アラビア語の数字(インド数字)について

アラビア語の数字は「インド数字」

アラビア語の数字はこんな形

こちらがいわゆる東方アラブ世界で整備され現代でも使われている「インド数字」の形です。1や9は似ていますが、それ以外は世界各地で使われている「アラビア数字」とだいぶ違っています。

4 3 2 1 0
٤ ٣ ٢ ١ ٠ 
9 8 7 6 5
٩ ٨ ٧ ٦ ٥

書き順解説は別ページにあります

インド数字とは?

昔はアラビア文字で数を表現していた(字母数値)

アラビア語アルファベットの書き方と読み方のしくみ』でも紹介していますが、元々アラビア語には固有の数字が無くアルファベットで表現していました。この古い数値表現のシステムは「字母数値」と呼ばれていました。

字母数値を使っていた時代、昔のアブジャド配列というアルファベットの順番に従って1、2、3…と数が割り当てられており他のアラビア文字列と同じように「左←右」方向につづっていました。

その後インド方面から算用数字が取り入れられ、数字部分だけ「左→右」方向で読み上げるシステムが始まりました。

インド数字とアラビア数字のアラビア語名称

現在アラビア語で使われている数字はインドから輸入されたもので、اَلْأَرْقَام الْهِنْدِيَّة [ ’al-’arqāmu-l-hindīya(h) ] [ アル=アルカーム・ル=ヒンディーヤ ] (インド数字)と呼ばれています。

欧米や日本などで広く使われている算用数字は اَلْأَرْقَام الْعَرَبِيَّة [ ’al-’arqāmu-l-‘arabīya(h) ] [ アル=アルカーム・ル=アラビーヤ ](アラビア数字)と呼んで区別していますが、直訳すると「アラビアの数字」「アラビア語の数字」となるのでアラビア語文の中で使う数字であるインド数字を指して「アル=アルカーム・ル=アラビーヤ」と言っているケースもしばしばあります。

アラビア語文で使う数字という意味で اَلْأَرْقَام الْعَرَبِيَّة [ ’al-’arqāmu-l-‘arabīya(h) ] [ アル=アルカーム・ル=アラビーヤ ](アラビア語の数字)と言っている場合は、算用アラビア数字の方が اَلْأَرْقَام الْإِنْجِلِيزِيَّة [ ’al-’arqāmu-l-’injilīzīya(h)/’ingilīzīya(h) ] [ アル=アルカーム・ル=インジリーズィーヤ/インギリーズィーヤ ](英語の数字)と呼ばれなどしています。

ややかしこまった表現

  • اَلْأَرْقَام الْهِنْدِيَّة
    [ ’al-’arqāmu-l-hindīya(h) ] [ アル=アルカーム・ル=ヒンディーヤ ]
    インド数字(アラビア語の数字)
  • اَلْأَرْقَام الْعَرَبِيَّة
    [ ’al-’arqāmu-l-‘arabīya(h) ] [ アル=アルカーム・ル=アラビーヤ ]
    アラビア数字(英語などの算用数字)

子供向け教材や日常で使われている表現

  • اَلْأَرْقَام الْعَرَبِيَّة
    [ ’al-’arqāmu-l-‘arabīya(h) ] [ アル=アルカーム・ル=アラビーヤ ]
    アラビア語の数字(いわゆるインド数字のこと)
    *上のケースと違って海外のアラビア数字ではなくアラビア語のインド数字を指すあべこべの呼称なので要注意。
  • اَلْأَرْقَام الْإِنْجِلِيزِيَّة
    [ ’al-’arqāmu-l-’injilīzīya(h)/’ingilīzīya(h) ] [ アル=アルカーム・ル=インジリーズィーヤ/インギリーズィーヤ ]
    英語の数字(いわゆるアラビア数字、算用数字のこと)

インド数字が含まれるアラビア語の文章の読み方

アラビア語文の中におけるインド数字

後から遅れて輸入されたものなので、その部分だけは左から右へと書かれます。またアルファベットのようにお互いを連結させることもせずバラバラにつづっていきます。

١٩٨٧
(1987)

数字を読む向き

年号も含め数字は左→右に読むのが一般的

アラビア語の文章部分は左←右に読み進めていくだけ良いのですが、問題は数字です。年号も含めインド由来の数字で書かれている部分は左→右に読むのですが、読む時の順番が多少ややこしく、表記上は1987となっていても読む順は異なります。

