アラビア語の祈願文
アラブ世界では様々な祈願文「~しますように」「~でありますように」が用いられます。
そのような祈りを示す文章では、たとえばアッラー(神)が主語だった場合に完了形動詞を含む文は「アッラーが~なさいました」ではなく「アッラーが~なさいますように」、未完了形動詞を含む文は「アッラーが~なさいます」ではなく「アッラーが~なさいますように」という意味で解釈する必要があります。
アッラーの名前に続ける表現
アラブ世界に限らずイスラーム教徒は預言者や教友(サハーバ)などの尊敬・崇敬すべき人物の名前を呼び捨てにはせず、祈願文のたぐいを添えるのが一般的です。本やテレビ・ラジオで頻繁に登場するので覚えておくと良いかもしれません。
イスラームの専門家ではないので日本語訳については不十分なところも多いかと思います。なにとぞご了承ください。
至高なるアッラー
اَللهُ تَعَالَى
語末まで全部読んだ場合
’allāhu ta‘ālā
アッラーフ・タアーラー
語末の母音を省略した通常の読み方
’allāhu ta‘ālā
アッラーフ・タアーラー
- الله [ ’allāhu ] [ アッラーフ ]
【名詞】アッラーは(主格) - تَعَالَى [ ta‘ālā ] [ タアーラー ]
【動詞派生形第6形完了形】至高である
(最も)強大かつ崇高なるアッラー
اَللهُ عَزَّ وَجَلَّ
語末まで全部読んだ場合
’allāhu ‘azza wa jalla
アッラーフ・アッザ・ワ・ジャッラ
語末の母音を省略した通常の読み方
’allāhu ‘azza wa jall
アッラーフ・アッザ・ワ・ジャッル
英語での略
azwj
- عَزَّ [ ‘azza ] [ アッザ ]
【動詞完了形】強大である、力強い、偉大である、威力がある
→ 関連語:99の美名「اَلْعَزِيز」[ ’al-‘azīz ] [ アル=アズィーズ ] - جَلَّ [ jalla ] [ ジャッラ ]
【動詞完了形】崇高である、威力がある、偉大である、威厳がある
→ 関連語:99の美名「اَلْجَلِيل」[ ’al-jalīl ] [ アル=ジャリール ]
アッラー 彼に讃えあれ
اَللهُ سُبْحَانَهُ
語末まで完全に読んだ場合
’allāhu subḥānahu
アッラーフ・スブハーナフ
語末の母音を省略した通常の読み方
’allāhu subḥānah
アッラーフ・スブハーナフ
- سُبْحَانَ [ subḥāna ] [ スブハーナ ]
【動詞 سَبَحَ (a) [ sabaḥa ] [ サバハ ]=(神を)讃える の動名詞より。至高なる唯一無二・完全無欠の神を崇め讃える場合のみに使われる特殊な用法。省略された動詞の後に続く動名詞という解釈をされているため語末は対格となる。後に属格の اَللهِ [ ’allāhi ] もしくはアッラーを指す人称代名詞接続形 ـهُ [ -hu ] [ -フ ] を伴う。】
(アッラーに)讃えあれ - ـهُ [ -hu ] [ -フ ]
【先に来る名詞 اَللهُ [ ’allāhu ] [ アッラーフ ] を指す接続形の人称代名詞。】
彼の
関連表現「アッラーに讃えあれ」
سُبْحَانَ اللهِ
語末まで全部読んだ場合
subḥāna-llāhi
スブハーナ・ッラーヒ
語末の母音を省略した通常の読み方
subḥāna-llāh
スブハーナ・ッラーフ → スブハーナッラー
至高なるアッラー 彼に讃えあれ
اَللهُ سُبْحَانَهُ وَتَعَالَى
語末まで完全に読んだ場合
’allāhu subḥānahu wa ta‘ālā
アッラーフ・スブハーナフ・ワ・タアーラー
語末の母音を省略した通常の読み方
’allāhu subḥānahu wa ta‘ālā
アッラーフ・スブハーナフ・ワ・タアーラー
英語での略
swt
上で紹介した表現を組み合わせたものになります。
預言者ムハンマドの名前に続ける表現
اَلرَّسُول [ ’ar-rasūl ] [ アッ=ラスール ] 使徒
اَلنَّبِيّ [ ’an-nabī(y) ] [ アン=ナビー(ユ) ] 預言者
سَيِّدُنَا [ sayyidu-nā ] [ サイイドゥナー ] 我らが長
مُحَمَّد [ muḥammad ] [ ムハンマド ] ムハンマド
