Windows 10でアラビア語 (1)入力言語の追加、キーボード配列の選択

Windows 10でアラビア語入力機能を追加する

2019年1月時点でのWindows 10 Proにおける設定例です。Windows 10は大型アップデートのたびにメニュー画面の表示項目や設定への入り方が少しずつ変更になっていきますので、相違があった場合はパソコン販売会社などのヘルプページにて最新情報をあわせてご確認ください。

言語の追加

アラビア語キーボード追加設定の場所


歯車みたいなマークを押して「Windowsの設定」画面を呼び出し、そこから「時刻と言語」メニューに移動します。


「地域と言語」設定画面に移動し、「言語を追加する」を押します。


色々な国のアラビア語キーボードが出てきました。

Microsoft IME(MS-IME)には文語アラビア語(正則アラビア語、フスハー)である現代標準アラビア語(MSA)のキーボード選択肢は無く、各国のキーボードがフスハーによる入力に対応しており、「通貨単位が何か」や「数字がインド数字とアラビア数字のどちらが主流か」といった国ごとの細かい差を反映したものが「アラビア語(サウジアラビア)」や「アラビア語(アルジェリア)」といった個々の選択肢として提供されている形なのだとか。

アラビア語学習者でどこかの方言を学んでいるということでなければ、ひとまずここではサウジアラビア(السعودية)などをお好みに応じて適当に選べば大丈夫です。

また、アラブ世界の特定国に居住していて数字や通貨を現地に合わせなければいけない場合は、居住地の国名を選択します。

国ごとに何種類も用意されているアラビア語キーボードの中からどれを選べば良い?

フスハーの文章を入力するだけなら特に大きな違いは無し

Microsoft IME(MS-IME)でアラビア語キーボードに色々な種類があるのは校正・スペルチェックの地域対応のためだとか。そのため合成音声や音声認識といった機能を使わず、アラビア文字での入力をちょっとする程度なら違いを実感する機会はありません。

アラビア語の書字規則(つづりのルール、正字法、正書法)は文語アラビア語(正則アラビア語、フスハー)の文法事項として事細かに決められておりアラブ諸国共通です。なので「アラビア語は国ごとに方言が違うから、フスハーに近い方言が使われている国がどこなのかを調べてキーボードを入れないといけない」ということではないです。

エジプトで一部のルールが違うだけで、基本的にはアラブ全土で文字表記ルールは同じであるため「アラビア語(サウジアラビア)」と「アラビア語(イラク)」などとの間に文字入力上の違いは特にありません。

なので定期的に「アラビア語(サウジアラビア)」と「アラビア語(イラク)」とを切り替えても、色々な機能を使わずただアラビア文字を打つだけなら違和感も無く全く同じように感じるだけなので、「最善の国名はどれか?」で悩まずにとりあえず設定してしまってもトラブルになることは無いです。

フランス語系AZERTY配列キーボードの誤設定を回避したい場合は東側地域に

ただ、北アフリカの地中海沿岸に並ぶマグリブ諸国(マグレブ諸国)はフランス語の影響が強いため英語キーボードや日本のひらがな/ローマ字併記キーボートの配列QWERTYとは異なるAZERTYの102キーボードというものが提供されています。

普段フランス語を使わない人は普段使っている英文入力機能やスマホなどでの入力同様、全部QWERTYで揃えた方が良いので、気が付かないうちに102 AZERTYキーボードを選択・設定してしまうリスクを回避したいということであればいわゆるマシュリク地域と呼ばれるエジプトよりも東の地域のキーボードを選ぶのが無難かもしれません。

音声機能が備わっているサウジアラビア方言とエジプト方言

色々あるアラビア語のうちサウジアラビアとエジプトだけ合成音声や音声認識の機能がありますが、これはITの世界でサウジアラビア方言とエジプト方言への対応が優先的に進められ音声認識機能や校正機能が他の国々の方言よりもいち早く導入された関係かと思います。

もし「どの国のキーボードにするか特定の一つを挙げてほしい」ということであれば、管理人的にはサウジアラビアをおすすめします。というのも、エジプト方言は

  • 文語アラビア語(正則アラビア語、フスハー)の正書法(正字法)が公式に他国と異なっており、語末の ـي を古形の ـى としている。
  • 、ハムザ(ء)の台座の選び方に関して、同じ文字の連続回避という観点から他国とは違うルールをアラビア語アカデミーが公的に許容している。アラブ諸国の他地域が مسؤول とつづっている一方、エジプトでは مسئول がOKだとされている。
  • エジプトではフスハーや他の地域の方言とアクセント位置が一部異なり、特定の語形においてアクセントの場所が後方にずれる。

といった具合に、エジプトだけ他と違う表記ルール等を採用しているためです。

ただ、サウジアラビア方言とエジプト方言を学習している方、合成音声でのナレーター機能等が必要な方以外は特に関係が無いので、これら2種の口語アラビア語(アーンミーヤ)方言がらみの作業をWindowsで色々やりたいとかではない、サウジアラビア以外の国を選びたい、ということであれば適当に国名を選んでしまっても構わないと思います。