現代アラビア語で一般的な「1987」といった数字の読み方は1→9→7→8となっており、1000の位→100の位と読んだら1の位にジャンプし→最後に10の位の数字を読みます。これはもっと位の大きな数でも同様で、243,198などだと「200と3と40個の1000と100と8と90」といった読み上げ方をするため、アラビア文字による文章部分と違い左から右に進んだら右にジャンプして左に戻り…という形になっています。

それぞれの位の数の間は英語の and に相当する و [ wa ] [ ワ ](~と、そして)という接続詞を補足しながら音読していきます。

なので矢印で表すと厳密には

アラビア語の数字 ١ ٩ ٨ ٧
アラビア数字 1 9 8 7
読む順番 (1)→ (2)→ (4) ←(3)
アラビア語での読み方 أَلْفٌ
アルフ
(1000)
وَتِسْعُمِائَةٍ
ワ・ティスウミア
((1000)と900)
وَثَمَانُونَ
ワ・サマーヌーン
((7)と80)
وَسَبْعَةٌ
ワ・サブア
(と7)

という順番で読み上げていて、「1000」と「900」と「7」と「80」という言い方をして、1000+900+7+80つまり1987の読み上げが完了します。

数字にはさらに格変化がある

またアラビア語には格変化というものがあって、「1987が/だ」という主格の時、「1987の」という属格(≒所有格)の時、「1987を」という対格(≒目的格)の時とでそれぞれの位の数の最後につく発音記号や一部の語形も変化します。

なので
١٩٨٧
という数字での表記は変わらないのにその発音だけが変わって

1987が、1987だ~主格(主語、述語の時)

أَلْفٌ وَتْسِعُمِائَةٍ وَسَبْعَةٌ وَثَمَانُونَ

母音記号を省略せず全部読む場合:
[ ’alfun wa-tis‘umi’atin wa-sab‘atun wa-thamānūna ]
[ アルフン・ワ・ティスウミアティン・ワ・サブアトゥン・ワ・サマーヌーナ ]
会話・口語風簡略発音:
[ ’alf wa-tis‘umi’a wa-sab‘a wa-thamānūn ]
[ アルフ・ワ・ティスウミア・ワ・サブア・ワ・サマーヌーン ]

1987の~属格(≒所有格)

أَلْفٍ وَتْسِعِمِائَةٍ وَسَبْعَةٍ وَثَمَانِينَ

母音記号を省略せず全部読む場合:
[ ’alfin wa-tis‘imi’atin wa-sab‘atin wa-thamānīna ]
[ アルフィン・ワ・ティスイミアティン・ワ・サブアティン・ワ・サマーニーナ ]
会話・口語風簡略発音:
[ ’alf wa-tis‘imi’a wa-sab‘a wa-thamānīn ]
[ アルフ・ワ・ティスイミア・ワ・サブア・ワ・サマーニーン ]

1987を~対格(≒目的格)

أَلْفًا وَتْسِعَمِائَةٍ وَسَبْعَةً وَثَمَانِينَ

母音記号を省略せず全部読む場合:
[ ’alfan wa-tis‘ami’atin wa-sab‘atan wa-thamānīna ]
[ アルファン・ワ・ティスアミアティン・ワ・サブアタン・ワ・サマーニーナ ]
会話・口語風簡略発音:
[ ’alf wa-tis‘ami’a wa-sab‘a wa-thamānīn ]
[ アルフ・ワ・ティスアミア・ワ・サブア・ワ・サマーニーン ]

年号は文字と同じ左←右で読むことがある

アラビア文字同様に右から左へと進んで最後に1000の位を読む方法もありますが、通常の学習書では紹介されていません。この方法は宗教学・歴史・伝記やテレビの「今日は何の日?」系番組に多く、ごくまれに普通のニュースでも使われることがあります。

このケースでは普通の読み方と違い、1000の位←100の位←10の位←1の位と右から左に向かって読みます。

それぞれの位の数の間を英語の and に相当する و [ wa ] [ ワ ](~と、そして)という接続詞でつないでいく点は同じですが、通常の数字の読み方のように10の位と1の位との読み順入れ替えは起こりません。

