砂漠のこと。文語発音 [ ’ar-rub‘u-l-khālī ] [ アッ=ルブウ・アル=ハーリー ](*実際にはつなげ読みの法則に従いアが抜けてアッ=ルブウ・ル=ハーリーになります)の口語発音より。文語から口語風発音に変遷することで ルブウ → ルバア → ロバア となります。

AL と書いてあるのでアルと読みたいところですが、r で始まる語に定冠詞のアルが接頭する時はアッに変わるので、現地では「アル=ルブウ(/ロバア)」ではなく「アッ=ルブウ(/ロバア)」と読まれます。

kh はカとハの混ざったような音ですがアラビア語業界ではハ行でカタカナ化するのが普通なのと、a 部分と i 部分はそれぞれ長母音なのでアル=ハリやアル=カリではなく、アル=ハーリーと元の発音を復元します。

3 – AL ZAHIR(الزاهر)

アッ=ザーヒル。

文語発音 [ ’az-zāhir ] [ アッ=ザーヒル ] と同じ。意味は「輝いている(者)」。

AL と書いてあるのでアル=ザーヒルと読みたいところですが、z で始まる語に定冠詞のアルが接頭する時はアッに変わるので、現地ではアッ=ザーヒルと読んでいます。

a 部分が長母音なのと、アラビア語英字表記の hir はハーと読まないのでザヒル、ザハーとはしません。

4 – BRRAQ(برّاق)

バッラーク。

意味は「輝いている(者)」。

文語では [ barrāq ] [ バッラーク ] ですが、チュニジアあたりは最初の子音につく母音が取れてブッラークのような発音に傾きがちなので馬名として brraq で書かれている可能性が高いです。(アラビア半島の文語アラビア語による競馬実況中継ではバッラークと読んでいました。)

a 部分は長母音なのと、口語発音で抜けた b の後の母音を補ってバッラークです。ブッラク、ブラック、ブラクとはしません。

5 – DERYAN(دريان)

デルヤーン。

文語 [ daryān ] [ ダルヤーン ] の口語風発音より。意味は「気付いている、知覚している」。

元々 a 部分は長母音なのと、アラビア語の英字表記 er はアーとは読まないのでデルヤン、ダーヤンとはしません。

6 – FETTAH DU LOUP(فتاح دو لوب)

フェッターフ・ドゥ・ループ。

前半のみアラビア語 فَتَّاح [ fattāḥ ] [ ファッターフ ](意味は「征服者」)由来です。fettah となっているのはファッターフの口語発音フェッターフより。

a 部分は元々長母音なのと、ah はアーと伸ばす訳ではないのでフェッタフ、フェッターとはしません。

7 – HAJRES(هجرس)

ハジュレス。

文語 [ hijris ] [ ヒジュリス ](意味は「サル、キツネ、キツネの子」など)の口語発音に即した英字表記だと思われます。

8 – HAYYAN(حيان)

ハイヤーン。

意味は「生きている」で人間の男性名として使われたりする語です。

なお元は [ ḥayyān ] [ ハイヤーン ] という発音でハイヤン、ハッヤン、ハッヤーン、ハヤンとは違う読み方になります。

9 – MASHHUR AL KHALEDIAH(مشهور الخالدية)

マシュフール・アル=ハーレディーヤ。

文語 [ mashhūr ’al-khālidīya(h) ] [ マシュフール・アル=ハーリディーヤ ](*実際にはつなげ読みの法則に従いアが抜けてマシュフール・ル=ハーリディーヤ)の口語発音です。

AL KHALEDIAH は冠名的なものでサウジ王族ハーリド(口語ではハーレド)殿下の名前に由来。「ハーリドの(厩舎)」的な意。文語はアル=ハーリディーヤと読みます。

英字の通りならハーレディーアになると思うのでうすが、アラビア語ではディーアではなくディーヤと読む部分です。なのでテレビの競馬実況でもハーリディーヤという発音の方で実況しています。

khalediah とありますが、ah 部分はアラビア語で実際には ya と発音している部分の慣例的な英字表記です。ah はアーと読まないのと、kh はハ行でカタカナ化するのが標準なのでカレディアフ、カレディアハ、カレディア、カレディアーとはせず、ハーレディーヤにすると元のアラビア語発音がほぼ復元できます。