といった預言者ムハンマドを示す際に用いられる各種表現、もしくはそれらの組み合わせの後に続けます。
前置詞「~の上に」 عَلَى [ ‘alā ] [ アラー ] には「彼の~」を示す人称代名詞がつきますが、それに続いて預言者ムハンマドの一族や教友(サハーバ)たちについてもあわせて祝福と平安を祈願する長いバージョンも存在します。
- 「~の上に」 عَلَى [ ‘alā ] [ アラー ] +
- آلِهِ [ ’āli-hi ] [ アーリ-ヒ ] 彼の家族の、彼の一族の
- صَحْبِهِ [ ṣaḥbi-hi ] [ サフビヒ ] 彼の仲間たちの、彼の教友たちの
アッラーが彼に祝福と平安を与えられますように
صَلَّى اللهُ عَلَيْهِ وَسَلَّمَ
語末まで完全に読んだ場合
ṣallā-llāhu ‘alayhi(/‘alaihi) wa sallama
サッラ・ッラーフ・アライヒ・ワ・サッラマ
語末の母音を省略した通常の読み方
ṣallā-llāhu ‘alayhi(/‘alaihi) wa sallam
サッラ・ッラーフ・アライヒ・ワ・サッラム
英語での略
saw
- صَلَّى [ ṣallā ] [ サッラー ]
【動詞派生形第2形 完了形】祈る;(アッラーが)祝福する、祝福を与える - سَلَّمَ [ sallama ] [ サッラマ ]
【動詞派生形第2形 完了形】認める;挨拶する;渡す、引き渡す;(アッラーが)保護する、守る、平安を与える
彼の上に祝福と平安がありますように
動詞を使った上の祈願文の動詞部分を名詞に置き換えたパターンです。
عَلَيْهِ الصَّلَاةُ وَالسَّلَامُ
語末まで完全に読んだ場合
‘alayhi(/‘alaihi)-ṣ-ṣalātu wa-s-salāmu
アライヒ・ッ=サラートゥ・ワッ=サラーム
語末の母音を省略した通常の読み方
‘alayhi(/‘alaihi)-ṣ-ṣalātu wa-s-salām
アライヒ・ッ=サラートゥ・ワッ=サラーム
英語での略
asws
-
- صَلَاة [ ṣalāt ] [ サラート ]
【名詞】礼拝;(神の)祝福 - سَلَام [ salām ] [ サラーム ]
平和、平安;無事;挨拶
- صَلَاة [ ṣalāt ] [ サラート ]
預言者・使徒・天使
彼の上に平安がありますように
عَلَيْهِ السَّلَامُ
語末まで完全に読んだ場合
‘alayhi(/‘alaihi)-s-salāmu
アライヒ・ッ=サラーム
語末の母音を省略した通常の読み方
‘alayhi(/‘alaihi)-s-salām
アライヒ・ッ=サラーム
英語での略
as
- عليه [ ‘alayhi(/‘alaihi) ] [ アライヒ ]
【前置詞 عَلَى [ ‘alā ] [ アラー ] に属格の人称代名詞接続形 ـهُ [ -hu ] [ -フ ] がくっついた上で音が変化したもの。】
彼の上に - سَلَام [ salām ] [ サラーム ]
平安、平和、安寧
預言者ムハンマドの教友(サハーバ)
彼にアッラーのご満悦がありますように
رَضِيَ اللهُ عَنْهُ
語末まで完全に読んだ場合
raḍiya-llāhu ‘an-hu
ラディヤ・ッラーフ・アンフ
語末の母音を省略した通常の読み方
raḍiya-llāhu ‘an-h
ラディヤ・ッラーフ・アンフ
英語での略
ra
- رَضِيَ عَنْ [ raḍiya ‘an ] [ ラディヤ アン ]
【前置詞 عَنْ [ ‘an ] [ アン ] に接続する人称代名詞は教友の性別・数に応じて変更する。】
彼は~に満足する
教友(サハーバ)・宗教関連の偉人・故人
アッラーが彼にご慈悲を与えて下さいますように
رَحِمَهُ اللهُ
語末まで完全に読んだ場合
raḥimahu-llāhu
ラヒマフ・ッラーフ
語末の母音を省略した通常の読み方
raḥimahu-llāh
ラヒマフ・ッラーフ → ラヒマフッラー
- رَحِمَهُ [ raḥima-hu ] [ ラヒマ-フ ]
【完了形動詞 رَحِمَ [ raḥima ] [ ラヒマ ] に対格の人称代名詞接続形がついたもの。- رَحِمَ [ raḥima ] [ ラヒマ ]
【完了形動詞】哀れむ、(神が)ご慈悲を与える
- رَحِمَ [ raḥima ] [ ラヒマ ]