アラビア語の数字 ١ ٩ ٨ ٧
アラビア数字 1 9 8 7
読む順番 (4) ←(3) ←(2) ←(1)
アラビア語での読み方 أَلْفٌ
ワ・アルフ
(と1000)
وَتِسْعُمِائَةٍ
ワ・ティスウミア
(と900)
وَثَمَانُونَ
ワ・サマーヌーン
(と80)
سَبْعَةٌ
サブア
(7)

いわゆる古い年号の読み方で、歴史書だとこのような順番で年号が記録されているのが一般的です。

やはりこれも上の例と同様に格変化を行います。

アラブ世界におけるインド数字とアラビア数字の混在状況

アラブ世界ではインド数字しか使わない?

近年ではインド数字とアラビア数字との併用が進んでおり、国による違いはありますが子供世代では英語などと同じアラビア数字の方が頻繁に触れる数字になってきています。

特にフランス語を使った教育が盛んな北アフリカ(マグリブ)諸国ではアラビア数字を主に使っていることで知られており、東部のアラブ諸国とは事情が違っています。

アラブ世界の全体を通し公の場でのアラビア数字の導入も行われており、次第にその割合は増えつつあります。車のナンバープレートがインド数字とアラビア数字との併記だったり、英語などと同じアラビア数字だけしか書かれていないプレートがあったりもします。

視認性が良いということもあり、レストランのアラビア語メニュー&価格表といった色々なシーンでアラビア数字が使われることも。

地域差はありますが一般的にアラビア数字の併用や置き換えが進む方向にある感じです。ただインド数字はまだまだ使われているので、現地に旅行する際には値札や案内板が読めるように覚えておくと便利です。

我々が使っているアラビア数字がインド数字と似ていないのはなぜ?

巷でよく聞かれるのが「え、アラビア語で使うのはインド数字?じゃあ我々がアラビア数字と呼んでいるあれは何?」「アラビア数字とアラビア語の数字、全然似ていないじゃないか」「アラブ人は使っていないのになんで”アラビア”なの?」という疑問です。

これには東方アラブ世界とは違う、北アフリカ地域が経由地となり間にワンクッション置かれていたことが関係しています。

北アフリカ・アンダルスの数字がアラビア数字の直接のご先祖だから

グバール(ゴバール)数字

北アフリカや彼らが移住したイベリア半島アンダルスのアラブ人たちは現代アラビア語で用いられる一般的なインド数字とは違う形の数字をかつて使っており、欧州に輸入されたアラビア数字はそちらの方を元に作られました。

現在のアラビア語で使われている「インド数字」と我々が使っている「アラビア数字」の形が全然似ていないのはそのためです。

 Wikimedia Commonsより

この西アラビアの数字はグバール数字、اَلْأَرْقَام الغُبارِيَّة [ ’al-’arqāmu-l-ghubārīya(h) ] [ アル=アルカーム・ル=グバーリーヤ ] という名称です。

文語ではグバールですが ghu の音は gho に近く聞こえやすいこともあり、ゴバールという発音が元になった英字表記 Gobar numerals もしくは Ghobar numerals で広く知られています。

アラブ世界の東側と西側とで数字の形が異なるのは、形が改良されたものが西側地域(北アフリカ)を経由してアンダルスで使用され、アラブ人から学んだキリスト教徒を通じてヨーロッパに伝えられたからとされていますが、実際にこのグバール数字(ゴバール数字)を見るとそれなりに我々が使っているアラビア数字の面影が感じられます。

グバール数字(ゴバール数字)自体はモロッコに残っている資料でも確認できるそうで、西暦1204年に死去したベルベル系数学者 اِبْن الْيَاسَمِين [ ’ibnu-l-yāsamīn ] [ イブヌ・ル=ヤーサーミーン ](イブン・アル=ヤーサミーン、モロッコのフェズ生まれでアンダルスのセビーリャに居住)がグバールについて論じている著書『تَلْقِيحُ الْأَفْكَارِ فِي الْعَمَلِ بِرُسُومِ الْغُبَارِ』[ talqīḥu-l-’afkār(i) fi-l-‘amal(i) bi-rusūmi-l-ghubār ] [ タルキーフ・ル=アフカール・フィ・ル=アマル・ビ・ルスーミ・ル=グバール ] の写本がその代表格とされている模様です。