ただ Dubai Racing Channel の英語実況では英語によくある kh の「カ」行読みをしておりカレディアのように発音していました。英語と同じ発音で日本語カタカナ化するならカーレディーアやカレディアになるのかもしれませんが、アラビア語から直接日本語化したカタカナ表記ではこのページに記した通りとなります。

前半のマシュフールは「有名な」の意。

なお MASHHUR は mash と hur に分けて読む感じです。u 部分は長母音 u で、マシュ+フールでマシュフールになります。マッシュル、マッシュール、マシュルではありません。

10 – MUBASHER AL KHALEDIAH(مباشر الخالدية)

ムバーシェル・アル=ハーレディーヤ。

文語読み [ mubashir ’al-khālidīya(h) ] [ ムバーシル・アル=ハーリディーヤ ](*実際にはつなげ読みの法則に従いアが抜けてムバーシル・ル=ハーリディーヤ)の口語発音です。

後半は冠名で、前半のムバーシル(ムバーシェル)は「直接の、直行の、直系の」といった意味の能動分詞です。

a 部分が長母音なのと、アラビア語英字表記の er はアーと伸ばさないのでムバシェルやムバシャーとは発音されません。

11 – MUTAWAKEL AL KHALEDIAH(متوكل الخالدية)

ムタワッケル・アル=ハーレディーヤ。

文語読み [ mutawakkil ’al-khālidīya(h) ] [ ムタワッキル・アル=ハーリディーヤ ](*実際にはつなげ読みの法則に従いアが抜けてムタワッキル・ル=ハーリディーヤ)の口語発音に基づいた英字表記です。

これは英字表記によくあるケースなのですが元々は mutawakkel つづり・発音から k が1個に減っています。mutawakel と見てそのままムタワケルとは読まず、kk と k を2個に増やしムタワッケルとすると正確な発音が復元されます。

後半は冠名で、前半のムタワッキル(ムタワッケル)は「(神に)頼る,縋る(者)」の意。中世のカリフの称号などにも使われる能動分詞です。

文語アラビア語による競馬中継ではムタワッキル・ル=ハーリディーヤと読まれます。

12 – RB FRYNCHH DUDE(آر بي فرينش دود)

アラビア語由来の馬名ではないのですが、英字表記がやや珍妙になっているので掲載しました。

アラビア語馬名はアラビア語の外来語表記に基づき آر بي فرينش دود [ ’ār bī frīnsh dūd ] [ アール・ビー・フリーンシ・ドゥード ]と読めるつづりになっています。

r の後は y の字を加えて長母音化、ch [ チ ] の音が無いため「チ」の代わりに「シ」、「エ」の音が無いので「フレーンシ」ではなく「フリーンシ」と読める表記で代用。

アラビア語馬名を文字通りに読むと「ル」部分が巻き舌になりがちな「アール・ビー・フリーンシ・ドゥード」となります。

さらに古い時期の出走馬名とアラビア語での発音

フランス本国での発音などは考慮せず、英字表記に合致する範囲内でアラビア語での元の発音に沿った読み方まで戻してあります。フランス語準拠の場合はsが濁点つきで発音されるなどの違いがあるかと思います。

Al Shamoos(الشموس)

アッ=シャムース。

شَمُوس [ shamūs ] [ シャムース ] の意味は「暴れ馬、荒れ馬」(落ち着きがなく暴れ回って誰もその背中に乗れないような馬)。ただアラビア語中継を聞くと شُمُوس [ shumūs ] [ シュムース ](太陽の複数形)と読んでいるアナウンサーもいました。意味からしてもアラビア語での本来の発音シャムースではなくシュムースなのでは、と思わないでもないのですが…

アラビア語では sh の音の前に定冠詞アルがつくと音が同化してアル=シャムースではなくアッ=シャムースという発音になります。

Fazza Al Khalediah(فزاع الخالدية)