Windowsの表示画面までアラビア語化しないように注意


「インストール」を押すとキーボード配列が追加されます。この時「自分のWindowsの表示言語として設定する」にチェックを入れてしまうと、追加作業が完了して次にログインした時にWindowsが丸ごとアラビア語化されてしまうので要注意です。

誤ってWindows自体をアラビア語化してしまった例


Windowsの表示自体をアラビア語に設定してしまうと「次回のサインイン以降に表示言語となります」というメッセージが出てしまいます。もしこのような表示が出たら、下のキーボード一覧で変更・削除するなどして回避した方が良いです。


アラビア語化され、ウィンドウを閉じる☓マークも左右逆の位置に移動し、設定画面が全部アラビア語での表示になってしまいました。アラビア語を十分に読めない時点でこれをやってしまうと、日本語に戻すのが大変です。

そうなった場合は、日本語版とアラビア語版では左右が反転するので、Windowsのマニュアルや左右が全部逆になった画面のアイコンを見ながら「上から◯番目、右から△番目の設定項目を開く」といった感じで画面を移動。Windows表示言語の設定部分で改めて日本語を選択し直す必要があります。

またスマホやタブレットがある場合は、Google翻訳のカメラ機能でパソコン画面を写してカメラをかざしたまま日本語表示に見えるようにしてけばマニュアルを持っていなくても/ウェブ検索で探し出さなくてもWindows表示言語設定まで到達しやすくなるので比較的楽に直せるかと思います。

入力言語の設定を確認してみる

アラビア語キーボードの細かい設定事項


設定済のアラビア語キーボードに関して各種機能を確認することもできます。「厳格な末尾の yaa」、「厳格な先頭の alef hamza」、「厳格な taa marboota」というのはWordなどで校正する時の機能のことを指しています。

Windows側に勝手な校正をされたくない場合は全てOFFにします。

厳格な末尾の yaa、厳格な先頭の alef hamza、厳格な taa marbootaのオン/オフについて

フスハーとアーンミーヤを両方やっている場合、これらの機能は邪魔になってきます。各国方言のアラビア語表記はアラビア語アカデミーが定めたものではなく、フスハーの正書法(正字法)を元にしつつも各国の記事・ネット投稿などを通じて共有されることで自然と統一された暗黙の了解的な合意事項で、文語の書字ルールからわざとはずれた書き方が一般化しています。

  • エジプトの場合は文語文法の一環として語末ヤー(ـي)は古形の点無し ـى を使っているので、アラブ世界全般に共通の点ありヤーとエジプト式の点無しヤーを併用する場合は「厳格な末尾の yaa」がOFFの方が良い。
  • アーンミーヤのアラビア文字表記だとわざと語頭のハムザを全部取って أدرسادرس などとつづるので、口語アラビア語の文章をよく書く場合、أدرس に直してしまう「厳格な先頭の alef hamza」はOFFの方が良い。
  • ター・マルブータ(ة)はアーンミーヤのアラビア文字表記だと ه にしてしまう人が多いこと、またアラブ詩などではフスハーであっても語末の ة を休止形の ه で表記する場合があることから、色々なタイプのアラビア語文を入力する場合は「厳格な taa marboota」がOFFの方が良い。

といった具合に、OFFの方がいいこともあるので、ご自分がどんなアラビア語を扱うのかに合わせてON/OFFの切り替えをするのがベターだと思います。

アラビア語キーボード配列の種類

「101キーボードの方が良い」的なルールは特に無いようです

例えば「アラビア語(サウジアラビア)」で設定した場合、規定のキーボード配列として「アラビア語(101)」が選択されていると思います。101配列は現地でも広く使われているレイアウトなので、自分が持っているパソコンのキーボードの形状と合うようであれば102を選択する必要は基本的にありません。

現地のウェブサイトを調べてみると、現地では101と102どちらを使うかは地域や個人によってまちまちのようでした。最近はノートパソコンを買ったりした人が102キーボードだと記号が出てしまって「ذ」がちゃんと出て来ず、102配列をやめて101配列に設定し直す事例も少なくないようです。

「アラビア語(101)」=101


英語圏や日本で売られているキーボード同様、左上からの英字の並びがQWERTYになっているものです。

101キーは「ذ」が左上の角、英数字の「1」の左に配置されています。日本のキーボードだと「半角/全角」キーに「ذ」が来ることになりますが、ノートパソコンによっては半角キーが他よりも小さいため「ذ」を打ちづらく感じるかもしれません。


Shiftを押していない時のスクリーンキーボード画面


Shiftを押した時のスクリーンキーボード画面

注意~アラビア語(101)と日本語キーボードとのレイアウト差

実際に確認したところ、スクリーンキーボードでは( [ )と( ] )、( { )と( } )、( < )と( > )の向きが逆に出るようでした。アラビア語キーボードに印字されているのは基本英語キーボードの記号ということで、文字方向が逆のアラビア語ではキーの印字通りに打つと括弧が逆になってしまうのかもしれません。