*イブン・アル=ヤーサミーンはマグリブ地方式の通称で「ヤーサミーンの息子」という意味ですが、数学者の父親の名前がヤーサミーンという訳ではないとのこと。本人のファーストネームはアブドゥッラー、父の名前はムハンマド。伝承によると母親の名前がヤーサミーンでそこからイブン・アル=ヤーサミーンという通称が生まれたそうです。大旅行家イブン・バットゥータのバットゥータも母親の名前が由来だという説があり、「イブン・母親の名前由来のネーミング」が中世北アフリカ~イベリア半島における通り名にしばしば見られるパターンであったことがわかります。

 Wikimedia Commonsより

こちらは西暦1400年代に إِبْرَاهِيمُ ابْنُ الْقَبَاقِبِيّ [ ’ibrāhīm ’ibn ’al-qabāqibī(y)  ](イブラーヒーム・イブン・アル=カバーキビー)という学者が書いた数学・算術の本『عُمْدَةُ الطُّلَّابِ فِي عِلْمِ الْحِسَابِ』[ ‘umdatu-ṭ-ṭullāb fī ‘ilmi-l-ḥisāb ] [ ウムダトゥ・ッ=トゥッラーブ・フィー・イルミ・ル=ヒサーブ ](直訳は「算術における学徒らのための支柱」)という本のコピーです。

ここには数字の解説があり、現代のアラブ世界でも広く使われているインド数字(ヒンディー数字)とグバール数字とが1から9まで併記されています。下の行にある方がヨーロッパのアラビア数字の元になった方ですが、たしかに2(上下反転していますが)・3・5・6・7・8・9あたりは面影があるように感じられます。

「インド生まれにしては現代のヒンディー語数字と全然形が違うのでは?」

ネットでしばしば語られるアラビア語のインド数字に関する疑問「インド生まれにしては現代のヒンディー語数字と全然形が違うのでは?」について、以前視聴したアラブ人向けレクチャー動画で触れられていたことがありました。

その講話によると、インド数字とは言っても現在のヒンディー語圏ではなくシンド地方など少し数字が違う形になっている周辺地域を経由して伝わった可能性があるという説明でした。

「アラビア数字の角の数が数値を表している」説について

ネットで流布しているアラビア数字の原型ストーリー

 Wikimedia Commonsより

欧米では「アラビア数字の原型となった元々のデザインでは角の数が数値と対応している」説はネットで捏造された嘘と断定する記事が多く見られますが、アラブ圏では書籍でこの角の数の概念が紹介されアラブ人研究者らの中にはこの説を支持する者たちもいるといったニュアンスになっていたりするように見受けられます。

しかし元々誰が言い出した話なのか、はっきりと示したソースが見当たらない状況です。ネットで転載・紹介されるうちに真実であるかのように定着してしまった可能性が高いため、扱いについては注意が必要です。

ともあれこのグバール(ゴバール)数字の形とその由来にまつわる都市伝説的なストーリーにおいては、

それぞれの数字の角の数が数値と一致するように調整が行われ、数字のゼロは角が全く無いようにただの点から円に、7には海外の一部で見られるような7の途中に棒を交差させる形にすることで角が7個作り出されたと

ということになっています。

この角張った原型が上の「西アラブ」という文字の下に配置されている数字群(グバール数字)が生まれた背景にあると紹介されている次第です。4だけ違うように見えますが、回転させるとほぼ同じ形なのがわかります。

「角の数に合わせたとかそんなことない」「勝手に作られた架空のストーリーだ」という懐疑的な声もありますが、現在ネット上で広く流布しているのはこの「角の数に合わせてインド数字を改造した」説となっています。

この角の数が対応しているデザインを考えたのは誰か?