ファッザーァ・アル=ハーレディーヤ。

فَزَّاع [ fazzā‘ ] [ ファッザーウ(*ファッザーァに近い発音をされることが多いです)] の意味は「(とても)怖がっている(者)」。

fazza の 最後の a は長母音なのでファッザーとまず伸ばします。

語末の喉を引きしぼるアインという子音の「‘」は英字表記で省略されることが一般的で、文語ではファッザーウもしくはファッザーァに近く聞こえるにもかかわらずファッザーとしか読めないような英字表記になっています。本来のアラビア語発音まで戻す場合はファッザーァまでカタカナ表記を復元することになるかと思います。

Rmmas(رمّاس)

ランマース。

2021年出走の Brraq と同じように、語頭がつまって子音 r に本来ついているはずの母音が省略されているケースです。

元のアラビア語文語では رَمَّاس [ rammās ] [ ランマース ] である模様。能動分詞 رَامِس [ rāmis ] [ ラーミス ] の強調形だと思われます。意味は「遺体を埋める(者)」「(跡や知らせを)隠す(者)」「夜行性の(動物)」など。

後半の a は長母音なのでランマスではなくランマースと伸ばすとアラビア語と同じ読み方が復元できます。

Mawahib(مواهب)

マワーヒブ。

アラビア語の مَوَاهِب [ mawāhib ] [ マワーヒブ ] より。「才能」を意味する名詞の複数形です。

真ん中の a が長母音なのでマワヒブではなくマワーヒブと読むと元の発音と同じになります。

AF Maher(إي إف ماهر)

エー・エフ・マーヘル。

マーヘルは文語 مَاهِر [ māhir ] [ マーヒル ] の口語発音 [ maher ] [ マーヘル ] より。意味は「巧みな(者)」。

a は長母音なのでアーの音で伸ばします。er はアラビア語ではアーと伸ばさずにエルと読む部分なので、マハーやマーハーとはせずにマーヘルと復元します。

Chaddad(شدّاد)

シャッダード。

文語 شَدَّاد [ shaddād ] [ シャッダード ] の sh 部分をフランス語圏・フランス語の影響が強い北アフリカ諸国における表記として ch に置き換えて chaddad としたものです。

意味は「とても厳しい・強い(者)」「獅子」。アラブの男性名として昔から使われてきた名前です。

ch はフランス語圏を中心にアラビア語の sh の音を示す時に使うつづりなのでチャダド、チャッダドとはしません。dd 部分は促音なので小さなッを入れます。また後半の a は長母音なので伸ばします。その結果シャダド、シャダード、シャッダドといった候補は消え、シャッダードという文語における元の発音が復元されます。

Barnamaj(برنامج)

バルナーマジュもしくはバルナーマジ。

「プログラム、計画」を意味する بَرْنَامَج [ barnāmaj ] [ バルナーマジュ ] より。

アラビア語を英字表記にした ar はアーではなくアルと読むのではバーナーマジュとは発音しません。真ん中の a は長母音なので伸ばし、バルナマジュではなくバルナーマジュとすれば元の発音通りになります。

Tallaab Al Khalediah(طَلَّاب الخالدية)

タッラーブ・アル=ハーレディーヤ。

文語発音 [ ṭallāb ’al-khālidīya(h) ] [ タッラーブ・アル=ハーリディーヤ ] の口語風発音。実際の実況中継では息継ぎ無しの時の発音となるので [ ṭallābu-l-khālidīya(h) ] [ タッラーブ・ル=ハーリディーヤ ] と読まれます。

طَلَّاب [ ṭallāb ] [ タッラーブ ] はアラビア語で「大いに求める(者)」の意。能動分詞「求める者」の強調語形です。

ll となっている部分は l が2個あるので小さなッを入れて促音化します。さらに後半部分の aa が長母音アーを意味するので伸ばします。その結果タッラーブとなります。なのでアラビア語実況ではタラーブとは読まれません。

Amwaj(أمواج)

アムワージュもしくはアムワージ。

アラビア語の أَمْوَاج [ ’amwāj ] [ アムワージュ ](「波」の複数形)をそのまま英字表記にしたものです。

a 部分は長母音なのでアムワジュではなくアムワージュと伸ばすとアラビア語実況と同じ発音に復元できます。

Ziyadd(زياد)

ズィヤード。

アラビア語の男性名としてよく使われる زِيَاد [ ziyād ] [ ズィヤード ] より。日本語だとジヤードというカタカナ表記で書かれていることが多い人名です。意味は「増大、成長」。