また日本語のキーボードとスクリーンキーボードとして出てくるUSキーボードベースのアラビア語キーボードという違いから

  • Enterキーの大きさと形状が違っており、日本語キーボードでは大きな逆L字型、USキーボードでは長細い。日本語キーボードでは( ط )の右横にさらにもう1個( む )の書かれたキーが余分にあって( \ )[ バックスラッシュ、ただし日本語OSでは文字化けして¥マークが出てしまう確率が高い ]と、Shift押しで( | )が入力される。
  • BackSpaceキーが日本語キーボードの方が短く、USキーボードの方が長い。そのため差である1個分の幅に( ¥ )キーがはまっており、そこはアラビア語にすると何も入力されない。
  • 右下、日本語の( ろ )キーのところは押しても何も入力されない。

「アラビア語(102)」=102


英語圏や日本で売られているキーボードのように、左上からの英字の並びがQWERTYになっているものです。

102キーは「ذ」が右側「Enter」キーの左横、記号「 ] 」=ひらがな「む」のキーに配置されているという点で異なります。日本のキーボードだと「半角/全角」キーに「ذ」が来ることになりますが、ノートパソコンによっては半角キーが他よりも小さいこともあると思います。その場合は大きなキーにで「ذ」が入力できる「アラビア語(102)」を選んでも良いかもしれません。

あとは母音「i」を示す記号のカスラ等が101と違う場所になるようです。大きなインチ数のiPadアラビア語キーボードのPC配列などは101キー配列なので、色々な端末でアラビア語を入力したい方は多少の不便があっても101キー配列を選ぶことをおすすめします。


Shiftを押していない時のスクリーンキーボード画面


Shiftを押した時のスクリーンキーボード画面

注意~アラビア語(102)と日本語キーボードとのレイアウト差


実際に確認したところ、スクリーンキーボードでは( [ )と( ] )、( { )と( } )、( < )と( > )の向きが逆に出るようでした。アラビア語キーボードに印字されているのは基本英語キーボードの記号ということで、文字方向が逆のアラビア語ではキーの印字通りに打つと括弧が逆になってしまうのかもしれません。

日本語のキーボードとスクリーンキーボードとして出てくるのアラビア語(102)キーボードの違いとしては

  • 日本語キーボード右上にある( ¥ )キーは無いので、日本語キーボードを打っても何も入力されない。
  • 日本語キーボードの左側シフトキーはもっと長いので、アラビア語の( ـ )と( | )に相当するキーが存在しない。探したものの代替となる位置はわからず。もしかしたら存在しない可能性も。
  • 右下、日本語の( ろ )キーのところは押しても何も入力されない。

「アラビア語(102)AZERTY」=102A

フランス語圏で売られているキーボードのように、左上からの英字の並びがAZERTYになっているものです。モロッコ近辺の北アフリカ・マグリブはフランス語を併用する地域のため、こちらのキーボード配列が使用されている模様です。


Shiftを押していない時のスクリーンキーボード画面


Shiftを押した時のスクリーンキーボード画面

アラブ世界東側(マシュリク)地域のQWERTYキーボードと違い、数字はShiftキーを押してから入力する必要があります。フランス語の文字を入れてあるため、通常のアラビア語(102)で入力できる英語の記号が消えている模様です。

アットマークキーが無いのがフランス語キーボードの特徴の一つだとか。キーを一押しするだけで「@」を打てる訳ではないとのことなので、日本の一般学習者の方はこちらのキーボードを使用すると不便を感じるのではないでしょうか…

注意~アラビア語(102)AZERTYと日本語キーボードとのレイアウト差


違いは上の図の通りです。

キーボード配列の変更・選択方法

キーボード配列の追加


歯車マークを押してWindows設定画面を出します。「時刻と言語」→「地域と言語」で、既に追加したアラビア語のところにある「オプション」を押します。


追加可能なアラビア語向けのキーボード配列が表示されました。101キーボードをやめて102に変更したり、102を追加して両方使えるようにしたり、好みに応じて設定を行います。


入力言語の切り替え場面です。アラビア語キーボードの配列を1種類しか選んでいない時は単に「ع」(アイン)1文字だけのマークですが、複数追加したところ文字の下に101、102、102Aと出ました。

キーボード配列の削除


一度追加したキーボード配列を使わなくなって削除したい場合は、入力言語「アラビア語(国名)」の「オプション」設定メニューにて「削除」ボタンを押します。

参考ページ

Windowsに外国語キーボードを設定する方法

Windowsそのものをアラビア語化してしまう方法

  • 『Windows10 – 言語の追加と変更(英語)』
    同じ手順でアラビア語を選ぶと、アイコンの並びやウィンドウのボタン位置が左右逆転し、メニューの言語も全てアラビア語にすることができます。アラブ圏でWindows 10を買ってこなくても、お手軽に自分のWindowsをアラビア語化することができます。

アラビア語キーボードの種類と違い

(2024年5月 国別キーボードの違い、細かい設定の意味、アラビア語化時のカメラ翻訳利用)