インド数字に関して「数学の大家だったフワーリズミーによりアラビア語に取り入れられた」という紹介がポピュラーですが、記事によっては「グバール数字のデザイン自体もフワーリズミーが考案した」ように書かれているケースもあります。

そのような説明では「フワーリズミーがアラビア数字の原型を考案したにもかかわらずマシュリクと呼ばれるアラブ世界東部では普及せず北アフリカそしてアンダルスで多用された」というストーリーになっていることも。

北アフリカのベルベル人にスポットを当てた視点からだと「北アフリカのアラブ化された地域マグリブ地方ならではの文化的遺産だ」「グバール数字はベルベル人の発明品なのにアラブ人の功績として名声が奪われた」と強調する説明がなされていることもあります。

インド数字の名称と発音

まずは0~10までをまとめてチェック

音声バージョン

再生ボタンを押すと以下の順番で音声が流れます。

  • 0:صِفْرٌ [ ṣifr ] [ スィフル ]
  • 1:وَاحِدٌ [ wāḥid ] [ ワーヒド ]
  • 2:اِثْنَانِ [ ’ithnān ] [ イスナーン ]
  • 3:ثَلَاثَةٌ [ thalātha(h) ] [ サラーサ ]
  • 4:أَرْبَعَةٌ [ ’arba‘a(h) ] [ アルバア ]
  • 5:خَمْسَةٌ [ khamsa(h) ] [ ハムサ ]
  • 6:سِتَّةٌ [ sitta(h) ] [ スィッタ ]
  • 7:سَبْعَةٌ [ sab‘a(h) ] [ サブア ]
  • 8:ثَمَانِيَةٌ [ thamāniya(h) ] [ サマーニヤ ]
  • 9:تِسْعَةٌ [ tis‘a(h) ] [ ティスア ]
  • 10:عَشَرَةٌ [ ‘ashara(h) ] [ アシャラ ]

ビデオバージョン

数字(0~10)の名前~オリジナル版
数字(0~10)の名前~YouTube版

0から10までの名前とアラビア語表記&発音

0

صِفْرٌ
[ ṣifr ] [ スィフル ]
語末を省略する普通の読み方
[ ṣifrun ] [ スィフルン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

ただの点を書きます。アラビア語では5「٥」がアラビア数字の0に似ているので最初はまぎらわしく感じるかもしれません。

会話的発音ではスフルなどと聞こえることも。

1

وَاحِدٌ
[ wāḥid ] [ ワーヒド ]
語末を省略する普通の読み方
[ wāḥidun ] [ ワーヒドゥン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

ワーヒッドに近く聞こえることも。ワーハドなどは口語(方言)での発音になります。

2

اِثْنَانِ
[ ’ithnān ] [ イスナーン ]
語末を省略する普通の読み方
[ ’ithnāni ] [ イスナーニ ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

手書きの値札やメモでは少し形が違うので要注意。なおイスネイン、イスネーン、イトゥネイン、イトゥネーンなどは数字2を指す口語(方言)での発音になります。

ちなみに正書法(正字法)の関係で ء のついた إثنان ではなく اثنان の方が現地でスタンダードとされているつづりになります。

また主格の時はイスナーン(イスナーニ)で属格(≒所有格)・対格(≒目的格)の時はイスナイン(イスナイニ)といった具合に文中での位置・働きによって語形が変わります。書き言葉の教科書でイスナーンとなっているのにアラビア語会話のレクチャーでイスネインやイスネーンなどとなっているのは日常生活では主格ではなく属格・対格の語形を使っているためです。

3

ثَلَاثَةٌ
[ thalātha(h) ] [ サラーサ ]
語末を省略する普通の読み方
[ thalāthatun ] [ サラーサトゥン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

タラータ、タラーテ、タラーサ、タラーセなどは口語(方言)での発音になります。日本ではネーミング辞典などに文語ではなく口語発音のタラータで載っているのを結構見かけますが、書き言葉ではサラーサです。

4

أَرْبَعَةٌ
[ ’arba‘a(h) ] [ アルバア ]
語末を省略する普通の読み方
[ ’arba‘atun ] [ アルバアトゥン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

5

خَمْسَةٌ
[ khamsa(h) ] [ ハムサ ]
語末を省略する普通の読み方
[ khamsatun ] [ ハムサトゥン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

まぎらわしいですが0ではなく5です。

ハムセなどは口語(方言)での発音になります。なおhaは通常「カ」ではなく「ハ」とカタカナ表記しますが、日本ではカムサと書いてあるケースもあるようです。

6

سِتَّةٌ
[ sitta(h) ] [ スィッタ ]
語末を省略する普通の読み方
[ sittatun ] [ スィッタトゥン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