最後に dd となっていますが、元々 d が1個分なのを2個連ねて書いてあるだけのパターンです。方言によってはズィヤッドに近く聞こえる可能性はありますが文語ではズィヤードとなります。

BF Mughader(بي إف مغادر)

ビー・エフ・ムガーデル。

文語の مُغَادِر [ mughādir ] [ ムガーディル ] の口語発音 [ mughāder ] [ ムガーデル ] より。能動分詞で、意味は「去る(者)、出発する(者)」。

er はアーではなくエルと読む部分なのでムガダーとはしません。また a は長母音なのでムガーデルと伸ばします。mu+ghā+derとパーツに分けた上での「ム+ガー+デル=ムガーデル」なのでmug+ha+derと分解した上で英語読みしてしまいマグヘイダー、ムグヘイダー、ムグハデル、ムグハダーなどとしないよう要注意です。

過去のレース実況

各年の実況録画とアラビア語表現リスト

アラビア語で競馬実況を楽しむための用語集は別ページ『アラビア語競馬用語集』にて提供中です。

2021年

Dubai Racing版。以下は動画内で言っているフレーズの紹介です。

  • 「アハラン・ワ・サハラン・ワ・マルハバン・ビクム」ようこそ皆様方を歓迎いたします、ようこそ皆様
  • 「アイユハ・ル=アヒッバー・フィー・クッリ・マカーン」あらゆる場所にいる親愛なる方々よ、各地にいらっしゃる親愛なる皆様
  • 「フィ・ル=ユービーリ・ル=フィッディー・ワ・ッ=ダウラ・ル=ハーミサ・ワ・ル=イシュリーン」シルバー・ジュビリー、第25回目
  • 「ハムス・サナワート・ワ・マー・ファウク」5歳以上
  • 「サ・タクーヌ・バアダ・カリール」(発走が)少ししたら行われるでしょう、間もなく行われます
  • 「ラダイナー・~」(我々は~を持っている、我々のところに~がいる→)~がいます、~が位置しています、~が走っています
  • 「フナーリカ・~」(あそこに)~がいます、~が走っています
  • 「ユハーフィズ・アラー・~」~を保持している、~を保っている、~のままでいる
  • 「ヤンファリド」単独になる、一頭だけ抜け出す、後続に差をつけて一頭だけ先頭を走る
  • 「ビ・ッティジャーヒ・ル=ハッティ・ン=ニハーヤ」ゴールラインに向かって
  • 「フワ・マン・ヤクッス・シャリータ・ル=イフティターフ」彼が開会のテープを切る者(馬)です(/となりました)≒最初のゴールテープを切った馬となりました

YASチャンネル版。実況はオーポーポーポーのアブドゥッラー・アル=マアマリー氏。

以下は動画内で言っているフレーズの紹介です。

  • 「アル=ファラス・ル=ワヒーダ」唯一の牝馬(*斤量が55.0kgだった13番のことを指しているコメント)
  • 「リ・ガーヤティ・ル=アーン」今までのところ
  • 「クドゥーム」到来、やって来ること
  • 「ヤクタリブ」(牡馬が)近づいてくる
  • 「タカッドゥム」先行、先頭に立つこと
  • 「ムハーワラ」試み・試行(順位を上げようとムチを入れたりして何とか前に出ていこうとする様子、馬群から抜け出していこうとする様子など)
  • 「ヤー・サラーム」なんということでしょう、なんてすばらしいのでしょう、これはすごいです

2020年

2020年は新型コロナウイルス流行のため中止。

2019年

実況はオーポーポーポーのアブドゥッラー・アル=マアマリー氏。この2019年から第1レースに変更。

以下は動画内で言っているフレーズの紹介です。

  • 「アラー・マー・ヤブドゥー・リー」私には~に見える、~であるように見受けられます
  • 「ビー・ハーズィヒ・ッ=スーラ」このような形で
  • 「ミン・アジュリ・~」~のために、~を目指して
  • 「ラム・ヤタザッワク・タアマ・ル=ハサーラ」敗北を味わったことが無い、負けを喫したことが無い
  • 「アル=インタージュ・ル=マハッリ・ル=イマーラーティー」UAE地元産、内国産(馬)
  • 「ユハイミン・ユサイティル・フナー」この場を支配している、この場を制している
  • 「インナフ・サリーウフム・ハティールフム」彼こそが彼ら(馬たち)の中で一番早く一番すごい馬だ

2018年

2018年のドバイカハイラクラシック(第2レース)。この年もオーポーポーポーです。

AL KHALEDIAH をアラビア語実況ではカレディアやハーレディーヤではなくハーリディーヤと発音しているのがわかるかと思います。大レースのアラビア語競馬実況は文語(フスハー)なのでこのような形で口語風な馬名の英字表記との間に発音のずれが生じるため、英語サイトの出馬表を見ただけではアラビア語実況で連呼している馬名がいまいち聞き取れない原因になりがちです。

以下は動画内で言っているフレーズの紹介です。

  • 「ビ・ジワーリ・~」~の隣に(馬群で隣り合っている様子を形容)
  • 「ビ・シアーリ・ル=マムラカ・ル=アラビーヤ・ッ=スウーディーヤ」サウジアラビア王国のマークをつけた、サウジアラビア王国の勝負服をまとった
  • 「ビ・イシュラーフ・ッ=タドリーブ」訓練を統括して、調教を担当して、調教師で
  • 「ミナ・ル=ハーリジュ」外から
  • 「クルブ・ミナ・ッ=スィヤージュ」柵の近く、ラチ近く
  • 「タカットゥル」塊、密集した馬群
  • 「イスラール」固執、先頭を譲らずしぶとくねばること
  • 「~・カーディム」~が来ている、~がやって来る

2017年

2017年のドバイカハイラクラシック。実況アナも英語レース名のkahayla(カハイラ)ではなくアラビア語のクハイラ(というよりは、その口語発音のクヘイラ、クヘーラに近い)発音でレース名を読み上げています。

アラブ馬は芦毛が多い馬種なのでどの年のレースも芦毛率が高いようです。

以下は動画内で言っているフレーズの紹介です。アラビア語は語末に格変化があったり口語で定冠詞前後の発音が文語と違ったりしているので、実況で言っている通りの発音でカタカナしてあります。そのため主格になっていないことがあります。

  • 「シュクラン・ザミーリー・~」同僚の~さんありがとうございます
  • 「インティラーカート・サーニ・ル=アシュワート」第2レースの発走(*この年のカハイラクラシックは第2レース目。各馬の発走を指しているためかインティカーラートという複数形を使用。)
  • 「ヌフバトゥ・ル=フユール・ル=アラビーヤ」アラブ馬の精鋭たち、選りすぐりのアラブ馬たち
  • 「アル=フィアティ・ッ=サーニヤ・(ア)ル=ムハッササ・リ・ル=フユーリ・ル=アラビーヤティ・ル=アスィーラ」アラブ馬限定G2(レース)
  • 「フィー・ハーズィ(ヒ)・ル=インティラーカティ・ル=カウィーヤ・ワ・ッ=サダーラティ・ル=カウィーヤ」このような力強い前進とリードで
  • 「ヤタサッダル・リ・ル=ムカッディマ」先頭に立っている、先頭に立とうとしている
  • 「アル=ムラーハカ・ル=カウィーヤ」力強い追い上げ、力強い追走、激しい追い上げ
  • 「アル=アダー・ッ=ラーイァ・ル=ムタマイイズ」素晴らしくそして際立ったパフォーマンス、素晴らしく際立った騎乗
  • 「ユタービウ」後に続く
  • 「バイナマー」一方で

アラビア語実況のオーポーポーポーについて

日本でオーポーポーポーおじさんと知られる実況アナウンサーはアラブ首長国連邦出身の عبد الله المعمري [ アブドゥッラー・アル=マアマリー/(口語発音)アブダッラー・アル=マアムリー ] 氏です。

彼はアラブ首長国連邦出身の売れっ子実況者で地元で開催されるドバイワールドカップの時にはYASというスポーツ専門局で長時間彼の声を聞くことができます。

オーポーポーポーはアラビア語ではなく英語でスポーツ観戦の時の歓声を意味する「Whoop Whoop Whoop!」を取り入れたものらしく、「ワーッ!」「ウォーッ!」といった意味になる模様です。彼のもう一つの定番フレーズ「ナール」は火という意味で、熱い・ホット・素晴らしいといった感じのニュアンスで使われています。

オーポーポーポーはどの競馬実況者も言っている訳ではなく、アブドゥッラー・アル=マアマリー氏のトレードマーク的な感じです。

関連記事
アラビア語競馬実況中継のオーポーポーポーとは?