スィッテなどは口語(方言)での発音になります。

7

سَبْعَةٌ
[ sab‘a(h) ] [ サブア ]
語末を省略する普通の読み方
[ sab‘atun ] [ サブアトゥン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

通常の会話だとサバアやサバァに近く聞こえることも。

8

ثَمَانِيَةٌ
[ thamāniya(h) ] [ サマーニヤ ]
語末を省略する普通の読み方
[ thamāniyatun ] [ サマーニヤトゥン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

タマーニヤ、タマニヤ、タマーニエ、タマニエ、スマーニヤ、スマニヤ、スマーニエ、スマニエのように聞こえるのは口語(方言)での発音になります。

なお英字表記では -nia [ -ニア ] となっていることがしばしばあるのですが、文語発音に忠実に表記すると -niya [ -ニヤ ] になります。

9

تِسْعَةٌ
[ tis‘a(h) ] [ ティスア ]
語末を省略する普通の読み
[ tis‘atun ] [ ティスアトゥン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

通常の会話だとティサァ、ティサアに近く聞こえることがあるかもしれません。

10

عَشَرَةٌ
[ ‘ashara(h) ] [ アシャラ ]
語末を省略する普通の読み方
[ ‘asharatun ] [ アシャラトゥン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

10以上の数字は日本語のアラビア数字同様、0~9までの数字を組み合わせて表現します。10では10の位の1を左、1の位の0を右に置きます。

女性名詞を数える時の数字1~10

アラビア語は男性名詞と数える時と女性名詞を数える時の数詞が違う

上で紹介したインド数字の読み方とアラビア語でのつづりは、数字の名称として「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10」と数える時や男性名詞を数える時に使います。

1~10個である女性名詞を数える時のアラビア語の数字は性を示す語末部分が異なり、次のようなつづりと読みになります。文中でインド数字で書いてあっても数える名詞の性が女性であれば対応させて読みを変える必要があります。

なお、「◯◯が0個」のように0を使って「スィフル個」という数え方はしないので、使わない0は省略しました。

1から10までの数詞の違うバージョンとアラビア語表記&発音

再生ボタンを押すと女性名詞を数える時の数詞1~10が聞けます。

  • 1:وَاحِدَةٌ [ wāḥida(h) ] [ ワーヒダ ]
  • 2:اِثْنَتَانِ [ ’ithnatān ] [ イスナターン ]
  • 3:ثَلَاثٌ [ thalāth ] [ サラース ]
  • 4:أَرْبَعٌ [ ’arba‘ ] [ アルバゥ/アルバァ ]
  • 5:خَمْسٌ [ khams ] [ ハムス ]
  • 6:سِتٌّ [ sitt ] [ スィット ]
  • 7:سَبْعٌ [ sab‘ ] [ サブゥ/サブァ ]
  • 8:ثَمَانٍ – ثَمَانِي [ thamānin ] [ サマーニン ] – [ (’ath-)thamānī ] [ (アッ=)サマーニー ]
  • 9:تِسْعٌ [ tis‘ ] [ ティスゥ/ティスァ ]
  • 10:عَشْرٌ [ ‘ashr ] [ アシュル ]

1

١

وَاحِدَةٌ
[ wāḥida(h) ] [ ワーヒダ ]
語末を省略する普通の読み方
[ wāḥidatun ] [ ワーヒダトゥン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

ワーヒデ、ワフデ、ワハダ、ワハデなどは口語(方言)での発音になります。

2

٢

اِثْنَتَانِ
[ ’ithnatān ] [ イスナターン ]
語末を省略する普通の読み方
[ ’ithnatāni ] [ イスナターニ ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

正書法(正字法)の関係で ء のついた إثنتان ではなく اثنتان の方が現地でスタンダードとされているつづりになります。

また主格の時はイスナターン(イスナターニ)で属格(≒所有格)・対格(≒目的格)の時はイスナタイン(イスナタイニ)といった具合に文中での位置・働きによって語形が変わります。書き言葉の教科書でイスナターンとなっているのにアラビア語会話のレクチャーでイスナタインやイスナテーンなどとなっているのは日常生活では主格ではなく属格・対格の語形を使っているためです。

なおイスナテイン、イスナテーン、イスネテイン、イスネテーン、イトゥネテイン、イトゥネテーン、ティンテイン、ティンテーンなどは口語(方言)での発音になります。

3

٣

ثَلَاثٌ
[ thalāth ] [ サラース ]
語末を省略する普通の読み方
[ thalāthun ] [ サラースン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