カハイラクラシックの視聴方法

日本語での放送

日本では毎年グリーンチャンネルがドバイワールドカップデーの複数競走を中継放送していますが、基本的に途中からのライブ開始(日本時間21:00)で第1レースは例年放送さないため、カハイラクラシックを見ることはできません。

そのため視聴したい場合は現地などの全レースを網羅したライブストリーミングに頼る必要があります。

アラビア語・英語での放送~2024年版

アラビア語で競馬実況を楽しむための用語集は別ページ『アラビア語競馬用語集』にて提供中です。

Dubai Racing Club(DRC)

YouTubehttps://www.youtube.com/watch?v=Sg8ertccC2U

アラブ首長国連邦ドバイ首長国の競馬競技団体ドバイレーシングクラブによる英語中継です。「アラビア語だと全然内容がわからないのでせめて英語で。でもちゃんとした公式ストリーミングを利用したい。」という方はこちらがおすすめです。

Dubai Racing Channel 1

公式X(Twitter)ライブストリーミングhttps://twitter.com/i/broadcasts/1ynKOaoXDgkJR
AWAANhttp://awaan.ae/live/25/Dubai-Racing(ログイン要求あり)
Dubai TV放送網https://www.dubaitv.ae/content/dubairacing/ar-ae/live/1.html(空ページ)

ドバイの競馬等専門チャンネルDubai Racing公式サイトで提供されていたChannel 1のライブストリーミング(アラビア語メイン)は無くなりました。

またAwaanサイトは以前と違いログイン登録が必要な方式に変わっています。アカウントを作るよう促すウィンドウをXで閉じでもストリーミングは始まらない模様。

そのためDubai Racing Channel 1の公式生中継はX(Twitter)を利用されるのが良いと思います。

Dubai Racing Channel 2

AWAANhttp://awaan.ae/live/12/Dubai-Racing-2(ログイン要求あり)
Dubai TV放送網https://www.dubaitv.ae/content/dubairacing/ar-ae/live/2.html(空ページ)

ドバイの競馬等専門チャンネルDubai Racing公式サイトで提供されていたChannel 2のライブストリーミング(英語メイン)は無くなりました。

またAwaanサイトは以前と違いログイン登録が必要な方式に変わっています。アカウントを作るよう促すウィンドウをXで閉じでもストリーミングは始まらない模様。

Dubai Racing Channel 3

AWAANhttp://awaan.ae/live/46/Dubai-Racing-3(ログイン要求あり)

Dubai Racing公式サイトでは以前からChannel 3のライブストリーミングが用意されておらず、Awaanというサイトで提供されていました。Awaanサイトは以前と違いログイン登録が必要な方式に変わっています。アカウントを作るよう促すウィンドウをXで閉じでもストリーミングは始まらない模様。

Dubai Sports TV

公式X(Twitter)ライブストリーミングhttps://twitter.com/i/broadcasts/1eaKbgYvzXZGX

ドバイのスポーツチャンネルによるアラビア語実況中継です。

YAS TV

公式サイトでのライブ放送https://adtv.ae/en/live/YAS%20Sports%20Channel?autoplay=true
YouTubehttps://www.youtube.com/watch?v=8pDsjEezdxs

YASはUAEを統治している一族であるバニー・ヤース(ヤース族)の名称から取られたチャンネルでラクダレース中継も見られます。ドバイワールドカップについてはアラビア語中継。公式サイトはログイン登録等は不要です。

2024年も含め日本ではオーポーポーポーおじさんとして知られる有名実況アナが全レース担当。

日本の競馬で走っていたアラブ(アングロアラブ)と純血アラブ馬との違いについて

純血アラブと日本の競馬にいたアラブ系との違い

ドバイカハイラクラシックに関して「日本の競馬でわずかに残っているアラブも出走できるんだろうか?」という話題が時々出るようなのですが、残念ながら不可となります。

日本の競馬で走ってきたアラブ系はサラブレッドとの混血であるアングロアラブであるため、純血アラブのみに限定したカハイラクラシックへの参加資格がありません。

まとめ

  • カハイラクラシックなどで走っているアラブ馬
    ▶ 純血アラブ種
    *アングロアラブのような混血よりも体が小さく、140cm台前半が平均サイズ。スペイン産乗用馬などと混成の騎馬隊映像を見ると明らかに小柄で体格がかなり違います。
  • 日本の競馬にあったアラブの競走
    ▶ アラブ系(=アングロアラブ)

IFAHR(国際アラブ競馬連盟)と純血アラブ限定競馬

各国の純血アラブ馬競走馬を統括する組織

純血アラブ馬の参加する競馬はIFAHR(国際アラブ競馬連盟)という機関が管轄しており、世界アラブ馬機構(World Arabian Horse Organization、略称WAHO)のスタッドブック(血統登録台帳)照会による出走馬の確認を伴うとのこと。

このシステムが純血アラブ馬の各国遠征を可能にしている形となっています。

純血アラブ馬限定競走の規定

RULE 3: UNACCEPTABLE STUD BOOKS
The following types of stud books will not be acceptable:
a) Private stud books;
b) Stud Books containing horses from sources not acceptable to WAHO;
c) Stud Books within an area of jurisdiction already covered by a WAHO approved stud book without the
express permission of the existing voting Registering Authority Member of WAHO in that area of
jurisdiction; [See also WAHO Constitution Clauses 4 (a), 5 and 8];
d) Stud Books or Registers of Arabian Derivative breeds (Anglo-Arab and Part-Bred Arab).

WAHO発行『REQUIREMENTS FOR ESTABLISHING AND KEEPING A STUD BOOK』より抜粋した、血統登録が拒否されるケースです。項目 d) のところにアングロアラブやパートブレッドアラブのようなアラブ系の馬は不可と書かれています。

このようなWAHOの規定により日本の競馬界でかつて走っていたアラブ系(アングロアラブ)はこのチェックを通過することができず、出走登録自体が認められないこととなります。

純血アラブ馬の登録とマイクロチップによる管理

アラブ馬が生まれてWAHOに登録されるまで

アラブ馬は血統登録を行う国際機関の世界アラブ馬機構(World Arabian Horse Organization、略称WAHO)に届け出をすることでその血統が正しいことを保証してもらえます。

サウジアラビアのアラブ馬事情を紹介しているビデオです。途中手術シーン(07:09頃~)と出産シーン(18:34頃~)が出てきますので苦手な方はご注意ください。

  • 14:25
    国際機関WAHO登録馬の各国別頭数。モンゴルは人より馬が多いといった話も。
  • 15:30
    アラブ馬に埋め込んだマイクロチップ読み取り作業。白い板上の機械をかざすと国際機関WAHOのデータベースにあるID番号が表示。
  • 15:55
    純血アラブ馬の出生登録とパスポート(passport for Arabian horse)作成。他国に渡航させる際にも必要。
  • 17:00
    アラブ馬パスポート1ページ目に飼い主の男性が登録した愛馬の名と登録番号が記載。後のページに父母の名前や系統図。(*この動画にも出てきますがWHといったアラブ馬の馬名についているイニシャルのような物は血統識別用の文字だとか。)

シリアのアラブ馬生産紹介動画です。仔馬のたてがみをDNAサンプルとして提出することが紹介されています。アラビア語で書かれた血統表も出てきます。

アラブ世界では血統的に超純血の一流仔馬であるにもかかわらず内戦のためWAHOに登録できずアラブ馬として扱ってもらえないケース大量発生するなど、その扱いは厳格です。上の動画で出てきたシリアやイラクなどがその典型例です。

シリアでは内戦で荒れに荒れたアレッポ、イドリブ近辺が一大馬産地のためアラブ馬生産も大打撃を受けたといいます。(内戦に乗じた富裕国への流出、ロケット弾を受けて牧場が壊滅、盗難により超良血の名馬が荷車ひきの駄馬にされ行方不明になる、餌不足での餓死、予防接種を受けられず病死等。)