タラート、タラト、タラット、タラース、タラスなどは口語(方言)での発音になります。

4

٤

أَرْبَعٌ
[ ’arba‘ ] [ アルバゥ/アルバァ ]
語末を省略する普通の読み方
[ ’arba‘un ] [ アルバウン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

アルバゥというよりは日常の文語フスハー会話ではアルバァに近く聞こえることが多いのでそのようにカタカナ表記してあります。

5

٥

خَمْسٌ
[ khams ] [ ハムス ]
語末を省略する普通の読み方
[ khamsun ] [ ハムスン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

口語(方言)だと物を数える時に真ん中の時に母音が追加され khams [ ハムス ] ではなく khamas [ ハマス ] のような発音になったりも。

6

٦

سِتٌّ
[ sitt ] [ スィット ]
語末を省略する普通の読み方
[ sittun ] [ スィットゥン ]
を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

7

٧

سَبْعٌ
[ sab‘ ] [ サブゥ/サブァ ]
語末を省略する普通の読み方
[ sab‘un ] [ サブウン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

実際にはサブァに近く聞こえることが多いです。口語(方言)だとサバァに近く聞こえたりして、口語(方言)では物を数える時に実際に「サバア・~」(7個の~)のような発音になっていることも。

8

٨

単体

ثَمَانٍ
[ thamānī ] [ サマーニー ]
多くの学習書で教えられている文語フスハー会話的な読み方
[ thamān ] [ サマーン ]
文語フスハーの休止形本来のルールに即した読み方(文語的)
*日本の学習書でこのように読むよう教えている本はまず無く、アラブのメディアでもあまり聞かないです。
[ thamānin ] [ サマーニン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

定冠詞がついた時(後ろから属格/所有格支配を受けた時も同様)

اَلثَّمَانِي
[ ’ath-thamānī ] [ アッ=サマーニー ]
これについては読み方による発音のバリエーションは特に無し

9

٩

تِسْعٌ
[ tis‘ ] [ ティスゥ/ティスァ ]
語末を省略する普通の読み方
[ tis‘un ] [ ティスウン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

実際はティスァやティスアと聞こえる発音をする人が多いです。口語(方言)では物を数える時に実際に「ティサア・~」(9個の~)のような発音になっていることも。

10

١٠

عَشْرٌ
[ ‘ashr ] [ アシュル ]
語末を省略する普通の読み方
[ ‘ashrun ] [ アシュルン ]
格を示す語末母音も全部読んだ場合(文語的)

男性名詞を数える時の عَشَرَةٌ [ ‘ashara(h) ] [ アシャラ ] と違って、ش につくのは母音 a ではなく無母音であることを示すスクーンになり عَشْرٌ [ ‘ashr ] [ アシュル ] とします。この些細な違いは数詞11~19における男性名詞と数える時の形と女性名詞を数える時の形に関わってくるので結構重要なポイントだったりします。

数詞1・2と3~10で語末の ة 有無が異なる理由

1と2は語末に女性を示す ة(ター・マルブータ)の有無が3~10と逆になります。というのも、アラビア語によるアラビア語文法では1・2と3~10の数詞のルールが異なるためです。

1・2の数の文法では数えられる物が男性形♂なら数字の性も男性形♂で合わせるのに対し、3~10の数の文法では数えられる物が男性形♂なら数字の性は逆で ة(ター・マルブータ)がついた女性♀にします。

日本で売られている文法書では両方をまとめて男性形の数詞と説明されているのが普通ですが、アラビア語の文法では逆の性にするという教えられ方をしています。内記良一先生の学習書では「対性の法則」と紹介されています。四戸潤弥先生の学習書でも性を反対にするという説明が行われています。

パレスチナの学校(日本の中学校に相当するグレード)のアラビア語文法授業です。基数詞の1~10についての解説で、性を反対にする話が出てきます。

パレスチナの学校(日本の中学校に相当するグレード)のアラビア語文法授業です。基数詞の11以降についての解説で、性を合わせたり反対にしたりする話が出てきます。11~19は10の位と1の位とで数えられる対象となるものの性との一致・逆が分かれるのでややこしいです。