純粋なアラブ種を所有することの栄誉と誇り

アラブ人はヨーロッパ各地にいる「◯◯アラブ」という風に「アラブ」の名前を冠した他の馬種とは違い、アラブ人が自分たちの領域外に出さずに維持してきたアラブ馬だけが一切混じり気の無い純粋なアラブ馬であることを誇りにしています。(欧州の「◯◯アラブ」は純血アラブの種牡馬に現地馬種の牝馬をかけあわせた過去があるため、アラブ人からは混血があったと見なされることもある模様です。)

アラブ世界において、他の馬種と交配してしまうと「親が純血アラブ」とは表現されますが「純血アラブ馬」とはもう呼ばれなくなります。

アラブ諸国ではアラブ馬の飼育生産が今も盛んでビジネス目的での業務拡大はむしろ増えています。純血アラブ業界が盤石で次から次へとレース馬も誕生しており、純血アラブ馬限定G1レースのドバイカハイラクラシックはそうした馬産家が目標にすることで業界振興に結びつけるレースの一つになっています。

そのためカハイラクラシックでルールの改正が行われ日本のアラブ系混血のアングロアラブが出走できるようになる見込みは全く無く、ゼロだと言えます。

レース向けアラブ馬と品評会向けアラブ馬の違い、レース用アラブ馬と距離適性

ちなみに「アラブ馬」「アラブ種」「アラビア馬」といっても美貌が多く華奢な顔のコンテスト・品評会向けの血統や競馬に向いている血統などに分かれており、日本国内にいる純血アラブが必ずしもそれがカハイラクラシックに適性があるとは言えないのが難しいところです。

アラブ世界の競走用アラブ馬もサラブレッド同様に距離適性があり、短距離レース向け、長距離エンデュランス向けと様々です。

サウジアラビアのホースマン أَحْمَدُ الْحُقَيْلُ [ ’aḥmad ’al-ḥuqayl/ḥuqail  ] [ アフマド・アル=フカイル ] 氏によるアラブ馬同士の違い解説動画です。

手前の尾が長い方はナジュド系(サウジアラビア中央~東部の遊牧民が昔から多かった地域)、奥の尾が短い方はシリア系(メソポタミア地域の北端に広がる草地でサラブレッド祖先の種牡馬を輩出)系。

アラブ馬は産地や距離適性によって脚まわり・体格・体のバランス等各所で差異が見られるとか。

シリア系は一般に競馬でのスピード重視で外見的な美麗さより速度重視の血統。ビューティーコンテスト、品評会うけが良い見た目はしておらずとにかく競馬でいかに走るかを優先させたタイプだといいます。

一方サウジアラビア産のナジュド系は長距離に耐えられ100km超えのエンデュランス競走が得意。しかし現在のアラビア半島ではビューティーコンテスト(品評会)向けの純血アラブ馬がメジャーになっており、(*戦闘や長距離移動といった用途において)古のアラブが欠点だとみなしていた性質が逆に美点とされるなど純血アラブ馬の評価基準も時代の経過とともに変化しているとのことです。

アラブ馬業界の競争と手厚い飼育体制

アラブ世界では馬は我が子か親兄弟のように扱うホースマンが多く、競走に出す馬は血統管理に加え普通の馬とは違う豪華な餌をもらい、経済危機や内戦にもかかわらず所有者たちは何とか良い飼料をやろうと必死に奔走するほど大切にしています。

長距離走に出る馬は毎日数十kmのトレーニングを積んで鍛えられているなど純血アラブの競馬業界は日本よりも層が厚く人々の関心も強いです。

ドバイやサウジアラビアのような大型競馬場での世界的レースから地元馬や部族所有馬が集結する草競馬レベルまで様々な規模の競走が行われています。

サラブレッド育成に関しては日本はアラブ世界でも高く評価されており、血統研究と熱心なトレーニングプログラムを作成し良馬を次々に送り出していることが現地の競馬チャンネルでもしばしば称賛されています。ただ純血アラブ馬の生産はニーズが無いため馬種がサラブレッドに集中しており、純血アラブ競走とは縁遠い国になっているだけかと思います。

ドバイカハイラクラシックを通じ、日本におけるアラブ馬導入への熱意や生産状況が時代とともに変わっていったことを改めて思い出す管理人でした…

 

(2023/3/25 2023年出走馬名追加&ライブ放送URL修正)